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サンクコスト効果とは？ビジネスでの例やポイント、活用方法などご紹介
目次
ビジネスの現場では、客観的に見ると判断ミスと思われる意思決定がなされることがあります。
誤った意思決定がなされるのは、サンクコスト効果が影響しているかもしれません。
サンクコスト効果について学び、その影響を考慮して意思決定をすれば、無駄を回避した経営ができるでしょう。
この記事では、サンクコスト効果の意味から具体例、ビジネスへの活かし方までご紹介します。
サンクコスト効果とは
サンクコスト効果とは、事業や物事に時間や金銭を投資すると、仮に投資した時間や金銭を取り戻せなくても、投資した時間や金銭に固執してしまう傾向を指します。
経済学では、サンクコストは「埋没費用」とも呼ばれ、すでに支出や負担したものの回収できない費用を指します。
ビジネスだけでなく、日常生活でもサンクコスト効果は見られるので、思い当たる節がある人もいるのではないでしょうか。
たとえば、映画を見始めて途中で「面白くない」と気づいたとき、どのように行動すべきかを考えてみましょう。
本来であれば、すでに支払ったコストは変えられないため、将来の予測や目標に基づいて判断しなければなりません。
つまり、面白くない映画を見続けるのは時間の無駄だと判断し、席を立つのが合理的と言えるでしょう。
しかし、すでに支払ったチケット代に固執し、最後まで見てしまう人も多いはずです。
こうした行動の背景にあるのが、サンクコスト効果です。
ビジネスでは、投資した費用や労力を取り戻そうとして、さらに追加で費用や労力を投資し、損失を増やしてしまうケースもあるため、注意が必要です。
コンコルド効果との違い
サンクコスト効果と似た言葉に、コンコルド効果があります。
コンコルド効果とは、超音速ジェット機「コンコルド」の開発が由来となった言葉です。
イギリスとフランスはコンコルドの共同開発に乗り出したものの、途中で採算がとれないと判明しました。
それにもかかわらず、開発が進められ、巨額の損失が生じたのです。
コンコルド効果は、サンクコスト効果によって合理的に判断ができなかった代表例といえるでしょう。
コンコルド効果はサンクコスト効果とは異なり、実例に基づいた言葉ですが、サンクコスト効果と同じ意味として用いられています。
サンクコスト効果の心理的背景
サンクコスト効果は心理的な要因によって引き起こされます。
そのため、サンクコスト効果を理解するには、背景にある心理的な要因を学ぶことが大切です。
代表的な心理的要因をお伝えするので、ぜひご一読ください。
- 損失の回避
- 非現実的楽観主義
- 自己責任
- 無駄の回避
損失の回避
人は得るときよりも失うときのほうが、心理的な影響を強く受ける傾向にあります。
たとえば、1000円をもらうよりも1000円を失うほうが、より印象や記憶に残ります。
したがって、多くの人はできる限り損失を避けようという意識が働きがちです。
新規事業が失敗しそうになっても資金を投資し続けるのは、新規事業を中断して損失を計上するよりも、投資し続けて業績を回復させたいと考えるためです。
非現実的楽観主義
サンクコスト効果の背景には、自分はほかの人ほど大変な目に遭わないだろうと楽観的な判断をしてしまう心理があります。
この楽観的な判断は、必ずしも客観的な証拠に基づいたものではありません。
投資をした際に、含み損が出ていても、企業の経営状況や見通し、市場の情勢などを考慮せず、「いつかは利益が出るだろう」と楽観的に判断するのも、非現実的楽観主義と呼べます。
自己責任
資金や人材の投資を判断した人が責任を感じた結果、サンクコスト効果の影響を受けるケースもあります。
ほかの人が始めた事業であれば客観的に判断できるので中止の判断は下しやすいものの、自分が始めた事業はなかなか中止を判断できません。
特に責任を感じている場合、成功するまで継続してしまう例も多く見られます。
無駄の回避
「無駄を避けたい」「無駄にしたくない」という心理は、サンクコスト効果につながりがちです。
人気店で食事をするために行列に並ぶと、どんなに待っても行列から抜けてほかのお店に行くことができません。
なぜならば、「並んだ時間を無駄にしたくない」「ほかの人に時間を無駄にしたと思われたくない」と考えてしまうからです。
サンクコスト効果の例
ビジネスの場でも、サンクコスト効果は見られます。
費用や人材、時間などを無駄にしないためにも、サンクコスト効果がどんな場面で起きやすいのかを知っておく必要があります。
代表例をお伝えするので、参考にしてください。
- 広告
- 新規事業参入
- 採用活動
- 教育研究
広告
サンクコスト効果の代表例は、広告費です。
たとえ広告費をかけても、適切な媒体やタイミングで出稿しなければマーケティングの効果は見込めません。
しかし、これまでの広告費を無駄にしたくないという考えから、ずるずると広告を出し続けてしまいがちです。
もし広告出稿を取りやめて、マーケティング戦略を見直さなければ、さらに費用を無駄にしてしまうでしょう。
サンクコスト効果の影響を考慮し、客観的に広告効果を見極めることが大切です。
新規事業参入
新規事業への参入も、サンクコスト効果の影響を受けやすい例といえるでしょう。
なぜならば、新規事業の参入には資金や時間、人材など多くのコストが発生するためです。
投資したコストに見合うだけのリターンを期待し、事業中断の判断を避ける傾向にあります。
また、ステークホルダーから「失敗した」と見なされたくない気持ちも、新規事業からの撤退を妨げます。
結果的に、撤退よりも継続を選びがちです。
採用活動
採用活動には、求人広告の掲載費や説明会の会場利用料、採用パンフレットの作成費など多額の費用が発生します。
仮に自社の求める人材に合致した応募者がいなくても、採用活動に要した費用を無駄にしないために、無理やり人材を採用するケースもサンクコスト効果と呼べるでしょう。
人材を採用してもしなくても、採用活動にかかった費用は戻ってきません。
自社に合わない人材を採用するデメリットについて検討したうえで、採用の可否を判断すべきです。
教育研究
新商品の開発や従業員の教育もサンクコスト効果を受けやすいといえます。
商品の開発や改良には多額の資金が必要です。
一定の資金を投入したにもかかわらず、狙い通りの商品が完成しない場合や、完成しても売れ行きが芳しくない場合には経営判断が求められます。
すでに投入した資金は戻ってこないので、投入した資金に固執せずに次の目標に向かうのが合理的な判断ですが、必ずしも合理的に判断できるとは限りません。
新規事業を開始するために、従業員に資格取得やスキルの習得を促すケースも同様です。
教育に費用を投じているため、新規事業が振るわなくても事業存続を判断してしまいがちです。
サンクコスト効果を防ぐポイント
サンクコスト効果は意思決定を誤らせ、企業の損失を拡大するおそれがあります。
ここからはサンクコスト効果を防ぐ方法をお伝えするので、意思決定の際にお役立てください。
- サンクコスト効果について知る
- 事業の撤退ラインを決める
- 第三者の意見を参考にする
- 機会費用に注目する
- 適切なKPIを設定する
サンクコスト効果について知る
サンクコスト効果を防ぐには、まずサンクコスト効果について知らなければなりません。
もしサンクコスト効果を知らなければ、自然と損失回避や非現実的楽観主義に陥ってしまうでしょう。
サンクコスト効果について正しく理解し、意思決定する際にはサンクコスト効果を思い出し、影響の有無を客観的に確認してください。
もし自身が客観的に判断できていないと感じたら、専門家に意見を聞いたり、意思決定に必要なデータを集めたりして判断材料をそろえ、再度判断することをおすすめします。
事業の撤退ラインを決める
客観的に事業の撤退を判断するためにも、あらかじめ事業の撤退ラインを決めておきましょう。
撤退の基準となる指標には、事業の企業に対する貢献度を示す貢献利益や、投資に対するリターンを示すROIなどがあります。
競合他社や市場の状況、自社のリソースも撤退ラインの判断材料にすべきでしょう。
多額のコストを投入していたとしても、撤退ラインに達していれば撤退を決断してください。
第三者の意見を参考にする
事業がスムーズに進んでいないケースでは、担当者は責任を感じています。
そのため、バイアスがかかった目で事業を見てしまい、サンクコスト効果の影響を受けてしまいがちです。
撤退が最善の選択肢であっても、撤退の判断が下せません。
自身の判断に偏りが生じていると気づいたら、同僚や上長、アドバイザーなど第三者に意見を聞きましょう。
客観的な判断をしやすくなります。
そのためにも、いざというときに相談できるよう、日頃から周囲と良好な関係の構築に努めてください。
機会費用に注目する
機会費用とは、複数の選択肢がある場合に、ある選択肢を選んだことで逃してしまった最善の選択肢の価値を指します。
収益が見込めない事業に費用を投入し続けるのをやめ、別の事業に費用を投入すれば、多くの利益を得られるかもしれません。
事業の継続を判断する場合、その事業の過去の実績や費用などに目を向けがちです。
しかし、比較対象としてほかの事業にも目を向けてください。
機会費用に注目すれば、合理的な判断をしやすくなるでしょう。
適切なKPIを設定する
事業を始める前に適切なKPIを設定すると、中断や撤退の判断材料が得られるため、客観的な意思決定が可能となります。
KPIは職種や業種によっても異なりますが、新規顧客商談数や受注率、広告コンバージョン率や平均顧客単価、リピーター率などを用いるケースが多いでしょう。
月次や四半期ごとなどにKPIを測定し、目標達成が困難だと判明した場合は戦略の見直しや中断、撤退を選択してください。
ビジネスにおけるサンクコスト効果の活用
サンクコスト効果は経営判断を誤らせる可能性がある一方、マーケティング施策で活用すれば売上増加や販売促進にも寄与します。
ビジネスでサンクコスト効果を活用している例をご紹介しましょう。
- 無料お試しサービス
- 定期購入
- 会員のランク付け
- 付録・特典
無料お試しサービス
サブスクリプションサービスの無料お試しサービスは、サンクコスト効果の活用例といえます。
無料であれば、ユーザーの利用に対するハードルは下がります。
試しに使っているうちに、ユーザーは操作に慣れてくるでしょう。
無料お試しサービス期間が終了する頃には、「せっかく使い方を覚えたから、手放したくない」と思うようになり、有料で契約する可能性があります。
オンライン上のサービスに限らず、習い事のスクールや教室のお試しレッスンも同様です。
定期購入
定期購入は、月間契約より年間契約のほうがお得であると示し、サンクコスト効果を活用した仕組みです。
途中で解約を検討しても、契約期間が残っていれば、「無駄にしたくない」と思い解約を思いとどまります。
解約率を低下させるのに有効なので、雑誌やソフトウェアなどのマーケティング施策として用いられています。
会員のランク付け
サンクコスト効果の活用例として、会員のランク付けも挙げられるでしょう。
ECサイトなどでは、購入額やポイント数で会員のランクが決まる仕組みを導入しています。
会員に対して「あと〇円分購入すればランクが上がり、特典がもらえます」と示せば、会員は今まで使ってきたお金を無駄にしたくないと考え、追加で商品を購入します。
店舗で配布しているポイントカードも同じです。
ポイントがたまることで割引を受けられるサービスの場合、ユーザーはためたポイントを無駄にしないために店舗に通い続けます。
付録・特典
雑誌を毎月購入し、付録を集めるとひとつのアイテムが完成するタイプの商材も、サンクコスト効果を活用した例です。
途中で購入をやめてしまうと、アイテムは完成せず、集めた付録が無駄になってしまいます。
雑誌や商品についている応募券を集めて応募すると、商品やサービスが手に入るケースも同様です。
応募者のなかには、商品やサービスに魅力を感じている人だけでなく、せっかく集めた応募券を無駄にしたくないと感じている人もいるでしょう。
サンクコスト効果を理解しビジネスに活用しよう
ビジネスでも日常生活でも意思決定をする際に、サンクコスト効果の影響を受ける場面は多くあります。
影響を受けた結果、経営判断を誤り、さらに費用を無駄にしてしまった経験を持つ人もいるでしょう。
サンクコスト効果の影響を防ぐには、サンクコスト効果を正しく理解し、判断する際にサンクコスト効果の影響の有無を確認してください。
もしサンクコスト効果によって客観的な判断が難しい場合は、周囲に相談しましょう。
そのためにも、相談できる関係を日頃から築きあげる必要があります。
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