育成就労制度とは?技能実習との違いやメリットを解説【社労士監修】

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働き方改革
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育成就労制度とは?技能実習との違いやメリットを解説【社労士監修】

目次

少子高齢化の影響によって生産性人口が減少傾向にある日本において、外国人材は労働力として欠かせないものとなっています。

しかし、現行の外国人材向け技能実習制度には運用面での課題が指摘されており、より充実した環境整備が求められていました。

本記事では、技能実習制度に代わる新たな制度として可決・成立した「育成就労制度」について詳しく解説します。

技能実習制度との違いや、企業と外国人それぞれのメリット、導入にあたっての注意点などについて知りたい方はぜひご参照ください。

育成就労制度とは?

育成就労制度は、外国人労働者の人材確保と人材育成を目的とした新しい制度です。

この制度は、現行の技能実習制度に代わるものとして創設され、2024年6月に国会で可決・成立しました。

育成就労制度の主な目的は、原則3年間の育成期間中に、特定技能1号の水準に達する外国人材を育成することです。

従来の技能実習制度が技術移転による国際貢献を主目的としていたのに対し、育成就労制度は日本における人材育成と雇用の確保を目的としています。

[注1]

対象となる職種・分野

育成就労制度の対象となる職種は、特定技能制度と同様の16分野となる見込みです。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 工業製品製造業
  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 自動車運送業
  • 鉄道
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造
  • 外食
  • 林業
  • 木材産業

現行の技能実習制度では91職種が対象となっていますが、育成就労制度では特定技能制度とほぼ同じ職種・分野が対象となります。

[注2]

>介護業界の技能実習制度に関する記事はこちら

育成就労制度の施行時期

育成就労制度の施行時期については、国会での改正法審議が2024年4月からはじまっており、施行に向けた準備期間として3年が見込まれています。

そのため、改正法の施行は2027年になると予想されます。

ただし、移行期間を確保する必要があることから、事前広報をおこない、必要な経過措置が設けられる予定です。

[注1]

技能実習制度が見直された背景

技能実習制度が見直された背景には、「人材育成を通じた国際貢献」という制度本来の目的と、人材確保を目的とした運用実態との間に乖離が生じてしまったことがあります。

この乖離をなくすため、技能実習制度を解消して「育成就労制度」を創設することで、外国人材を労働力として育成・確保するという目的の明確化をはかっています。

また、技能実習制度では、労働環境や権利保護に関する問題がたびたび報告され、国際社会からも改善を求める声があがっていることも一因です。

くわえて、特定技能制度との整合性も課題となっていることから、外国労働者の受け入れ制度全体としての一貫性を高める必要性もありました。

これらの問題に対する解決策として、育成就労制度の創設が進められることとなりました。

育成就労制度と技能実習制度の違い

育成就労制度と技能実習制度には、以下の違いがあります。

育成就労制度 技能実習制度
目的 人材育成・確保 技術習得・国際貢献
期間 最長3年間 最長5年間
業種 特定技能と同様の16業種 特定技能の16業種以外も可
転籍可否 可能(一定の条件あり) 原則不可
日本語能力 技能検定試験基礎級等及び一定水準以上の日本語能力に係る試験への合格が必要 第1号技能実習・第2号技能実習のみ基準あり(日本語能力は不問)

育成就労制度と技能実習制度を比較すると、滞在期間は育成就労制度が最長3年間、技能実習制度が最長5年間であり、前者の目的は人材の育成・確保、後者の目的は技術習得と母国発展です。

また、育成就労制度では一定条件下での転籍(育成就労先の変更)が認められており、転籍の条件として、技能検定試験基礎級等及び一定水準以上の日本語能力試験への合格が必須です。

対して、技能実習制度では原則として転籍は認められず、第1号・第2号技能実習のみに基準があり、日本語能力は不問とされています。

さらに、対象業種については、育成就労制度が特定技能と同様の16業種に限定されるのに対して、技能実習制度では16業種以外の業種でも受け入れが可能です。

育成就労制度における企業側のメリット

育成就労制度を導入することで、企業側が期待できるメリットを2つ紹介します。

  • 日本語能力をもつ人材を確保できる
  • 長期的な雇用が可能になる

育成就労制度の導入を検討している企業の方は、ぜひご確認ください。

日本語能力をもつ人材を確保できる

育成就労制度では、日本語能力試験N5レベルの日本語能力が求められるため、企業は日本語で基本的なコミュニケーションができる外国人労働者の確保が可能です。

意思疎通がスムーズにできれば、安全管理や業務効率の向上が期待できるでしょう。

ただし、企業側で日本語の講習を受けさせるなどの日本語学習サポートが必要となるケースもあります。

長期的な雇用が可能になる

育成就労制度では、3年間の育成期間終了後に特定技能への移行が見込まれるため、より長期的な人材の雇用が可能になります。

企業は人材育成への投資を積極的におこないやすくなり、結果として、高度な技能を持つ人材の確保が期待できるでしょう。

また、長期的な雇用を前提とした採用や人材配置などの計画を立てることも可能です。

育成就労制度における外国人労働者側のメリット

育成就労制度の施行によって、外国人労働者側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

育成就労制度における外国人労働者のメリットを3点解説します。

  • スキルアップを目指せる
  • 費用負担を軽減できる
  • キャリアが選択できるようになる

3つのメリットを詳しく見ていきましょう。

スキルアップを目指せる

育成就労制度は人材育成を目的としており、外国人労働者は3年間で特定技能1号の水準まで技能を向上させることができます。

教育・研修を通じて実践的な技能と知識を習得できるため、キャリアアップの機会として活用できるでしょう。

また、日本の先進的な技術や作業手法を学ぶことで、将来的な選択肢も広がる可能性があります。

費用負担が軽減する

技能実習制度においては、渡航費用や送り出し機関への手数料は技能実習生自身が負担する必要がありました。

しかし、育成就労制度では、これらの費用を外国人労働者と企業で分担することが予定されています。

外国人労働者の費用負担が大幅に削減されると、より多くの外国人材の就労機会が得られることになるでしょう。

キャリアを選びやすくなる

現行の技能実習制度では、原則として転籍(育成就労先の変更)が認められていません。

そのため、職場環境が劣悪であったりすると、外国人労働者が就労先から失踪してしまうケースも見られました。

育成就労制度では、一定の条件を満たすことによって外国労働者の転籍が認められます。

転籍が認められる前提であれば、外国労働者側は職場の選択肢を増やすことができるでしょう。

一方で、企業側は外国人労働者が働きやすい快適な労働環境を整えることが課題となります。

育成就労制度の注意点

育成就労制度の施行にあたり、技能実習制度とは異なる注意点が想定されます。

ここでは、企業側が注意すべきポイントを解説します。

受け入れ可能な職種・分野が減少する

育成就労制度では対象分野が限定されるため、現行の技能実習制度と比較すると、受け入れ可能な職種が減少することが予想されます。

そのため、一部の業種では人材確保が困難になると予想され、企業は代替策の検討が求められることになるでしょう。

今後の議論によっては育成就労制度の職種が追加される可能性もあるため、育成就労制度の活用を検討している企業の方は、最新情報のチェックをおすすめします。

企業側の費用負担が増える

育成就労制度では、企業側も渡航費用や送り出し機関への手数料を負担する必要があります。

そのため、技能実習制度で外国人労働者を受け入れている企業にとっては費用負担が増えることが想定されます。

ただし、外国人労働者の受け入れ体制を整えた企業に対して、助成金が支給される可能性もあります。

今後の最新情報を確認しましょう。

[注1]

教育や研修を充実させる必要がある

育成就労制度の目的が人材育成であることから、企業は教育・研修を充実させる必要があります。

技能訓練だけでなく、日本語教育や安全教育、文化理解促進など、専門的な知識やノウハウの教育も求められるでしょう。

人手不足の企業によっては、教育や研修を充実させること自体が大きな負担となる可能性もあります。

まずは、外国人向けのマニュアル整備などから取り組みをはじめ、徐々に教育・研修をおこなっていきましょう。

転職や転籍が増加する可能性がある

育成就労制度では転籍が可能になるため、優秀な人材がより条件の良い企業へ移籍してしまう可能性があります。

企業は、労働条件の改善や職場環境の整備など、人材定着のための施策を講じる必要が出てくるでしょう。

また、待遇面で良い条件を求める外国人労働者は、賃金の高い都市部へ転籍してしまう可能性もあります。

地方で外国人労働者を受け入れる際には、より充実した労働環境を整備できるよう準備する必要があるでしょう。

>外国人材の受け入れを促進するダイバーシティマネジメントに関する記事はこちら

新制度の情報収集や導入準備にも「Chatwork」

育成就労制度は、外国人労働者の人材育成と確保を目的とした新しい制度として2024年6月に可決・成立しました。

2027年頃の施行が予定されており、企業側にはさまざまな準備が必要となることが想定されます。

とくに、日本語教育支援や教育・研修の充実、労働環境の整備など、従来の技能実習制度とは異なる対応が求められるでしょう。

このような新制度への対応には、関係者との密なコミュニケーションや情報共有が欠かせません。

ぜひビジネス専用のコミュニケーションツール「Chatwork」を活用して、円滑でスピーディなコミュニケーションの実現を目指してください。

「Chatwork」を活用することで、新制度に向けた情報収集や導入準備はもちろん、外国人労働者との日常的なコミュニケーションなども効率的に進められます。

また、グループチャット機能を活用すれば、制度に関する最新情報の共有や部門を越えた意見交換も円滑におこなえるため、育成就労制度の導入・運用をスムーズに進めることができるでしょう。

>Chatworkのグループチャットに関する記事はこちら

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[注1]出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001301676.pdf
[注2]出典:出入国在留管理庁「特定技能制度の受入れ見込数の再設定」
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※本記事は、2025年2月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:北 光太郎

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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