経営を強くする!コスト管理の全知識と押さえるべき実践ポイント

目次
中小企業にとって、限られた予算の中で事業を成功させるためにはコスト管理が不可欠です。売上が順調でも、コスト管理が甘ければ利益は残りません。プロジェクトの赤字や予算超過につながることもあります。
一方で、コスト管理を徹底すれば収益性が高まり、不況時にも耐えられる筋肉質な経営体質を築けます。
この記事では、コスト管理の基本と重要性から、具体的な手法やツール活用術までをわかりやすく解説します。
今さら聞けない「コスト管理」の基本と重要性
まずは、改めてコスト管理の意味とその重要性について、基本から押さえておきましょう。
コスト管理とは
コスト管理とは、企業やプロジェクトの活動にかかるさまざまな費用を計画どおりに抑えるよう管理することです。
具体的には、事業やプロジェクトに必要なコスト(人件費・材料費・設備費など)を見積もって予算を策定し、その予算内に収まるよう実行段階で支出をモニタリング・調整する一連のプロセスを指します。
言い換えれば、決められた予算内でプロジェクトを成功させるために費用を管理することと言えます。
このようにコスト管理は、無駄な出費を省きつつ必要な支出は確保して、事業の利益を守るための重要なマネジメント手法です。
なぜコスト管理が重要なのか
コスト管理が重要なのは、企業の利益に直結するからです。適切にコストをコントロールすれば、売上が同じでも利益率を高めることができ、限られた資金を効率よく活用できるようになります。
また、経済環境が不安定で収益が伸び悩む状況では、コスト管理はこれまで以上に重要だと言われています。
資本力が小さい中小企業ほど、一度のキャッシュフローのミスで倒産につながるリスクが高く、コスト管理は安定経営の生命線です。
大企業のように潤沢な資金調達手段がない分、手元資金を守りつつ利益を積み上げるには徹底したコスト管理が不可欠です。
コスト管理が行き届いていれば無駄な支出を減らせるだけでなく、浮いた資金を将来の投資に回すこともでき、競争力強化や事業成長にもつながるでしょう。
コスト管理の主な種類と分類
コストにはさまざまな分類方法がありますが、代表的なものとして固定費と変動費があります。
ここでは、それぞれの特徴と管理のポイントを解説します。
固定費
固定費とは、売上高や生産量の増減にかかわらず毎月一定額で発生するコストです。
典型例としては、オフィスや工場の家賃、正社員の給与(基本給)、リース料、減価償却費などが挙げられます。
固定費は事業規模に関係なく発生し続けるため、売上が落ち込んでも支払いが必要であり、収益を圧迫しやすい性質があります。
したがって固定費の管理では、無駄な固定費をできるだけ削減・圧縮することが重要です。
たとえばオフィスの縮小や賃料交渉、不要なサブスクリプションサービスの解約などで固定費を見直すと、毎月の固定的な出費が減り収益改善に直結します。
変動費
変動費とは、売上高や生産量に応じて変動するコストです。
製品を1つ作れば材料費や外注費がその分だけかかり、売上がゼロなら発生しない種類の費用を指します。
具体的には、原材料費、部品の仕入れ費、歩合給や出来高払いの人件費、販売手数料、輸送費、製造に伴う光熱費などが変動費です。
変動費は売上に比例して増減するため、事業が拡大すればそれにつれて費用も増えますが、逆に売上が減少すれば費用も抑えられるという柔軟性があります。
変動費の管理では、単位あたりのコストをいかに下げるかがポイントです。
たとえば、仕入れ先の選定見直しやまとめ買いによる単価交渉、生産プロセスの改善による材料ロス削減などの取り組みで、製品ひとつひとつの変動費を削減できれば、利益率(粗利率)の向上につながります。
コスト管理が疎かになると起こる経営リスク
では、コスト管理をおろそかにすると企業経営にどんなリスクがあるのでしょうか。
主なリスクをいくつか見てみましょう。
プロジェクトの赤字
プロジェクト型のビジネスにおいて、コスト管理不足は深刻な赤字プロジェクトを生み出す原因になります。
特に進行中にコストをリアルタイムで確認・調整しなければ、小さな予算超過が複数積み重なって、プロジェクト終了時には回復不能な赤字となってしまう恐れがあります。
プロジェクトの赤字はその案件単体の損失に留まらず、会社全体の利益やキャッシュフローを圧迫し、最悪の場合ほかの健全なプロジェクトの利益を食いつぶしてしまうこともあるため注意が必要です。
予算超過
コスト管理が甘いと、部署ごとの経費や事業全体の支出が当初の予算を超過してしまうリスクが高まります。
計画段階で立てた予算に対して支出がオーバーする状況が常態化すると、資金繰りに行き詰まり、経営の安定性が揺らぎます。
予算超過が発生すれば、その穴埋めのためにほかの予算を削らざるを得なくなったり、急遽融資を受ける必要が生じたりするでしょう。
頻繁に予算オーバーが起こると、計画そのものの信頼性も失われ、社内外の信用低下につながります。
収益性の低下
コスト管理の欠如は、長期的に見て企業の収益性を低下させます。
どれだけ売上高が伸びても、支出が増えすぎれば手元に利益は残りません。
コストが膨らむ体質を放置すれば、営業利益率やROE(自己資本利益率)といった指標も悪化し、投資余力が失われます。
収益性が低いままでは価格競争にも耐えられず、競合他社に対する優位性を発揮できません。
また銀行からの融資や投資家からの評価にもマイナスとなり、結果的に成長のチャンスを逃してしまう可能性があります。
顧客満足度の低下
コスト管理の不備は、巡り巡って顧客満足度の低下を招くことがあります。
たとえば、コスト超過が頻発するあまり利益が出なくなると、その穴を埋めるために製品やサービスの値上げに踏み切らざるを得ません。
しかし値上げは顧客の不満につながり、場合によっては離反を招くこともあるでしょう。
また、コスト削減に追われるあまり製品の品質やサービスの水準を落としてしまえば、顧客からの信頼が損なわれます。
さらに、コスト管理ができていない企業は新しい商品開発や顧客サービスに投資する余裕もなくなり、結果として提供価値の陳腐化を招く恐れもあります。
このように、コスト管理の不備は顧客への提供価値を損ね、満足度低下・ブランドイメージ悪化といった形で現れることがあります。
従業員のモチベーション低下
経営の無駄が多いと、そのツケは従業員のモチベーション低下という形でも表面化します。
たとえば、コスト圧迫によって本来支給したかった賞与や昇給が見送りになったり、社員研修や福利厚生費が削減されたりすれば、従業員は自分たちが大事にされていないと感じ士気が下がる場合もあります。
また、プロジェクトのコスト超過が原因で急な予算カットや人員削減が行われると、現場には過度な負荷がかかり不満が募ります。
あるいは無駄な経費が多い非効率な職場環境そのものが、従業員の働きがいを削ぐケースもあるでしょう。
「どうせうちの会社は無駄遣いばかりだ」という諦めムードが広がれば、生産性も下がり優秀な人材の離職にもつながります。
健全な職場環境と従業員エンゲージメントを維持するためにも、適切なコスト管理によって公正で効率的な経営を実現することが重要です。
コスト管理を成功させるための具体的なステップと方法
では、効果的にコスト管理を行うには具体的にどうすればよいでしょうか。
ここでは、コスト管理を成功させるためのステップを4段階で紹介します。
- 現状把握:コストの見える化と分析
- 目標設定:現実的かつ具体的な削減目標を立てる
- 実行計画の策定と施策の実施
- 効果測定とレビュー、改善活動の継続
【ステップ1】現状把握:コストの見える化と分析
まずは現在のコスト構造を正確に現状把握することから始めます。
具体的には、過去の財務データや会計帳簿を洗い出し、どの部門・プロジェクトにどれだけコストがかかっているかを一覧化しましょう。
人件費・材料費・設備費・外注費など費用科目ごとに細分化し、コストの全体像を見える化します。
たとえば、エクセルで月次の経費一覧を作成したり、会計ソフトから費用明細レポートを出力したりして、支出項目と金額を洗い出します。
そうすることで、「何に一番費用がかかっているのか」「どの経費が売上に見合っていないのか」といった分析が可能です。
現状を数字で客観的に把握することで、次のステップである目標設定や施策立案の精度が高まります。
【ステップ2】目標設定:現実的かつ具体的な削減目標を立てる
現状分析に基づき、次にコスト削減・最適化の目標を設定します。
目標は漠然と「コストを減らす」ではなく、たとえば「半年で固定費を10%削減する」「仕入原価を年間△△万円削減する」など、具体的な数値で定めることがポイントです。
目標設定の際には、非現実的に高すぎるハードルを設けないよう注意しましょう。
無理な目標は現場に過度な負担を強いるだけでなく、達成できなかったときに士気が下がることもあります。
過去の実績や業界平均値も参考にしながら、ストレッチ目標と現実性のバランスを取ることが大切です。
また、目標は会社全体のものだけでなく、部門別・プロジェクト別にも細分化すると効果的です。
各部門に対して「〇〇費を○%削減」など具体的な目標を提示し、責任者を明確にすることで、組織全体でコスト意識を共有できます。
【ステップ3】実行計画の策定と施策の実施
目標が定まったら、それを達成するための具体的な実行計画を策定し、各種施策を実施します。
まず、コスト削減のために考えられる施策をブレインストーミングし、優先順位を付けましょう。
たとえば、仕入れ先の見直し、在庫管理の適正化、光熱費削減、人件費の適正化など、さまざまな角度から施策を洗い出します。
施策ごとに、削減見込額と導入にかかる労力を評価し、実行する順番を決めます。
実行計画を立てたら、各施策に担当者と期限を設定し、計画表やアクションリストに落とし込み、計画に沿って速やかに施策を実行に移しましょう。
重要なのは、コスト削減を経営層だけの号令で終わらせず、現場の従業員一人ひとりが主体的に取り組めるようにすることです。
コスト管理は会社全体のプロジェクトだと捉え、横断的なチームを作って推進するのもよいでしょう。
必要に応じて外部の専門家のアドバイスを仰ぐことも検討しながら、実行段階ではスピード感を持って取り組むことが大切です。
【ステップ4】効果測定とレビュー、改善活動の継続
施策を実施した後は、必ず効果測定と振り返り(レビュー)を行います。
定期的にコストの数値をチェックし、設定した目標に対してどの程度達成できているかをモニタリングしましょう。
月次・四半期ごとに予算実績を確認し、コスト削減額や利益率の改善状況を数値で把握し、目標未達の場合はその原因を分析します。
計画自体に無理があったのか、施策の実行が不十分だったのか、あるいは外部環境の変化による想定外のズレなのか、その原因によって次に講じるべき対策も変わります。
重要なのは、改善活動を継続することです。
一度コストを削減して終わりではなく、定期的にPDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を回してさらなる最適化を図ります。
たとえば毎月の定例会議でコストに関するKPIを確認し、新たな課題が見つかれば次月の計画に組み込む、といった習慣をつけるとよいでしょう。
継続的なコスト改善の文化が根付けば、従業員一人ひとりが常に「もっとよいやり方はないか」と考えるようになり、会社全体の効率が高まります。
小さな改善の積み重ねがやがて大きなコスト競争力となり、経営の安定性と持続的な成長に寄与していくのです。
コスト管理に役立つフレームワークと思考法
コスト管理を進めるにあたって、役立つ考え方や分析のフレームワークがあります。
ここでは、特に知られている「ABC分析」と「バリューエンジニアリング(VE)」という2つの手法について簡単に紹介します。
ABC分析によるコストの優先順位付け
ABC分析は、管理対象となるコスト項目を重要度や金額の大きさによってA、B、Cの3つのグループに分類し、管理の優先順位を付ける手法です。
例えば、総コストの大部分を占める上位20%の項目をAグループ、次に重要な30%をBグループ、残りの50%をCグループとします。
この分析を行うことで、限られたリソースを最も効果的なコスト削減活動に集中させられます。Aグループのコスト項目に重点的に取り組むことで、全体のコスト削減効果を最大化できるでしょう。
バリューエンジニアリング(VE)によるコストの最適化
バリューエンジニアリング(VE)は、製品やサービスの価値(Value)を損ねることなくコストを最適化していく手法です。
具体的には、対象となる製品や業務が持つ機能を洗い出し、そのひとつひとつについて代替案を検討します。
たとえば製品開発において、ある部品の素材をより安価なものに変更しても求められる性能に影響がないのであれば、その置き換えによってコストダウンが図れます。
VEのポイントは、単に「コストを削る=品質を落とす」ではなく、「必要十分な品質を保った上でコストを削る」ことにあります。
そのため、VEを実践するときは単なる経費カットの視点だけでなく、「この機能は本当に必要か?」「別の方法で同じ価値を提供できないか?」といった発想でブレインストーミングを行います。
価値に着目してコストを削減するVEの考え方は、安易なコストダウンで品質を損なうリスクを避け、顧客満足とコスト削減の両立を目指せる点で有用と言えるでしょう。
コスト管理を円滑に進めるためのツールとChatwork活用術
最後に、コスト管理に役立つ代表的なツールと、ビジネスチャット「Chatwork」を活用したコスト管理術について紹介します。
コスト管理に役立つ代表的なツール
コスト管理に関連して利用される主なツールには、以下のようなものがあります。
会計ソフト
会計ソフトは、日々の取引を仕訳入力し、自動で帳簿や財務諸表を作成できるソフトウェアです。
売上や経費を科目ごとに集計・可視化できるため、各費用項目にいくら支出しているか一目で把握できます。
近年はクラウド型の会計ソフトも普及しており、銀行明細や領収書を自動取り込みして仕訳を自動化できるなど便利な機能が充実しています。
エクセルでの手作業に比べ入力ミスが減り、リアルタイムにデータを共有できるため、コスト管理の土台としてまず導入すべきツールと言えるでしょう。
予算管理システム
予算管理システムは、各部署やプロジェクト単位で予算を編成し、予算と実績の差異を追跡・分析するための専用システムです。
売上・原価・経費・利益といった主要項目について、予算対比を自動で算出してグラフ表示したり、部門ごとの予算消化率をリアルタイムでモニタリングしたりといった機能を備えています。
エクセルで行っていた煩雑な予実管理を効率化でき、予算超過している科目をアラートで知らせる機能などにより予算遵守を徹底しやすくなります。
限られた資金を計画的に配分し無駄遣いを防ぐという点で、予算管理システムは非常に有効なツールです。
ERP
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の基幹業務を統合的に管理するためのシステムです。
会計・販売管理・在庫管理・購買・生産管理・人事給与など、複数の業務機能がひとつのプラットフォーム上で連携しています。
ERPを導入すると、部門ごとにバラバラだったデータが統合されるため、会社全体のコスト状況を一元的に把握できるようになります。
たとえば、販売管理と在庫管理がつながっていれば、売上に対する在庫コストや倉庫費用の割合をリアルタイムで確認できますし、購買と会計がつながっていれば仕入れコストの支払いタイミングを把握してキャッシュフローを予測することも容易です。
このようにERPは広範囲なコスト情報を網羅できる点が強みですが、その分システムが大規模で導入コストも高くなりがちです。
近年ではクラウド型の中小企業向けERPも登場しており、必要なモジュールだけ導入することでコストを抑えつつ恩恵を受けることも可能になっています。
自社の業務が多岐にわたり手作業管理に限界を感じている場合は、ERP導入によるトータルなコスト管理も視野に入れてよいでしょう。
ビジネスチャット
ビジネスチャットツールは、社内外のメンバーと手軽にコミュニケーションを取れるチャット型のプラットフォームです。
ビジネスチャットを活用すると、メールより迅速に情報共有や意思決定ができるため、コスト管理上のコミュニケーションも格段に効率化します。
たとえば「この出張費、予算オーバーしそうですがどう対応しますか?」といった確認をチャット上で行えば、その場で上長が承認判断を下せます。
わざわざ会議を開いたりメールの返事を待ったりする時間が減るため、素早い対応でコスト超過の芽を小さいうちに摘むことができるほか、チャット上に議論や決定事項の記録が残るのも利点です。
「誰がいつどの経費を承認したか」「どのようなコスト削減アイデアが出たか」といった履歴を後から追えるため、情報伝達ミスが減りガバナンス向上にもつながります。
テレワークや拠点分散が進む中、ビジネスチャットは場所を問わずリアルタイムに連携できる基盤として、現代の企業には欠かせないツールとなっています。
Chatworkを活用する
Chatworkは、コスト管理において情報共有や業務効率化を支える有効なビジネスチャットツールです。
経営者や経理担当者、各部門の責任者が参加するグループチャットを作成することで、売上や経費の状況、コスト削減施策の進捗をリアルタイムで共有でき、迅速な意思決定が実現します。
また、タスク機能を活用すれば、施策ごとの担当者や期限を明確にでき、進捗管理や抜け漏れの防止にも役立つでしょう。
ファイル共有機能を使えば、予算表や会議資料を常に最新版として一元管理でき、履歴から過去の資料も簡単に検索できます。
さらに、日常の相談や確認もチャットで気軽に行えるため、判断のスピードが上がり、無駄なコスト発生の抑制にもつながります。
少人数体制の中小企業でも、Chatworkを活用すれば効率的なコスト管理が実現できるでしょう。
戦略的なコスト管理で、変化に強い筋肉質な経営体質へ
コスト管理は単なる経費削減ではなく、将来を見据えた経営戦略の一環です。
筋肉質な経営体質とは、無駄なコストという脂肪を削ぎ落とし、必要な資源を要所に投入できる強靭な企業体質を指します。
コスト意識を組織全体で高め、継続的に改善を重ねていけば、景気の変動や予期せぬトラブルにも強い会社を築くことができます。
そのためにも、本記事で紹介した基本や手法を参考に、ぜひ今日から自社のコスト管理を見直してみてください。
戦略的なコスト管理によって、変化に負けない強くしなやかな経営体質を手に入れましょう。
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