プロダクトライフサイクル(PLC)とは?メリットや段階別の戦略をわかりやすく解説
目次
「プロダクトライフサイクル」は、持続的な経営を目指す企業にとって、欠かせない理論です。
プロダクトライフサイクルの理論を正しく理解できると、戦略の最適化や、利益の最大化をはかれるというメリットがあります。
プロダクトライフサイクルの各段階の特徴や、戦略を解説します。
プロダクトライフサイクルとは
「プロダクトライフサイクル」とは、商品が市場に導入されてから撤退するまでの、一連のサイクルのことを指す言葉です。
「製品ライフサイクル」「商品ライフサイクル」とも呼ばれ、持続的な経営を目指す企業にとっては欠かせない理論といわれています。
一般的な商品・サービスは、この「プロダクトライフサイクル」をたどるとされているため、新商品や、既存のサービスを売り出す際の参考にされることが多いです。
プロダクトライフサイクルは5つのフェーズに分類されて考えられます。
それぞれのフェーズの特徴や戦略の立て方、プロダクトライフサイクルを知るメリットについてみていきましょう。
プロダクトライフサイクルを知るメリット
一般的な商品・サービスがたどるとされている「プロダクトライフサイクル」を知ることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
プロダクトライフサイクルを知るメリットについて解説します。
最適な戦略をたてられる
プロダクトライフサイクルを理解できると、利益が出るフェーズから、撤退するまでの流れがわかるため、最適な戦略を立てることができます。
たとえば、自社の製品が「成長期」のフェーズにいることがわかれば、売上が右肩あがりになることが期待できるフェーズなので、より投資をおこなうという戦略を立てられます。
プロダクトライフサイクルを知り、それぞれのフェーズに最適な戦略を立てられるようになると、予算投資のタイミングや、撤退の判断などがしやすくなるでしょう。
利益を最大化できる
プロダクトライフサイクルを活用して、最適な戦略を実行することで、利益の最大化を望めます。
たとえば、自社の製品が「成熟期」のフェーズに入った場合、製品に対する信頼度をあげるために、メディア露出をはかる・顧客ニーズにそったリブランディングをおこなってみるなど、最適な戦略をおこなうことで、利益の最大化がはかれます。
新たな製品やサービスを打ちだす際も、プロダクトライフサイクルの流れを理解できていると、利益最大化のチャンスを逃さず、売上を伸ばせるでしょう。
コスト削減につながる
プロダクトライフサイクルを知っていると、投資や撤退の最適なタイミングをつかむことができます。
たとえば、自社の製品が「衰退期」に入ったタイミングを把握できると、状況を顧みたうえで、素早く撤退の判断ができるため、無駄な費用をかけなくてすみます。
また、消費者ニーズが細分化された昨今では、物やサービスが生まれてから衰退するまでのサイクルが、短くなっています。
サイクルのフェーズを知って、自社の製品がいまどのフェーズにあるのかの見当をつけることができるようになると、不必要な宣伝費や、開発費などのコスト削減が実現できるでしょう。
プロダクトライフサイクル5つの段階の特徴
ここまでプロダクトライフサイクルを知るメリットについて解説してきました。
では、一般的な製品やサービスがたどるとされている「プロダクトライフサイクル」とは、実際にどのようなものなのでしょうか。
5つの段階にわけられるプロダクトライフサイクルの特徴をみていきましょう。
【画像】導入期
製品やサービスを市場に売りだした直後の時期を「導入期」といいます。
導入期は、世間からの認知度がほぼゼロの状態のため、認知度拡大のために、広告宣伝費を多く投資し、シェア拡大を優先しましょう。
投資に対しての収益を見込めないため、コストパフォーマンスが低いことが特徴のフェーズです。
成長期
導入期の初期投資が利益に反映されはじめ、売上が右肩あがりに上昇するフェーズを「成長期」といいます。
製品に対して投資をおこなうほど、利益が得られるため、コストパフォーマンスが抜群のフェーズですが、製品が市場に認知されはじめるとともに、市場規模も拡大していくため、競合他社が増えることも特徴です。
競合他社に利益をとられないために、自社のブランド価値を高めて差別化を図ることに力を入れましょう。
成熟期
製品が顧客の需要を満たすことで、利益の上昇が収まり、安定しはじめるフェーズを「成熟期」といいます。
製品の市場の成長がとまることで、消費者は、製品に対して、目新しさや新機能を求めるようになります。
そのニーズを満たせば、新たな市場が生まれ、成長期に入る可能性もありますが、新たな機能や斬新さがない場合は、競合他社が蔓延する市場のため、安定した利益水準を保つために価格を下げざるをえません。
成長期に利益をあげていた企業に既存顧客が集まってしまうため、特別な差別化を図らない限り、新たな参入者が大きな利益をあげ、シェアを拡大することは難しいでしょう。
飽和期
新規製品が出つくして、商品が飽和する状態を「飽和期」といいます。
「その製品を使いたい」という新しい消費者がいなくなることで、市場が縮小し、売上が減少していくことが特徴です。
このフェーズで利益をだすには、「リピーターの確保」が重要です。
リピーターを確保するために、製品の低価格や、ニーズに沿った製品改良が必要になります。
衰退期
市場自体が大きく縮小し、売上や利益、収益の両方が衰退するフェーズを「衰退期」といいます。
製品が衰退期にはいると、成長期・成熟期ほどの大きな利益をふたたび得ることは難しいため、企業は適切なタイミングで見切りをつけて、撤退する必要に迫られます。
製品を継続させたい企業は、既存製品のリブランディングや方向転換など、なんらかの形で、新しい市場を開拓する必要があるでしょう。
プロダクトライフサイクル5つの段階の戦略
プロダクトライフサイクルの、5つの段階の特徴をみてきましたが、利益を最大化させるためには、各段階に適した作戦を立てる必要があります。
プロダクトライフサイクルの5つの段階それぞれに最適な戦略をみていきましょう。
導入期の戦略
導入期の段階では、製品の認知度向上に注力しましょう。
導入期では、世間からの認知度がゼロの状態なため、広告宣伝費用に多く投資をして、製品を知ってもらい、シェアを拡大していくことが大切です。
また、導入期の段階では、「イノベーター」と呼ばれる、好奇心が強く、新製品が好きな人たちが、製品を購入してくれることが多いです。
好奇心が強いイノベーターの購買意欲に響かせるためには、製品の革新的な要素や、新しい要素を交えて宣伝することが効果的です。
製品にバグや不具合が多い時期でもあるので、真摯にフィードバックをうけ止め、製品の改良を進めましょう。
成長期の戦略
市場が拡大しはじめる成長期では、広報・PR活動に注力するとよいでしょう。
市場の拡大にともない、競合他社や参入者も増えてくる段階のため、競合に負けない独自の施策などで差別化をはかり、特別な強みをもてると、優位性を保つことができます。
成長期の主な購買層は、初期採用者の「ビジョナリー」と呼ばれる人たちです。
ビジョナリーは、流行に敏感なインフルエンサーなどが多いため、一度製品が好まれると、影響力の大きいSNSでシェアされ、一気に市場が拡大するでしょう。
また、成長期と次の段階である成熟期の間には「キャズム」と呼ばれるひずみがあり、この段階を超える前と後では、消費者の価値観が大きく異なることに注意が必要です。
成熟期の戦略
成熟期では、商品がある程度消費者に浸透し、利益上昇が落ち着きはじめる時期のため、製品の信頼性を高めることで、顧客を維持することが大切です。
また、他社にない特別な強みや優位性で差別化をはかり、顧客を獲得するのもよい方法です。
成熟期の購買の狙い目は、初期多数派で「実利主義」とも呼ばれる人たちです。
キャズムを超えた後の購買者は、導入期と成長期の購買者とは、考え方が異なり、買った後の利益や効果を重要視します。
成長期でシェアを拡大できていないと、価格競争に巻き込まれるのも、この時期です。
顧客を維持するために、製品の信頼感を高めることで実益をアピールする、リブランディングしてブランド価値を見直すなどで、顧客をとりこめるようにしましょう。
飽和期の戦略
飽和期では、市場が縮小しはじめ、その製品を新たに購入する人はほぼいなくなるため、既存顧客の維持や、リピーターの確保に注力しましょう。
飽和期の主な狙い目は、後期多数派で「懐疑派」と呼ばれる人たちです。
懐疑派の人たちは、元々ある概念や考え方を重視するため、新しい考えや製品に懐疑的です。
飽和機で利益をあげるためには、アフターサービスの充実や、顧客への個別アプローチなど、顧客に自社を選択してもらうような、コストパフォーマンスのよいサービスを提供することが大切です。
衰退期の戦略
衰退期では、市場がさらに縮小しているため、利益や売上もおおきく低下する段階です。
新しい製品や代替製品の登場により、市場全体のニーズも減少しているため、撤退して、新しい事業に着手するのが賢明な戦略になります。
しかし、売上を復活できそうな見通しがつく場合は、顧客を驚かせるような新しいコンセプトや概念の製品を売ることで、顧客を惹きつけられる可能性もあります。
既存の製品のままでは、利益をあげることは難しいため、方向転換やリブランディングなどのなんらかの方法を検討し、新たな市場を開拓しましょう。
プロダクトライフサイクルの注意点
ここまでプロダクトライフサイクルの特徴や戦略を解説してきましたが、すべての製品やサービスが、このサイクルに必ずしも該当するわけではないことに注意しましょう。
プロダクトライフサイクルは、導入期から衰退期までの、一連の製品のサイクルをあらわしたものですが、例外的に利益を維持し続ける製品もあります。
たとえば、以下の製品が該当します。
- 家電や家具、衛生用品、食材などの生活必需品
- ヒーターやカイロ、手袋、または、蚊取り線香、花火などの季節ごとの製品
このほかに、消費者を引きつける宣伝活動をおこなったことで、ブランドの認知度が高くなった製品や、ブランド自体にファンがついているブランド価値が高い製品も、利益をだし続けるため、プロダクトライフサイクルに該当しません。
製品の利便性だけでなく、ブランドや企業自体にファンがつくことも多いこの時代で、持続的に利益を創出するためには、ブランディングに力を入れることも、ひとつの手法でしょう。
プロダクトライフサイクルを意識した製品づくりを
製品の導入から衰退までの段階を示した「プロダクトライフサイクル」を知ることができると、各フェーズに適した戦略をたてられるため、利益の最大化がはかれるでしょう。
製品・サービスが衰退期にはいったら、適切なタイミングで撤退することが、企業利益を持続的に維持する方法にもなることを、認識しておきましょう。
各フェーズに適したマーケティング戦略を知り、利益の最大化を目指していきましょう。
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