【社労士監修】コンプライアンス研修の必要性とは?目的や実施内容の例を解説
目次
コンプライアンス違反が企業にとって大きなダメージを与えることが多く見受けられるようになった昨今、中小企業でもコンプライアンス研修を実施することが増えています。
コンプライアンス研修の実施は、従業員の意識を高めることができ、法令遵守の徹底や内部統制の強化、リスクマネジメントにつながります。
本記事では、コンプライアンス研修の定義や必要性、研修をおこなう際のテーマ選定のヒントとなるポイントについて解説します。
企業におけるコンプライアンスとは
コンプライアンスとは直訳すれば「法令遵守」を意味し、つまり「企業としてルールを守りましょう」ということになります。
しかし今日において「遵守すべきルール」は法律だけに留まらず、「法律として明確に定められていないが、社会通念上守るべきとされているルール」や「道義上、守るべきルール」等も含まれており、「法令」よりもその範囲は広範なものとなっています。
コンプライアンスがなされることで、自社の信頼を守るとともに、全体として社会がよりよく機能することを目指しており、コンプライアンスは企業にとって非常に大切な考え方と言えます。
コンプライアンス研修とは
近年では、食品の産地偽造や、メーカーによる製品に関係する数値の改ざん等、多数のコンプライアンス違反の事例が報道されています。
その中には、誰もが知る大手メーカーや老舗による事案もあり、大きく世間を騒がせることも少なくありませんでした。
こういった時勢の中、従業員にルールを守る大切さを教え、どのように行動すべきか理解させ、従業員全員が実践できるようにするための機会が「コンプライアンス研修」となります。
コンプライアンス研修はなぜ必要なのか
誰もが知る大企業でさえ、常識では考えられない不祥事を起こした事例が示すように、「特別な指導をせず、各従業員が各々の判断で行動する」だけではコンプライアンスを達成することが難しくなっているため、コンプライアンス研修の重要性が叫ばれています。
また、以下の観点からもコンプライアンス研修が必要であると言えるでしょう。
- 社会人としての基本的なルールを身につけるため
- 従業員の意識を高めるため
- 内部統制を図るため
- リスクマネジメントのため
それぞれについて詳しく解説します。
社会人としての基本的なルールを身につけるため
特に新入社員や新卒社員は、社会人としてのルールや常識について認識していないことも多いです。
入社後の早い段階で、一般的な法令や、社内における規則、マナーなどを理解させて、身につけておく必要があります。
また、中堅・ベテラン層に関しても、意外にもコンプライアンス意識が低い従業員がいる可能性もあります。
コンプライアンスを全従業員の共通認識とするためにも定期的に研修をおこなうのが好ましいと言えます。
従業員の意識を高めるため
コンプライアンスの重要性を従業員自身が意識することはもちろんですが、社内で不祥事を発見した際、しかるべき対応(上長等への報告等)を取ることも求められます。
こういった対応を取ることが社会人として当然であり、コンプライアンス違反を個人レベルで容認しないという意識の醸成のためにもコンプライアンス研修は機能します。
内部統制を図るため
もし、ルールが守られていないことが発覚すれば、その原因を調べて改善する必要があります。
これを企業自身でおこなうこと、そしてその枠組みが内部統制であり、企業が自分自身を管理し、コンプライアンスを守るための重要な仕組みと言えます。
自社の従業員にコンプライアンスについての共通認識が欠如していれば、そもそも何が問題なのかさえ認識することができなくなります。
自社にとってのコンプライアンスとは何なのか、コンプライアンス研修を活用して共通認識を持つことが重要であると言えます。
リスクマネジメントのため
SNSが発達した今日においては、一昔前までであれば大きな問題にならなかったかもしれない些細なことでも、企業イメージを大きく損ないかねない不祥事として扱われる可能性もゼロではありません。
こういったリスクを減らすための取り組みとして、また、企業がコンプライアンスに対してどれだけ向き合っていたかを客観的に示す材料とするためにも、コンプライアンス研修は大きな意義があると言えます。
コンプライアンス違反の事例
コンプライアンス違反にはどのようなものがあるのか、近年ニュースで取り上げられる事案として多いものを挙げてみましょう。
- ハラスメント(パワハラ、セクハラ、モラハラ、アルハラ等)
- 残業に対する未払い賃金
- 著作権侵害
- 食品の衛生管理における管理不行届き
- 誇大広告や不当表示などの景品表示法違反
有名企業で発生し、企業イメージを大きく損なわせた事案もありますが、どの企業でも同じようなことが起きうるものとして注意すべきと言えます。
コンプライアンス研修で取り扱うべき分野・テーマ
コンプライアンス研修では、一般法令はもちろんのことですが、具体的にどのような分野・テーマについて言及するとよいのでしょうか。
- 情報セキュリティ
- ハラスメント
- SNSの取り扱い
- 著作権・特許権
それぞれのテーマについて解説します。
情報セキュリティ
行政においても、ヒューマンエラーやサイバー攻撃による情報漏洩事件が取り沙汰されており、大きな責任問題に発展している事案もあります。
近年では、働き方改革や新型コロナウイルス感染症による外出自粛の影響もあり、テレワークやサテライトオフィスなど働く場所が多様化していますが、それに伴って従来では想定できなかった情報漏洩リスクも懸念されています。
ハラスメント
ハラスメントも最近では、セクハラ、パワハラだけでなく、様々なハラスメントが定義付けされるようになりました。
「何がハラスメントに該当するのか」「そもそもハラスメントの定義とは何なのか」についての共通認識が取れていない場合、各事案への対応が困難になりつつあります。
SNSの取り扱い
SNSは上手く活用すれば、情報共有や強力な広告として大きな効果を発揮する大変便利なツールです。
しかし近年では、飲食店のアルバイト従業員が店内での悪ふざけを発信したことで、企業が激しいバッシング(いわゆる炎上)を受けることもあるように、諸刃の剣としての側面も有しています。
SNSの使用について、社会人としての節度ある向き合い方について取り上げることは現代社会においては重要であると言えます。
著作権・特許権
軽い気持ちでインターネット上の画像や情報を引用し、著作権侵害としてコンプライアンス違反に発展するケースは、インターネットが発達した現代では、多く見受けられる事案の一つとなりました。
著作物の定義や、これを引用、使用する時のルールや注意点について、研修を機会に社内の共通認識とすることで、違反リスクを低減させることができます。
コンプライアンス研修の実施手順
実際にコンプライアンス研修を実施する際には、以下のような手順でおこなうことが望ましいです。
- ステップ(1):社内の意識レベルの調査
- ステップ(2):目的と内容の検討
- ステップ(3):実施カリキュラムの策定
- ステップ(4):実施後の振り返り
それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
ステップ(1):社内の意識レベルの調査
まずは、コンプライアンスについて、自社の従業員がどれだけ意識しているかの調査をおこないましょう。
調査手段は、人数が多ければアンケートを取ることが効率的です。
また、従業員と直接、面談をおこなうことで、活字では読み取れないより多くの情報を得ることもできるため、部分的に取り入れてみてもよいでしょう。
このステップで、自社にとって「どのテーマで、どの程度のレベルのコンプライアンス研修が必要か」を推し量ることができます。
現状把握と調査をいい加減にしてしまうと、コンプライアンス研修の効果が薄くなるため、地味な工程ではありますが地道におこないましょう。
ステップ(2):目的と内容の検討
ステップ1の調査内容をもとに、自社においてはどの分野のコンプライアンス意識が低いのかを把握したうえで、特に重点的に共通認識の強化を図るテーマ及びその内容を検討します。
コンプライアンス研修の目的も明確にしておくことで、どのテーマの研修を、どこまでの従業員に実施するのか、その範囲や、後のステップである振り返りの際における検証方法についても道筋が見えてくるはずです。
また、自社の業種に関連する法改正等が予定されているのであれば、実施項目に加えておきましょう。
ステップ(3):実施カリキュラムの策定
ステップ2までの内容を踏まえて、実際のカリキュラムを策定します。
昨今では、外部講師を招く、オンライン形式を取る、または、Eラーニングを活用するといった、様々な形式やコンテンツを活用することができます。
自社の実情に合わせて、一からカリキュラムを策定するのも一つですが、やはり手間が掛かってしまうデメリットも大きいため、既にできあがっているコンテンツや、外部講師の力を頼って合理化することも検討してみましょう。
ステップ(4):実施後の振り返り
コンプライアンス研修後は、コンプライアンスについての意識がどこまで改善されているか、アンケートや面談をおこない、効果を検証する機会を設けてください。
この効果検証を経ることで、次回以降のコンプライアンス研修の、内容策定のヒントを得ることができます。
コンプライアンス研修を成功させるポイント
コンプライアンス研修の効果を高めるためには、実施のタイミングやテーマ選定が重要になります。
以下の点についても留意してみましょう。
効果的なタイミングで実施する
例えば、同業他社でコンプライアンス違反が発覚した際は、自社でも同様の事態が起きる可能性は十分に考えられます。
コンプライアンス研修が参加者の意識に「刺さる」時期に実施することには大きな意義があります。
他にも、以下のような時期に研修を実施することで「他人事ではなく、自分たちに直接関係している重要な事柄」として、研修の内容も浸透しやすくなります。
- 実際に自社で発生、または発生しかけた時期
- 社内ルールや社内体制が大きく変化した時期
- 業界内で大きな法改正等が迫っている時期
対象別に適切なテーマを選択する
研修のテーマは、自社の実情に応じて検討しなくてはいけません。
例えば、現場担当者にとって内容の濃いテーマを、関連が薄い経理の担当者に対して実施しても、効果は薄くなるのは当然です。
「どのテーマを、誰に対して、何のためにおこなうのか」「何をもって研修のゴールとするのか」このあたりがしっかりまとまっていれば、どのような研修が誰に対して必要なのか、自ずと答えは出てくるはずです。
コンプライアンス研修にも「Chatwork」
近年、コンプライアンス違反の報道が絶えない中、リスクマネジメントの観点からもコンプライアンス研修の必要性が高まってきています。
とはいえ、人の意識の改善・改革を促す研修である以上、その効果は目に見えにくいものであり、目的を達成するためには、自社の実情を把握し、根気強い地道な取り組みが必要となります。
このような取り組みをおこなうにあたり、情報共有やルールの周知・徹底について、チャットツールを活用し合理化することが、経営リソースの限られる中小企業にとっては特に重要であると考えます。
ビジネスチャット「Chatwork」は、直感的な操作感覚が可能で、複数人と一斉にコミュニケーションをおこなうことが可能です。
プロジェクト単位から全社単位まで、緻密なグループ分けをおこなうことができるため、例えば、コンプライアンス意識の調査アンケートの実施もツールでおこなうことが可能となります。
無料で使える機能も多いため、これを機会に「Chatwork」の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
記事監修者:國領 卓巳(こくりょう たくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。