「デザイン経営」の意味とは?企業価値を高める理由や手法をわかりやすく解説

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「デザイン経営」の意味とは?企業価値を高める理由や手法をわかりやすく解説

目次

デザイン経営とは、企業イメージの構築やイノベーション創出を、デザインの力を活用しておこなう経営手法です。

デザイン経営をとりいれることで、独自性が高い価値提供を顧客におこなえるということで、日本でも注目を集めている経営手法です。

デザイン経営の概要や効果、とりくみ方法を、企業事例を交えて解説します。

デザイン経営とは

「デザイン経営」とは、デザインのもつ力を活かして、企業イメージの構築やイノベーションの創出をおこなう経営手法のことです。

デザイン経営を推進する特許庁は、デザイン経営の目的を以下のように定義づけています。

その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。
[※1]

デザイン経営を採用する企業が増えた背景には、第四次産業革命以降のソフトウェアやAI技術の発達があります。

デジタル技術が発達したことで、従来のように店頭に訪れる機会よりも、オンライン上で商品を購入したり、サービスをうけたりする機会が増えつつあります。

このような流れのなかで、消費者の意識や行動も変化し、「顧客体験の質」を重視する価値観が一般化しつつあります。

この変化の影響で、顧客の心に訴えかける「デザイン」に力を入れる企業が増加したのです。[※2]

デザインに力を入れた「デザイン経営」をおこなうことで、企業がもつ独自の価値を顧客に提供でき、他企業との差別化をはかることもできるようになります。

デザイン経営が注目される背景

経済産業省や特許庁が推進する「デザイン経営」ですが、なぜ注目を集めているのでしょうか。

その背景には、デジタル技術の急速な発展と、消費者が重視する価値観の変化があります。

今後の消費の中心を担っていくとして注目を集めている「Z世代」は、歴史ある企業やブランドの魅力よりも、自分が価値を感じるものや、共感性をもてる商品に魅力を感じる傾向があります。

このような消費者の価値観の変化にともない、商品やサービスの質にくわえて、「サービスにかける思い」や「商品が生まれた背景」などの企業独自の価値観が、ビジネスの成功に影響を与えるようになっています。

そのため、柔軟な発想をもちいて、ブランドの独自の価値を提供することが、他社と差別化をはかるうえで重要性を増すようになりました。

日本でも、デザインに力を入れて企業の差別化を図ることが必要であるとして、経済産業省の特許庁は、2017年7月に「産業競争力とデザインを考える研究会」を立ちあげ、2018年5月に「デザイン宣言」をとりまとめました。

欧米で高い競争優位性をもつデザイン力は、今後日本での重要性がさらに増していくと考えられます。

>Z世代の価値観とは?に関する記事はこちら

デザイン経営の効果とは

デザインの力を経営に活かすことで、競合優位性を保って、高い利益をあげることができるとされています。

実際に、デザイン経営を採用する企業が多い欧米では、サービスや商品に独自のブランドの付加価値をつけることで、多くの企業が顧客を惹きつけることに成功しています。

経済産業省・特許庁が提唱する『「デザイン経営」宣言』においては、デザインの投資効果について以下のように語られています。

例えば、British Design Councilは、デザインに投資すると、その4倍の利益を得られると発表した。また、Design Value Indexは、S&P500全体と比較して過去10年間で2.1倍成長したことを明らかにした。
[※3]

一例として、iPhoneを世に普及させたAppleは、製品のデザインを、無駄な要素をそぎ落とした洗練されたものに統一することで、顧客に新しい価値提供をおこなうことに成功しています。

また、日本のある掃除機メーカーは、高品質な製品を彷彿とさせる上質なデザイン性にこだわったことで、ほかのメーカーとの差別化を実現したブランドを確立しています。

このような事例からも、商品やサービスに「デザイン」の思考を活かすことで、ビジネスに成功する企業が増えていることがわかります。

「デザイン経営宣言」とは

『「デザイン経営」宣言』とは、経済産業省・特許庁が2018年5月にとりまとめた報告書のことで、デザイン経営の効果や、中小企業がデザイン経営を実践するための具体的なとりくみが記載されています。

デザイン経営宣言のなかで語られている、企業競争性を生み出すデザイン経営の効果についてみていきましょう。

ブランド力の向上

デザインを活用することで、企業独自の価値観や理念、顧客に提供したいことを表現することができます。

ここにおける「デザイン」とは、商品の見た目のことだけではなく、商品やサービスを通して、企業と顧客が接点をもつあらゆるポイントで、企業の価値観や理念を一貫したメッセージで伝えることを指します。

このメッセージが顧客に伝わることで、ほかの企業では実現できないブランド価値を顧客に伝えることができ、これができれば、デザインを活用したブランド構築に成功したと言えるでしょう。

>ブランディングを実施するメリットと成功事例に関する記事はこちら

イノベーション力の向上

デザインは、人々の表面化していない潜在的なニーズを発見し育てていく力ももっています。

『「デザイン経営」宣言』では、デザインやデザイナーには以下のような力があるとしています。

デザインは、人々が気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく営みでもあるからだ。供給側の思い込みを排除し、対象に影響を与えないように観察する。そうして気づいた潜在的なニーズを、企業の価値と意志に照らし合わせる。
[※4]

デザインには、企業の提供価値と、思い込みを排除したことで得た発想を組みあわせて、事業化する「イノベーション力」があるのです。

デザインの力を活用することで、競合優位性が高い新規の事業展開をおこなうことができるでしょう。

デザイン経営の定義・条件とは

企業成長のために注目されている「デザイン経営」ですが、どのような企業がデザイン経営をおこなっているといえるのでしょうか。

経済産業省・特許庁が提唱する『「デザイン経営」宣言』のなかでは、デザイン経営が成立する定義・条件として、2つの事項がそなわっている必要があるとしています。

デザイン経営の定義・条件について確認していきましょう。

デザイン責任者がいること

ひとつ目の条件として、経営にデザインを組みこむため、経営層にデザイン責任者をいれることがあげられています。

経済産業省・特許庁が提唱する『「デザイン経営」宣言』では、デザイン責任者の定義が、以下のように語られています。

[※]
デザイン責任者とは、製品・サービス・事業が顧客起点で考えられているかどうか、又はブランド形成に資するものであるかどうかを判断し、必要な業務プロセスの変更を具体的に構想するスキルを持つ者をいう。
[※5]

デザインスキルのみならず、顧客の潜在ニーズを理解しながら、業務モデルやプロセスを考えられる人材が理想です。

>デザイン思考とは?に関する記事はこちら

事業戦略の構築からデザインが関与すること

もうひとつの条件は、事業戦略の最上流の構築段階から、デザインが関与していることです。

企業独自の価値を提供するためには、事業戦略の構築段階からデザインが関与することが必要不可欠です。

実際に、企業独自のブランド価値を確立し、顧客から高い人気を誇っている企業は、事業の中核にデザインが関与しています。

デザイン経営にとりくむ方法

ここまでデザイン経営の概要や条件を確認してきましたが、実際にデザイン経営を採用したい場合、どのようにとりくめばいいのでしょうか。

デザイン経営にとりくむ際は、『「デザイン経営」宣言』を参考に、以下の5つのステップを確認していきましょう。

  1. デザイン責任者をたてる
  2. 事業戦略の構築にデザイナーを参画させる
  3. デザイン経営の推進チームをつくる
  4. デザイン人材の採用をおこなう
  5. デザイン手法で顧客ニーズを発見する

デザイン経営を企業にとりいれ、実践する方法を解説します 。

(1):デザイン責任者をたてる

まずは、経営の中核にデザインを関連づけ、デザイン責任者を経営層に参画させましょう。

デザインについてこまめなコミュニケーションをとりながら、経営戦略や事業構想を練っていく必要があります。

(2):事業戦略の構築にデザイナーを参画させる

デザイン経営の条件にもあったように、事業戦略や製品、サービス開発の最上流段階からデザイナーを参画させる必要があります。

デザインそのものが、企業の価値をつくりながら独自性を生み出し、顧客満足度に直結することを念頭におくことが大切です。

(3):デザイン経営の推進チームをつくる

組織の中心部隊にデザイン経営を推し進めるチームをつくり、さまざまな部署と連携しながら、横断的に業務を進めていく必要があります。

ここでいう「デザイン」とは、商品の見た目のことではなく、事業戦略の中核を担う「デザイン」のことです。

そのため、社内のさまざまな部署が横断的に連携し、事業運営をおこなう必要があります。

(4):デザイン人材の採用をおこなう

経営戦略や計画、事業構想や理念にマッチしたデザイン人材の採用をおこなうことも、持続的な企業成長を目指すうえでは重要です。

顧客に提供したい企業独自の価値やブランド構想を理解し、それを落とし込んで具現化・体現化・利益につなげることができる人材が望ましいでしょう。

また、新規のデザイン人材を採用することと並行して、社内でデザイン教育をおこなうことも進めましょう。

事業戦略の中核に「デザイン」をおくため、さまざまな部門の従業員が、デザインについて理解をもっていることが大切です。

(5):デザイン手法で顧客ニーズを発見する

デザイン経営の効果でも確認した通り、デザインには、顧客の表面化していないニーズを具現化する力があります。

デザイン手法を経営にとりいれ、実践し、顧客が真に求めているニーズの発見に努めましょう。

「観察・仮説構築・施策・再仮説構築」のプロセスを反復することで、質とスピードを両立しながら、イノベーション力向上をはかることができます。

上記のサイクルにとりくむ際に、結果や成果を確認する指標の作成が難しい場合もありますが、長期的な企業価値向上を目指すためには、指標の策定も大切な要素となります。

企業独自の価値を顧客に提供するうえで、重要となる数字などを指標として設けるようにしましょう。

デザイン経営の成功事例

ここまでデザイン経営の概要や実践方法について確認してきましたが、より具体的なイメージをもつために、デザイン経営の事例をみていきましょう。

貼箱メーカー

ある貼箱メーカーは、価格競争に陥りがちな業界特性のなかで、企業の卓越性を顧客に対して訴求できていないことに課題を感じていました。

このような課題を解決するために、企業ビジョンの構築からデザイナーを交え、企業独自の手貼り技術を活かした製品開発を実践しました。

この製品は、自社商品ではじめてのグッドデザイン賞を受賞することに成功しました。

この企業は、その後もデザイナーとのつながり拡大をはかり、SDGsの観点も含めた製品開発などで、コロナ禍においても売上拡大に成功しています。[※6]

食品製造企業

150年以上続く味噌醤油重蔵元では、日本が世界のなかで競争優位に立つためには「伝統的な価値の再構築」が必要だと考え、リブランディングを実施しました。

現在は、Webサイトやパッケージのデザインに力をいれ、企業の歴史やビジョン、さまざまなとりくみ内容を発信しています。

また、ギャラリー併設のカフェでは、建築家やアーティストなどとコラボをおこない、独自のブランド構築に成功しています。[※6]

デザイン経営の推進に「Chatwork」を活用しよう

デザイン経営とは、デザインの力を活かして、企業価値の向上や、イノベーションの創出をはかる経営手法で、世界各国の企業で採用されています。

企業独自の価値観を提供したい企業や、競合優位性を高めたい企業は、経済産業省・特許庁がとりまとめている『「デザイン経営」宣言』や、「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック『みんなのデザイン経営』」を参考に、とりくみを検討してみましょう。

デザイン経営の定義や条件、とりくみ方法にくわえて、複数の企業事例に触れることによって、自社へ活かすヒントとなるはずです。

デザイン経営にとりくむ際には、上述の解説を参考にしながら、社内外のコミュニケーションを活性化していくことが重要です。

コミュニケーションを活発にする手段として、ビジネスチャットの活用がおすすめです。

ビジネスチャット「Chatwork」は、離れた場所にいても、迅速なコミュニケーションを簡単に実現できるビジネスツールです。

デザイナーを招いた新規事業のアイデア出しのブレインストーミングや、事業構想のブラッシュアップなど、さまざまな場面で使用することができます。

チャット形式のコミュニケーションだけでなく、ビデオ/音声通話も可能なため、必要に応じて最適なコミュニケーション方法を選択することができます。

>Chatworkを活用するメリットに関する記事はこちら

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[※1]引用:経済産業省「特許庁はデザイン経営を推進しています」
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html

[※2]参考:経済産業省「「デザイン経営」宣⾔ 3. 産業とデザインの遷移」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180523001_01.pdf

[※3]引用:経済産業省「「デザイン経営」宣⾔ 5. デザインの投資効果」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180523001_01.pdf

[※4]引用:経済産業省「「デザイン経営」宣⾔ 1. 「デザイン経営」の役割」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180523001_01.pdf

[※5]引用:経済産業省「「デザイン経営」宣⾔ 6. 「デザイン経営」の定義」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180523001_01.pdf

[※6]参考:特許庁「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック」
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei/document/chusho/chusho-handbook.pdf


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