役職定年(やくてい)とは?メリットやデメリット、仕組みを解説

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働き方改革
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役職定年(やくてい)とは?メリットやデメリット、仕組みを解説

目次

役職定年とは、一定の年齢に達した従業員が役職から退く制度のことで、約3割の企業が導入しています。

企業における世代交代の促進や、人件費の削減などメリットの多い制度ですが、モチベーションの低下などのデメリットもあります。

役職定年後の従業員にも活躍し続けてもらうためには、キャリアデザインを促したり、若手従業員の指導・育成を依頼したりなど、さまざまな働きかけをおこなうことが大切です。

本記事では、役職定年の意味や実態、メリット・デメリットと活用のポイントを解説します。

役職定年とは

役職定年とは、一定の年齢に達した従業員が役職から外れる制度のことで、「やくてい」と省略されることもあります。

役職定年の年齢は企業によって異なりますが、人事院の調査によると、部長級、課長級ともに、役職定年の年齢を55歳とする企業が最も多いという結果でした。

次点で57歳とする企業が多いため、役職定年の年齢は50代半ばから後半が一般的といえるでしょう。

定年に関しては、1994年に高年齢者雇用安定法によって定年を60歳とすることが企業に義務化され、現在は法律の改正により、定年を70歳まで引き上げる措置などを講ずることが企業の努力義務として設けられています。[※1]

役職定年制度ができた背景

従来の日本企業は、終身雇用や年功序列が一般的であり、長く勤めると管理職になるケースがほとんどでした。

しかし、年齢が高く、管理職である従業員がさらに年齢を重ねると、人件費が高騰してしまうため、コストを抑えるという目的で役職定年制度が設けられました。

役職定年の実態

従業員規模が大きい企業ほど導入率が高いといわれている役職定年ですが、企業によって導入状況や具体的な運用方法が異なるため、いくつかのバリエーションがあるようです。

  • 導入状況
  • 役職定年後のモチベーション状況
  • 役職定年後の業務状況

導入状況や役職定年後のモチベーション、業務状況を紹介します。

導入状況

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)の調査によると、役職定年制度や役職の任期制を導入している企業の割合は28.1%でした。[※2]

導入している企業のうち、定年制別の割合を見ると、「定年64歳以下、かつ継続雇用65歳まで」が最も高いです。

一方で、役職定年制度や役職の任期制の導入も検討もしていないと答えた企業の割合は61.4%であり、導入している企業と2倍以上の差があることがわかります。

役職定年後のモチベーション状況

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、役職定年後のモチベーション状況は、変わらない人がいる一方で、下がる人もいることがわかりました。[※2]

部長クラスの場合、「仕事に対する意欲」は「変わらない」38.5%、「ある程度下がった」39.6%、「下がった」7.3%で、「会社に尽くそうとする意欲」は「変わらない」43.2%、「ある程度下がった」35.8%、「下がった」5.8%でした。

課長クラスでは、「仕事に対する意欲」は「変わらない」39.8%、「ある程度下がった」41.8%、「下がった」8.8%で、「会社に尽くそうとする意欲」は「変わらない」44.1%、「ある程度下がった」38.8%、「下がった」7.3%であったため、役職定年を迎えるとモチベーションに影響が出る人もいるといえます。

役職定年後の業務状況

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、役職定年後の職場が「同じである」と答えた割合が部長クラス73.5%、課長クラス79.4%であり、ともに最も高い結果となりました。[※2]

仕事内容は、「後進への技術・技能の伝承」が部長クラスは47.2%、課長クラスは44.5%と最も高く、次点がともに「通常業務の遂行」となっています。

役職定年を導入するメリット

役職定年を導入すると、企業にとって以下のようなメリットがあります。

  • 組織の新陳代謝をはかれる
  • 人件費の高騰を防げる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

組織の新陳代謝をはかれる

役職定年を導入すると、役職に就く従業員が定期的に入れ替わるため、企業の成長につながるようなアイデアが生まれたり、業務効率化をはかれたりなど、よい影響を与える可能性があります。

また、同じ従業員が長く役職に留まらないため、中堅や若手従業員も責任あるポジションを経験でき、自己成長やモチベーションアップにつながるでしょう。

人件費の高騰を防げる

役職定年制度の導入の背景ともいえますが、役職定年を導入すると人件費の高騰を防げます。

年功序列制度を導入している企業の場合、従業員の年齢が上がるごとに給与も高くなり、従業員が役職に就くとさらに人件費がかさみます。

役職から外れる制度である役職定年制度を設けることで、人件費を抑えるメリットを得られます。

役職定年を導入するデメリット

企業にとってのメリットが大きい役職定年ですが、以下のようなデメリットが起こる可能性もあるため、導入には注意が必要です。

  • シニア人材のモチベーションが低下する
  • パフォーマンスが低下する
  • 年齢差別と捉えられる

それぞれのデメリットについて解説します。

シニア人材のモチベーションが低下する

役職定年を導入すると、シニア人材のモチベーションが低下するおそれがあります。

管理職として成果を出したりやりがいを見出したりしていても、役職定年制度によって強制的に役職が外れてしまうため、役職定年後にはモチベーションが低下する従業員も多いです。

役職定年を迎えることで仕事に対するやりがいや企業への貢献意欲が減退した場合、優秀な従業員が退職してしまうかもしれません。

パフォーマンスが低下する

役職定年制度によって管理職になる従業員が入れ替わりますが、新たに管理職になった従業員の能力が前任者よりも低かった場合、チームや企業全体のパフォーマンスが低下するおそれがあります。

パフォーマンスの低下は、部下や企業の成長を妨げかねないため、企業にとってデメリットとなります。

年齢差別と捉えられる

現在の法律では、定年を70歳まで引き上げることが企業の努力義務として設定されています。

高齢化によってシニア人材が増えており、高齢で活躍している人材も多くいるため、役職定年を設けるとエイジズム(年齢差別)と捉えられるかもしれません。

役職定年の導入が失敗する原因

役職定年を導入することで、対象となる従業員のモチベーションが低下してしまう恐れがあります。

具体的には、以下のような理由で役職定年の導入が失敗となるケースがあります。

  • 給与が下がってしまう
  • 年下の上司との関係性が難しい
  • 経験や知識を活かすことができない

役職定年の導入が失敗する原因を紹介します。

給与が下がってしまう

公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団の調査によると、役職定年後に年収が減ったと回答した人は9割以上おり、うち約4割の人が50%を下回ったと回答しました。[※3]

役職定年を迎えると、今まで支払われていた役職手当がなくなったり、基本給も減額したりして、給与が下がってしまうケースもあるでしょう。

給与が減ったことに対し、不満を抱え、モチベーションが下がる従業員もいると考えられます。

年下の上司との関係性が難しい

役職定年を迎えた従業員の元部下や年下の従業員が上司になった場合は、仕事のやりづらさを感じ、能力を十分に出せなかったり生産性が下がったりする可能性もあるでしょう。

人間関係の悩みが、役職が外れた従業員のモチベーション低下を招きます。

経験や知識を活かすことができない

役職定年を迎えた従業員が、異動によって自身のスキルや経験を活かせない業務に就いた場合、能力を発揮できないため、仕事へのやりがいを感じられなくなる可能性があります。

また、管理職ならではの権限を失うことで、自分の価値が下がったと感じられ、仕事や企業への貢献意欲がなくなるケースもあるでしょう。

役職定年後の従業員を活用する際のポイント

役職定年後の従業員のモチベーションが下がった場合、企業は優秀な従業員の離職や生産性の低下といったマイナスな影響を受けるおそれがあります。

役職定年後の従業員にも活躍してもらうために、以下のような働きかけをおこなうことが大切です。

  • 役職定年後のキャリアデザインを促す
  • 役職定年後の肩書を用意する
  • 越境学習などの学びを促す
  • 新しい役職者のサポートを依頼する

役職定年後の従業員を活用する際のポイントを紹介します。

役職定年後のキャリアデザインを促す

従業員に、役職定年後の理想の働き方や目標を見出すように促しましょう。

キャリアデザイン研修などを実施し、自身の役職定年後のキャリアを考えさせることで、役職定年後も目標に向かって活躍してくれる可能性があります。

役職定年後の肩書を用意する

役職定年を迎えて、「部長」「課長」などの肩書がなくなってしまうと、自分の価値が下がった、アイデンティティが失われた、などと感じる従業員もいるでしょう。

そのため、役職定年後の肩書を用意し、一般従業員と違うことを明示すると、役割意識が芽生えてモチベーション維持につながるかもしれません。

越境学習などの学びを促す

役職定年後の従業員は、自社でやるべきことを終えたと感じやすいため、越境学習などの学びを促して活躍の場が社外にもあると示すと、社内外で活躍する人材になる可能性があります。

越境学習などによって、新たなスキルの習得や経験を積んだ従業員は、自分のまだ見ぬ可能性や強みに気付けて、次の目標が設定できたり、意欲向上につながったりするでしょう。

>越境学習に関する記事はこちら

新しい役職者のサポートを依頼する

従業員の役職定年後のキャリアとして、若手従業員の指導や育成、新しい役職者のサポート業務を依頼することは、従業員のモチベーション向上につながる可能性があります。

一方で、役職定年したすべての従業員がサポート業務に魅力を感じるとは限らないため、従業員が希望するキャリアを歩めるように、専門知識や経験を活かして現場で活躍する道や、後輩の指導役となる道など、複数のキャリアを提示し、従業員に選ばせることが大切です。

役職定年制度の事例

役職定年制度を導入する場合、これまで貢献してくれていた従業員へのフォローアップが大切になります。

役職定年後も気持ちよく働いてもらうために、導入している企業の事例からポイントを見ていきましょう。

今回は2つの事例を紹介します。

役職定年後は別の役職者となるケース

情報サービス業を営む企業は、3種類ある役職のうち、1種類が60歳で役職定年となりますが、役職定年後はほかの役職に移るため、基本給が減額されることはありません。

また、20代前後半、30代、40代、50代前後半と、細分化してキャリアデザイン教育をおこなったり、個別のキャリア相談にも応じたりしています。

研修で高齢期の従業員に役割を伝えるケース

金融業を営む企業は、役職定年年齢を定めず、若手が育った段階で役職から外れる制度を設けており、50代半ばくらいで役職を外れた従業員は、サポート役に回ることが多いそうです。

従業員がキャリア形成できるように、若手だけでなく48歳や57歳前後の従業員にも研修を実施し、60歳間近におこなわれる研修では、企業が高齢期の従業員に期待すること、求める役割、実際に活躍しているシニア人材の事例を伝え、今後のキャリアを考えるように促しています。

役職定年後のモチベーション向上に「Chatwork」

役職定年とは、一定の年齢に達した従業員が役職から外れる制度であり、組織の新陳代謝をはかれるメリットがある一方で、シニア人材のモチベーションが低下するデメリットもあります。

役職定年後の従業員のモチベーションを高めるには、キャリアデザインや学びを促すことのほか、社内の人間関係も良好にすることが大切なため、チャット形式で気軽にコミュニケーションがとれるビジネスチャット「Chatwork」の導入をおすすめします。

ビジネスチャット「Chatwork」は、絵文字やリアクション機能を用いながら、感情豊かにコミュニケーションをとれます。

>Chatworkの機能についてはこちら

>Chatworkのリアクション機能に関する記事はこちら

業務連絡や情報共有以外に、ちょっとした雑談もしやすいため、スムーズに意思疎通できたり、信頼関係の構築につながったりするでしょう。

円滑なコミュニケーションを実現できるビジネスチャット「Chatwork」を導入して、シニア人材のモチベーション向上にお役立てください。

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[※1]出典:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html
[※2]出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「役職定年制度の導入状況とその仕組み」
https://www.jeed.go.jp/elderly/research/report/document/q2k4vk000002rsgs-att/q2k4vk000002rsnv.pdf
[※3]出典:公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代の働き方に関する調査報告書」
https://dia.or.jp/disperse/questionnaire/pdf/questionnaire_20180831_01.pdf

※本記事は、2024年5月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

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