エイジズムとは?企業が放置する悪影響や具体例・対策を解説

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働き方改革
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エイジズムとは?企業が放置する悪影響や具体例・対策を解説

目次

年齢による差別や偏見を「エイジズム」と呼びます。

たとえば、高齢者に対して「遅れている」「ITやデジタルに疎い」、若年層に対して「経験不足だ」「責任感がない」などの固定観念をもつこともエイジズムの一つです。

職場においてエイジズムを放置すると、雰囲気の悪化や従業員のモチベーション低下、英字ハラスメントの発生など、さまざまな悪影響が考えられます。

エイジズムの概念と具体例、企業が放置する悪影響や対策を解説します。

エイジズムとは?

エイジズムとは、年齢に基づく偏見や差別を指します。

エイジズムは、アメリカで老化と健康の関わりを研究していたロバート・バトラーが作った言葉といわれています。

たとえば、お年寄りに向けて、赤ちゃんに伝えるような言葉で話すケースもエイジズムの一つです。

WHO(世界保健機関)によると、エイジズムの根底には、年齢に関わる以下の要素があると考えられています。[※]

  • 差別
  • 偏見
  • 固定観念

また、WHOはエイジズムをなくすためには「教育活動」「世代間の介入」「政策と法律」など、社会全体からの取り組みが必要だと考えています。

エイジズム以外にも、性差別を意味する「セクシズム」を始め、人種差別を意味する「レイシズム」など、社会にはさまざまな差別問題があります。

肯定的なエイジズムもある

エイジズムは否定的な内容が多いですが、肯定的なエイジズムもあります。

たとえば、日本における肯定的なエイジズムには「古希(こき)」があげられます。

古希とは、数え年で70歳になった人を祝う行事で、長寿を祝うイベントとして親しまれています。

古希では年齢による区切りで祝いますが、相手の健康や幸せを願う意味合いも込められているため、否定的なエイジズムではありません。

上記のようにエイジズムのなかには、否定的な内容と肯定的な内容の両方が存在します。

職場でエイジズムが起きる理由

職場でエイジズムが起きる理由の一つとして、若手社員とシニア社員との間での給与格差があげられます。

従来、日本で取り入れられている年功序列制度では、長年勤めてきたシニア社員は若手社員と比べて給料を多くもらっている場合が多いです。

若手社員はシニア社員がどのような仕事をしているのか、把握しづらいことが多く、仕事内容が見えづらい部分から給料に対する不信感が生まれる場合があります。

ゆえに、若手社員から見たときに「実際にもらっている給料と、仕事の働きに見合っていないのではないか」という不満につながります。

また「老人は○○」「若者は○○」など、ステレオタイプ(固定観念)の偏見がエイジズムを助長させる恐れがあります。

>ステレオタイプに関する記事はこちら

職場で起きるエイジズムの具体例

職場ではさまざまな年齢層が集まるため、エイジズムが起きやすくなります。

  • 若手社員を否定するケース
  • 先輩社員を否定するケース
  • 医療・福祉現場で患者を否定するケース

職場で起きるエイジズムの具体例を見ていきましょう。

若手社員を否定するケース

「シニア社員が若手社員を否定する」というエイジズムがあります。

シニア社員が「若年は未熟」という偏見をもっている場合、若手社員に対して「若い奴は仕事ができない」と否定的に見てしまいます。

実際に、たとえ若手社員の技術が高い場合でも、若手社員というだけで重要なポジションになれないというケースもあります。

ほかにも「これだから○○世代は」など、世代の区切りで相手を決めつけて見てしまうという例もあげられます。

エイジズムは高齢者を否定するケースが多いですが、高齢者から若い世代に向けた年齢による差別もエイジズムの例に当てはまります。

先輩社員を否定するケース

若手社員がシニア社員を否定するというケースは、エイジズムによくある例としてあげられます。

若手社員が「シニア社員は古い人」という偏見をもっていた場合、シニア社員に対して「頭が固い」などと感じてしまいます。

ほかにも、若手社員が管理職の場合、再雇用されたシニア社員が「現場で働きたい」と希望しているのに、年齢を理由に「現場には向いていない」と判断し、希望の仕事できないケースもエイジズムによる偏見と言えるでしょう。

医療・福祉現場で患者を否定するケース

医療や福祉の現場では、医療従事者から患者を否定するというエイジズムが起きる例があります。

たとえば、看護師が「高齢の患者に向けて、赤ちゃんに話すような言葉で伝える」という例があげられます。

看護師からすると、高齢の患者が話を聞き取りやすいように、短い言葉でわかりやすく伝えているだけのケースも多いでしょう。

ただ、看護師に差別の意識がなかったとしても、年齢によって差別をしていると受け取ることもできるため、エイジズムの例に当てはまります。

相手を個人ではなく「高齢の患者」という一括りで見てしまうと、患者の尊厳を傷つけてしまう振る舞いになる可能性があるのです。

医療現場では、経営陣の管理側から従業員に向けて、エイジズムに関わる教育を働きかける必要があります。

エイジズムによる悪影響

年齢による差別を放置すると、企業にとってもさまざまな悪影響があります。

  • 職場の雰囲気が悪くなる
  • 仕事のモチベーションが低下する
  • エイジハラスメントになる可能性がある

エイジズムを放置する悪影響を見ていきましょう。

職場の雰囲気が悪くなる

エイジズムを放置すると、職場の人間関係がこじれて雰囲気が悪くなります。

たとえば、シニア社員が若手社員に向けて「最近の若者は仕事ができない」と伝えてしまった場合、若手社員は嫌な思いをします。

若手社員の尊厳が傷つけられてしまい、心理的なケアが必要になる場合もあるかもしれません。

職場では、お互いに配慮し合いながらコミュニケーションを図る必要があります。

職場の雰囲気が悪くなると意思疎通を図れなくなり、情報の抜け漏れからミスが起きやすくなります。

仕事のモチベーションが低下する

エイジズムの目を向けられた側は、自尊心を傷つけられてしまい、仕事のモチベーションや集中力がなくなりがちです。

社内全体の生産性が下がってしまうため、長期的に見たときに売上の低下につながる恐れもあるでしょう。

エイジハラスメントになる可能性がある

エイジハラスメントとは、相手の年齢や世代に関して差別することです。

ハラスメントをする側は、相手と仲を深めたいと感じて発言した場合でも、相手の心を傷つけてしまう言動につながるかもしれません。

たとえば、年齢によって「○○ちゃん」「○○くん」と使いわけて呼ぶといった例があげられます。

ほかにも、20~30代の社員に「そろそろ結婚するよね」「子どもはいつ作るの?」などと、年齢によるイメージで決めつけた言動も当てはまります。

エイジズムを含めて年齢による決めつけをおこなうと、相手の心身に悪影響を及ぼすことがわかっています。

また、最悪の場合は退職する可能性も出てくるため、優秀な人材が離職してしまう懸念があるなど、企業の経営面にも悪影響を及ぼすでしょう。

また、企業のイメージが悪くなった結果、社員から訴訟されるリスクや退職した人が企業の悪い口コミを拡散する可能性もあります。

年齢による差別を放置せず、職場に悪影響が出てしまう前に、経営陣や人事担当による対策や改善が重要です。

エイジズムをなくすための対策

企業において、年齢による差別をなくすには、エイジズムに関する知識を社内で周知することが大切です。

  • エイジズムに関わる研修をおこなう
  • 採用や昇進のプロセスを見直す
  • ダイバーシティの推進を目指す

具体的な対策を見ていきましょう。

エイジズムに関わる研修をおこなう

まずはエイジズムとは何かを知ってもらうためにも、社内で研修をおこないましょう。

年齢による差別は、無意識のうちにおこなわれているケースがあります。

企業の経営側から、エイジズムの概念や具体例、悪影響などをしっかりと伝えることで、シニア社員や若手社員全体にエイジズムに関わる認識が広まります。

何か発言しようとしたときも「もしかするとエイジズムではないのか」と、一歩踏みとどまることができるようになるでしょう。

また、社内にエイジズムがあるかどうかを知るために、簡単なアンケート調査やヒアリングを実施する方法もあげられます。

問題があったときは事実なのかを慎重に確認しながら、エイジズムの発言をした側に改善を求めるように伝えていきます。

ほかにも、社内に相談窓口を設置して意見を伝えやすい環境を作るなど、社員のケアができるような体制を整えてみてください。

採用や昇進のプロセスを見直す

エイジズムの対策としては、従来の採用方法や昇進のプロセスの見直しが効果的です。

たとえば、年功序列の方針と併用して、実力主義で評価する制度を導入する方法があげられます。

若手社員も「適切に評価される環境がある」という評価体制が理解されると、仕事の成果次第で出世や報酬アップが見込めるため、シニア社員に対する偏見をなくす働きかけにつながります。

また、従来のメンバーシップ型の雇用ではなく、新しくジョブ型の雇用で採用するといった方法もおすすめです。

シニア社員にとっても、若手社員に負けないように新しく勉強し直すなど、仕事の刺激をもらえるようになります。

ダイバーシティの推進を目指す

ダイバーシティの推進により、多様性がある組織を目指すことで、エイジズムをなくす働きかけにつながります。

社内に多様性がある文化を醸成するには、年齢によって意見を否定しないような教育の推進が重要です。

若手社員でも声を上げやすい雰囲気を作るなど、経営側から働きかけて社内で情報発信や意見交換をしやすい環境整備も必要となるでしょう。

>ダイバーシティに関する記事はこちら

エイジズムの概念を知って対策を実施しよう

エイジズムをなくすためには、まずはどのような具体例が年齢による差別に当てはまるのかを知ることが大切です。

職場では、企業側から研修をおこない、従業員に周知することで、エイジズムやエイジハラスメントをなくす働きかけにできます。

エイジズムが起きていないか、社内でアンケート調査や面談などでヒアリングし、現状把握から始めてみましょう。

アンケート調査や面談をおこなう際の方法としては、ビジネスチャット「Chatwork」を活用する方法もあります。

「Chatwork」では、WebアンケートのURLを記載して送信したり、ビデオ通話による面談の実施が可能です。

エイジズムに関わる研修の情報を伝えることもできるので、社内でさまざまな施策をおこなう際は「Chatwork」をご活用ください。

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[※]出典:WHO「Global report on ageism」
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/340208/9789240016866-eng.pdf?sequence=1

※本記事は、2024年6月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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