今、中小企業がとるべきIT戦略とは?政府の「IT新戦略」から考える

目次
IT戦略という言葉はずいぶん前から使われてきた言葉ですが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響によりその重要性が増しています。
コロナ禍でより重要視されるようになったデジタル化とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
そして、中小企業が生き残るために、どのようなIT戦略を講じるべきなのでしょうか。
ここでは、コロナ禍によって社会や価値観はどう変わったのか、それにともない政府の取り組みや支援はどのように変わるのかを2020年7月に内閣官房IT総合戦略室から公開された資料「IT新戦略の概要〜デジタル強靭化社会の実現に向けて〜」を参考にご説明します。そして具体的なデジタル活用のアイディアについてもご紹介します。
政府のIT新戦略で示された感染症がもたらした社会・価値観の変容
コロナ禍を経験し、経済や行政、働き方、医療、教育、防災など、ほとんどの分野において、IT戦略の重要性があらためて見直されています。感染拡大を防止するために対面や接触を極力避けなければならない状況の中、多くの分野で課題が浮き彫りになったためです。それぞれの分野でどのような影響があり、それによりどのような社会・価値観の変容が生じているのでしょう?
【新型コロナによる社会・価値観の変容】[※1]
影響 | 変容 | |
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経済・生活 |
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行政 |
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働き方 |
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医療 |
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教育 |
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防災 |
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経済活動、企業活動における政府の取り組みの方向性
前述のとおり、新型コロナウイルスの影響で社会経済活動は大きく変化する必要があることがわかりました。
そこで、政府は働き方改革、学び改革、くらし改革、「防災×テクノロジー」による防災対応、社会基盤の整備、規制のデザインという6つの取り組みの方向性を定めました。ここでは中小企業の企業活動に関連が深い、働き方改革、くらし改革、社会基盤の整備における取り組みの方向性についてご紹介します。
働き方改革
感染症拡大防止のために、外出や通勤の自粛が求められ、急遽在宅勤務をはじめた、もしくは検討した企業も多かったのではないでしょうか。しかし、この状況下でのコスト負担の増加や、ITに関する知見不足は、テレワーク導入のハードルになっています。
そこで政府は、中小企業に対するテレワーク導入経費の補助や、専門家による無料相談対応などの取り組みを強化し、各地域における中小企業支援窓口の設置や、地域内で相互連携を促進し、支援することを検討しているようです。
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今後、感染症の流行を前提に、遠隔・分散型の社会での経済活動が必須となる中で、このような働き方を実現するためには、同時に既存の制度や慣行の見直しも必要になってきます。例えば、書面でのやり取りや押印、対面を求めるコミュニケーションなどです。6つの取り組みの方向性のうちの一つ、「規制のリデザイン」では、これらの規制や制度、慣行の見直しに取り組むこともふれられています。
くらし改革
くらしの中の様々な仕組みや手続のデジタル化・オンライン化を加速することも言及されています。
特に経済活動や企業活動においては、請求書や領収書に関する手続きや、税・社会保険手続きにおいてデジタル化がなされていないことが企業や生活者の負担になっていると課題定義されており、請求書や領収書のデジタル化、キャッシュレス化、および税・社会保険手続きの電子化や自動化の促進が検討されています。
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社会基盤の整備
社会基盤の整備の方向性としては、行政や地方自治体のさらなるデジタル化の推進はもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症によって一部断絶が起きているサプライチェーンの強靭化にも言及がされています。農業・食品産業の生産性向上やサプライチェーンの効率化、また、物流についても、労働者の安全を確保しながら、生産性を向上していく取り組みが必要とされています。様々な業界で非接触/非対面で安全性を確保をしながら、生産性向上を実現していくために、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の必要があり、抜本的な転換に向けての検討が開始されるようです。
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加速するIT戦略遂行 今から始めるデジタル活用のアイディア
このような価値観のアップデートが起こる中、中小企業は今後どのようなIT戦略を立案・策定するべきなのでしょうか?そこでここでは、今後重要となるであろうIT戦略のテーマと、デジタル活用のアイディアをご紹介します。
テーマ1.従業員の働き方改革
テレワークを実現するためのリモートアクセス環境やコミュニケーションツールの整備
人と人とが直接接することを防ぐためには、働く場所をわける必要があります。テレワークで社員が自宅で仕事をすれば、社員同士や取引先、顧客などとの接触を減らせます。
テレワークの環境を整えるためには、PCやスマートフォンなどの整備、テレビ会議用アプリなどの統一、通信費用などが必要です。さらに、社外秘情報や顧客情報などを流出させないために、セキュリティ対策や社員のセキュリティ教育も重要です。
テレワークが定着すれば、通勤時間が減り、実質的な稼働時間が増え、遠くの支社や営業所とのやり取りも容易になります。テレワークの推進はコロナ対策になるだけでなく、企業の生産性の向上にもつながるでしょう。
テーマ2.業務コストの削減
ペーパーレス化/請求書・領収書のデジタル化
紙媒体の契約書や資料を使うと、手渡す際に人同士の接触が避けられません。お互いが電子媒体で情報を共有すれば、極力非接触でビジネスを進められるでしょう。
また紙媒体を使うと、印刷やホチキス止め、ファイリング、使用済み資料の破棄など、人の手間が生じます。用紙代や印刷費だけでなく、人件費もかさみます。そこでペーパーレス化を進めれば、これらのコストを削減できるでしょう。請求書や領収書もデジタル化すれば、郵送にかかるコストの削減にもつながるでしょう。
テーマ3.事業継続計画や災害対策の強化
離れた場所でも情報共有を可能にするクラウド化の推進
社内の情報をクラウド化することで、遠く離れた場所からも情報へアクセスすることができます。社員が出社しなくても、社内で情報共有でき、人と人との接触を減らしながら事業を継続することを可能にします。
またクラウドサービスのサーバーは地震や火災、停電に強い構造のデーターセンターに設置されています。自社でデーターを保管するよりも安全にデーターを保存することができます。
クラウド化の推進は、テレワークと同時に対応したい施策です。クラウド環境が整えば、よりテレワークをしやすい環境を整えられます。
Withコロナ時代のIT戦略を成功させるために
各分野において政府はデジタル化の具体的な取り組みを推進するでしょう。
政府の取り組みの中には、中小企業のIT戦略を支援する内容のものもあるため、ここでご紹介した内容も含めて、最新情報を把握しておくことをおすすめします。
また、2020年4月に実施された「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」[※2]では新型コロナウイルスの感染対策を受け、約7割の企業がIT戦略遂行を「加速する」と回答しています。
IT戦略の具体的なアイディアとして、テレワーク、クラウドの推進、ペーパーレス化などの具体的な取り組みをご紹介しました。新型コロナ対策に役立つだけでなく、企業の生産性の向上やコスト削減に役立つ取り組みばかりです。ツールや手段は多岐に渡りますが、自社の課題や目的に沿ったIT戦略を策定し自社のさらなる成長と事業継続を実現しましょう。
[※1]
出典:IT新戦略の概要〜デジタル強靭化社会の実現に向けて〜
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20200715/siryou8.pdf
[※2]
出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」(2020年4月調査)
https://www.itr.co.jp/wp-content/uploads/2020/06/COVID-19_05.pdf