ハラスメント教育とは?目的や実施方法・内容をわかりやすく解説
目次
2019年6月の法改正によりパワーハラスメント対策が義務化されたことで、ハラスメント教育をおこなう企業が増えています。
ハラスメント教育とはどのような内容で、どのように実施すればよいのでしょうか。
ハラスメント教育をおこなう目的、実施者・対象者とあわせて確認していきましょう。
ハラスメント教育とは
ハラスメント教育とは、おもに研修によって社員がハラスメントの基本的な知識を身につけ、ハラスメントを起こさないために意識すべきことや環境づくり、起こってしまった場合の対応を学ぶことをさします。
2019年6月の法改正で大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日からパワーハラスメント対策が義務化されたことにより、事業主は「パワーハラスメントの内容・パワーハラスメントを⾏ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること」が必要となりました。
この周知・啓発の効果的な方法として、ハラスメント教育を実施する企業が増えています。[※1][※2]
ハラスメント教育をおこなう目的
ハラスメント教育は、主に4つの目的をもって実施されます。
- ハラスメントに関する認識の統一
- ハラスメントに気づくきっかけづくり
- 多様化するハラスメントへの対応
- 社員と顧客に評価される会社に
具体的にどのような目的をもってハラスメント教育をおこなう必要があるのか確認していきましょう。
ハラスメントに関する認識の統一
どこからがハラスメントで、どこまでが指導の範囲といえるのかは、個人の経験や価値観によって判断が分かれることも多いでしょう。
これくらいなら許されるはずという個人の解釈のみにまかせていると、指導をする側と受ける側の間で認識の相違が生まれ、ハラスメントが起こりやすくなります。
ハラスメントを防ぐためには、職場全体でハラスメントに関する認識を統一し、あいまいだった線引きを明確にすることが必要です。
ハラスメントに気づくきっかけづくり
自分の行動や自分の身の周りで起こっていることがハラスメントにあたる場合でも、それが常態化している環境の中ではなかなか気づきにくいものです。
ハラスメント教育を通じて「この行為はハラスメントにあたる」ということをしっかり学び、該当する行為があれば正していく必要があります。
多様化するハラスメントへの対応
ハラスメントに関する問題意識が広まるにつれ、アルハラ、マタハラ、ジタハラなど以前はなかった言葉を耳にする機会も増えているでしょう。
多様化するハラスメントへの認知と理解を深め、適切な対応をしていくためには、定期的に内容を更新した研修を継続しておこなっていく必要があります。
社員と顧客に評価される会社に
対策がとられないままハラスメントが常態化している職場は、モラルが低いとみなされ、社員の疲弊による離職や優秀な人材の流出が起こることが考えられます。
また、社員が定着しない会社が成長していくことや顧客の満足度を上げることは難しく、会社としての評判も落ちていく可能性が高いでしょう。
ハラスメント教育をおこなうことでハラスメントを防ぎ、社員と顧客に評価される会社であることを維持する助けになります。
ハラスメント教育の実施者と対象者
ハラスメント教育の実施は、人事部が担当することが多いでしょう。
人事部やハラスメントの相談窓口の担当者が講師になり、研修をおこないます。
対面での研修や時間の調整が難しい場合に、パンフレットでの周知やe-Learningを利用している会社も多いようです。
ハラスメント教育の対象は、マネージャーや管理職までとしている場合や、一般の社員まで含めている場合があり、会社によってさまざまです。
研修の内容にあわせて対象を絞ってもよいですが、派遣社員やアルバイトなど雇用形態が違う場合であっても同じ職場の労働者であることに変わりはないので、会社で働いている全員に研修をおこなうことが望ましいでしょう。
ハラスメント教育の内容
ハラスメント教育は通常、対面やリモートで研修をおこないます。
ハラスメントへの理解を深めるために必要な要素を紹介します。
- どのようなことがハラスメントになるかを学ぶ
- ケーススタディで正しい対応を考える
- ハラスメントが起きない環境づくりを考える
- ハラスメントを受けた・目にしたらどうすればよいかを知る
受講者に気づきや学びを与えるためには、どのような要素が必要なのか確認していきましょう。
どのようなことがハラスメントになるかを学ぶ
ハラスメントには身体的・精神的な攻撃から、過大な要求や個の侵害、人間関係からの切り離しまで、さまざまな種類があります。
ハラスメントにあたることが誰からもわかりやすいものもあれば、個人の解釈によって指導の一環と判断されてきた行為もあるため、研修ではまずどのようなことがハラスメントになるかをしっかり学びます。
ケーススタディで正しい対応を考える
具体的な事例を通じて、パワーハラスメントにあたるかあたらないか、どう対応するのが正しいかなどを考えます。
参加者がわかりやすく、身近に感じられるよう、再現VTRのような動画を取り入れて研修をおこなう会社も多いようです。
ハラスメントが起きない環境づくりを考える
ハラスメントをなくすためには個人の意識も大切ですが、ハラスメントが起きない職場環境を作ることも重要です。
ハラスメントの知識を広めることはもちろん、円滑なコミュニケーションがとれるよう工夫したり、長時間労働や厳しい上下関係を是正することも効果的でしょう。
どのような環境であればハラスメントが起きないのか、そのためには何から始められるかを、ハラスメント教育の機会にみんなで考えます。
ハラスメントを受けた・目にしたらどうすればよいかを知る
ハラスメントについての知識があっても、実際に受けたり目にしたときにすぐ行動ができる人は少ないかもしれません。
ハラスメントに対応するためには、いつどこでどんな行為があったのかを記録することや、相談窓口を知っておくことが大切です。
見て見ぬふりや泣き寝入りでは職場環境は改善していかないため、ハラスメント教育を通じて対応方法を繰り返し周知することが必要でしょう。
ハラスメント教育の実施方法
ハラスメント教育の実施方法について明確な定めはありませんが、人事担当者が中心になり社内で資料を作成しておこなう場合や、人材育成コンサルティングなどの外部業者に依頼しておこなう場合が多いでしょう。
対面での講義のほか、具体的な事例を題材にロールプレイやグループディスカッションをおこなう場合もあるようです。
e-learningや社内報・パンフレットなどでの周知も可能ですが、すべての労働者がしっかりと受講や確認ができるよう、配布方法などを工夫する必要があります。
ハラスメント教育で働きやすい職場づくりを
ハラスメント教育の目的は、ハラスメントに関する理解を深め、社内の認識を統一することにあります。
個人の判断によって異なるあいまいな線引きに任せるのではなく、どのような行為がハラスメントにあたるかを学び社内で明確にしておくことで、ハラスメントを減らすことができるでしょう。
ハラスメントにならない指導方法はマネージャーや管理職のみが学ぶ形でもよいかもしれませんが、ハラスメントにあったときの対応やハラスメントが起きない環境づくりは、一般社員やアルバイトも含めた労働者全体で学び考える必要があります。
社員全員が働きやすい環境を実現するために、効果的なハラスメント教育を考え実施していきましょう。
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[※1]出典:厚生労働省「令和2年6月1日からパワーハラスメント対策が事業主の義務となります!(中小事業主は令和4年3月31日までは努力義務)」
https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/newpage_00306.html
[※2]出典:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf
※本記事は、2021年11月時点の情報をもとに作成しています。