勤務間インターバル制度とは?導入方法やメリットを事例付きで解説
目次
勤務間インターバル制度は、勤務終了時間から次の勤務開始時間まで、8~12時間程度の休息時間を設ける仕組みです。
長時間労働を予防し、従業員の心と体の健康維持をするために、国が導入を推奨しています。
企業にとっても、導入を進めることで事業活動の生産性が向上する効果が期待できるでしょう。
勤務間インターバル制度のメリット・デメリットを始め、導入方法を解説します。
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、勤務終了時間から次の勤務開始時間まで、休息時間(インターバル時間)を設ける仕組みです。
企業によって変わりますが、基本的に8~12時間程度の休息時間を設けます。
残業時間が発生した場合は、翌日の始業時間を遅らせるなど、企業で決めたルールに合わせて対応を進める流れです。
長時間労働による過労を予防し、従業員の健康を維持する仕組みとして、企業での導入が推奨されています。
基本的に制度の罰則はない
勤務間インターバル制度は、2019年4月から導入されました。
現在のところは、努力義務にあたる制度のため、違反した場合に法的な罰則はありません。
企業によって運用ルールを決めており、現場に合わせて対応を調整しています。[※1]
勤務間インターバル制度を導入するメリット
勤務間インターバル制度は、企業にとってどのような効果が期待できるのでしょうか。
- 従業員の健康管理につながる
- 人材確保・離職者を減らす対策につながる
- 生産性の向上につながる
勤務間インターバル制度を導入するメリットを確認していきましょう。
従業員の健康管理につながる
勤務終了時間から次の勤務開始時間まで、休息時間を設けられるため、従業員が心身を休息させる時間を確保できます。
長時間労働による過労を予防できることは、従業員の健康管理につながります。
人材確保・離職者を減らす対策につながる
仕事とプライベート時間の確保ができて、ワークライフバランスを整えやすくなります。
休職者・離職者を減らす工夫につながり、企業で働く従業員の満足度を高められるでしょう。
生産性の向上につながる
一定の休息時間を設けることで、作業の集中力を高める効果が期待できます。
長時間労働は注意力散漫の原因になるため、仕事時間と休息時間をしっかり区切ることで、メリハリをつけて仕事にとりくめます。
勤務間インターバル制度を導入するデメリット
スムーズに導入・運用するためには、社内で課題になりそうな事項を事前に知っておくことが大切です。
- 残業が増える可能性もある
- 社内整備の初期コストがかかる
勤務間インターバル制度を導入するデメリットを解説します。
残業が増える可能性もある
勤務間インターバル制度は、長時間労働の予防としての役割がある一方、残業時間が増えてしまう懸念があります。
上司からの評価を気にして、自宅に残業を持ち帰ってしまったり、管理者が気づかないところでサービス残業をしていたりする課題があげられます。
制度の導入時に従業員に説明をしながら、運用後も調整を進めることが必要です。
社内整備の初期コストがかかる
勤務間インターバル制度の実現には、従業員の労働時間を管理できる仕組みが必要です。
勤怠管理システムの導入をはじめ、社内にITツールの導入が必要な場面も出てくるかもしれません。
費用以外には、制度の導入について従業員の理解を得たり、導入後の運用を調整したりするなど、社内に浸透させるまでに手間がかかる可能性があります。
勤務間インターバル制度の導入前に、どのようなコストがかかるのかを検討しておきましょう。
勤務間インターバル制度を導入する方法
社内環境を整備しながら、従業員に対して周知を進めることが大切です。
勤務間インターバル制度を導入する際のステップを解説します。
- 従業員の労働時間を把握・管理する
- 就業規則を見直してインターバル時間を設定する
- 社内・社外に制度の周知を進める
- 厚生労働省のワークシートを活用する
- 制度の運用方法を調整する
5つのステップを参考に、勤務間インターバル制度の導入を進めていきましょう。[※2]
ステップ(1):従業員の労働時間を把握・管理する
勤務終了時間から次の勤務開始時間まで、正確な労働時間を記録できる仕組みを整えます。
タイムカードやICカード、PCのログイン・ログアウト履歴を活用しましょう。
作業効率化を図るには、勤怠管理システムを導入することで、従業員の労働時間を管理しやすくなります。
ステップ(2):就業規則を見直してインターバル時間を設定する
インターバル時間は、8~12時間程度を目安に設けます。
上記の時間はあくまで目安になるため、従業員の通勤時間や睡眠時間、生活面の時間などを配慮し、調整していくことが大切です。
調整した内容は、就業規則に反映させて制度の定着を進めます。
いきなり制度を導入すると、仕事が円滑に進めなくなる可能性があるため、試行運転から始めるといいでしょう。
ステップ(3):社内・社外に制度の周知を進める
勤務間インターバル制度を導入するときは、導入の目的を明確に説明することが大切です。
「仕事の負担を軽減させる」という目的で実施することを説明し、社内の従業員に研修を設けて周知を広めましょう。
社外の取引先・顧客についても、状況に合わせて理解が得られるように事前説明しておくと親切です。
ステップ(4):厚生労働省のワークシートを活用する
勤務間インターバル制度を推奨する厚生労働省は、ホームページでワークシートを掲載しています。
ワークシートは、勤務間インターバル制度の検討項目や実施状況、課題や課題解決の方向性などを確認できる内容です。
運用マニュアルなどのダウンロードもできるため、導入前に目をとおしてみてください。[※3]
ステップ(5):制度の運用方法を調整する
勤務間インターバル制度は、導入後に調整を進めて運用する必要があります。
たとえば、休息時間の合間が短すぎるときは、時間調整をして改善を図りましょう。
制度の運用方法の調整だけでなく、社内の労働環境を改善させる別制度の導入とともに進めてみてください。
勤務間インターバル制度の助成金
勤務間インターバル制度を導入する中小企業事業主は、条件を満たすと国から助成金の給付が受けられます。
企業の労務管理の状況だけでなく、社内に向けた研修などのとりくみや、成果目標を決めることが条件です。
成果目標の達成状況に合わせて、制度の導入に関する経費の一部を支給できます。[※1]
勤務間インターバル制度を導入した企業の事例
企業の事業内容に合わせて制度の導入と運用を進めています。
勤務間インターバル制度の導入事例を見ていきましょう。[※4]
製造業の事例
製造業の企業事例では、残業が常態化されている状況があったものの、勤務間インターバル制度の導入後は、残業時間の削減に成功しました。
導入当初は、社内から「顧客を逃してしまうのでは」といった批判的な意見がありつつも、制度の運用によって従業員の意識が変わったといいます。
社内改善を進める過程で、業務の見える化が実現できたため、次の課題解消に向けて積極的に行動に移しています。
医療・福祉の事例
医療・福祉の事例では、交代勤務制度でインターバル時間が確保できない課題を解消するために、制度の導入を決めました。
緊急時の勤務に関しては、始業時間を遅らせることや特別休暇などを設けるなど、従業員の負担を軽減できるように配慮しています。
制度の導入によって、年間休日を増やすことができて、従業員満足度を高める工夫につながっている事例です。
勤務間インターバル制度は休息時間の確保につながる
勤務間インターバル制度の導入により、一定の休息時間を設けることで、従業員の働き方を変えられます。
労働時間・環境の見直しができて、社内全体の課題を解消させる機会にできるでしょう。
厚生労働省の導入マニュアルや企業事例を参考にしながら、社内の改善を進めてみてください。
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[※1]出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html
[※2]出典:厚生労働省「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアルを作成しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10566.html
[※3]出典:働き方・休み方改善ポータルサイト「勤務間インターバル制度とは」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/interval/
[※4]出典:厚生労働省「勤務間インターバル制度導入事例集」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000428967.pdf
※本記事は、2022年6月時点の情報をもとに作成しています。