【社労士監修】育児休暇とは?休業との違いや期間、制度内容を解説
目次
育児休暇は、出産の立ち会いや子どもの行事などを理由に使用できる休暇として、企業に導入が求められている制度です。
女性だけではなく、男性の育児参加が推進されている昨今では、育児休暇を導入することで、企業ブランディングの向上や従業員の定着率向上が期待できるでしょう。
今回は、育児休暇を導入するメリットや育児休業との違いなどを詳しく解説します。
育児休暇とは
育児休暇とは、小学校就学までの子どもをもつ従業員が、育児を目的として取得できる休暇制度のことです。
育児休暇の導入は、企業の努力義務とされており、出産の立ち会いや子どもの行事など、育児に関する目的で取得できる休暇として導入が求められているものです。
企業によっては、「出産休暇」や「ファミリー休暇」など名前を変えて、目的に応じて使用できるように、複数の休暇を設けている企業もあります。
育児休業との違い
法律では、「育児休業」と「育児休暇」は別の制度として設けられており、それぞれ以下の違いがあります。
育児休業 | 育児休暇 | |
---|---|---|
管理 | 国 | 企業 |
休業期間 | 原則で子が1歳になるまで | 企業の規定による |
給付金 | あり(育児休業給付金) | なし |
育児休業は、原則1歳未満の子どもを養育するために、法律で定められたものです。
育児休業は、法律で企業に導入が義務づけられているため、雇用されている従業員は条件を満たせばだれでも取得ができます。
また、育児休業期間中は育児給付金が支給されるため、収入が途絶えることはありません。
一方で、育児休暇は、企業が独自に設けた休暇であるため、休める日数や有給・無給は企業によって異なります。
一般的には、育児休業は子どもの出産から1歳になるまで利用し、仕事復帰後に仕事と育児の両立を図るために育児休暇が利用されています。[※1]
育児休業・休暇の現状
厚生労働省によると、育児休業の取得率は令和2年度で女性が81.6%(前年83%)、男性が12.65%(前年7.48%)となっており、男性の取得率が大幅に増加しています。
これは、国をあげて男性の育児休業取得を推進していることにくわえて、法改正が進んだことが要因と考えられます。
一方で、育児休暇の取得率は、企業のとりくみや上司の理解が影響しています。
厚生労働省の調査によると、育児休暇のとりくみや上司に理解がある企業は88.6%取得しているのに対して、とりくみや上司に理解がない企業では69.5%と取得率が低下する結果となっています。
つまり、企業全体の育児休暇促進と上司の育休に対する理解が、育児休暇の取得率に直接影響していると考えられるのです。[※2]
育児休暇を導入するメリット
育児休暇は、導入することで、福利厚生の役割を果たし、以下のようなメリットを得ることができます。
- 企業ブランディングになる
- 従業員の定着率向上になる
- 女性の活躍推進につながる
それぞれのメリットを詳しく解説していきます。
企業ブランディングになる
育児休暇の導入は、各企業の判断に委ねられているため、導入されていない企業もあるでしょう。
しかし、育児休暇を導入すれば、子育てに関心のある人材からの注目が集まるため、採用において、他企業と差別化を図ることができます。
たとえば、男性の育児休暇取得率が高い企業では、育児への理解度が高く、多様な価値観も尊重してくれる企業というブランディングができるでしょう。
このように、育児休暇を導入することは、採用現場において好印象を抱かれやすく、優秀な人材が集まりやすくなるというメリットがあります。
従業員の定着率向上になる
子育てをする従業員の多くは「仕事をしながら育児ができるのか」と不安に思っているでしょう。
このような不安を抱く従業員も、育児休暇が導入されている企業では、育児との両立がしやすく、安心して働けることができるため、従業員の定着率向上を期待することができるでしょう。
女性の活躍推進につながる
育児参加の割合は女性の方が高く、仕事の両立ができずに離職する女性従業員も少なくありません。
しかし育児休暇制度があることで、仕事の継続がしやすくなり、女性が活躍できる機会が増えることになります。
また、男性も育児休暇を利用することで、女性の育児負担が軽減できることから、仕事に専念できる時間が確保しやすくなります。
そのため、育児休暇の導入は、女性の活躍推進につながり、長くキャリアを築きたい女性の求職者を獲得するうえでも効果的なものとなり得るでしょう。
育児休暇の企業事例
ここまで育児休暇の概要やメリットについて確認してきましたが、実際に育児休暇がどのように導入されているのか気になる方もいらっしゃるでしょう。
ここからは、育児休暇の導入事例を2つご紹介します。
生命保険会社の事例
ある生命保険会社では、男性の育休取得率100%実現を目標に掲げ、積極的に育休取得を推進しています。
女性従業員だけではなく、管理職を含めた男性の従業員に対しても意識改革をおこない、男性が育休を取得しやすい環境を作りあげました。
具体的には、管理職が職場におけるサポート体制を構築し、人事部と育休取得計画を共有して徹底フォローを実施しました。
取得を推進するために、育休の取得開始から7日間は有給あつかいにしたり、子どもの学校行事への参加などで年に3日取得できる「ライフサポート休暇」の導入をしたりなど、独自の制度を導入しています。
その結果、男性の育休取得率は2013年から毎年100%を達成し、積極的に育休を促進している企業として認知されることに成功しています。
人材紹介会社の事例
ある人材紹介会社では、男女ともに仕事と家庭を両立できる支援をおこなうとして、男女問わず、子どもが12歳になるまで、最大40日の休暇取得を可能とする出産育児休暇を創設しています。
この企業では、休暇制度の創設にくわえて、子育て講座開催や病児保育利用料の補助、小児科・産婦人科医の無料オンライン診断など、出産と育児を支えるサポート体制の整備もおこなっています。
また、男性の育休を促進するとりくみとして、子どもの出生後8週間以内の期間は原則として5日以上(4週間以上推奨)の育休取得を促すなど、男性の育児支援も強化しています。
育児休暇を成功させるポイント
育児休暇のメリットや企業事例を解説してきましたが、実際に育児休暇を導入したいと思っても、どのように進めていいかわからない方もいるでしょう。
育児休暇制度の導入を成功させるためのポイントとして、以下の4つがあげられます。
- 社内に制度の周知をおこなう
- 従業員フォローを徹底する
- 利用の促進をおこなう
- ロールモデルをつくる
それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。
ポイント(1):社内に制度の周知をおこなう
育児休暇制度を導入しても、従業員に周知されなければ意味がありません。
社内の掲示板やポータルサイト、社内報などで育児休暇について掲示し、積極的に周知をおこないましょう。
また、社内で育児を原因とした不利益なとりあつかいをしないよう、周知することも企業側の責任です。
管理職など、組織を管理する立場にある従業員には、育児休暇を取得する従業員の対応について研修をおこなうなど、コンプライアンスの遵守を徹底しましょう。
ポイント(2):従業員フォローを徹底する
育児休暇を取得する従業員がいる一方で、取得しない従業員に、業務の負担が偏らないようにフォローすることも重要です。
普段から業務の配分やスケジュールなどを管理し、育児休暇を取得する従業員がいてもフォローできる体制を整えておきましょう。
このような準備をおこなっても、業務が特定の従業員に偏ってしまう場合は、業務改善をおこない、効率化させることも大切です。
ポイント(3):利用の促進をおこなう
育児休暇制度が形骸化しないように、利用しやすい環境を整え、トップダウンで積極的に促進することも大切です。
育児休暇を取得しない原因の多くは、「職場が取得しづらい環境」「上司の理解が得られない」など、社内の環境が影響しています。
このような事態を防ぐためにも、経営層や管理職から育児休暇の利用を促進し、取得しやすい環境を整えていきましょう。
ポイント(4):ロールモデルをつくる
「だれも育児休暇をとったことがない」という環境では、休暇を取得しづらいでしょう。
このような雰囲気をなくすためにも、育児休暇を取得する従業員を周りが後押しして、ロールモデルをつくることも、育児休暇の導入を成功させるポイントです。
また、ロールモデルをつくることで、企業ブランディングにもつながります。
積極的な育児促進は、従業員だけではなく、企業にもメリットがあることを認識しておきましょう。
育児休暇に関する情報共有に「Chatwork」活用しよう
育児休暇は、子育てをする従業員にとって、必要とされている休暇です。
育児に関連した独自の休暇制度を設け、企業全体で育児休暇を促進しましょう。
制度を充実させることで、企業イメージや従業員の定着率が向上し、人材の確保も期待できるでしょう。
休暇制度の内容を社内全体に共有し浸透させるためには、コミュニケーションのあり方を工夫するのもひとつの方法です。
ビジネスチャット「Chatwork」は、オンライン上で簡単にコミュニケーションがとれるビジネスツールです。
チャット形式のコミュニケーションができるだけでなく、ファイルや書類などの送受信もできるため、育児休暇の申請や情報共有などが簡単におこなえ、育児休暇の取得を後押しすることもできるでしょう。
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[※1]出典:厚生労働省「育児休業と育児目的休暇の違いについて」
https://jsite.mhlw.go.jp/okayama-roudoukyoku/content/contents/syuseiji2019-1.pdf
[※2]出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf
※本記事は、2023年3月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。