【社労士監修】シフト制とは?企業側のメリット・デメリット、注意点を解説
目次
「シフト制」は、人手不足や労働者のニーズの多様化によって、現在多くの職場で導入されています。
本記事では、シフト制の定義や種類、シフト制を導入することのメリットやデメリットと導入する際に注意すべき点について解説します。
シフト制とは?
シフト制とは、一定期間ごとに職場の従業員と交代で勤務割を組み、柔軟に勤務日や勤務時間を設定する勤務形態をいいます。
労働時間は1日8時間、週40時間の範囲内で、始業・終業時間や休日を固定するケースが通常ですが、営業時間が長い業態の場合、常に始業・終業時間や休日を固定することが難しい場合があります。
たとえば、24時間営業のコンビニエンスストアで従業員を雇用する場合、人によって勤務時間帯を固定するよりも、繁閑の具合や従業員の希望を踏まえて、一定期間ごとに勤務割(シフト)を組んでフレキシブルに勤務時間を設定した方が理にかなっている場合があります。
シフト制とは上記のような働き方を指しています。
3種類のシフト制
シフト制にはいくつか種類があります。
- (1)自由シフト制
- (2)固定シフト制
- (3)完全シフト制
それぞれメリット・デメリットがあり、業種や従業員の特徴によって採用すべき制度がわかれるため、詳しく紹介します。
(1)自由シフト制
自由シフト制とは、従業員の希望する日と時間帯に勤務できる勤務形態をいい、飲食業や小売業によく見られる働き方です。
フレキシブルで融通が利く働き方ができる点がメリットです。
反面、シフト作成の都度、従業員は勤務希望を提出する必要があります。
シフトを作成する側も、その希望を踏まえてシフトを考えなくてはならないデメリットがあります。
(2)固定シフト制
固定シフト制とは、働く曜日や時間帯をある程度パターン化する働き方をいいます。
先に挙げた自由シフト制ほど融通は効きませんが、従業員側としては特段希望が無ければ勤務希望を提出する必要がなく、シフトを作成する側としてはパターンの組み合わせでシフトが作成しやすいメリットがあります。
x(3)完全シフト制
完全シフト制とは、勤務パターンが早番・遅番・夜間のような形で定型的に決まっており、曜日によって働く時間が違う働き方を指します。
主に、稼働時間が長い製造業や介護事業に見られる働き方です。
シフト制を導入している業種
シフト制を導入する企業の多くは、サービス業、製造業が中心です。
上記の業種は顧客ニーズへの対応から、稼働時間が長くなる傾向にあります。
24時間稼働で休日が無いコンビニエンスストアや、食品を供給する食品工場などは、一律で就業時間や休日を定めることが難しいため、シフト制が馴染みやすいといえるでしょう。
シフト制のメリット
次に、シフト制を採用するメリットについて、企業目線でみていきましょう。
人材不足の解消につながる
少子高齢化が加速し、労働人口が減少する中では、就業時間や休日を限定するよりも短時間での勤務も可能なシフト制にした方が、求人を出す際に働き手を確保しやすくなります。
また、親や配偶者の扶養範囲内で働きたい層にとって、短時間の勤務で自身のライフスタイルと両立しやすいシフト制の働き方はメリットがあります。
業務時間の拡大につながる
前述のとおり、一部の業種においては、要請されるニーズに応えるべく、長い営業時間および稼働時間を採らざるを得ない場合もあります。
たとえば、食品工場において、1日で消費期限切れになる食品を扱っている場合は1日たりとも工場の稼働を止めることはできないため、24時間365日稼働せざるを得ないケースは珍しくありません。
こういった業種においては、一般的な就業時間体系では到底採用できないので、交代制の勤務やシフト制によって労働力を賄う必要があります。
また、繁華街にある飲食店など稼働するほど利益が生まれる業種においては、シフト制を採用して稼働時間を長く設定する方がメリットが生まれやすくなります。
シフト制のデメリット
シフト制は、業種によって採用せざるを得ないほどのメリットをもたらす一方で、以下に挙げるデメリットも存在するため、安易に採用すると、職場に混乱をきたす可能性があります。
作成コストがかかる
シフト制を採用するには、勤務割(シフト)を事前に作成しておく必要があります。
自由シフト制のように融通の効く職場や、従業員の人数が多いほど、この作業は煩雑なものとなります。
くわえて、サービス業や製造業においては、人員配置のミスが大きな損失にも繋がるため神経を使う場合も多く、シフト作成は担当者にとって大きな負担となります。
マネジメントコストがかかる
シフト制を採用する以上、シフト管理の負担およびそのコストが常に会社側に発生することとなります。
たとえば、シフト作成のたびに従業員全員から勤務希望を集めなくてはならないため、常にスムーズに運ぶとは限りません。
また、残業時間管理といったコンプライアンス面での配慮も必要となるため、規模の大きな職場においては、より大きな手間が発生することになります。
突発的な人材不足のリスク
シフト制を採用する職場特有の悩みとして、年末年始やゴールデンウィーク・お盆のような大型連休のシーズンに、休日を希望する従業員が集中するなどの突発的な人材不足が発生することが挙げられます。
とくに、自由シフト制のような融通が利く職場においては、休日希望が集中する事態に備えて、大型連休のかなり前からシフト調整を行う必要があります。
シフト制を導入する際の注意点・留意点
シフト制は、小規模のサービス業で積極的に採用される働き方である反面、運用においてコンプライアンス上の問題があるケースもあり、厚生労働省が注意喚起をおこなっています。
特に注意すべき点について解説していきましょう。
労働条件の明示
会社は、従業員を雇用する際に労働条件を書面等で明示することが法律で定められており、その明示すべき内容も決められています。
そのひとつが「始業・終業時刻、休憩、休日」です。
シフト制を採用する場合、「シフト制による(シフトによる)」のような具体的でない記載は不可で、労働日ごとの始業・終業 時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載したうえで一定期間分のシフト表をあわせて従業員に提示することが求められます。 [※1]
シフト作成のルール
シフト作成のルールについては、前述の労働条件の明示のように厳しく決められているわけではありませんが、トラブルを避けるための工夫が必要です。
従業員への希望を聴取する方法や、シフト提示までの期限、提示の方法(書面・電子等)については、会社と従業員との間で共通認識を持つことが重要です。
シフト変更のルール
一旦確定したシフトの変更は基本的に労働条件の変更に該当します。
使用者(企業)と労働者(従業員)との双方の合意が必要であることから、変更の申出までの期限や手続きについても事前に定めておきましょう。[※2]
労働時間・休憩の付与
シフト制を採用していても、労働時間や休憩の一般的なルール(1日8時間以内、1週間40時間以内、休憩は6時間を超える場合は労働の途中で与えるなど)は変わりません。
とくに、1日8時間、週40時間を超える残業をおこなう場合は36協定の締結および労働基準監督署への届出が必要となる点は注意しましょう。
年次有給休暇の付与
年次有給休暇は、フルタイムで働く正社員でなくても、その労働条件に応じて付与、消化させる義務があります。
また、付与日数に関しては、週あたりの所定労働日数に応じて細かくテーブルが設定されていますが、正しく運用されていないケースもあります。
トラブルに発展する前に、年次有給休暇の管理を行っておく必要があります。
休業手当
従業員を会社都合で休業させた場合は、最低でも平均賃金の60%を支払う義務があり、これはシフト制で勤務する従業員についても共通しています。 [※3]
なお、この会社都合の定義は、一般的なイメージよりもかなり広範なものとなっている為、休業手当が必要なケースか否かについては、管轄の労働基準監督署に問い合わせて確認するとよいでしょう。
安全・健康確保
短時間で就業するシフト制の従業員であっても、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育(安衛法第59条)や健康診断の実施(安衛法第66条)の義務は発生します。
とくに、シフト制で勤務する従業員のみの職場においては安全・健康確保の意識が低いケースが見受けられるので、今一度、基本的なルールについて見直ししましょう。
シフト制とほかの働き方の違い
シフト制と対極の関係にある固定制やその他の働き方とシフト制の違いについてみていきましょう。
固定制との違い
固定制とは、労働者ごとではなく職場ごとで一律に働く時間や休日を固定している働き方をいい、たとえば、全社員一律で、月曜から金曜は9時から18時勤務で、土日祝日は休日のような勤務形態を指します。
従業員やその希望ごとに働く日や休日を設定するシフト制とは違い、一律で勤務ルールが固定されていることが特徴です。
変形労働時間制との違い
変形労働労働時間制は、月や年単位で労働時間を調整して、1日8時間、週40時間を超える時間外労働の割増賃金の扱いを一定の範囲で不要とする勤務形態であるため、働く時間と日を従業員が選択できるシフト制とは考え方そのものが違います。
ただし、シフト制を採用し、かつ変形労働時間制も採用すること自体は不可能ではありません。
裁量労働制との違い
裁量労働制は、労働時間を実際に働いた実働時間ではなく、あらかじめ定めた一定時間としてみなす制度であり、一部の専門職において採用されている制度です。
実際の労働時間に基づき賃金が支払われるシフト制とは異なる制度であるといえます。
シフト制を導入する手順
シフト制は使い方によっては、企業の業務効率、利益拡大に大きく寄与する仕組みですが、その便利さゆえに、間違った解釈によって運用されトラブルが起こりやすい働き方でもあります。
誤った認識によるトラブルを未然に防ぐために、シフト制を導入する際の手順をみていきましょう。
手順(1):労働条件を定める
まずは、法律で定められている労働条件の明示事項ごとに、どのような条件で雇用するのかを明確にしていきましょう。
シフト制を導入する際、始業・終業時刻についての記載に迷う場合には、原則的な勤務パターンの例として、直近のシフト表を添付するといった形で対応しましょう。
手順(2):就業規則を作成又は改定する
新たにシフト制を導入する場合、就業規則をすでに作成されている会社では、就業規則の内容をシフト制に応じて改定する必要があります。
また、シフト作成や変更のルールについても就業規則で定めておく方が無難です。
手順(3):従業員代表へヒアリングをする
シフト制導入時に、そもそも自由シフト制にするのか、一定のパターンを決めるのか、従業員と協議して両者とも納得できる制度を定めましょう。
10人以上の職場で、就業規則の改定も絡む場合は、従業員代表への意見聴取を行い、これを書面にて労働基準監督署に提出する必要があります。
手順(4):労働基準監督署に届け出る
10人以上の職場において就業規則を改定(または作成)した場合は、前述の意見聴取の内容も含めて、書面を労働基準監督署に届け出る必要があります。 [※4]
届出を怠ると、労働基準違反としてペナルティが課せられる他、助成金の申請においても不支給となる可能性があるなど、後に問題が発生する場合もあるため、抜け漏れが無いように注意しましょう。
手順(5):社内周知を実施する
シフトのルールや改定された就業規則は、社内の従業員が閲覧できるような状態でなければなりません。
イントラネットやチャットツールなどを活用して、全従業員が見たい時に就業規則を閲覧できるような環境づくりと、社内周知を徹底する取り組みもすすめましょう。
円滑なコミュニケーションに「Chatwork」
本記事では、多くの職場において採用されているシフト制について解説しました。
シフト制は、業種によっては採用しないと成り立たない職場もあり、運用におけるルールの理解が不足していることでトラブルに発展するケースもあります。
トラブルに発展しやすい例として、シフトの提示が遅く従業員が予定を立てられないといったケースがあり、シフト希望の提出やとりまとめ・周知の際にコミュニケーションが円滑にとれていないことも、原因のひとつといえます。
コミュニケーションを円滑にするための手段として、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。
ビジネスチャット「Chatwork」は、従業員同士で気軽にコミュニケーションがとれ、グループチャット機能をつかって書類の共有も可能ですので、簡単にシフトを取りまとめたり周知したりすることができます。
ビジネスチャット「Chatwork」は、下部の「今すぐChatworkを始める(無料)」よりすぐに、利用開始できます。
勤務希望の取りまとめや、作成したシフトの周知をはじめとした、ビジネスシーンの円滑なコミュニケーション実現に、ビジネスチャット「Chatwork」をぜひご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:厚生労働省「いわゆるシフト制により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000870905.pdf
[※2]出典:e-Gov法令検索「労働契約法 第八条」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128
[※3]出典:厚生労働省「休業手当について」
https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/content/contents/000801416.pdf
[※4]出典:高知労働局「就業規則の作成・変更・届出」
https://jsite.mhlw.go.jp/kochi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/shugyoukisoku.html
※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。