他責思考とは?自責思考との違いや思考の特徴を具体例つきで解説【臨床心理士監修】
目次
失敗したりトラブルが発生したりしたときに、「他人や周囲の環境のせいだ」と思う人もいれば、「自分のせいだ」と考える人もいます。
これは、他責思考と自責思考といって、ビジネスシーンでも、話題にあがることが多い内容です。
それぞれの思考法の内容や特徴、メリット・デメリットを、具体例を交えてわかりやすく解説します。
他責思考・自責思考とは
失敗やトラブルが起こった際に、どのように対処していますか。
「○○が原因」「××さんが悪い」と考える人もいれば、「自分が悪い」「あの時の判断が間違いだった」と自分を責める人もいるでしょう。
これは、「他責思考」「自責思考」という異なる考え方のことです。
それぞれの思考の特徴について、みていきましょう。
他責思考とは
他責思考とは、他人や周囲の環境に、ものごとの原因や理由があるとする考え方です。
たとえば、人とケンカしたときに、「悪いのは自分ではなく相手のせいだ」と考える、「いい結果が出せなかったのは環境のせいだ」と考えるなどの例が、他責思考に該当します。
自責思考とは
自責思考とは、自分自身に、ものごとの原因や理由があるとする考え方です。
自責思考は、他責思考とは反対に、人とケンカをした場合は「悪いのは自分だ」と考え、うまくいかなかった場合は「原因は自分にある」と考えます。
他責思考と自責思考は、ものごとの原因や理由がどこに起因するのかという点で、それぞれ異なる考え方です。
ビジネスシーンで自責思考が求められる理由
ビジネスシーンにおいては、「自責思考」が求められる傾向が強いです。
ビジネスシーンでは、なぜ自責思考が求められるのでしょうか。
自責思考が求められる理由を確認していきましょう。
当事者意識が高いため
当事者意識とは、「自分自身にものごとの責任がある」という意識のことです。
仕事をするうえでは、仕事に対して無関心になるのではなく、積極的に取り組む姿勢が求められます。
そのため、「自分には関係ない」「誰かほかの人がやるだろう」などの当事者意識の欠如は、ビジネスシーンにおいては不利益をもたらす可能性があります。
当事者意識をもつためには、「この仕事の責任は自分にある」という自責思考が欠かせません。
学習能力が高いため
業務を円滑に進めるためには、新しい業務を覚えたり、よりよい仕事の方法を学び続けたりする姿勢が必要です。
自責思考があれば、自分の仕事に責任をもち、積極的に学ぼうという意識が働くようになります。
他責思考・自責思考の具体例
他責思考と自責思考の理解を深めるために、「営業成績が悪いとき」と「評価されないとき」という、ビジネスシーンにありがちなシーンを想定して、具体例を紹介します。
自分がどちらの考え方に近いか、確認してみてください。
営業成績が悪いとき
他責思考 | 雑務が多くて、営業に集中できない職場環境に問題がある。成績が悪いのも、上司が自分に仕事を割り振りすぎているせいだ。 |
---|---|
自責思考 | 業務を効率的に進める工夫をして、営業に集中できるようにしよう。上司にも業務負担について相談してみよう。 |
評価されないとき
他責思考 | 自分は頑張っているから、評価されないのは周りの人の見る目がないからだ。ちゃんとした評価基準がない環境も悪い。 |
---|---|
自責思考 | 評価されている人の特徴について、分析してみよう。自分の成果はしっかりと主張していくのもいいかもしれない。 |
他責思考が生まれる理由
日常生活はもちろん、ビジネスシーンにおいても、他責思考が生まれてしまうケースはよくあります。
なぜ他責思考は生まれてしまうのでしょうか。
- 仕事を「こなす」思考になってしまう
- 指示まちになってしまう
他責思考が生まれる原因を確認していきましょう。
仕事をこなすようになってしまう
日々、目の前の仕事を繰り返していると、「自分はただ仕事をこなしてさえいればいい」という考えに陥りやすいです。
また、このように日常の業務に慣れが生じてしまうと、よりよい業務の進め方について考えず、現状維持をするようになります。
ただ仕事をこなすようになってしまうと、自分の仕事をこなす以外の事柄に対して、「なぜ自分がやらなければならないのか」「失敗の原因を考えるのは面倒」などの他責思考に陥りやすくなってしまうでしょう。
指示まちになってしまう
指示まちの人は、自分の仕事の責任は、自分ではなく、指示をした人にあると考えがちです。
また、指示まちの人は、そもそも仕事に対するモチベーションも低く、責任感も低い傾向にあります。
そのため、職場においても指示まちの人は、他責思考に陥りやすいでしょう。
他責思考をもつ人の特徴
上述した通り、他責思考はビジネスシーンでも発生しやすいです。
では、どのような人が、他責思考を抱きやすいのでしょうか。
- 当事者意識が低い
- 責任感がない
- ミスを繰り返す
他責思考をもつ人の特徴についてみていきましょう。
当事者意識が低い
他責思考の人は、ものごとに対して、「自分ごとである」という意識が薄いです。
当事者意識が低い人は、何事に関しても、「自分も関係している」という認識がないため、他責思考になりやすいです。
責任感がない
他責思考の人は、責任感がない傾向があります。
「自分がやらなければならない」といった意識がないと、トラブルが起きたときにも、他人や環境のせいにしがちです。
ミスを繰り返す
他責思考の人は、ミスを繰り返すという特徴もあります。
ミスの原因が、自分にはないと考えているため、ミスが起こったとしても、自分の行動を振り返らず、同じ失敗を繰り返してしまいます。
ミスを減らすには、原因は自分にあり、どうすればいいかを主体的に考える必要があるでしょう。
他責思考のメリット・デメリット
ビジネスシーンで嫌厭されがちな他責思考には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
他責思考のメリット・デメリットについて解説します。
他責思考のメリット
他責思考がベースにあると、過剰に責任感を抱えずに、客観的な視点で原因や理由を考えることができます。
トラブルや失敗の原因は、本当に自分ではなく、他人や環境が影響している場合もあります。
また、自分のせいでもあるけれど、他人や環境のいずれにも原因があるというケースも考えられます。
このような場合にも、自責思考が強すぎると、客観的に事実を判断する前に、自責の念が出てきてしまうときがあるでしょう。
客観的な事実を見極めるためには、ある程度他責思考をもっている必要もあるでしょう。
他責思考のデメリット
他責思考は、自分自身を改善しようとしない点がデメリットです。
また、ミスを繰り返してしまったり、「あの人はいつも人のせいにしてばかりいる」などの印象が広がったりしてしまうと、周囲からの印象が悪化してしまいます。
適切に事実を捉えた振り返りは、ビジネスパーソンにとって必要な意識です。
自責思考をもつ人の特徴
他責思考の人とは、反対の考え方をもつ自責思考の人には、どのような特徴があるのでしょうか。
ビジネスシーンでも重宝されることが多い、自責思考をもつ人の特徴について、紹介します。
当事者意識が高い
自責思考と当事者意識は似た概念で、いずれも「責任は自分にあり、自分から積極的にとりくもう」という姿勢があります。
当事者意識が高い人は、さまざまな物事に主体的に取り組んでくれるため、ビジネスシーンでも重宝されるでしょう。
責任感が強い
責任感が強い人は、ものごとの結果に対して、「こうなった原因や理由は自分にある」と考える傾向があります。
自責思考と責任感の強さも、関連の強い概念であり、自責思考をもつ人は、責任感も強い傾向にあります。
責任感が強い人は、ものごとを前進させようとする意識が強く、ビジネスシーンで頼りにされることも多いでしょう。
ミスから学ぶ
自責思考の人は、ミスや失敗の原因が自分にあると考えます。
そのため、ミスや失敗をすると、「どうすればミスを減らせるのか」「なぜ失敗してしまったのか」をしっかりと振り返り、そこから学ぶ意識が高いのが特徴です。
ミスや失敗をそのままにせず、原因や理由を振り返ることで、同じ失敗を繰り返さず、より効率的に進めることができるようになるでしょう。
自責思考のメリット・デメリット
ビジネスシーンで求められることが多い自責思考にも、注意すべきデメリットがあります。
メリットを大きくするためにも、自責思考のメリット・デメリットを確認していきましょう。
自責思考のメリット
自責思考をもっていると、ものごとの原因や理由は、自分にあると考えるようになり、振り返りをおこなうようになります。
その結果、スキルアップにつながったり、周囲からの信頼につながったりなどのメリットを期待できます。
また、失敗の理由やトラブルの原因を追求するなかで、ものごとの本質を捉え、自己成長のきっかけにもなるでしょう。
自責思考のデメリット
自分に責任や原因があると考える自責思考は、さまざまなメリットがある一方で、強すぎる自責思考は、危険性もあります。
過剰に自分を責めてしまうようになると、ストレスを感じやすくなったり、不必要に自分を追い詰めてしまったりなど、メンタルに悪影響が生じる可能性があります。
また、自責思考だけでは、他人や環境に原因があるケースなどで、状況を正しく分析できない恐れもあります。
適切な自責思考は必要ですが、過剰にならないように注意する必要があるでしょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
他責思考 | ||
自責思考 |
自責思考の注意点
ビジネスシーンで求められることが多く、重宝もされる自責思考ですが、前述した通り、強すぎてしまうと、強いストレスを感じる原因となり、自分自身を苦しめてしまうでしょう。
悪化すると、うつ病などのメンタル疾患につながる場合もあるので、注意が必要です。
原因や責任の所在は、主観的な視点だけでなく、客観的な視点からも捉えるようにして、自責思考は、適切に活用するようにしましょう。
適切な自責思考を育む方法
最後に適切な自責思考を育む方法を3つ紹介します。
- 自分を褒める
- 自分を許す
- 責任の範囲を認識する
自分にあった方法で、自責思考を育みましょう。
自分を褒める
人間は、失敗やミス、自分のダメな部分には自然と注目しがちで、いい部分や成果に対しては、なかなか注目できません。
適切な自責思考を育むためにも、意識的に自分のいい部分や結果に注目して、自分を褒めるようにしましょう。
自分の成果や結果を認めることができるようになれば、過度にストレスをためずに、自信喪失のリスクも軽減できます。
自分を許す
適切な自責思考を育むためには、「自分のせいだ」と自責するだけではなく、失敗した自分を許すことも大切です。
うまくいかないことや失敗してしまうことは、だれにでもあります。
自分のコンディションやおかれている状況によっては、失敗のリスクが高いケースもあるでしょう。
ビジネスシーンに限らず、常に万全な状態でのチャレンジは難しく、限られたリソースのなかで行動しなければならない場面もあるでしょう。
なんでもかんでも自分のせいにせず、時には自分を許し、冷静に状況を把握して、改善につなげることが、適切に自責するうえでは重要です。
責任の範囲を認識する
責任は、他人や環境など、自分以外に起因するケースもあるでしょう。
そのため、どこまでが自分の責任の範囲なのかを適切に把握することも、ミスやトラブルを振り返るうえでは重要です。
自分の責任、他人の責任、環境の責任を正しく認識することで、過剰なストレスを回避し、よりよい成果や改善につなげられるでしょう。
自責と他責のバランスをとりましょう
ビジネスシーンでは自責思考が求められる場面が多く、他責思考が嫌厭されるケースが多いですが、それぞれの考え方には、メリットもデメリットも存在しています。
たとえば、自責思考が過剰になってしまうと、適切な振り返りができなくなってしまったり、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があったりします。
どちらの考え方も、適切に育む姿勢が大切です。
心身の健康を保ちつつ、最大の成果をだすためにも、他責思考と自責思考をバランスよく使うようにしましょう。
ビジネスシーンで、ミスやトラブルを減らすためには、適切な情報共有をはかり、「言った言わない問題」がおこらないように対策をするとよいでしょう。
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記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。