産業医とは?医師との違いや役割、選任が必要な企業をわかりやすく解説

働き方改革
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目次

近年、職場におけるメンタルヘルスについての関心が高まっています。

働きすぎや職場でのストレスにより、心身の病気にかかってしまう人は少なくありません。

職場に関する悩みによって、自殺してしまうケースもあります。

企業が社員のメンタルヘルス対策を行ううえでは、専門家である「産業医」の活用が重要です。

この記事では、産業医が必要な企業の要件、費用の相場や選任する際の流れについて紹介します。

産業医とは

産業医とは、医師免許を持った医師で、さらには厚生労働省が定める要件を満たし、従業員の健康管理についての医学的な専門知識を持った人のことです。

 

厚生労働省が定める産業医の要件

厚生労働省は、産業医の要件について以下のように定めています。[※1]

  • 厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
  • 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者
 

産業医と医師の違いとは

病院などの医師は、患者の診断や治療をおこないます。

一方で、産業医は、企業において従業員が働けるかどうかを判断する医師です。

産業医は、診断や治療をおこなわず、必要な場合には医療機関を紹介します。

たとえば、患者が復職を希望した場合、治療をおこなっている主治医は、患者の職場環境や業務内容の実際について、全てを把握できてはいません。

そこで、職場や業務についてよりよく理解している産業医が、従業員の復職の可否を判断します。

産業医を選任しなければいけない企業

常時50人以上の従業員労働者がいる場合、産業医1名の選任が必要です。[[※3]]

従業員労働者50人未満の企業には、産業医を選任する義務はありません。

従業員労働者の数によって選任する産業医の数や、「専属産業医」か「嘱託産業医」どちらが必要なのかは異なります。

 

必要な産業医の人数は何人?

従業員労働者の数と必要な産業医の人数は以下のとおりです。[※3]

  • 従業員労働者50~499人:1人(嘱託)
  • 従業員労働者500~999人:1人(業務による)
  • 従業員労働者1000~3000人:1人(専属)
  • 従業員労働者3001人以上:2人(専属)

事業場が、以下の特定の有害な業務に従業員労働者500人以上が従事する場合、専属の産業医が必要となります。[[※3]]

  • 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物の取扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 坑内における業務
  • 深夜業を含む業務
  • 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務
 

嘱託産業医と専属産業医の違い

従業員労働者が50〜999人の場合は、嘱託(非常勤)での産業医の選任が可能です。

嘱託産業医は、普段は他の病院や自身で開業している病院に勤務していることが多いとされています。

従業員労働者が1000人以上、または特定の業務をおこなう従業員労働者が500人以上の事業場で必要になるのが、専属産業医です。

事業場に常勤として所属する形となります。

産業医の仕事内容・役割

産業医が具体的にどのような仕事をしているのか紹介します。

健康診断のチェックやフォロー

産業医は、健康診断の結果をチェックしたあと、必要な場合には従業員と面談し、適切な指導や助言をおこないます。

健康診断は実施するだけではなく、その結果から従業員の健康状態を把握し、心身の疾患に対する予防や治療を早期に対応することが大切です。

健康診断の結果によっては、従業員の休職、時短勤務や配置換えといった措置の必要性について、産業医の意見が必要になるケースもあります。

 

安全衛生委員会への出席

常時使用する従業員が50人以上の事業場では、安全衛生委員会を開催する必要があります。[※2]

安全衛生委員会とは、従業員が安全で健康に働くために必要な対策を話し合う機会のことで、産業医の出席が望ましいとされています。

企業や従業員からの提案(休憩室の確保、ノー残業デーの実施など)について話し合ったり、各部署の残業時間を確認したりなど、内容や話し合いの時間は企業によってさまざまです。

産業医による講話をおこなっている企業もあります。

 

職場の巡視

厚生労働省の労働安全衛生規則で、毎月一回(条件を満たしている場合は2か月に一回)、産業医による定期巡視をおこなうよう定められています。[※3]

安全面や衛生面などから、危険な場所はないか、照明や空調など作業環境は適切かといった職場環境の確認・改善のアドバイスをおこなうことも、産業医の役割のひとつです。

面談

従業員の残業時間やストレスチェックの結果によっては、産業医との面談が必要になります。

従業員が復職する際にも、復職できるのか判断するために、産業医による面談を実施することがあります。

また、メンタル不調の従業員がいる現場の管理者や人事労務担当に、適切な助言をすることも産業医の仕事のひとつです。

職場のメンタルヘルス対策において、従業員と面談し、必要な指導・助言をおこなうことは、産業医の大切な役割といえるでしょう。

産業医を選任するときの流れ

実際に産業医を選任するときの大まかな流れは以下のとおりです。

産業医の選任目的を決める

産業医を選任する目的というと「従業員が50人以上で、選任要件を満たしたから」というケースも多いかもしれません。

しかし、それ以外にも「社内の長時間従業員労働者を減らしたい」「社内にいる心身の不調者への対応について適切な助言が欲しい」など、産業医選任の目的を事前に明確にしておくと、より会社に合ったメンタルヘルス対策ができます。

目的に合った産業医を探し、契約する

産業医も得意分野や経験は異なります。

女性が多い会社なら、女性の産業医を選ぶなど目的にあった産業医を選ぶようにしましょう。

具体的な業務内容や訪問回数、報酬などを相談し、必要があれば見積もりなども提出してもらいながら、産業医を選びましょう。

選任の際は、複数の産業医を比較検討して選ぶのもおすすめです。

産業医選任報告書を提出

産業医の選任後は、管轄の労働基準監督署に「産業医選任報告書」を提出する必要があります。

必ず忘れないようにしましょう。

産業医選任による影響を確認する

実際に産業医を選任したあとも、社内での評判について聞き取りをしましょう。

従業員のメンタルヘルスや業務効率に変化はあったかなど、アンケートや健康診断の結果から影響を確認してみるのも大切です。

産業医を選任するメリット

産業医を選任することによって、専門家の助言を受けながら職場のメンタルヘルス対策をおこなうことが可能です。

従業員が健康に働き続けることができれば、企業にとっても生産性の向上といったメリットがあるでしょう。

また、産業医を選任しているということは、企業として必要な対策をとっているという、外部からみたときの企業イメージ向上の効果もあります。

産業医を選任することは、従業員はもちろん企業にとってもさまざまなメリットがあるといえます。

 

産業医の費用の相場

産業医の費用相場は、業務内容や地域などによって変動します。

たとえば、専属産業医の場合、週1日勤務で年間300~400万円、週3~4日勤務で年1000~1500万円程度が相場です。

嘱託産業医の場合、費用の目安は以下のとおりです。[※4]

従業員(人) 基本報酬月額(円)
50人未満 75,000~
50~199 100,000~
200~399 150,000~
400~599 200,000~
600~999 250,000~

産業医の役割を理解してよりよいメンタルヘルス対策を

近年、職場のメンタルヘルスへの関心の高まりから、企業にとっても従業員の健康の維持や回復は重要な問題です。

しかし、社内だけでは適切な助言や指導が難しいこともあるでしょう。

専門家である産業医と連携すれば、企業としてよりよい課題解決が可能となります。

産業医の仕組みや役割を理解し、企業として効果的なメンタルヘルス対策に取り組んでいきましょう。

[※1]厚生労働省「産業医について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103897.pdf

[※2]厚生労働省「安全衛生委員会を設置しましょう」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0902-2a.pdf

[※3]厚生労働省「労働安全衛生規則」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74003000&dataType=0&pageNo=1

[※4]公益社団法人日本橋医師会「産業医報酬基準額について 」
https://www.nihonbashi-med.com/topics/topic_file32_1460600097.pdf

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Chatworkの中の人です。お役立ちコラムの編集者として、ワークスタイルの変化に伴うコミュニケーションと組織のあり方など発信していきます。

記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)

臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信中。

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