ストレスチェックとは?義務化の背景や実施手順、注意点をわかりやすく解説

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働き方改革
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ストレスチェックとは?義務化の背景や実施手順、注意点をわかりやすく解説

目次

ストレスチェック制度は、厚生労働省により事業者に義務付けられた制度です。

そのため、違反をした場合罰則の対象となります。

ストレスチェックが義務化された背景やストレスチェックの手順、違反しないための注意点について解説します。

ストレスチェック制度とは?

ストレスチェック制度とは、従業員が自身のストレス度合いを知ることで、ストレスに対処したり場合によっては医師の診察を受けたりし、「うつ病」などのメンタルヘルスの不調を防止するための制度です。

ストレスチェックにより従業員のメンタルヘルスの不調を防止するだけでなく、チェック結果を分析することで職場環境や働き方の見直しを図り、職場環境の改善にもつなげられます。

ストレスチェック制度の対象者

ストレスチェック制度の対象者は、契約期間のない無期雇用従業員と、契約期間が一年以上あり、契約更新で一年以上の雇用が予定されている有期雇用従業員、そして一年以上継続して雇用されている有期雇用従業員です。

一週間の所定労働時間数が常時雇用従業員の4分の3以上ある従業員も対象となります。

 

ストレスチェックと健康診断の違い

ストレスチェックは事業者に実施義務がありますが、従業員には実施義務がありません。

一方で、健康診断は従業員にも受診義務があります。

また、ストレスチェックの結果は、本人の同意がある場合を除きストレスチェック実施者と、ストレスチェックの事務作業をおこなう実施事務従事者にしか伝わりませんが、健康診断の結果は事業者が把握し、二次健康診断受診を求めたり労働環境を調整したりできます。[※1]

>健康診断の実施・受診義務とは?に関する記事はこちら

ストレスチェックが義務化された背景・理由

2015年12月に厚生労働省によって「労働安全衛生法」が改正されたことで、従業員が50人以上いる事業所は、毎年一回のストレスチェックの実施が義務化されました。

そもそも、ストレスチェック制度が義務化された法律「労働安全衛生法」が施行された理由は、労災被害が多いことがあげられます。

「労働安全衛生法」が施行された1972年頃に多かった労災は、建設業や公害、有害化学物質の使用に関するものでした。

近年でも建設業などの高所作業中の事故や化学物質の使用による中毒などの労災があります。

厚生労働省がストレスチェック制度を義務化した理由は、労災被害のなかでも、精神障害の労災認定件数が増加し、労働者のメンタルヘルス不調に対処する必要性を感じたためです。[※2][※3]

 

ストレスチェック制度の目的

ストレスチェック制度は、従業員と事業者の双方にメリットをもたらします。

ストレスチェック制度をおこなうことで、従業員は自身のストレス度合いを知り、セルフケアをおこなったり医師と面談したりして、ストレス軽減を図ることにつながるでしょう。

事業者は、従業員のストレスチェックを分析することで、職場環境の改善や医師との面談をすすめるなどの対処ができ、従業員がメンタルヘルスの不調に陥ることを未然に防止することができるでしょう。

>ストレスチェックの目的に関する記事はこちら

ストレスチェックの従事者とは

ストレスチェックは誰でも実施できるわけではなく、定められた実施者が実施する必要があります。

ストレスチェックを実施できる人・できない人について解説します。

ストレスチェック従事者について解説します。

 

ストレスチェックの実施者

医師や保健師、もしくは厚生労働大臣が定める研修修了済の看護師、精神保健福祉士です。

そのほか、事業者の産業医や、事業者の保健活動に関わる精神科医、心療内科医などの医師や看護師、保健師は、事業所の状況を把握しているため実施者として望ましいとされています。[※2]

 

実施事務従事者

ストレスチェックの事務作業をおこなう者を実施事務従事者といい、ストレスチェック実施者の指示でデータ入力などをおこないます。[※4]

 

実施事務従事者になれない人

従業員のストレスチェック結果の内容を利用し、従業員に不利益になるようなことがおこなわれないようにするため、従業員の人事権をもつ人事部などは、ストレスチェックの実施事務従事者にはなれません。[※4]

ストレスチェックの手順

ストレスチェックを実施する際の6つの手順を解説します。

  • 手順(1):実施方法と担当者を決める
  • 手順(2):ストレスチェックを実施する
  • 手順(3):高ストレス者をフォローする
  • 手順(4):ストレスチェックの結果を分析する
  • 手順(5):職場環境を改善する
  • 手順(6):労働基準監督署へ報告する

ストレスチェックを適切に実施するために、それぞれの手順を詳しく確認していきましょう。

 

実施方法と担当者を決める

ストレスチェックの実施方法と、ストレスチェックの担当者である実施者・実施事務従事者を決めます。

ストレスチェックの実施方法は、厚生労働省が「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の使用をすすめているため、従業員に調査票を配布し記入してもらいましょう。

調査票を事業者が作成する場合は、心理的負担の原因に関する項目、心理的負担の自覚症状に関する項目、心理的負担軽減のための支援に関する項目の3点が含まれている必要があります。[※4]

 

ストレスチェックを実施する

ストレスチェックを実施する際に、調査票の配布は誰がおこなっても問題ありませんが、記入後の調査票はストレスチェック実施者か実施事務従事者が回収し、個人の回答が人目に触れないように注意します。

ストレスチェックの時期は定められていませんが、実施時期を毎年変更すると、イベントの有無などにより従業員のストレスの変化が時期的なものなのか日常的なものなのかわかりづらくなるため、実施時期は定めておくといいでしょう。

 

高ストレス者をフォローする

ストレスチェックの実施により、高ストレス者と判断された従業員から医師との面談を求められた場合は、一ヶ月以内に面談をおこなえるよう段取りをくみます。

事業者は、従業員と面談をおこなった医師に、従業員の勤務状況への対処に関する意見やアドバイスを聞き、実施することが求められます。

また、医師と従業員の面談内容は記録として残し、事業者が5年間保存しなければいけません。[※4]

 

ストレスチェックの結果を分析する

ストレスチェックの結果を分析し、職場環境の改善点などを見つけ対処することが求められます。

法律では努力義務とされていますが、ストレスチェックでわかるはずの改善点を放置すると、従業員のメンタルヘルスの不調による休職や退職が増える恐れがあるため、ストレスチェックの結果を分析したら職場環境改善に努めましょう。

>ストレスチェックに意味がないと言われる原因と対策に関する記事はこちら

 

職場環境を改善する

10人以上のストレスチェックを分析することを集団分析といい、個人が特定される恐れがないことから、集団分析の結果は事業者に報告しても問題ありません。

事業者は実施者から分析結果をうけとる際に、具体的なアドバイスや客観的な意見なども聞くことで、職場環境の改善点がわかるため、改善していくことで従業員のメンタルヘルスの不調防止につなげられるでしょう。

 

労働基準監督署へ報告する

ストレスチェック実施後は、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を事業者ごとに定めた期日に、労働基準監督署へ遅滞なく提出しなければいけません。[※4]

労働基準監督署へ提出する報告書は厚生労働省のHPでダウンロード可能です。[※5]

労働基準監督署への報告を怠った場合、労働安全衛生法100条の違反となり、50万円以下の罰金に処せられるため注意が必要です。

ストレスチェック制度の注意点

ストレスチェック制度は、厚生労働省が義務化したことと、個人情報をあつかうことから注意すべき点が3つあります。

  • プライバシー保護のための守秘義務
  • 実施状況の報告義務
  • 労働基準監督署へ報告する

従業員が安心してストレスチェックを受けられるように、3つの注意点を確認しておきましょう。

 

プライバシー保護のための守秘義務

ストレスチェックをおこなうことで従業員のメンタル状況がわかるため、プライバシー保護のためにも守秘義務は徹底しましょう。

個人情報を不正にあつかうなど、守秘義務に違反した場合は罰則の対象となるため、分析結果などを社内共有する際にも個人が特定できないようにしたり、必要最小限にとどめたりするように注意が必要です。

 

実施状況の報告義務

ストレスチェックは実施状況の報告義務もあるため、ストレスチェック未実施の場合は安全配慮義務違反に該当する恐れがあります。

また、ストレスチェックを実施した場合も、メンタルヘルス不調の従業員に対し解雇や退職勧奨などの、該当従業員が不利益となる行為を事業者がおこなうことは禁止されています。

 

労働基準監督署へ報告する

ストレスチェックは実施だけでなく、労働基準監督署への実施状況報告も義務付けられているため、報告義務を怠ったりストレスチェックを未実施だったりすると、50万円以下の罰金刑に処せられます。

ストレスチェックで心理的安全性が高い職場環境を

ストレスチェック制度は、厚生労働省が該当事業者に義務付けた制度ですが、従業員のメンタルヘルス不調防止や職場環境の改善が目指せるため、従業員の休職を防止したり働きやすい職場になったりする点で、従業員と事業者双方にメリットがあります。

ストレスチェック未実施は罰則の対象となるため注意が必要ですが、罰則の有無で実施する、しないを考えるのではなく、従業員の心理的負荷を軽減し働きやすい職場環境構築を目指して、ストレスチェックを忘れずに実施しましょう。

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[※1]出典:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/shishin.pdf
[※2]出典:厚生労働省「労働安全衛生法の施行について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2042&dataType=1&pageNo=1
[※3]出典:厚生労働省「労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000049215.pdf
[※4]出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf
[※5]出典:厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/24.html
※本記事は、2023年6月時点の情報をもとに作成しています。


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