アルコールハラスメント(アルハラ)とは?意味や具体例、対処法を解説

目次
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒に関する嫌がらせやお酒の席での迷惑行為のことです。
従業員が安心して働ける環境を整備するためには、企業側はアルハラにも適切に対処する必要があります。
アルハラの定義や具体例、企業が取るべき対策を解説します。
アルコールハラスメントとは
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒に関する嫌がらせやお酒の席での迷惑行為のことです。
アルハラは、セクシュアルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)などの「ハラスメント」に続き、比較的近年定義付けされたハラスメントの一種です。
「飲みにケーション」という言葉があるように、お酒の席を人間関係を醸成する機会と捉えている人は多く存在します。
しかし一方で、お酒の勢いを利用して分別のない言動がなされる場面も多く見受けられます。
「お酒の席だから無礼講」ということはなく、相手が嫌がっていたり、迷惑がっていたりする行為は「ハラスメント」に該当します。
お酒の席での迷惑行為は、職場環境や人間関係に大きな悪影響を及ぼしかねない問題のひとつです。
従業員が安心して働くことができるように、企業側はアルハラに適切に対処する必要があります。
どのような行為がアルハラに該当するのか、どのような対処が必要になるのかを確認していきましょう。
アルハラに該当する行動の例
アルハラに該当する行動を4つ例にとって解説します。
- (1)無理な飲酒の強要
- (2)飲めない人への嫌がらせや冗談
- (3)飲酒量を競うような行為の提案・強要
- (4)酔った状態での迷惑行為
飲酒の強要は命に関わる可能性のある危険な行為です。
ハラスメントに該当する・しないを抜きにしても、絶対におこなわないように意識しましょう。
(1)無理な飲酒の強要
飲酒の強要は、アルハラに該当します。
上司と部下の関係はもちろん、上下関係のない同僚同士の場合でも「飲まざるを得ない状況」をつくることはハラスメントにあたります。
また、場を盛り上げるため、しきたり、通過儀礼などの理由をつけて、心理的な圧力をかけることもアルハラに該当します。
(2)飲めない人への嫌がらせや冗談
飲めない・飲まない人に対して、嫌がらせをすることもアルハラに該当します。
たとえば、本人の体質や意向を無視して飲酒を勧める、宴会に酒類以外の飲み物を用意しない、飲めないことをからかうなどの言動もアルハラです。
飲みにケーションの名の下に、断れない状況で無理に飲酒させた結果、急性アルコール中毒ということになれば、人命に関わる他、最悪の場合、傷害罪に問われる可能性もあります。
(3)飲酒量を競うような行為の提案・強要
一気飲みや早飲み競争などの行為をさせることも、アルハラに該当します。
望んでもいない人に対して、飲酒を強要したり競いあわせたりする行為は、立派なアルハラです。
とくに、新入社員に対して、先輩社員からの「洗礼」と称して、無理に一気飲みをさせるような悪しき慣習がある職場があるでしょう。
入社したばかりで先輩や上司の勧めを上手く断れず、無理な飲酒をしてしまい、急性アルコール中毒になってしまうという事件も、入社や異動の時期である4月に多く見受けられます。
(4)酔った状態での迷惑行為
酔っている状態で他者に絡むこと、悪ふざけ、暴言・暴力、セクハラなど、いわゆる「酒癖の悪い」迷惑行為も、お酒の席では頻繁に見受けられますが、これもアルハラに該当します。
アルハラは、飲酒を強要する行為と認識されがちですが、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為は、アルハラです。
お酒の勢いを利用して、部下や同僚に強い言葉を発してしまう、執拗なボディタッチをするなど、異性の同僚に性的に嫌悪されるような言動などが例として挙げられます。
アルハラに遭遇した際の対処法
アルハラが発生する要因として、場を盛り上げようと善意の気持ちで接しているケースや、アルコールによって判断力が低下して、理性的な言動が取り辛い中でハラスメントがおこなわれてしまうケースが挙げられます。
ハラスメントはあってはならない行為ですが、もし自分や自分の周囲の人がアルハラに遭遇した場合は、自分を守るために、適切な対処をする必要があります。
アルハラに遭遇した場合の対処法を3つ紹介します。
- (1)明確に断る
- (2)社内のハラスメント担当部門に相談する
- (3)社外の専門機関に相談する
自分の身を守るためにも、アルハラの対処方法を確認していきましょう。
(1)明確に断る
飲めない理由を明確に伝えて断ることが、最も効果的な対処法です。
たとえば、「体質的に飲めない」「この後、運転しなければいけない」などの理由は飲酒を断る明確な理由になります。
周囲に助けてもらうことも有効な手段ではありますが、飲酒の場では、周囲に助けを求められないケースも多々あるでしょう。
アルハラが起こる事自体を許容してはいけませんが、もし遭遇してしまった場合は、自分自身の身はある程度守れるように備えておく必要があります。
(2)社内のハラスメント担当部門に相談する
自分の身は自分で守るといっても、相手や状況によっては断りにくい場合や、自分では言いづらい場合があるでしょう。
また、お酒の席に参加するのを避けていたとしても、取引先や顧客などと親睦を深めるために、参加せざるを得ない場合もあります。
このような場で飲酒を強要されたり、嫌がらせをされたりなど、ハラスメントに遭遇した場合は、上司や人事部などのハラスメント担当部署に相談するようにしましょう。
適切な部門に相談することで、ハラスメントを防止することにつながります。
(3)社外の専門機関に相談する
本来ハラスメントの発生を防止すべき上司からアルハラを受けているケースや、ハラスメントの担当部署でアルハラが発生しているケースもあるでしょう。
また、ハラスメントの通告による報復を恐れて、社内に相談できないケースもあると思います。
お酒の席だけ我慢すればいいと思ってしまう人もいますが、飲酒の強要は、健康被害をもたらす危険性もある行為です。
健康的に働き続けるためにも、必要に応じて専門機関に相談するようにしましょう。
アルハラが起こす職場への影響
職場の飲酒の席でハラスメントが発生すると、どのような悪影響が想定されるでしょうか。
アルハラが職場に与える悪影響を3つ紹介します。
- (1)従業員の健康に対するリスク
- (2)職場の雰囲気やチームワークの悪化
- (3)企業イメージやブランドへのダメージ
アルハラは、被害者だけでなく職場や企業そのものにも大きな影響を与える可能性がある行為です。
「酒の席では無礼講」のような考えを持つ人を減らすためにも、アルハラが引き起こす悪影響を確認していきましょう。
(1)従業員の健康に対するリスク
アルコールを体質的に受け付けない人はもちろん、そうでない人にとっても、一定量以上のアルコールは、健康被害をもたらす危険性があります。
また、お酒の席で嫌がらせを受けたという経験は、身体だけでなく、精神面にも悪影響を与える可能性があります。
なかには、お酒の席での嫌がらせがトラウマとなり、会社を辞職してしまうケースも考えられます。
企業側は、アルハラが従業員の健康に及ぼすリスクをしっかりと認識しておく必要があるでしょう。
(2)職場の雰囲気やチームワークの悪化
コミュニケーションの活性化や親睦を深めるために設けられたお酒の席で、アルハラが発生してしまうと、人間関係は悪化するでしょう。
また、一度アルハラ被害をうけた従業員は、「また飲酒を強要されるのではないか」「もう飲み会に行きたくない」などの精神的なダメージを負い、業務へのモチベーションが下がる可能性もあります。
こういった状況に陥ってしまうと、職場におけるチームワークは悪化し、結果として生産性の低下が招かれるでしょう。
また、アルハラが影響して辞職する事例も見受けられるため、飲酒の場が影響して、離職率が上がるリスクがあるという事実を、企業側は認識しておく必要があります。
(3)企業イメージ・ブランドへのダメージ
お酒の席は社外の飲食店でおこなわれることが多く、そこには不特定多数の社外の人たちも当然出入りしています。
社内の人以外の目がある場でアルハラが発生してしまうと、企業イメージやブランディングが大きく損なわれるリスクがあります。
社名がバレないと思っていても、会話の内容やちょっとした言動から社名がわかってしまうリスクもあります。
また、個人がSNSなどで気軽に情報を発信・拡散できる現代においては、思わぬところから情報が漏洩するリスクもあるため、従業員一人ひとりが高い危機管理意識をもつ必要があります。
企業が取り組むべきアルハラの対処法
パワハラは、労働施策総合推進法において、企業が防止することが義務付けられているなど、従業員が安心して働ける環境を整備することは、企業側がもつ責任です。
アルハラは、就業時間外に発生することが多いですが、この場合も、従業員間や仕事に関係する飲み会の場合は、企業側が対策を打つべきでしょう。
企業側が取り組むべきアルハラの対処法を4つ解説します。
- (1)ハラスメント相談窓口を設置する
- (2)社内全体へ意識調査を実施する
- (3)懇親会・親睦会のルールを整備する
- (4)アルハラの周知をはかる
従業員が健康的に安心して働ける環境を整備するためにも、アルハラの適切な対処を実施しましょう。[注1]
(1)ハラスメント相談窓口を設置する
企業には、アルハラに限らず、セクハラ・パワハラなど、あらゆるハラスメントの相談を受け付けることができる相談窓口を設置し、周知を図ることが、「職場におけるハラスメント関係指針」において義務付けられています。
相談窓口として適任な人材が不足しているということであれば、社外の専門機関に相談窓口を依頼する運用も検討する必要があります。
ハラスメント相談窓口の設置義務や運用方法について、より詳しく知りたい方は、下記の記事をあわせてご参照ください。[注2]
(2)社内全体へ意識調査を実施する
アルハラは就業時間外におこなわれることが多いため、ハラスメントの実態を企業が把握しにくい側面があります。
社内のアルハラの実態を知るためには、まずアルハラに該当する行為が存在するかどうかの意識調査をおこなう必要があります。
「アルハラが存在する」という声がでている場合は、状況に応じて追加調査をおこない、自社のアルハラの実態を把握し、対策を講じましょう。
ハラスメントは、告発に対する報復を恐れて、実態が見えづらくなる性質があります。
調査を実施する際は、匿名のアンケートにする、アンケートの結果を確認できる人を絞り込むなど、従業員が事実を知らせることができるように工夫しましょう。
(3)懇親会・親睦会のルールを整備する
仕事に関する懇親会や親睦会のルールを整備することも、アルハラの対処法のひとつです。
たとえば、「飲酒できない人にはノンアルコール飲料を勧める」のような声掛けをおこなうだけでも、無理に飲酒を勧める空気を変えることができます。
職場を離れた場所でのコミュニケーションは、親睦を深めやすい側面がある一方で、踏み込みすぎたコミュニケーションで、かえって険悪な関係になってしまうリスクもあります。
懇親会や親睦会など、職場を離れた場所でのコミュニケーションが、参加者全員にとって気持ちの良いものにするためには、アルハラの発生を防ぐような仕組みづくりが必要です。
たとえば、以下のようなルールを定め、飲めない人でも楽しめるように工夫しましょう。
- お酒を飲むかどうかは個人の自由とする
- 一気飲みや早飲みを禁止する
- 飲み比べを禁止する
- 飲酒に関係する通過儀礼やしきたりを禁止する
(4)アルハラの周知をはかる
アルハラは、場を盛り上げるために良かれと思っている人が加害者となっているケースも多く見受けられます。
まずは、知らず知らずのうちにアルハラの加害者となっていたというケースをなくすために、従業員に対して、どういった行為がアルハラに該当するかや、アルハラの危険性などを周知する必要があります。
たとえば、社内でアルハラをはじめとするハラスメント研修を実施することにくわえて、インターネットで公開されているようなセルフチェックを促すことも効果的です。
いままで何気なくおこなっていたお酒の席での言動が、実はアルハラだったと認識するなど、ハラスメントに対する感度を高めることができるでしょう。
効率的な社内周知に「Chatwork」がおすすめ
お酒の席では、職場とは違ったより踏み込んだコミュニケーションを図れる利点があり、うまく活用できれば良いコミュニケーションの機会となります。
一方で、誰もがお酒を飲めば陽気になるわけではなく、そもそもお酒が飲めない、お酒の席が苦手という人もいます。
とくに、本記事で取り扱った「アルコールハラスメント」に遭遇してしまうと、懇親会や親睦会の場がトラウマとなってしまい、最悪の場合辞書してしまうケースもあります。
このような事態を防ぐためにも、アルハラを始めとしたハラスメントに対して、企業としてどのように向き合い、防止・対処していくのか、その姿勢が現代では強く問われています。
まずは、ハラスメント研修を実施したり、相談窓口を設定したりなど、従業員にハラスメントに対する正しい理解を促進しましょう。
ハラスメントに関する情報の共有や周知、また、相談窓口の利用方法や設定の目的などを社内に周知する方法として、ビジネス専用のコミュニケーションツール「Chatwork」の活用がおすすめです。
「Chatwork」は、1対1はもちろん、グループチャットを活用すれば、部署やチーム、社内全体など、複数人でもスムーズにやりとりができます。
資料や動画などの添付もできるため、ハラスメント研修の実施にも活用することが可能です。
無料で使いはじめられる「Chatwork」を活用して、ぜひ効率的な社内周知を実現してください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注1]出典:厚生労働省「労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止対策義務化)について」
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/000756811.pdf
[注2]出典:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf
※本記事は、2025年1月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。