【社労士監修】産業カウンセラーの役割とは?求められる背景や導入のメリットを解説
目次
従業員が、心身ともに健康に働ける状態にあることは、企業の長期的な事業経営に欠かせません。
そのため、メンタルヘルスやハラスメント対策を専門とする産業カウンセラーは、企業にとって重要な存在となっています。
この記事では、産業カウンセラーの役割や求められる背景、導入するメリットを詳しく解説します。
産業カウンセラーとは
産業カウンセラーとは、従業員のメンタルヘルス対策やキャリア形成、職場環境改善などを支援する専門家のことです。
主に、企業や組織における従業員の健康管理や生産性向上のために活動しています。
また、人事との関連性が深いことから、企業の人事担当者が資格を取得して、社内カウンセラーとして従業員の支援にあたるケースもあります。
産業医との違い
産業医と産業カウンセラーは、国家資格が必要かどうかという点に違いがあります。
産業医は、医師免許が必要な職業で、仕事内容も、長時間労働をした従業員の面談やストレスチェック、健康診断の事後措置など多岐にわたります。
一方で、産業カウンセラーは、国家資格ではなく、日本産業カウンセラー協会が認定している民間資格の取得が必要な職業です。
メンタルヘルス不調を抱える従業員との面談やハラスメント相談など、カウンセラーとして従業員を支援する役割を担っています。
なお、産業医は、労働安全衛生法で、従業員が50人以上の事業場で選任が義務づけられていますが、産業カウンセラーは選任義務がありません。
キャリアコンサルタントとの違い
キャリアコンサルタントは、国家資格として、キャリア形成や職業能力開発などの相談・助言をおこなう専門家です。
就職や転職など、今後のキャリアで悩んでいる人に対して、知識や経験をもとに、適性にあう仕事や将来のキャリア形成についてアドバイスをおこなうことが主な業務です。
また、企業内では、キャリアの専門家として、従業員の採用や育成など、人事戦略業務を中心に携わることが多くなります。
一方で、産業カウンセラーは、職場の業務や人間関係などの悩みを抱えている人に寄り添い、今後のキャリアを支援することが主な業務です。
従業員のキャリアにおける心の悩みを解決する専門家として、キャリア形成の支援を行います。
産業カウンセラーが求められる背景
ハラスメントの対策強化が、法律で義務化されたことで、産業カウンセラーの必要性が高まっています。
ストレスチェックの義務化やパワハラ防止法が施行され、企業におけるハラスメント対策が必須となったことで、職場におけるストレスやハラスメントは、従業員の離職率や生産性に関わる問題として、広く認知されるようになりました。
ストレスチェックの義務化とパワハラ防止法における産業カウンセラーの関わりについて、解説していきます。
ストレスチェックの義務化
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を分析する調査のことです。
2015年12月から、従業員が50人以上いる事業所では、年1回のストレスチェックが義務化され、産業医や医師、保健師などの専門家が実施しています。[※1]
なお、産業カウンセラーは、ストレスチェックの実施者として認められていません。
ただし、実施事務従事者として、高ストレス者への補足的な面談をおこなうなど、アフターケアを実施することができるため、メンタルヘルス対策に力をいれている企業においては、必要性が高まっています。
>ストレスチェック制度の概要と義務化の内容に関する記事はこちら
パワハラ防止法の施行
2020年6月に改正された「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」により、大企業を対象に、パワハラ防止対策が義務化されました。
また、2022年4月には、中小企業に対しても、パワハラ防止対策が義務化されています。
パワハラ防止法では、企業に、パワハラ防止のための社内方針の明確化と周知・啓発にくわえ、相談に対応できる体制構築を求めています。[※2]
産業カウンセラーは、パワハラなどのハラスメントに対する専門家として、従業員の相談窓口となり、企業のパワハラ防止を支援することが可能です。
また、研修の実施やハラスメント防止策の立案なども産業カウンセラーに求められています。
産業カウンセラーの役割
産業カウンセラーの主な役割は以下の3つです。[※3]
- メンタルヘルス対策
- キャリア形成の支援
- 職場環境の改善
3つの役割について、それぞれ詳しくみていきましょう。
メンタルヘルス対策
産業カウンセラーは、カウンセラーとして、ハラスメントの相談窓口となり、高ストレスの従業員に対するフォローやメンタル不調の従業員に対する職場復帰を支援するなど、幅広い支援をする役割があります。
また、人事担当者が産業カウンセラーの場合は、従業員のストレス状態や長時間労働による健康状態など、さまざまな問題を分析し、メンタルヘルス対策を提案することも可能です。
キャリア形成の支援
従業員のキャリア形成を支援するために、キャリアカウンセリングや将来設計の支援をするのも、産業カウンセラーの役割です。
テレワークやリモートワークなどの新しい働き方や、従来一般的であった終身雇用制とは異なる兼業や副業の働き方など、多様な働き方が、近年一般的になりつつあります。
このような多様な働き方が推進されるなかで、今後のキャリア形成に悩む人の手助けをおこなうことも、産業カウンセラーの役割のひとつです。
職場環境の改善
産業カウンセラーは、職場でのメンタルヘルスのマネジメントを支援として、研修を実施したり、個別にアドバイスしたりなど、職場環境の改善に貢献する役割があります。
また、従業員のストレスとなっている原因を特定し、対策を提案しながら、職場環境をよりよくする施策を支援する役割も担っています。
産業カウンセラーを導入するメリット
産業カウンセラーを導入するメリットは以下の3つです。
- 社内のメンタルヘルス対策が強化できる
- 離職率や休職りつの低下が期待できる
- 企業のイメージアップにつながる
それぞれを詳しく解説します。
社内のメンタルヘルス対策が強化できる
産業カウンセラーが従業員のメンタルヘルスを支援することで、ストレスやうつ病、不安障害などの心の問題を予防したり、早期に発見したりすることができます。
メンタル不調が原因で起こる生産性やモチベーションの低下が防げると、職場環境を改善することができるでしょう。
また、メンタルヘルス対策が強化できれば、従業員のモチベーションが向上し、企業の事業経営に良い効果をもたらすことも期待できます。
離職率や休職率の低下が期待できる
メンタル不調は、離職や休職に直結する大きな問題です。
産業カウンセラーを導入することで、従業員のメンタルヘルスが改善すれば、離職率や休職率が低下し、働きやすい職場が形成できるでしょう。
企業のイメージアップにつながる
ストレスチェックの義務化やパワハラ防止法の施行により、ハラスメントのコンプライアンスが適切に守られていることは、優秀な人材を集めるうえで重要なことです。
そのため、産業カウンセラーを導入し、コンプライアンス強化を図ることで、企業のイメージアップも期待できるしょう。
メンタルヘルス対策の重要性
現代では、少子高齢化や技術革新により、リモートワークや共働き世帯の増加、働き方の多様性など、日々環境が変化しています。
また、技術が発達する一方で、ますます激しくなる競争社会で、ストレスを抱えている人が増えていることも現状です。
そのため、ストレスが原因となる、うつ病や不安障害などの「心の病」にかかる人が増えており、メンタルヘルス対策の重要性が高まっています。
今後も、企業には、コンプライアンスを遵守しつつ、従業員のメンタルヘルスを保護し、健康な職場環境を整備することが求められるでしょう。
社内コミュニケーションに「Chatwork」
産業カウンセラーは、メンタルヘルス対策やキャリア形成、職場環境改善などを支援する専門家として、さまざまな企業で求められています。
ストレス社会と言われる現代においては、従業員のメンタルヘルスを支援してくれる産業カウンセラーは、企業にとって大きな存在となるでしょう。
産業カウンセラーの役割や導入のメリットを理解したうえで、導入を検討しましょう。
また、職場におけるハラスメントやメンタルヘルスの問題を対策するためには、従業員に、正しい知識を浸透させたり、情報を周知したりすることが大切です。
「ハラスメントになるとは思わなかった」「メンタルヘルスを知らなかった」ということがないように、従業員に適切な教育をおこないましょう。
社内全体への情報の周知には、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。
「Chatwork」は、1対1のコミュニケーションはもちろん、複数人や社内全体に、簡単に情報共有ができるビジネスツールです。
ハラスメントに対する社内方針の周知や、メンタルヘルスの対策窓口の周知などにも便利に活用でき、対面では相談しづらい内容なども、テキストでスムーズに相談することができます。
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[※1]厚生労働省「ストレ スチェック制度導入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
[※2]厚生労働省「労働施策総合推進法に基づくパワーハラスメント防止措置が中小企業の事業主にも義務化されます」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf
[※3]一般社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセラーとは」
https://www.co-higashikanto.jp/training/sangyo_co/
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。