【社労士監修】生活残業とは?特徴や発生の原因、企業で対策する方法を解説

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働き方改革
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【社労士監修】生活残業とは?特徴や発生の原因、企業で対策する方法を解説

目次

残業は、過大な業務量や急な案件への対応で、所定の労働時間内に業務を完了できない場合に発生するものです。

しかし、従業員の中には残業代を稼ぐ目的で意図的に残業をする「生活残業」をおこなう人もいます。

生活残業は、人件費増加や生産性低下など企業に悪影響を及ぼす問題です。

本記事では、生活残業が発生する背景や原因について解説します。

また、生活残業が企業経営に与える影響と、生活残業の防止に向けた具体的な対策についても解説していきます。

生活残業とは

生活残業とは、生活費を補うために意図的におこなう残業を指します。

業務量や労働の効率性とは関係なく、家計を維持するために残業代を稼ぐ目的で長時間労働をする行為です。

ネットサーフィンや雑談で残業する「ダラダラ残業」や、タイムカードの不正打刻で残業時間を水増しする「カラ残業」などで残業代を稼ぐケースも見られます。

生活残業が横行すれば、生産性の低下や人件費の増大など、企業経営にも影響を及ぼします。

物価が高騰する中、生産性を向上せずに賃上げすることは困難です。

企業の持続的な発展を実現するためにも、生活残業の防止に向けた取り組みが企業には求められています。

生活残業の発生原因

生活残業が発生する主な原因は以下の3つです。

  • 基本給が不十分
  • 定時退社が評価されない
  • 残業がしやすい職場環境

それぞれの原因を解説します。

基本給の不十分

従業員が求めている基本給よりも低い金額が支給されている場合は、従業員が残業代で生活費を賄おうとしてしまいます。

とくに家庭を持っている従業員は生活費が多く必要になるため、生活残業を行う傾向にあります。

従業員が「残業代がなくなると生活が困窮するかもしれない」という心理が働いている企業では、基本給引き上げや手当の付与などの検討が必要です。

定時退社が評価されない

日本企業では、残業時間の長さが努力や忠誠度の証しとみなされ、高評価につながりやすい傾向にあります。

一方で、定時に退社する社員は、働きぶりや仕事熱心さを疑われがちです。

ときには「暇な人」「仕事をしていない」などとネガティブに評価され、昇進・昇給の機会が失われるリスクもあります。

こうした状況下では、評価を意識して残業をせざるを得なくなります。

定時退社を積極的に奨励する企業文化を浸透させ、生活残業の発生防止につなげる必要があります。

残業がしやすい職場環境

残業が事前の許可を必要とせず、従業員が自由に残業できる体制は生活残業が発生する1つの原因です。

残業に対するハードルが低いため、とくに仕事がなくても残業ができてしまう職場環境に問題があります。

また、企業側で従業員の勤務状況を適切に把握できておらず、従業員が意図的に業務時間を引き延ばすなどの行為をする可能性もあります。

企業は従業員の労務管理を徹底し、適正な労働時間の遵守を図らない限り、生活残業の発生を防ぐことはできません。

従業員ひとりひとりの実労働時間を適切に把握・管理する体制を構築することが不可欠です。

生活残業が企業にもたらす影響

生活残業の発生によって、企業に以下のような影響をもたらします。

  • 人件費の増加
  • 従業員のモチベーション低下
  • 法律違反

企業への具体的な影響について解説します。

人件費の増加

生活残業は、本来業務に必要な時間以上の労働をしていることを意味します。

企業側には、労働をさせた分の賃金を支払う義務があるため、結果として企業の人件費が増加します。

つまり、企業は従業員が生産性を発揮できない時間に対しても人件費を支払うということです。

企業は無駄な人件費の損失を避けるためにも、生活残業の対策は必要不可欠です。

従業員のモチベーション低下

生活残業の問題は、当事者だけでなく、ほかの従業員のモチベーションにも悪影響を及ぼす可能性があります。

「ダラダラと無駄に時間をかければ給与がもらえる」という状況では、高いモチベーションを保って働くことはできません。

また、ダラダラ残業して残業代を受け取る従業員がいれば、真面目に働いている従業員のやる気は失せてしまうでしょう。

こうした不公平性は、企業全体のモチベーション低下や生産性低下をまねく恐れがあります。

生活残業は、当事者だけでなく「公正な評価を受けられない」と感じるほかの従業員にも影響するため、注意が必要です。

法律違反

残業時間が法定上限を超えると、企業は罰則の対象となる可能性があります。

労働基準法では、時間外労働の上限を原則月45時間と定めており、特別な事情がない限りこの上限を超えることはできません。[※1]

また、企業によっては36協定で45時間より厳しい残業時間の上限を設けている場合があります。

生活残業を繰り返す従業員は36協定で定めた時間を意識せずに働いている可能性もあるため、企業は適切に労働時間を管理しなければなりません。

>みなし残業の上限に関する記事はこちら

企業で取り組める生活残業の対策方法

生活残業を防止するためには、企業側が現状を分析したうえでさまざまな取り組みを実施する必要があります。

具体的な対策として、以下があげられます。

  • 賃上げ
  • 残業を規制する社内制度の導入
  • 評価体制の見直し

それぞれの対策方法について詳細を解説します。

賃上げ

生活残業の最大の原因は、基本給で生活費を賄えないことにあります。

給与水準が低ければ低いほど、従業員は残業代による追加収入を求めざるを得なくなります。

そこで企業は、以下のような賃金改善策を検討する必要があります。

  • 企業全体の給与水準の引き上げ
  • 定期的な賃上げによる物価上昇への対応
  • 年功賃金からの脱却と職務・成果給の導入

適正賃金水準の確保と賃金制度を見直すことにより、残業に頼らなくてもある程度の生活ができるよう整備され、生活残業の防止につながります。

残業を規制する社内制度の導入

生活残業をなくすために、残業そのものを規制する社内制度を導入することも有効な手段です。

たとえば、月間および年間の残業時間に上限を設定することで、残業時間を抑制できるでしょう。

また、残業をする場合には事前に上司に承認を得なければならない「残業許可制」を導入している企業もあります。

「申請が面倒だから時間内に業務を終わらせてしまおう」という心理が働けば、業務時間内の生産性を向上させることにもつながります。

社内制度を導入した際には、就業規則に明記し、従業員へ周知することが欠かせません。

仕組みが形骸化しないようなルールづくりや、残業を許可する基準を制定しておくなど、運用面も整える必要があります。

評価体制の見直し

長時間残業を重視するのではなく、生産性や成果、働き方の質を適切に評価する仕組みを構築することも重要です。

評価基準や昇進基準の見直しを行い、残業に左右されない評価制度を構築しましょう。

また、評価制度の透明性や公平性の確保にも取り組み、従業員のモチベーションを維持できるような工夫も忘れてはなりません。

業務効率化や生産性を高める仕事をした従業員が高く評価されるよう見直しを行うことで生活残業をするメリットがなくなります。

生活残業問題への企業の取り組み事例

企業にとって悪い影響を及ぼす生活残業ですが、問題を解決するために企業が取り組んだ事例を2つ紹介します。

ノー残業デー

「ノー残業デー」とは、原則として残業を禁止する特定の日や曜日を設けることです。たとえば、毎週水曜日を残業ゼロの日として企業全体や部署単位で決定し、トップダウンで定時退社を促す方法などがあります。

「ノー残業デー」を設けることで、その日は従業員が家族との時間やプライベートの時間を確保できるようになります。

さらに、ノー残業デーによって、自然と早期退社の流れが生まれやすくなり、「残業が当たり前の文化」が徐々に解消されていくでしょう。

一方で、ノー残業デーの運用が実効性を持つためには、経営者や管理職のリーダーシップと従業員の理解が不可欠です。

時間外労働を前提とした業務量の見直しや属人化の解消などの課題を解決し、企業全体で取り組みましょう。

>ノー残業デーに関する記事はこちら

固定残業制度の導入

固定残業制度とは、あらかじめ一定時間の残業を前提として、その残業代を固定給に含めて支給する仕組みです。

固定残業制度によって、実際に残業をしなくても残業代が支給されるため、従業員が収入のために無理な残業をする必要がなくなります。

また企業側も、残業代が固定されている分、人件費が把握しやすくなるメリットがあります。

ただし、「いくら残業しても固定残業時間分しか払わなくてもいい」という制度ではありません。

固定残業分で設定した残業時間を実際の残業時間が上回っている場合は、別途上回った分の残業代を支払う必要があります。[※2]

また、「固定残業時間分は残業しなければならない」という考えも間違いです。残業は「業務上必要な場合」のみ可能なものであり、固定残業時間分を強要するものではありません。

業務効率化には「 Chatwork」がおすすめ

生活残業とは、業務量の多さや突発的な案件対応などとは関係なく、生活費を補うために意図的に行う残業のことです。

生活残業が横行すれば、生産性の低下や無駄な人件費の支出など、企業経営に悪影響を及ぼします。

賃金水準の適正化や無駄な残業を是正する対策を行い、生活残業の防止に努めましょう。

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[※1]出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
[※2]出典:厚生労働省「固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf

※本記事は、2024年7月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:北 光太郎(きた こうたろう)

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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