【社労士監修】過重労働とは?定義や基準、会社がとりくむべき対策について解説
目次
働き方改革がスタートし、ひと昔前では当たり前のようにおこなわれていたサービス残業も、コンプライアンスの観点から改善の兆候が見られるようになりました。
しかし、未だに長時間労働を強制する風潮が残る職場も少なくないのが現状であり、過重労働によって心身ともに疲弊し、過労死や自殺に至る悲しいケースが後を絶ちません。
この記事では、過重労働の定義、過重労働防止の目的でなされた直近の法改正に加え、過重労働の原因や、これを防ぐための施策についてわかりやすく解説しています。
過重労働とは
過重労働は、一般的には長時間にわたる時間外労働や、不規則な勤務、度重なる休日労働等により、身体・精神的に強い負荷がかかる労働を指します。
過重労働の状態のまま勤務を続けると心身ともに疲弊し、最悪の場合、過労死や過労自殺といった事態を招くことにもなります。
労働基準法の改正のポイント
労働基準法は、労働条件の最低基準を定めたルールであり、もちろん長時間労働についても規制しているものの、労働基準法が制定された1947年から改正を経ても、長時間労働による職場のトラブルは、未だに多く見受けられます。
2019年に施行されたの働き方改革関連法によって、労働基準法は更に改正されることとなりました。
改正点は複数ありますが、なかでも大きな改正点として、時間外労働の上限が設けられることとなり、罰則規定を定めることでより実効性の高い内容となりました。
改正前は残業させ放題?
長時間労働を規制する役割を担う労働基準法ですが、改正前は時間外労働の上限については、明確な基準を定めていませんでした。
法定労働時間である一日8時間、一週間40時間(※一部例外あり)を超える労働は原則禁止としつつも、労使の取り決め(いわゆる労使協定)などにより、例外的に時間外労働を認めるといった運用となっていました。
しかし、この労使の取り決めにおいて定める時間外労働の時間数上限については、とくに制限は規定されていなかったのです。
ある程度の「目安」は存在していましたが、あくまでも告示であり、罰則も規定されていないため、過重労働レベルの時間外労働を抑制するという観点では実効性に疑問が残りました。
2019年の改正点
実質的に、上限が定められていなかった時間外労働ですが、2019年4月より、一ヵ月45時間、年間360時間以内としたうえで、特別な事情の場合、労使で合意した場合であっても時間外労働を年間720時間以内に収めなくてはいけないといったルールに改められました。
また、上限の中で、一ヵ月ごとの時間外及び休日労働の上限は100時間未満、2~6か月の平均で計算しても80時間以内に抑えるといった規定も盛り込まれました。
違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される規定も追加され、より実効性の高いものとなりました。
長時間労働がもたらす影響
長時間の労働は、勤務時の負荷だけでなく、休養時間・睡眠時間の圧縮により、疲労を蓄積し、労働者自身の心身に悪影響を及ぼします。
過重労働は過労死のリスクも
長時間労働がもたらす弊害として、労働者自身の過労による疲労の蓄積から脳血管疾患や虚血性心疾患を発症し、最悪死に至ることがあります。
また、過労によるストレスは、精神にも影響を及ぼし、自殺に発展するケースさえあります。
過労死やうつ病は、労働者本人だけでなく、その家族にも多大な影響を与える一方、会社にとっても多額の損害賠償を支払うことになりかねません。
過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは
過重労働による問題が後を絶たない現状に対応するため、2015年、IT技術に長けた労働基準監督官を中心に、過重労働撲滅特別対策班(以下、かとく)が組織されました。
「かとく」は、悪質なブラック企業を対象に「悪質な長時間労働の対策強化」「過重労働、過労死の防止」のために結成された、スペシャリストの集団です。
「悪質なブラック企業」に焦点を当てた活動をおこなっていることから、「かとく」が介入した案件には、経営者が書類送検されるケースも多くあり、結果として一般企業に対する抑止力にもつながっています。
過重労働が発生する要因
過重労働が発生する要因について解説します。
人材不足
会社が利益を追求するには、「売上を成長させる」または「経費を削減する」ことが必須です。
その結果、会社としては、必要最低限の人手(人件費)で最大限の効果を得ることを労働者側に求めることになり、労働者一人当たりの業務量、負担は増加していくことになります。
一人あたりの労働者がこなせる業務量には、当然限界がありますが、経済が低迷している昨今、企業の利益を確保するためには、この限界付近の労働を強制せざるを得ない現状があるのもまた、事実といえます。
長時間労働が評価される環境
最近でこそ改善の兆しが見られますが、長時間働くことを美徳ととらえている人も多くいます。
高度経済成長期のような右肩上がりの時代に見受けられた、長時間残業も厭わない、いわゆる企業戦士のような存在が、日本の発展の礎になったことが背景にあるからかもしれません。
しかし、経済が低迷し、労働に対する十分なインセンティブが期待できない職場が多い現代においては、心身を蝕むような長時間労働だけを求める企業は、もはや社会的にも認められない風潮となりました。
過重労働を防ぐ方法
過重労働を防ぐためには、企業側のとりくみが必要不可欠です。
今回は、対策方法の一例として、以下の取り組みを紹介します。
- 労働時間の適正な把握
- 業務量の見直しと効率化
- 衛生委員会・安全委員会の活用
- 産業医の面接指導
- 全社の意識改革
従業員が健康的に働ける職場環境を整えるためにも、それぞれの項目を詳しくみていきましょう。
労働時間の適正な把握
過重労働防止の施策を講じる前に、まずは自社における労働時間の実態を把握しましょう。
労働基準法は、労働時間の制限について最低限の基準を示しているため、自社の労働時間と法で定められている制限との間に、どれほどの乖離があるのかを認識しないといけません。
なぜなら、どれほど残業時間を削減すればいいのかわからないため、効果的な施策を打つことが難しくなるからです。
労働時間の管理があやふやである場合は、出勤簿やタイムカードを整備して、まずは労働時間の見える化を実現させましょう。
業務量の見直しと効率化
利益を出すために、限られた人員で業務を遂行せざるを得ない現状が過重労働の原因の一つとなっているため、必要性が怪しいものや重複するものがあれば、思い切ってワークフローから削除するなどの見直しをおこないましょう。
また、IT技術が進化している昨今では、業務効率化に活用できる様々なツールが溢れているため、活用すれば業務の質、スピード共に劇的に改善することも可能です。
もちろん導入費用はかかりますが、人件費と比較してコストダウンできる可能性が高く、これまで人力でやっていた作業を自動化できれば、ヒューマンエラーの心配がなくなるなど、メリットは数多くあるでしょう。
衛生委員会・安全委員会を活用する
一定規模以上の企業は、衛生委員会・安全委員会を設置する義務があります。
衛生委員会は常時使用する労働者が50人以上、安全委員会は、常時使用する労働者が50人以上(ただし業種によっては100人以上)の規模であれば設置義務が課せられます。
これらの委員会は、職場における衛生環境、安全性を確保する目的のうえ、月に一回委員会を開催し、必要事項に関する調査審議をおこない、その議事内容を記録・保存し労働者に周知する必要があります。
過重労働に関する事項も、対象範囲です。
委員会のメンバーは、使用者、労働者、安全管理者、衛生管理者、産業医で構成されており、労働者側の意見が十分に聴取できる機会もあるため、一定規模以上の企業においては、委員会で意見をとりまとめて、過重労働対策の方向性を探るといった手段をとることもできます。
産業医との面接指導をおこなう
労働基準法の改正にともない、時間外労働が一定の時間数を超過した労働者に対して、労働者自身の申出に基づき(時間外労働の多寡によっては申出がなくても)、医師による面接指導をおこなうことが義務付けられました。
会社は、面接指導の結果や医師の意見を基に、労働者の健康確保のため、職場の配置転換や業務転換などの必要な措置を講ずることが求められます。
全社の意識改革をおこなう
日本では未だに長時間労働を美徳とする風潮が根強く残っており、上層部で過重労働防止の意識があっても、組織の末端までは行き届かず、現場では長時間労働が横行しているケースも見受けられます。
コンプライアンスのもと、過重労働につながる時間外労働は禁止することを、トップダウンで意識共有をおこなわなければ、過重労働防止の共通認識はなかなか醸成されません。
定期的に上層部から情報発信をおこない、全社の意識改革を目指しましょう。
Chatworkで過重労働をなくす取り組みを
先述の通り、限られた人員で業務遂行する上で、過重労働に繋がる長時間労働を防ぐには、ツールを利用した業務効率の改善も効果的な手法の一つとなります。
Chatworkは、シンプルで誰でも分かりやすいチャット機能で、社内の情報共有・タスク管理を効率化できるツールとして高い評価を頂いております。
まずは無料で始めて頂くことが可能です。社内外における連携、会議に関するコストを削減頂き、メリハリのあるタスク管理を実現し業務効率改善にお役立てください。
未だに多くの企業においては、利益確保のため、過重労働に発展しかねない長時間労働を強制せざるを得ない実態が見受けられます。
目の前の利益確保に奔走する前に、少しずつでも、業務効率化の取組を進め労働者が健康的に働ける職場づくりを実現しましょう。
限られた人員で業務遂行するうえで、過重労働に繋がる長時間労働を防ぐには、ツールを利用した業務効率の改善も効果的な手法のひとつです。
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記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートを行う。