自己開示の効果とは?方法や注意点、メリットについて解説
目次
信頼関係を深め、心理的安全性をつくりだすために欠かせないものとして、「自己開示」があげられます。
自己開示をおこなうことで、悩みや課題を聞きだしやすくなる、業務遂行や課題解決につながるなどのメリットがあります。
自己開示の効果や、ビジネスにおけるメリット、尺度や注意点について解説します。
自己開示とは
自己開示とは、自身の思いや価値観を共有することです。
誰かと話すなかで、その人の価値観やプライベートな一面が垣間見えた瞬間、その人に親近感を覚えることがあるでしょう。
ビジネスシーンにおいて、自己開示は、組織全体の活発な交流を促進する手立てとなるため、効果や手順について把握しておきましょう。
自己呈示との違い
自己開示と自己呈示の違いは、自身の感情を正直に述べるか、よい印象を与えるために意図的に振る舞うかどうかにあります。
自己呈示とは、自分の思いや価値観に対して、相手に好感を抱いてもらいたいという目的で、意図的に振る舞うことを指します。
そのため、ビジネスで率直な意見を求められた際に、自己呈示の振る舞いをしてしまうと、逆に信頼感を損ねてしまう危険性もあります。
率直な意見や、人となりを話すことが求められる場では、自己呈示の振る舞いはせず、適切な自己開示をするように心がけましょう。
自己開示の効果
自己開示をおこなうことで、どのような効果を期待できるでしょうか。
自己開示で得られる効果の一例を紹介します。
- 良好な人間関係を築ける
- 短時間で距離を縮められる
- 相手と打ち解けやすい
- 自己肯定感が芽生える
それぞれ詳しくみていきましょう。
良好な人間関係を築ける
自己開示をすることで、相手の思いや、大切にしている価値観を知ることができるため、良好な人間関係が構築できます。
何気ない話題のなかで、自己開示をおこない、お互いに共感する部分を発見できると、相手に親近感を抱き、心理的な距離感を縮められます。
また、自己開示をした相手に受けとめてもらえると、自分のことを理解してもらえたという安心感をいだくため、その人に対して、不信感や嫌悪感をいだくことがなくなるでしょう。
短時間で距離を縮められる
自己開示をすることで、相手が考えていることや、人となりを理解できるため、警戒心がなくなり、短時間で親しくなれる効果があります。
また、相手のおおよその性格や嗜好などがわかると、その人に対してどのように接したらよいか、どのようなコミュニケーションが最適かなどを発見することもできるでしょう。
相手と打ち解けやすい
相手が自己開示することによって、自分も自己開示したいという、自分のことを打ち明けたいという特性が働きます。
この特性を、「自己開示の返報性」と呼びます。
自己開示をしてくれた相手には、自分も同じように返したいと思う性質が、心理的に働くため、相手から悩みを聞きだしたい場合には、まず自分から開示することが効果的でしょう。
たとえば、後輩から悩みを聞きだしたいけど、なかなか打ち解けられない場合、自分のプライベートの話などを打ち明けるなどで、警戒心や不安がなくなる可能性があります。
自己開示の返報性を活用して、コミュニケーションを活性化させましょう。
自己肯定感が芽生える
自己開示をし、ありのままの自分を認められると、自己肯定感が芽生えます。
自己肯定感が芽生えると、自分に自信が持てるようになるため、さまざまな場面での発言や行動にも、主体的になれるでしょう。
ビジネスにおける自己開示のメリット
ビジネスシーンで自己開示をおこなうことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ややハードルの高さを感じる自己開示ですが、メリットを知ると、開示の重要性を再認識することができるでしょう。
詳しくみていきましょう。
心理的安全性が高まる
自分が話した内容を、受けいれてもらえる、または肯定してもらえると、心理的安全性が高まります。
心理的安全性とは、チームの生産性をあげる要因のひとつとして知られている心理学用語で、自分が所属している組織で、安心して自分の気持ちを表現できる状態のことを指します。
心理的安全性が高まると、自信をもって意見を主張できるようになるため、従業員同士の活発な交流につながります。
ミスマッチのない採用ができる
採用の場で自己開示をおこなうことで、求職者と企業側の思いを確認できるため、ミスマッチのない採用が可能になります。
たとえば、企業側は面談時に、求職者がどのような特性をもっているのか、大切にしている価値観などを聞くことにより、人となりや企業との相性を判断することができます。
また、求職者側も、仕事内容や仕事の進め方、企業風土などを聞くことで、企業の価値観や、自分との相性を確認することができます。
自己開示ができない原因とは
自己開示ができない原因として、自己肯定感が低い、昔の経験がトラウマになっている、などの要因があげられます。
自己肯定感が低いと、自分の行動や発言に自信がもてず、「相手にどのように思われるか」「余計なことだと思われていないか」などを気にしてしまうため、自己開示自体のハードルがとても高く、恐怖心を抱いてしまっている可能性があります。
また、過去に自己開示をしたことで、「人に裏切られた」「受け入れてもらえなかった」などの経験がトラウマになってしまい、自己開示ができなくなった可能性もあります。
性質的なものや、経験が影響しているかどうかは本人にしかわかりませんが、警戒心が強くなってしまっている状況だと、打ち解けるまでに時間がかかることが推測されます。
強制的な自己開示は、効果やメリットを逆にしてしまう恐れもあるため、お互いのペースにあわせて、適切な自己開示を進めるようにしましょう。
自己開示の方法
自己開示に取り組みたいと思っても、具体的にどのように開示すればいいのか悩む方もいるでしょう。
自己開示の方法の一例を紹介します。
- まずは自分から開示する
- プライベートの要素を混ぜる
- 相手にも自己開示を促す
- 失敗談やコンプレックスなどの弱みを開示する
自分に合った方法で、自己開示にチャレンジしてみましょう。
まずは自分から開示する
自分から自己開示をおこなうことで、「返報性」の原理を期待することができます。
相手から、自己開示の返報性が実施されたら、その内容に対して、共感した部分や、心を動かされた事柄について伝えてみましょう。
相手は、自身の考えがきちんと伝わって、内容を受けとめてくれたことに、うれしさを感じるでしょう。
相手の話を真摯に聞いていることが伝われば、誠実さも伝えられるでしょう。
プライベートの要素を混ぜる
仕事関係の話しのみでなく、プライベートの話を織り交ぜることも効果的です。
「今日は天気がいいですね」と相手に話しかけられた場合、「そうですね」と返答をすると、話が終わってしまいます。
返答には、「そうですね。わたしはキャンプが趣味なので、キャンプに行きたくなります」とプライベートの話を織り交ぜることで、「キャンプが趣味」という自己開示につながり、軽い雑談につながるでしょう。
ビジネスにおいても、同僚や取引先などの仕事相手に対して、業務と無関係のプライベートの話しをすることで、打ち解けやすくなる効果があります。
個人的な話をしたあとでは、互いに仕事上での交流も円滑になっているのを感じるでしょう。
相手にも自己開示を促す
積極的に質問することで、相手の自己開示をうながす方法もあります。
一方的に気になった事柄を質問するのではなく、相手の心境や感情をくみとり、尊重しながら、質問を投げかけましょう。
たとえば、自己紹介のなかで、相手が「神奈川県出身です」と言った場合、「〇〇に行ったことがあります」「おすすめの観光地がありますか」など、相手の自己開示に沿った内容を質問しましょう。
プライベートな質問を投げかけることで、相手も自然と自己開示することができるでしょう。
失敗談やコンプレックスなどの弱みを開示する
感情が深く揺り動かされた失敗談や、否定的な感情を抱くコンプレックスの開示は、共感を得やすいです。
ビジネスにおいて、上司部下の関係は堅苦しくなりがちですが、「私も同じ年次の時〇〇をしたよ」「同じことで悩んでいたよ」などの、弱みをみせることで、心理的な距離を縮めることができるでしょう。
成功体験だけでなく、失敗談やコンプレックスなどの弱みを開示することで、親近感を持ってもらいやすくなります。
重すぎる内容や、コンプライアンス違反にならないような、適切な内容を選んで、自己開示をおこないましょう。
自己開示の尺度とは
自己開示には、どこまで深い開示ができるかの尺度をはかる「4つのレベル」があります。
自己開示の尺度について見ていきましょう。
レベル1:趣味・嗜好
レベル1として、比較的開示しやすく、批判をうけにくいものとして、趣味・嗜好の開示があげられます。
趣味や嗜好は、人によりさまざまですが、ときには好きなものが重なることもあるため、独特の趣味や深い嗜好が重なれば、話しが盛りあがり、仲が深まる可能性があります。
たとえば、最近のマイブームや、昔からの趣味、好きなもの全般について開示しあうとよいでしょう。
私的な領域に踏み込みすぎていないか留意しつつ、気になったことは積極的に質問してみてください。
- 話題の例
- 好きなもの(音楽・服・本など)
- 休日の過ごし方
- マイブーム
レベル2:容易には克服できない困難な経験
レベル2として、今までに経験した困難や、大変であった出来事の開示があげられます。
その人が、どのような経験をしてきたかは、ひとつとして同じものがないことはもちろん、その経験に対して、どのようにうけとめ、対処してきたのかも異なります。
経験を通して芽生えた思考は、その人の価値観を形づくる大きなポイントになっているため、相手の価値観を知ることにも役立つでしょう。
また、過去の経験は、人となりと直接的に関係のない、外的要因に起因するものも多いため、比較的開示しやすい内容と考えられます。
- 話題の例
- 困難な状況を乗り越えた経験
- 困難な状況を助けてもらった経験
- 大変な出来事から得た知識
レベル3:決定的ではない欠点や弱点
レベル3として、決定的ではない、欠点や弱点の開示があげられます。
他人から指摘を受けるような、決定的な欠点や弱点の場合、開示にとても勇気がいるものですが、決定的ではない「夜ふかしをしてしまう」「方向音痴」などの弱点は、その人らしさを感じ、かえって魅力を感じることがあります。
弱みを開示することに、抵抗を感じる人もいますが、欠点を開示し、受け止めてもらえると、大きな喜びにもつながるでしょう。
- 話題の例
- 直したいのに、なかなか直せない欠点
- 自分が気にしているコンプレックス
- 人と比べてしまいがちな弱点
レベル4:性格や能力の否定的側面
最も深いレベル4の尺度として、性格や能力の否定的な側面を開示することがあげられます。
性格や能力の否定的な一面は、相手との信頼関係が崩れかねない部分のため、できるだけ隠したい部分です。
そのため、否定的な一面を開示する際は、相手との信頼関係が構築できているという認識のうえで、おこなうようにしましょう。
最も深い自己開示のため、開示には勇気が必要ですが、お互いに開示することができれば、大きな心理的安全性を生みだします。
- 話題の例
- 性格が悪いと思う点
- 劣等感を抱いている部分
- 人を傷つけてしまった経験
自己開示の注意点
自己開示をおこなう際の注意点について解説します。
自分が自己開示をおこなう際や、相手に自己開示を求める際は、注意点に留意しておこなうようにしましょう。
無理はしない
開示したくない相手に話すことや、本当は話したくない内容を無理して話すことで、自己嫌悪につながる危険性があります。
自己開示をおこなう際は、無理のない範囲で、自主的に話ししたいと感じることのみを開示するようにしましょう。
マウンティングにならないようにする
自慢と受け取られるような発言をしたり、相手の気分を害するような話題をしたりして、マウンティングにならないよう注意しましょう。
承認欲求を示していると思われるような話題は、相手に不快感を与える可能性があります。
相手の価値観や感情を考え、お互いを尊重しあえるような開示をおこなってください。
一方的にならない
一方的に自分のことばかりを話しすぎないようにしましょう。
一方的に話してしまうと、意見を押しつけられていると感じたり、自分の意思が尊重されていないように感じたりする可能性があります。
相手の気持ちや表情をくみとりながら、開示するように心がけてください。
適切な自己開示でコミュニケーションを活性化させよう
自己開示を適切におこなえると、相手との信頼関係構築のスピードや質があがる効果が期待できます。
お互いに思いやりの心をもち、心理的安全性を確保できるように、注意点に留意して、自己開示をおこないましょう。
4つの尺度や手順を参考にしながら、徐々に仲を深めていくとよいでしょう。
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また、テキストだけではなく、必要に応じてリアクション機能を活用して感情を表せるので、心理的安全性の確保にも効果的です。
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