アメーバ経営のメリットとは?特徴やデメリット、導入方法を解説
目次
アメーバ経営は、組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団にわけ、独立採算制で運営する経営管理手法のことで、京セラの名誉会長である稲森和夫氏によってうみだされたものです。
アメーバ経営は、導入すると、事業スピードの加速や幹部候補を育成できるとして、昨今注目を集めている経営手法のひとつです。
アメーバ経営の意味やメリットとデメリット、成功させるポイントを解説します。
アメーバ経営とは
アメーバ経営とは、京セラコミュニケーションシステム株式会社の名誉会長である稲森和夫氏の企業経営における実体験からうまれた経営管理手法です。
アメーバ経営は、企業の経営を全社員が関わっておこなうという考えのもと、組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団にわけ、小集団ごとにリーダーを任命し、独立採算制で運営する経営手法です。
組織をアメーバにわけることで、小集団ごとの成果や収支を明確にすることができるため、社員の経営者意識を高めることができると考えられています。
アメーバ経営によって、全員参加経営を実現している京セラコミュニケーションシステム株式会社は、1959年の創業以来、赤字をだしていないそうです。
アメーバ経営の特徴
組織をアメーバにわけて運営する「アメーバ経営」は、どのような特徴があるのでしょうか。
アメーバ経営の3つの特徴を解説します。
- 部門ごとの独立採算制
- 時間あたりで採算を算出
- 経営情報を日々共有
それぞれの項目を詳しくみていきましょう。
部門ごとの独立採算制
アメーバ経営は、組織を5人から10人ほどの小さな部門にわけ、部門ごとに収支の採算をとる独立採算制を導入しています。
独立採算制を導入することで、部門ごとの売上や経費などの収支が明確になるため、社員は日々の活動の成果を実感しやすくなるでしょう。
また、アメーバ経営は、月が終わると、部門ごとの収支をただちに集計し、全社員に共有するため、企業に貢献できている部門や利益が少ない部門が一目でわかり、社員の企業への貢献意欲や責任感を高められる効果があります。
時間あたりで採算を算出
アメーバ経営は、時間あたりで採算を算出するため、一般社員でも経営に関する数値を理解しやすかったり、部門規模に左右されずに収益性を比較できたりします。
部門ごとに「採算表」と呼ばれる帳簿を作成し、収益から支出を引いた残高を部門メンバーの総労働時間で割った数値が、部門の成果である「時間あたり付加価値」です。
「時間あたり付加価値」を確認すると、部門ごとの収益性がわかるため、社員が自部門の収益性を高める方法を試行錯誤するなど、業務改善に向けた行動を起こすきっかけにすることができるでしょう。
経営情報を日々共有
アメーバ経営は、部門ごとに毎日概算の収支が共有されるため、自部門の目標までの進捗状況を把握しやすいです。
進捗状況によっては、目標を達成するために売上を増やしたり、経費を減らしたり、生産性をあげて、作業時間を減らしたりといった利益を増やす方法を、リーダーを中心に、部門内で話し合い、実践することが求められます。
経営情報を日々共有するには、経営情報をリアルタイムで集計し、リーダーが理解しやすいような形にして提供する部署が必要です。
アメーバ経営の目的
特徴的な経営手法である「アメーバ経営」は、どのようなことを目的に導入されるのでしょうか。
アメーバ経営をおこなう目的を解説します。
全従業員に経営者意識をもたせる
部門ごとの独立採算制を導入したアメーバ経営は、従業員一人ひとりに経営者意識をもたせることができるメリットがあります。
経営者意識をもった従業員は、日々漠然と業務をおこなうのではなく、目標達成や企業の成長のためにすべきことを考え、能動的に活動することができるようになるでしょう。
全従業員に市場の変化を意識させる
アメーバ経営は、従業員の市場の変化に対する意識を高める効果も期待できます。
各部門が、変化する市場に迅速に対応し、利益を求めた適切な意思決定をおこなうためには、メンバー一人ひとりが市場の変化に敏感になる必要があります。
アメーバ経営によって、全従業員が市場の変化を意識する大切さを学べれば、さらなる企業成長につなげることができるでしょう。
アメーバ経営のメリット
アメーバ経営を導入することで得られるメリットを解説します。
- 従業員の意識を向上させられる
- 幹部候補を育成できる
- 事業スピードを加速させられる
3つの項目をそれぞれ解説します。
従業員の意識向上
アメーバ経営は、全従業員が経営者意識をもったり、市場の変化に敏感になったりするため、従業員それぞれが、企業の経営に参加しているという意識をもつことができます。
従業員が、企業の経営に貢献していると感じることができると、モチベーションの向上も期待でき、さらなる企業成長が期待できるでしょう。
幹部候補の育成
アメーバ経営は、部門ごとにおいたリーダーに、企業を経営するような権限を与えて部門運営をさせるため、リーダーの経営者としての能力が向上したり、経験を積めたりするようになります。
能力や経験を得たリーダーは、企業の経営に携わる幹部候補や経営者候補として、企業にとって重要な人材になるでしょう。
事業スピードの加速
独立採算制を導入し、リーダーに大きな権限を与えているアメーバ経営は、部門ごとに意思決定がおこなえるため、物事に迅速に対応できるようになり、事業スピードを加速できるメリットがあります。
また、従業員それぞれが経営者意識をもてると、業務にも主体的に取り組めるようになるため、迅速な問題解決も実現できるでしょう。
アメーバ経営のデメリット
アメーバ経営の導入を検討する際は、デメリットや注意点も把握しておく必要があります。
- セクショナリズムが発生する恐れ
- 導入ハードルが高い
- ワークライフバランスが崩れる恐れ
それぞれの項目を詳しく解説します。
セクショナリズムが発生する恐れ
セクショナリズムとは、部門同士が協力せずに、自部門の利益ばかりにこだわり、排他的な傾向となる状態のことを指す言葉です。
独立採算制を導入しているアメーバ経営は、各部門を独立させる経営手法のため、各部門がお互いの収支を気にし、競争が激化すると、セクショナリズムが発生する恐れがあります。
しかし、アメーバ経営の理想は、各部門がライバルとなり、適度に刺激しあって利益を追求することなので、経営者層は、部門間でトラブルが発生しないように、注意を払う必要があります。
導入ハードルが高い
アメーバ経営は、組織を小集団に分割したり、独立採算制を導入したりなどの事前準備が必要になるため、導入に時間がかかります。
また、アメーバ経営は、従業員に経営者意識をもってもらう意識改革も求められるため、導入ハードルが高い傾向があります。
アメーバ経営の体制を整えないまま導入しても、従業員が主体的に動けず、アメーバ経営の効果を得られないため、導入する際は注意が必要です。
ワークライフバランスが崩れる恐れ
アメーバ経営は、部門ごとの収支が見え、従業員の貢献度もわかりやすくなるため、従業員によっては利益を出すために時間外労働をしたり、有給休暇をとらなくなったりする恐れがあります。
ワークライフバランスが崩れた働き方になってしまうと、従業員の心身に負荷がかかり、場合によっては休職や離職につながるかもしれません。
そのため、経営者層は、従業員のワークライフバランスが崩れないように配慮し、フォローをおこなうことが大切です。
>ワークライフバランスを実現するメリットに関する記事はこちら
アメーバ経営の導入方法
アメーバ経営の導入方法を、3つのステップにわけて解説します。
- ステップ(1):組織をアメーバ化する
- ステップ(2):経営情報や収支を可視化する
- ステップ(3):リーダーに権限委任をする
導入を検討する際の参考にしてみてください。
ステップ(1):組織をアメーバ化する
まずは、組織を5人から10人ほどの小集団にわけ、アメーバ化します。
アメーバ化ができたら、部門ごとにリーダーをおき、従業員一人ひとりに経営者意識をもたせる取り組みを開始していきましょう。
ステップ(2):経営情報や収支を可視化する
アメーバ化が完了したら、部門ごとの経営情報や収支を可視化し、共有をおこないましょう。
算出した時間あたり付加価値を日々共有することで、従業員は、目標の進捗状況を確認できるため、目標達成に向けた適切な行動をとれるでしょう。
ステップ(3):リーダーに権限委任をする
リーダーに選任した人材に、事業計画の作成や実績、労務管理、予算の執行などの経営権限を委任して、経営者としての責任感をもたせたり、迅速な意思決定をおこなえたりする体制をつくりましょう。
リーダーへ権限を委任することで、経営者層へ決裁を求める過程を省略できるため、スピード感ある業務をおこなえるようになります。
アメーバ経営を成功させるポイント
アメーバ経営を成功させるには、従業員の方向性を統一したり、従業員の働きやすさを考えたりすることが大切です。
アメーバ経営を成功させるためのポイントを3つ紹介します。
- 企業フィロソフィを徹底する
- ワークライフバランスを大切にする
- モチベーション維持を大切にする
3つのポイントをそれぞれ確認していきましょう。
企業フィロソフィを徹底する
アメーバ経営を成功させるには、企業フィロソフィを徹底することが重要です。
企業フィロソフィの「フィロソフィ」とは、「哲学」を意味する言葉で、アメーバ経営を提唱した稲森氏は、「人間として正しい判断基準」と定義しています。
企業は、重要な物事を決めたり、判断したりする際の価値観やルールなどを定義した「企業フィロソフィ」を定め、従業員に徹底を促すことで、従業員の方向性を統一でき、企業のあるべき姿を目指せるようになるでしょう。[注]
ワークライフバランスを大切にする
アメーバ経営は、部門間や個人間の収支や貢献度が視覚化されるため、休暇をとらずに働く従業員が出るなど、従業員のワークライフバランスが崩れる恐れがあります。
従業員が健康的に働ける環境が整備できていないと、企業の持続的な成長を目指すことは難しいです。
そのため、経営者層は、従業員のワークライフバランスを保てるように、十分に配慮することが大切です。
モチベーション維持を大切にする
アメーバ経営で、従業員が能動的に行動し、利益をあげるには、モチベーション維持を大切にすることが求められます。
たとえば、インセンティブを設けたり、従業員の業務工程や成長を評価したりといった体制が考えられるでしょう。
モチベーション維持の施策は、部門間で不満が出ないように公平を意識することが大切です。
社内コミュニケーション活性化に「Chatwork」
アメーバ経営は、組織をアメーバ化し、独立採算制を導入して全従業員が経営者意識をもって取り組む経営管理手法です。
アメーバ経営には、メリットがある一方で、セクショナリズムが発生したりワークライフバランスが崩れやすかったりといったデメリットもあります。
導入を成功させ、円滑に運用するためにも、紹介した3つのポイントに配慮するようにしましょう。
アメーバ経営の円滑な運用には、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。
ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット形式で気軽にコミュニケーションをとれるツールのため、収支や目標の共有など、報連相を密におこなうことができます。
また、ファイル添付機能もあるため、作成した企業フィロソフィをグループチャットで共有し、従業員に周知徹底することも可能です。
アメーバ経営の円滑な運用や、社内コミュニケーションの活性化にも便利な「Chatwork」をぜひご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注]出典:京セラ「経営哲学」
https://www.kyocera.co.jp/philosophy/
※本記事は、2023年9月時点の情報をもとに作成しています。