【社労士監修】セクシュアルハラスメント(セクハラ)の定義とは?種類を事例付きで解説

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働き方改革
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【社労士監修】セクシュアルハラスメント(セクハラ)の定義とは?種類を事例付きで解説

目次

職場における「セクシュアルハラスメント(セクシャルハラスメント、セクハラともいう)」とは、職場において労働者の意に反しておこなわれる性的な言動のことを指します。

職場におけるセクシュアルハラスメント対策は、企業の義務として、雇用管理上講ずべき措置が、法律や指針で定められています。

今回はセクシュアルハラスメントの定義や種類を、事例付きで解説します。

適切なセクシュアルハラスメントの防止方法を理解し、迅速かつ適切な対応ができる体制を構築しましょう。

セクシュアルハラスメントの定義

職場におけるセクシュアルハラスメントは、男女雇用機会均等法において、以下3つの要素で定義されています。

  • 職場においておこなわれること
  • 労働者の意に反していること
  • 性的な言動であること

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。[※1]

職場においておこなわれること

セクシュアルハラスメントにおける「職場」とは、セクシュアルハラスメントが発生する場所のことで、被害者が労働に従事する場所のことを指します。

具体的には、企業や公共機関、学校、病院、店舗などを指しますが、勤務時間外の宴会であっても、実質上職務の延長と考えられる場合は、「職場」に該当します。

ただし、「職場」の判断にあたっては、職務との関連性や、強制か任意かといった要因を考慮して、個別におこなう必要があります。

労働者の意に反していること

「労働者」とは、労働契約に基づいて労働を提供する者のことを指し、正社員や契約社員、パート・アルバイトなど、雇用形態に関わらず、労働者として定義されます。

なお、派遣社員に対しては、派遣先が指揮命令をおこなうため、派遣先は派遣社員も同様に、セクシュアルハラスメント防止の措置を講じる必要があります。[※2]

性的な言動であること

「性的な言動であること」とは、性的な内容の発言や性的な行動を意味します。

上司や同僚だけでなく、取引先や顧客、患者、学校の生徒なども、セクシュアルハラスメントの行為者になる可能性があります。

また、異性に対してだけでなく、同性に対しておこなわれる性的な言動も、セクシュアルハラスメントと判断されることを留意しておきましょう。

どのような言動が、この3つの要素に該当するのか、具体例を交えて確認していきましょう。

セクシュアルハラスメントになりうる言動

セクシュアルハラスメントになりうる言動の一例としては、以下のようなものがあげられます。

  • 職場で顔をあわせるたびに「結婚しないのか」「子どもはまだか」と繰り返し言う
  • 性的な経験や性生活について質問する
  • 電子メールやチャットで性的な内容の連絡や画像を送る
  • 不適切な身体的接触やわいせつ行為をする
  • 勤務時間終了後に飲酒に誘い、性的な要求をする
  • 忘年会など社交場での性的な強要をする
  • セクシュアルハラスメントを相談した従業員を降格させる

職場におけるセクシュアルハラスメントの種類と例

職場におけるセクシュアルハラスメントは、大きくわけて以下の2つに分類されます。

  • 対価型セクシュアルハラスメント
  • 環境型セクシュアルハラスメント

それぞれを詳しく解説します。[※1]

対価型セクシュアルハラスメント

対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者が意に反する性的な言動に対して、拒否や抵抗をしたことにより、解雇や降格、不利益な配置転換などをうけることです。

たとえば、事務所内で経営者が従業員に対して性的な関係を要求し、従業員がそれを拒否したために解雇することなどが、対価型セクシュアルハラスメントに該当します。

環境型セクシュアルハラスメント

環境型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動により、就業環境が不快なものとなったため、労働者の本来の能力が発揮できず悪影響が生じることです。

たとえば、毎日事務所内で上司から不必要に身体を触られるため、仕事に手がつかず、就業意欲が低下している状態などが、環境型セクシュアルハラスメントに該当します。

セクシュアルハラスメントの基準とは

セクシュアルハラスメントの状況は多様なため、判断する際は個別の状況を考慮する必要があります。

たとえば、「労働者の意に反する性的な言動」や「就業環境の害される」という判断においては、労働者の主観を重視しつつも、一定の客観性が必要です。

ただし、一般的には、意に反する身体的な接触によって強い精神的苦痛をうけて、就業環境が害された場合は、セクシュアルハラスメントと判断される可能性が高いでしょう。

また、継続性や繰り返しの要件がある場合でも、回数だけで判断するのではなく、抗議が明確にされたにもかかわらず無視された状態や、明らかに重大な影響をうけていることが確認される場合には、就業環境が害されていると判断することができます。

そのため、セクシュアルハラスメントの判断は、個別の状況や当事者の主観を適切に考慮する必要があるといえるでしょう。[※1]

セクシュアルハラスメントの罰則

セクシュアルハラスメントが発生した場合にどのような罰則があるのかを、事業主と加害者にわけて解説します。

事業主の罰則

職場でのセクシュアルハラスメント防止措置の義務に違反した企業には、厚生労働大臣が報告を求め、助言や指導、勧告をおこなうことがあります。

もし是正勧告に従わない場合は、企業名が公表されるだけでなく、20万円の過料が科される可能性もあるため、慎重な対応が求められます。[※1]

さらに、セクシュアルハラスメント防止策を全く講じない場合には、職場環境の整備や調整の義務違反として、民法第415条に基づく債務不履行責任を問われる可能性もあります。

また、従業員が「その事業の執行につき」セクシュアルハラスメント行為をした場合、企業も損害賠償責任を負うことがあります。[※3]

>【社労士監修】ハラスメントの定義とは?に関する記事はこちら

加害者の罰則

セクシュアルハラスメントの加害者は、傷害や暴行、侮辱、強制わいせつなどにより、刑事責任に問われる可能性があります。

たとえば、裁判で強制わいせつと判決がでれば、6か月以上10年以下の懲役刑がくだされる場合があります。

また民事上では、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任も負い、被害者が被った損害を賠償しなければいけません。[※3]

セクシュアルハラスメントの裁判事例

職場におけるセクシュアルハラスメントは、裁判に発展する場合もあります。

ここからは、セクシュアルハラスメントの裁判事例を2つ紹介します。

セクシュアルハラスメント発言を理由とする出勤停止処分と降格が有効とされた事例

本事例は、管理職2名が、部下の女性従業員に対して、1年余りにわたって性的発言を繰り返したことで、出勤停止の懲戒処分をうけ、係長に降格されたことが、権利の濫用で無効であると訴えた事例です。

加害者である管理職の発言は、女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感等を与えるもので、環境を著しく害する極めて不適切なものであったとしています。

また、管理職として、セクシュアルハラスメント防止のために職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず、職場内で1年余りにわたり多数回のセクシュアルハラスメント行為等を繰り返したことは、その職責や立場に照らしても著しく不適切なものとしました。

そのため、出勤停止処分と降格処分は権利濫用にあたらないとして請求が棄却された事例です。[※4]

忘年会のセクシュアルハラスメントで損害賠償責任が認められた事例

本事例は、忘年会の席で、男性従業員3名が、女性従業員7名に対しておこなったセクシュアルハラスメント行為について、女性従業員が、会社と男性従業員に対する損害賠償を求めた事例です。

男性従業員は、女性従業員に対して、忘年会の席で抱きつく・蹴る・脇腹を掴む・羽交い絞めにするなど、暴力的・性的嫌がらせをおこないました。

これらの行為により、女性従業員は精神症状を呈するようになり、精神的苦痛に対する慰謝料の損害賠償を請求しました。

判決では、男性従業員の行為は、暴力行為及び性的嫌がらせ行為として、人格権を侵害し不法行為にあたるとして損害賠償請求を認めました。

ただし、女性従業員にも落ち度があったことから、2割の限度で損害賠償額が減じられている事例です。[※5️]

職場におけるセクシュアルハラスメントを防止する方法

職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、事業主が講ずべき措置として、厚生労働大臣の指針が公表されています。

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するための体制整備
  3. 事後の迅速かつ適切な対応
  4. そのほかの措置

厚生労働省が公表している指針をもとに、企業が講じるべきセクシュアルハラスメント防止対策を解説します。[※1]

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」は、厚生労働省の指針では以下のように定められています。

(1)職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。(厚生労働省Webサイト)

企業は、職場のセクシュアルハラスメントにおける禁止事項や報告手続き、制裁措置など、ハラスメント防止に関する方針を策定する必要があります。

そのうえで、研修や社内報などで従業員に周知・啓発活動をおこない、セクシュアルハラスメント防止の重要性と理解を促進することが求められています。

>ハラスメント教育の実施方法に関する記事はこちら

(2)相談に応じ、適切に対応するための体制整備

「相談に応じ、適切に対応するための体制整備」として、厚生労働省の指針では以下のように定められています。

(3)相談窓口をあらかじめ定めること。
(4)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
(厚生労働省Webサイト)

企業は、セクシュアルハラスメントの相談窓口を設置し、従業員のセクシュアルハラスメントに関する懸念や苦情を報告できる環境を整えなければいけません。

窓口は、内部の従業員や外部の専門家などが担当するなど相談者のプライバシーを尊重し、適切なサポートを提供するための体制を整備する必要があります。

>相談窓口の効果的な運用方法に関する記事はこちら

(3)事後の迅速かつ適切な対応

「事後の迅速かつ適切な対応」として、厚生労働省の指針では以下のように定められています。

(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(6)事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
(7)事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
(8)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
(厚生労働省Webサイト)

セクシュアルハラスメントの事実を、素早くかつ正確に明らかにするために、企業は証拠の収集や関係者の聴取など適切な手続きを実施しなければいけません。

事実確認が得られた場合には、被害者のケアと支援をするとともに、安全や心理的な健康を最優先に考え、必要なサポートを提供しましょう。

また、行為者に対しては、就業規則や法的な手続きに基づいて処分をおこない、再発防止のためにも研修やセミナーを通じて教育の強化をおこなうとともに、セクシュアルハラスメント防止策の見直しや改善などに取り組む必要があります。

(4)そのほかの措置

「そのほかの措置」として、厚生労働省の指針では以下のように定められています。

(9)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(10)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
(厚生労働省Webサイト)

企業は、職場内でセクシュアルハラスメントが発生した場合、相談者や行為者のプライバシーを守るために適切な措置を講じ、従業員に周知しなければいけません。

また、相談者が、セクシュアルハラスメントの相談をしたり、事実関係の確認に協力したりした場合に、その理由を根拠にして、不利益な扱いをすることは禁止されています。

ハラスメント対策にも「Chatwork」

セクシュアルハラスメントは、労働者の職場環境を不快なものとし、生産性やモチベーション低下を引き起こす原因となる行為です。

企業は、研修や社内報などを通じて従業員に周知・啓発活動をおこない、セクシュアルハラスメントの防止措置を適切に実施するとともに、セクシュアルハラスメント防止の重要性と理解の促進をはかりましょう。

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[※1]出典:厚生労働省「パンフレット「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です! ~~2022年4月からパワーハラスメント防止措置が全企業に義務化されました~~」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf
[※2]出典:厚生労働省「派遣先にも男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法が適用されます」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/hakensaki.pdf
[※3]出典:厚生労働省 岡山労働局「悩んでいませんか?職場でのセクシュアルハラスメント」
https://jsite.mhlw.go.jp/okayama-roudoukyoku/library/okayama-roudoukyoku/seido/kintou/kintou02_03.pdf
[※4]出典:厚生労働省「あかるい職場応援団」【第66回】「セクハラの加害者が会社による懲戒処分(出勤停止)等を不服として訴えたが、会社の懲戒処分等は有効であるとして、加害者の訴えが認められなかった事案」 ―海遊館事件
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/68
[※5]出典:厚生労働省「あかるい職場応援団」【第65回】「生命保険会社の忘年会で上司等が保険外交員にセクハラ行為をした事案において、被害者によるセクハラ行為を煽る言動があったとしても、行為者及び使用者の損害賠償責任が認められた一方、被害者にも落ち度があるとして損害賠償額が減ぜられた事例」 ―広島セクハラ(生命保険会社)事件
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/67

※本記事は、2023年6月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:北 光太郎

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関するQ&A

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは?

職場におけるセクシュアルハラスメントは、男女雇用機会均等法において、以下の3つの要素で定義されています。

・職場においておこなわれること
・労働者の意に反していること
・性的な言動であること

セクシュアルハラスメント防止対策を適切に講じるためにも、それぞれの要素の内容を理解しておきましょう。

どのような言動がセクシュアルハラスメントになり得ますか?

職場におけるセクシュアルハラスメントになりうる言動として、以下のようなものが、例としてあげられます。

・職場で顔をあわせるたびに「結婚しないのか」「子どもはまだか」と繰り返し聞く
・勤務時間終了後に飲酒に誘い、性的な要求をする
・セクシュアルハラスメントを相談した従業員を降格させる

セクシュアルハラスメントの基準を知らなかったからといって、セクシュアルハラスメントにならないことはありません。

正しい知識を身につけ、働きやすい職場づくりをおこないましょう。

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