【社労士監修】週休3日制のメリットとは?事例付きで導入のポイントを解説
目次
働き方改革やコロナ禍の影響もあり、週休3日制を導入する試みが大企業を中心に少しずつ増えており、政府も週休3日制を推奨する方針を打ち出しています
少子高齢化や働き方の多様化が加速する日本で、注目されつつある週休3日制のメリット・デメリット、導入事例や、実際導入するにあたって注意すべきポイントについても解説しています。
週休3日制とは
休日制度は、1週間に2日間休日が定められていている「週休2日制」「完全週休2日制」が一般的ですが、これを1週間に3日間の休日とする休日制度が「週休3日制」です。
働き方の多様化への対応や人材確保の為の打ち手として、大企業も注目する制度となっています。
日本国内の週休3日制の導入状況
週休3日制を導入する企業は、日本国内では少数の状況ではありますが、大企業を中心に試験的に制度を導入し、その効果検証をおこなっている段階といえます。
一方で、海外では欧米諸国では週休3日制を導入する企業も増えており、新しい就労スタイルのひとつとして現実的な選択肢になりつつあります。
週休3日制が注目されている背景
あらゆる業界で人材不足が深刻な問題になりつつある昨今、優秀な人材の確保・離職を防ぐひとつの施策として、ワークライフバランスを重視する流れがあります。
人材不足が進展してしまうと、高齢者や子育て世代の女性、外国人といった幅広い労働者層を積極的に起用しなければ、人材を確保できなくなります。
体力や家庭の事情、価値観の相違などの事由により、今まで一般的であった週5日間の勤務の枠に収まることが難しい層にも、働きやすい職場や制度が求められる傾向にあるため、週休3日制が注目され、一部の大企業でも採用されている背景となっています。
>ワークライフバランスに取り組むメリットとは?に関する記事はこちら
週休3日制の種類
週休3日制といっても、ただ休みが増えるだけとは限りません。
採用する企業によって、複数のバリエーションがあり、給与と労働時間の2つの要素を、環境や事情にあわせて使いわけています。
今回は、以下の3つの代表的な種類について解説します。
- 給与減額型
- 総労働時間維持型
- 給与維持型
それぞれの詳しい内容を確認していきましょう。
給与減額型
給与減額型は、労働時間を減らす一方で給与水準も下げる方式です。
仕組みとしてはシンプルですが、給与水準が下がることに抵抗を覚える従業員も一定数存在することから、希望者に限り週休3日制を適用するといった運用が一般的です。
総労働時間維持型
総労働時間維持型とは、一週間あたりの休みを増やすかわりに、一日の労働時間を増やして、トータルの労働時間数を変えず給与水準もそのままという方式です。
一般的な法定の労働時間は一日8時間、一週間で40時間という形が通常です。
この方式による週休3日制では、わかりやすい例としては、1日10時間×週4勤務で40時間といった勤務形態となります。
一日あたりの負荷は高くなりますが、メリハリの利いたワークスタイルを望む従業員にとっては、給与水準も変わらないのでメリットがあります。
給与維持型
給与維持型は、休みを増やして給与水準は据え置きという方式です。
従業員にとっては最もメリットのある週休3日制といえます。
給与が変わらない一方で労働時間は減るため、一日あたりの生産性を向上させないと企業活動に大きなダメージが生じるリスクもあります。
導入にあたっては、これまでの業務フローを洗い直して無駄を省く、ITツールを活用して省人化するといったとりくみを同時に検討する必要があります。
週休3日制を導入するメリット
週休3日制を導入するメリットについて解説します。
ワークライフバランスによる人材確保
働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響をきっかけに、働き方の多様化が進む昨今、従来の週休2日制では、個々人が希望するライフスタイルの実現が難しくなるケースも見受けられることでしょう。
たとえば、家族の介護に専念したいが、週休2日制ではどうしても時間が限定されてしまうこともあり、就職の際の懸念事項となる、または離職にもつながることとなります。
週休3日制にすれば、ライフスタイルとの両立も容易となり、その結果、週休3日制を導入していることが求職活動における決め手となれば、人材の確保につながる可能性があります。
メリハリの効いた働き方と生産性の向上
労働日数を減らすとはいえ、企業としての生産量をそのまま落とすわけにはいきません。
企業としては、少なくなった労働日数のなかで、いかに事業の維持拡大を図るか工夫を迫られることとなるでしょう。
たとえば、ICTツールの導入や業務の見える化などがあげられるでしょう。
そうすることで、「働くときはしっかり働き、休日はしっかり休む」といったメリハリのある理想的な働き方が実現できるようになります。
コスト削減
週休3日制の導入により、労働日数を減らすことは職場の稼働が減り光熱水費等のコスト削減につながります。
また、通勤頻度も減少するため、通勤手当を実費制としている場合、従業員に支給する手当も減らすことができます。
週休3日制を導入するデメリット
週休3日制のデメリットについて解説します。
勤怠管理の煩雑化
週休3日制の3つの種類のうち、「給与減額型」を採用する場合、週休3日制を希望する従業員と希望しない従業員の2パターンにわかれてしまうことで、同じ職場で異なる勤怠管理が必要になるという手間が発生します。
また、一日の労働時間を増やして給与は減らさない「総労働時間維持型」を採用した場合、一日における法定労働時間をこえる部分は25%割増分の賃金を追加で支払う必要があります。
つまり、一日の労働時間10時間×週4日勤務であれば、一日につき2時間は割増賃金の対象となり、一週間で8時間の割増賃金支払い義務が発生してしまいます。
「一ヵ月の変形労働時間制」も同時に導入することで、この割増賃金支払いは回避することも可能ですが、変形労働時間制の運用のために手間暇をかけなければならないという煩雑さがついてまわります。
顧客からの信頼を損ねる可能性がある
週休3日制を導入し、職場の稼働を週4日とした場合、取引先から見れば連絡をとりあえる日が一日減少することとなるため、顧客とのコミュニケーションの機会が減ることにつながります。
そのため、普段のコミュニケーションから信頼関係を築き、連絡できる日数が一日減っても問題ないような工夫を心がける必要があるでしょう。
週休3日制を導入するときのポイント
週休3日制を成功をさせるためにも、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 導入目的を明確にする
- 対象を明確にする
- 生産性を維持する仕組みをつくる
それぞれのポイントの内容を解説します。
導入の目的を明確にする
まずは、なぜ週休3日制を導入するのか、目的を明確に定義しましょう。
週休3日制を導入する目的は「ワークライフバランスの実現」「長時間労働による疲弊を防ぐ」などさまざまな動機がありますが、これを明確化し、社内に共通認識をもたせることで、制度作りにブレが生じず一貫性を維持することができます。
誰を(どの範囲を)対象とするのか
週休3日制の導入は、社内に大きな変化をもたらすため、その対象となる従業員の範囲は慎重に設定する必要があります。
- 範囲は定めず、一律に適用するのか
- 部署単位、または個別労働者ごとに適用するのか
- 希望者のみに適用する場合、会社の承諾を必要とするか
- 週休3日制導入にあたって部署異動、配置換えは必要か
以上のように、検討する事項は多くありますが、多くの企業では試験的に一部の従業員や部署のみに導入し、週休3日制の効果・影響を十分吟味したうえで、本格的な導入や対象者を選定する形を採っています。
出勤日数が減っても生産性を維持する仕組みづくり
週休3日制を活かす最大のポイントといえるのが、業務フローの見直し、業務の効率化です。
出勤日数が減ったあとでも、いかに生産性を落とさず会社運営ができるかは、この仕組みづくりにかかっています。
週休3日制の導入を機会として、無駄な業務フローの削減、書類のデジタル管理化などに踏み切れば、導入当初は手間暇や設備投資が必要になりますが、中長期的に見ればプラスの結果が現れ、週休3日制の導入後も生産性を維持できることにもつながります。
週休3日制を導入している企業の事例
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業がテレワークへの移行が進んだと同時に、週休3日制導入に踏み切った企業も多くあります。
日本国内において、大手金融機関が希望者には週休3日制、週休4日制の適用をおこないました。
給与減額型の制度を採っており、週休3日制の場合は給与水準が約20%下がり、週休4日制の場合給与水準は40%下がることとなっています。
また、企業向けにキャッシュレス決済の無人コンビニシステムを提供する某企業では、創業よりワークライフバランスの充実のため、週休3日制を導入した結果、従業員のパフォーマンス向上をし、人材確保にも成功しました。
週休3日制を正しく理解し活用しよう
今後、働き方の多様化が進むことで、副業・兼業により複数の企業で勤務するパラレルワークや、労働者自身が会社勤務を続けながら起業するスモール起業などが増え、ひとつの職場が占める労働時間、給与の割合は減少することが考えられます。
また、少子高齢化で家族の介護の時間を多く必要とする従業員も多くなるでしょう。
こういった流れを考えると、従来の週休2日制では、今後の日本社会の労働スタイルにそぐわなくなる日が訪れるのも、近いのかもしれません。
人材不足という大きな課題解決のためにも、中長期の目線をもって、自社の現状も踏まえたうえで、週休3日制の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
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記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。