越境学習とは?具体的な育成方法や導入のメリット、効果を高める方法を解説
目次
越境学習という、新しい働き方をご存知ですか。
従業員の成長を促す方法として、越境学習に注目している企業は多いかもしれません。
越境学習は、企業と従業員の双方にメリットをもたらしますが、注意点もあるため、導入による影響や気を付けるべき点などの事前把握が大切です。
越境学習について、意味や具体的な育成方法、導入事例を解説します。
越境学習とは
越境学習とは、従業員が、所属している企業や部署とは異なる環境で、新たな体験をして、視野を広げたり、学びを得たりする活動のことです。
たとえば、従業員が自社を離れて、外部の企業へ出向したり、自治体の活動に参加したり、他業種間で交流会を開催したりする活動などが、越境学習に該当します。
越境学習が注目を集める背景
なぜ越境学習に注目する企業が増えているのでしょうか。
越境学習が注目を集めている背景を解説します。
VUCA時代に対応するため
現代は、VUCA時代といわれており、不確実で変動性の高い状況への対応が、企業に求められています。
VUCAとは、Volatility (変動性)・Uncertainty (不確実)・Complexity (複雑性)・Ambiguity (曖昧性)が飛躍的に高まった状況を意味する言葉です。
新型コロナウィルス感染症の蔓延など、状況が急速に変化する現代において、事業を継続していくには、イノベーションを起こすことが重要です。
イノベーションを起こすためには、従業員の能力の向上が欠かせないため、従業員のスキルアップにつながる越境学習が注目を集めています。
従業員のキャリア自律を推進するため
終身雇用制度が崩壊しつつある現代では、企業主導による従業員のキャリア形成は難しいといえるでしょう。
そのため、従業員は、自身のキャリアを自ら形成していく、「キャリア自律」へのとりくみが求められています。
越境学習は、従業員自身の強みの発見や、新たな価値観の創出などが期待できるため、キャリア自律の推進方法として注目されています。
企業の成長を促す必要があるため
少子高齢化の影響で、中高年層の従業員が多い企業も少なくないでしょう。
中高年層の従業員は、経験や知識が豊富な分、頼りになりますが、一方で、ひとつの業務にしか従事したがらなかったり、新たな業務を覚えるのに抵抗を示したりするケースもあるかもしれません。
企業の成長には、中高年層の従業員の成長も重要なため、越境学習によって、働き方に対する意識が変わったり、成長の喜びを知ったりといった効果が期待されています。
越境学習を導入するメリット:企業側
越境学習の導入により、人材流出を防止できるなどのメリットを、企業側は期待できます。
越境学習を導入するメリットを、企業側・従業員側それぞれの目線でみていきましょう。
従業員のキャリア自律を促せる
上述した通り、越境学習の導入で、従業員のキャリア自律を促せるでしょう。
職場とは異なる環境に身を置くことで、自分のやりたいことが見つかったり、強みを再発見できたりした場合、業務意欲が向上する可能性があります。
また、新たな経験をして、視野を広げることで、キャリアプランが明確になる可能性もあるため、さらなるスキルアップや昇進などにも意欲的になる効果が期待できます。
人材流出を防げる
越境学習は、人材流出の防止につながる可能性があります。
自己成長の方法を、従業員個人のみに任せてしまうと、従業員は自社に対して、成長の機会がないと判断し、さらなるスキルアップを目指して離職する危険性があります。
しかし、企業が自社の教育制度のひとつとして実施する越境学習の場合、従業員は自社に所属したまま、キャリアを形成できるため、離職する可能性を低減できるでしょう。
新たな知見やノウハウの習得につながる
越境学習で、普段とは異なる環境に身を置いた場合、従業員は、新たな知見やノウハウを習得できるでしょう。
日々同じような業務をおこなっている場合、業務の慣れや代わり映えのない状況から、創意工夫した業務遂行や、新たなチャレンジをする意欲が失われていく恐れがあります。
しかし、越境学習を導入すると、柔軟な考え方や高いリーダーシップが求められるなど、普段の業務とは異なる業務が求められるようになります。
この経験を、自分の業務に活かせるようになると、業務をさらに効率化できたり、イノベーションを起こすようなアイデアがうまれたりする可能性が期待できます。
越境学習を導入するメリット:従業員側
次に、従業員側の視点で、越境学習のメリットをみていきましょう。
スキルアップにつながる
越境学習は、従業員のスキルアップにつながります。
普段とは異なる環境における別の業務の経験により、知識が増えたり、アップグレードされたりして、スキル向上が期待できるでしょう。
また、スキルアップにより、業務に対する意欲が湧いたり、新たな分野にチャレンジしようと思えたりするかもしれません。
転職せずに挑戦ができる
従業員のなかには、自社に勤めながら、ほかの業種に挑戦したいと思ったり、新たな活動をはじめたいと考えたりしている人がいるかもしれません。
越境学習は、自社で働く時間帯に、ほかの業務に挑戦できるため、従業員の心身に負担なく、新たなチャレンジをできる機会を提供できます。
従業員にとって、転職せずに新たな経験を積んだりスキルアップをはかれたりすることは、大きなメリットといえるでしょう。
キャリアを見直すきっかけになる
越境学習によって、未知の領域に踏み込むことは、従業員自身に新たな価値観を芽生えさせたり、自身のキャリアやスキルを見直したりするきっかけを与えられます。
自社で同じ業務ばかりをしていると、外部からの刺激がなく、新たな気づきを得られる可能性は低いでしょう。
そのため、越境学習による新しい経験は、従業員自身にとって大きな刺激となり、自社のことや自身のことなどをあらためて考えるきっかけになるでしょう。
越境学習の具体的な方法
越境学習には、さまざまな方法があるため、自社が導入しやすいものを検討するといいかもしれません。
一例として、以下の方法があげられます。
- ワーケーション
- 社会貢献活動
- 副業・兼業
- ビジネススクール
- 出向
- 留職
越境学習の具体的な方法を、それぞれ解説します。
ワーケーション
ワ―ケーションとは、観光地などでおこなうリモートワークを意味します。
リモートワークは、自宅で業務をおこなう働き方だという考えが一般的ですが、観光地などでの業務を可能にすれば、環境の変化により従業員に新たな考えや視点を芽生えさせるかもしれません。
また、観光地域に根ざしたプロジェクトなどへの参加も、越境学習の効果向上につながるでしょう。
プロボノなどの社会貢献活動
プロボノとは、自分のスキルや経験を活かして、地域や社会への貢献活動をおこなうことです。
たとえば、NPO法人や地方自治体の活動に参加したり、地域振興のイベントを企画したりなどが挙げられます。
副業・兼業
副業や兼業とは、本業とは別の業務に従事する働き方です。
副業や兼業は、本業のかたわらとして、数時間だけおこなう方法もあれば、本業と同じくらいの時間を費やす方法もあります。
複業やパラレルワークとも呼ばれる働き方は、従業員のもっているスキルを高めたり、新たなスキルの獲得につながったりするでしょう。
ビジネススクール
ビジネススクールとは、学習講座のことで、従業員が伸ばしたいスキルの講座や、チャレンジしたいスキルの講座を受講できます。
ビジネススクールで受講する講座は、企業が決めずに、従業員に決めさせると、高い学習意欲を維持したまま、スキルとして吸収できる可能性が高いです。
出向
出向とは、自社のグループ企業や子会社などに、従業員を異動させることです。
出向は、自社の関連企業への異動ですが、働く環境や対人関係は異なるため、自社にいては気づけなかった事柄に気づくきっかけになるかもしれません。
留職
留職とは、従業員が新興国に一定期間派遣され、現地の社会的な課題を解消する活動をおこなうことです。
一般的に、公官庁やNPO法人が派遣先を紹介してくれます。
留職は、従業員のスキルや経験を現地で活かしながら、現地の人たちに技術教育の機会を提供できます。
越境学習の注意点
越境学習は、企業と従業員の双方にメリットがある取り組みですが、導入する前に注意点を把握しておかないと、メリットを十分に教授できません。
越境学習を導入する際は、以下の4つの注意点を、とくに確認しておきましょう。
- 実施目的を明確にする
- 従業員に自発的な参加を促す
- 振り返りの場を設ける
- 企業側の負担を想定する
越境学習の注意点を、それぞれ解説します。
実施目的を明確にする
越境学習を実施する際は、実施の目的を明確にし、従業員の理解を促すとりくみが大切です。
従業員が越境学習の目的を理解していない場合、苦手な業務は避けてしまうなど、意欲的な活動ができず、スキルアップなどの効果を得られない恐れがあります。
越境学習の効果を高めるためにも、越境学習の実施目的を明確にして、従業員に理解してもらうようにしましょう。
自発的な参加を促す
越境学習は、企業が従業員に強制すると、従業員から反発が起こったり、戸惑いや不安を感じさせたりする可能性があります。
また、意欲的でない従業員を越境学習に参加させても、高い効果を得られないでしょう。
そのため、企業はなるべく、従業員からの自発的な参加を促すとりくみが大切です。
振り返りの場を設ける
越境学習を実施したあとは、振り返りの場を設けるようにしましょう。
越境学習で学んだ内容や、普段の業務で活かせる事柄を、従業員に言語化させることで、スキルや知識として体系化させたり、業務効率化の具体的なアクションが浮かんだりします。
従業員が越境学習で得た内容に関する、社内共有も大切です。
社内では得られないような新しい知識の社内共有により、新たな気づきやアクションを期待できるでしょう。
企業側の負担が増える
越境学習の導入は、企業側の負担が大きい点に注意が必要です。
越境学習のために予算をくんだり、本業に支障がでないようにしたり、労務管理を整えたりなど、企業側がとりくむべき課題は多くあります。
また、越境学習に参加したい希望者が多い場合は、従業員に不平や不満がでないように、適切な選定も求められます。
越境学習の導入を検討している企業は、対応できるリソースが社内にあるかを確認したり、導入準備を万全にしたりすることをおすすめします。
越境学習の企業事例
越境学習を導入している企業は、どのような効果やメリットを実感しているのでしょうか。
実際に越境学習にとりくんでいる企業の事例を紹介します。
インドで新事業を起ち上げた事例
シェアードサービスを提供する企業では、自社の業務が縦割りになっており、従業員の視野が狭まっている状態や、主体性に欠け、自身を変えることに抵抗を抱いている従業員が多い状況に課題を感じていました。
そこで、この企業は、インドへの留職という越境学習を、ひとりの従業員で実施しました。
インドへ留職した従業員は、もともと、社会をよくしたいという想いや社会課題を解決する事業を創出したいという意欲をもっていたため、インドでの留職プログラムを経た結果、インドで、医療に関わる新事業の立ち上げをおこないました。
この結果、新事業を起ち上げた従業員に触発されて、仕事へのとりくみ方が変わった従業員、異動を希望した従業員など、前向きなアクションを起こす従業員がでてきており、越境学習のメリットを享受することに成功しています。[※1]
本業とは無関係な社会課題にとりくむ事例
ある家庭用品・化粧品の販売会社では、VUCA時代において、企業を変革させるためには、社員育成が重要だと認識していました。
そこで、この企業は、リーダー社員とプレリーダー社員を対象に、業界や年齢、役職などがまったく異なる社外の人と、本業とは無関係な社会課題などにとりくむ越境学習を実施しました。
この越境学習には、考え方が似ていて、コミュニケーションも難なくとれる自社という環境を抜け出させ、従業員自身の行動変容を促す目的があります。
企業は、越境学習をおこなった結果、従業員一人ひとりに主体的な気付きがうまれたり、本業にも活用できるブレない軸を見出せたりする効果があると実感しています。[※2]
コミュニケーション活性化に「Chatwork」
越境学習とは、従業員がワ―ケーションや留職をおこない、日常業務とは異なる環境で、新たな経験を積むことです。
越境学習の実施により、企業の成長につながったり、従業員のスキルアップがはかれたりなどのメリットが期待できるとして、さまざまな企業が注目しています。
越境学習中の従業員と、円滑なコミュニケーションをはかるツールとして、ビジネスチャット「Chatwork」の導入がおすすめです。
「Chatwork」は、社内外問わずに、オンラインで簡単にやりとりができるため、社内のコミュニケーション活性化はもちろん、ワーケーションや留職、出向中の従業員とも、スムーズなコミュニケーションを実現できます。
また、チャット機能だけでなく、ファイル管理機能も搭載されているため、越境学習中の写真を共有したり、業務内容をまとめた報告書を添付できたりもします。
また、「Chatwork」は、PCだけでなく、スマートフォンでも活用できるため、PCを利用しづらい状況下でも、円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。
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[※1]経済産業省「NECマネジメントパートナー株式会社|越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」
https://www.learning-innovation.go.jp/recurrent/case-study-01/
[※2]経済産業省「花王グループカスタマーマーケティング株式会社|越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」
https://www.learning-innovation.go.jp/recurrent/case-study-02/