燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?なりやすい人の特徴や症状、対処法を解説
目次
燃え尽き症候群(バーンアウト)は、それまで熱心に物事にとりくんでいた人が、心身の疲労から突然意欲を失ってしまうことをいいます。
近年、職場でのメンタルヘルスに対する関心の高まりもあり、燃え尽き症候群への企業の対応も注目されている状況です。
この記事では、燃え尽き症候群(バーンアウト)とはなにか、症状やなりやすい人の特徴、企業ができる対処法などについて紹介します。
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは
燃え尽き症候群とは、厚生労働省の健康用語辞典において「それまでひとつの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなること」と定義されています。
バーンアウトは、1970年代のアメリカの精神科医ハーバート・フロイデンバーガーが提唱した概念です。
英語としてのバーンアウトには「燃え尽きる、焼き尽くす」といった意味があります。
日本では燃え尽き症候群と呼ばれ、これまでは医学用語ではなく、一般的な用語として使われてきました。
しかし、病気の診断を世界的に統一するために使われる国際疾病分類「ICD」の最新版である「ICD-11」では、燃え尽き症候群が初めて掲載されました。[※1][※2]
燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因
燃え尽き症候群は、過度のストレスに慢性的にさらされ続けることで起こるとされています。
とくに、ストレスが適切に管理されていない環境では、燃え尽き症候群が起こりやすいでしょう。
一生懸命頑張ったにもかかわらず、期待していた結果が得られなかった場合なども、燃え尽き症候群が起こるきっかけとされています。
燃え尽き症候群(バーンアウト)とうつ病の違い
燃え尽き症候群とうつ病は、異なる病気です。
意欲がなくなる、疲れやすいなど症状に似ている部分もありますが、うつ病ではほかにも不眠などの睡眠障害、「自分は役に立たずだ」「周りに申し訳ない」といった無価値観や自責感などの症状がみられます。
燃え尽き症候群かうつ病か判断するのは難しく、自己判断せずに医療機関を受診するのがおすすめです。
燃え尽き症候群かうつ病のいずれであったとしても、日常生活に支障が出ている、強い生きづらさを感じている場合には、早期に医療機関を受診しましょう。
燃え尽き症候群(バーンアウト)の主な症状
燃え尽き症候群の主な症状は、以下の3つにわけられます。
- 情緒的消耗感(emotional exhaustion)
- 個人的達成感の低下 (personal accomplishment)
- 脱人格化 (depersonalization)
どのような症状なのか、それぞれくわしく解説します。
情緒的消耗感(emotional exhaustion)
情緒的消耗感とは、やる気や熱意が燃え尽きて、疲れている状態のことです。
これまで楽しいと思っていた仕事や、やりがいを感じていた仕事に、突然やる気を失ってつまらないと感じてしまう、といった症状がみられます。
個人的達成感の低下 (personal accomplishment)
それまで仕事を終えて得られていた達成感が得られなくなるのも、燃え尽き症候群の症状です。
達成感がなくなることで、やりがいや自尊心の低下につながり、さらに情緒的消耗感も強くなっていきます。
脱人格化 (depersonalization)
それまでの人格とは異なり、職場の同僚や顧客に対して、攻撃的な態度や思いやりに欠ける行動をとるといった状態を、脱人格化といいます。
「周囲に対して気配りのできる人だったのに、突然気配りしなくなる」「他人の悪口をいうようになった」「イライラしている態度を隠さない」といった行動は、脱人格化の可能性があります。
燃え尽き症候群(バーンアウト)になりやすい人の特徴
燃え尽き症候群になりやすい人には、いくつかの特徴があります。
個人要因と環境要因にわけて、それぞれ燃え尽き症候群になりやすい人の特徴を紹介します。
個人要因
責任感が強く、なにごとも頑張る傾向のある人や、完璧主義的な傾向のある人は、燃え尽き症候群になりやすいとされています。
具体的には、以下のような特徴があります。
- 期待以上の結果を出そうとする
- 何事も完璧にやらないと気が済まない
- 職場の上司や同僚から信頼を得るための努力を惜しまない
- 顧客とうまくやるために笑顔を絶やさないようにしている
- 仕事量やスケジュールなどが厳しくてもやりこなそうとする
環境要因
心身に負担のかかりやすい職場環境にいる人は、燃え尽き症候群になりやすいでしょう。
高いノルマ、長時間労働、仕事以外にプライベートでも悩みがあるといった状況は、燃え尽き症候群の発症リスクを高めます。
燃え尽き症候群になりやすい環境要因のなかでも、とくに職場環境は重要な要素になります。
燃え尽き症候群(バーンアウト)になりやすい職場の特徴
社会人にとって、職場は1日の多くの時間を過ごす場所であり、個人に与える影響も大きいでしょう。
燃え尽き症候群になりやすい職場の特徴について紹介します。
仕事を強要される環境
「このくらいできて当たり前」「個人の営業ノルマの達成が必須」など、仕事を強要されるような環境にいると、つねに強いプレッシャーにさらされ、ストレスとなります。
とくに責任感が強い人の場合、求められた成果や仕事量を達成しようと、能力以上に頑張ってしまい消耗する原因となります。
残業や休日出勤などが多い環境
残業や休日出勤が多いなど長時間労働の環境下では、心身を休めることができません。
疲れを感じても休みたいときに休みづらく、限界を超えてしまい、燃え尽き症候群を発症しやすくなります。
優秀な社員に仕事が偏っている環境
特定の社員に仕事が偏ると、その社員の負荷が増え、心身の疲労につながりやすいでしょう。
仕事の偏りによる不公平感もストレスを悪化させ、燃え尽き症候群を引き起こしやすくなります。
評価実感が得られない環境
仕事のモチベーションを維持するうえで、周囲からの肯定的な評価は重要です。
仕事の頑張りや成果に対して正当な評価が得られないと、やりがいを感じられず燃え尽き症候群を引き起こしやすくなります。
職場における評価の基準があいまいな場合や、上司や周囲からのねぎらいがない場合、社員にとってはとくに評価の実感を得にくい状況といえるでしょう。
ワークライフバランスが機能していない環境
オンとオフの切り替えといったワークライフバランスがとれていない状況では、心身の疲労が積み重なり、燃え尽き症候群を引き起こしやすくなります。
自分の時間が持てないと、疲れもとれず人生の充実感も得にくいなど、さまざまなデメリットがあります。
心身の健康を保って仕事を長く続けていくためには、ワークライフバランスのとれた生活が重要です。
燃え尽き症候群(バーンアウト)の兆候
以下のような兆候がみられたときは、燃え尽き症候群の可能性があります。
- 急にやる気を失った
- 仕事に集中できなくなった
- 遅刻や欠勤をするようになった
- 周囲に対してそっけない態度になった
- 髪型や服装など身だしなみに気を使わなくなった
これまでとは違って上記のような兆候がみられた場合、燃え尽き症候群の可能性を検討してみましょう。
燃え尽き症候群(バーンアウト)の対処法
燃え尽き症候群に対して、個人ができる対処法について紹介します。
燃え尽き症候群にならないためには、心身を休める時間の確保が重要です。
- 残業が続いている場合、早めに帰る
- 趣味など自分の時間をもつようにする
- 信頼して相談できる相手を職場に見つけて、ストレスを減らす
- 勤務時間外は、仕事の連絡を確認しないなど、オンオフのメリハリをつける
- 業務量が多く負担になっている場合、上司などに相談し業務量を減らしてもらう
燃え尽き症候群(バーンアウト)を予防するために企業ができること
職場のメンタルヘルスに対する関心の高まりから、企業にとっても社員の燃え尽き症候群を予防することは重要です。
企業が、社員の燃え尽き症候群を予防するためにできることの一例として、以下のような方法があげられます。
- 心理的安全性の高い職場環境づくり
- メンターなどの業務と切り離した相談役の設置
- 社員の変化に気づける職場環境の醸成
- 復帰支援や試し出勤の導入
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
企業が社員の燃え尽き症候群を予防するためにできることを紹介します。
心理的安全性の高い職場環境をつくる
職場における心理的安全性が確保されていないと、常に緊張感の高い状態で仕事をしなければならず、社員も疲弊しやすくなります。
心理的安全性が確保されていれば、オーバーワークのときに周囲に助けも求めやすく、不調時に休みもとりやすいなど、燃え尽き症候群を防ぐことが可能です。
メンターなど業務と切り離した相談役を設ける
社員にとって、安心して相談できる相手がいれば、それだけで安心感につながるほか、実際になにかトラブルを抱えているときにも1人で抱え込まずに済むでしょう。
「直属の上司が苦手という話は、同じ係の人にはしづらい」「周りが頑張っているのに、自分だけつらいとはいいづらい」など、周囲の身近な相手だからこそ相談しづらいこともあります。
企業側が、別部署など業務とは切り離されたメンターを設定することで、社員の精神的なサポートが可能です。
社員の変化に気づける職場環境を醸成する
普段とは違う様子がみられたときに周囲が気づいてフォローすることができれば、燃え尽き症候群を事前に予防できる可能性があります。
そのためにはできるだけ早い段階で、社員の態度や身だしなみなどの変化に周囲が気づける状態になっている必要があります。
研修の実施や、管理職が率先して社員の変化に気づいて声かけするなど、職場全体として社員の変化に気づきやすい環境づくりをうながしましょう。
復帰支援や試し出勤を導入する
すでに燃え尽き症候群となってしまっている社員がいる場合、会社としても勤務時間や業務内容の調整などの復職支援や試し出勤を導入することで、社員も復帰がしやすくなるでしょう。
復職支援の制度が整っていれば、不調の社員も安心して仕事を休めるようになります。
社員のメンタルヘルスに対する関心の高さを社員にアピールすることもできるので、復職支援などの制度の導入も検討してみましょう。
燃え尽き症候群は企業で予防にとりくみましょう
職場のメンタルヘルスに対する世間の関心は高まりつつあります。
燃え尽き症候群についても、企業として予防にとりくむ必要があるでしょう。
リモートワークの増加により、オンとオフのメリハリがつけにくく、長時間労働をしてしまうケースや、社員が同僚とのコミュニケーションに難しさを感じているケースも少なくありません。
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メールほど形式ばったコミュニケーションではないため、チャットツールなら気軽にやりとりができます。
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燃え尽き症候群の予防に、ビジネスチャット「Chatwork」の活用もぜひ検討してみてください。
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[※1]出典: e-ヘルスネット(厚生労働省)「バーンアウトシンドローム」
https://ehn8.grtt.co.jp/information/keywords/burnout-syndrome
[※2]出典:WHO「ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics」
https://icd.who.int/browse/2024-01/mms/en#129180281
※本記事は、2022年8月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。