【社労士監修】マミートラックとは?原因や問題点、企業に求められる対策を解説

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働き方改革
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【社労士監修】マミートラックとは?原因や問題点、企業に求められる対策を解説

目次

出産・育児を経験した女性が、キャリアアップの道から外れてしまうことを「マミートラック」といいます。

女性の活躍を推進するうえで大きな障害となり得る社会問題として、関心が高まっています。

企業は本人が望まないにもかかわらず、マミートラックに陥ることがないよう、社内制度や意識改革を進め、女性が能力を発揮できる環境を整備することが重要です。

本記事では、マミートラックの原因や問題点、企業に求められる対策を詳しく解説します。

マミートラックとは

マミートラックとは、女性社員が産休や育休から復帰した際に担当業務や部署、勤務時間を変更され、その後のキャリア形成が阻害されることをいいます。[※1]

育休復帰後に責任や業務量が少ない働き方になると、昇進や昇格の機会が与えられにくく、給与や待遇面で不利になるケースが多くあります。

マミートラックに陥った女性社員は仕事に対するモチベーションや意欲が低下し、離職につながるケースがあるため、企業は対策や支援をしなければなりません。

マミートラックの由来

マミートラックは、1988年にアメリカのNPOカタリスト初代代表のフェリス・シュワルツが提案した女性の働き方が由来です。

当時のアメリカでは、女性の働き手が急増していたにもかかわらず、育児環境が整っておらず、子育て中の女性がキャリアを継続することが難しい状況にありました。

フェリス・シュワルツは、企業が女性の働き方を「キャリアを優先する人」と「キャリアと家庭の両立する人」の2つに分け、後者を望む女性に対して育児休業などの支援策を整えることを提案しました。

この提案をジャーナリストが「マミートラック」と名付けたのがはじまりです。

しかし現代では、子育てを理由に出世コースから外される女性の意味合いで使われるように変化しました。

マミートラックが発生する原因

マミートラックが発生する原因には、企業の制度不足の問題と女性へのイメージや偏見が大きくかかわっています。

育児と仕事の両立には、周囲の理解とサポートが欠かせません。

働く環境を整えるためには、まず原因をしっかりと把握し対策を検討する必要があります。

マミートラックが発生する原因について、詳しく解説していきます。

企業側の意識や制度の不足

企業側に、女性社員の仕事と子育ての両立に対する意識や制度が不足していることは、マミートラックの大きな原因の一つです。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 時短勤務などの制度が整っていない
  • 女性社員のキャリア形成を支援する制度が整っていない
  • 女性社員に対する意識改革が進んでいない

たとえば、短時間でも管理職になれる制度や仕事に習熟できるプロセスを構築するなどの施策が考えられます。

企業側は、女性社員が仕事と子育てを両立できるよう、就労環境を整備することが大切です。

>ワークライフバランスに関する記事はこちら

女性や母親へのバイアス

社内で、女性や母親に対するバイアスがあることも、マミートラックの原因の一つです。

具体的には、以下のバイアスが挙げられます。

  • 女性は家庭を優先すべき
  • 母親は子育てに専念すべき
  • 女性は男性に比べて仕事にコミットできない

これらのバイアスによって、女性社員が仕事と子育てを両立できる能力や意欲を持っていないと判断し、マミートラックに陥らせてしまう可能性があります。

マミートラックを解消するためには、企業側の意識や制度不足を解消するとともに、女性に対するバイアスを解消していくことが大切です。

マミートラックが引き起こす問題・リスク

望まないマミートラックに陥った場合、生じる問題点やリスクには以下のようなものがあります。

  • 従業員のモチベーションが低下する
  • 女性従業員のキャリア形成が難しくなる
  • 企業イメージが低下する
  • 優秀な従業員の離職につながる

マミートラックが引き起こす問題やリスクを具体的に解説します。

従業員のモチベーションが低下する

マミートラックに陥った女性社員は、子育てを理由にキャリアアップの機会が奪われたと感じ、仕事に対するモチベーションが低下します。

モチベーションが低下すると、仕事のパフォーマンスも低下し、人事評価にも影響を及ぼします。

それにより、昇進や昇格の機会がさらに減る可能性があります。

女性従業員のキャリア形成が難しくなる

昇進や昇格をするためには、幅広い仕事の経験やスキルを身につけることが求められます。

しかし、マミートラックに陥った女性社員は、単調な業務や補助的な業務を任されがちです。

単調な業務や補助的な業務を続けていても、仕事の経験やスキルが身につかず、キャリア形成が難しくなります。

企業イメージが低下する

マミートラックが存在する企業は、女性の活躍を支援する姿勢が不足していると見られ、企業イメージが低下する可能性があります。

女性が活躍する職場に入社を希望する人材は、マミートラックが存在する企業を避けるため、女性社員の獲得が難しくなるでしょう。

優秀な従業員の離職につながる

子育て世代の女性が昇進・昇格の機会がなく、モチベーションが低下する環境は離職率を高める要因となります。

優秀な人材を退職させることは企業の大きな損失です。

離職を防ぐためには、マミートラックに対して対策が必要であり、企業としての責務にもなります。

マミートラックを対策する方法

マミートラックは優秀な人材を失うリスクや企業イメージを損なう可能性もあります。

女性社員のマミートラックを防ぐために、以下のような対策を講じる必要があります。

  • 定期的な1on1や面接を通じたヒアリング
  • 多様な働き方の採用
  • 育休や時短勤務などの社内制度の整備
  • 多様な働き方への理解促進

それぞれの対策を詳しく解説します。

定期的な1on1や面接を通じたヒアリング

産休・育休を取った女性社員に対し、仕事の状況や今後のキャリアについて定期的にヒアリングすることが大切です。

面談の際には、どのような時間的制約があるか、自身の能力で活かせる部分は何かなどをヒアリングし、子育てをしながら能力を存分に活かせる環境作りを支援しましょう。

また周りの同僚にも、どのような課題があるかを聞き出し、組織的に改善を図ることでより働きやすい環境を作ることができます。

>1on1に関する記事はこちら

多様な働き方の採用

育児は、休む予定がなくても急に子どもが熱を出して休んだり、やむを得ない状況で早退せざるを得なくなったりする状況が発生します。

1つの勤務形態ではなく、柔軟な働き方を採用することにより、育休から復帰した従業員が働きやすい環境を作ることができます。

たとえば、状況にあわせてテレワークを認めたり、フレックスタイム制を導入したりなど、多様な働き方ができる勤務形態を取り入れると良いでしょう。[※2]

育休や時短勤務などの社内制度の整備

育休や時短勤務などの社内制度を整備していくことも、マミートラックを対策するうえでは重要です。

時短勤務は、フルタイムで働けないことを理由に退職せざるをえない状況を防ぐことができます。

また、社内制度を整備することにより、出産を経験していない人も、今後安心して働くことができる職場と認識してもらうことができ、企業イメージも向上します。

>時短勤務に関する記事はこちら

多様な働き方への理解促進

個々の事情に合わせて柔軟に働ける制度は、従来の「一斉出社・一斉退社」のような働き方に馴染みがある従業員の中には違和感を持つ人もいるでしょう。

しかし、多様な働き方はマミートラックの対策として受け入れなければならない取り組みのひとつです。

女性の活躍を促進させるためにも、多様な働き方への理解を得ることは重要です。

社内研修や社外セミナーなどにより、社内全体で多様な働き方への理解を促進させ、女性社員が活躍できる環境を整えていきましょう。

女性のキャリア形成に取り組む企業事例

マミートラックの対策として、女性のキャリア形成に取り組む企業は増えてきています。

他社の取り組み事例から、自社でも取り入れられそうな内容があれば、積極的に実施することで、人材確保や企業イメージの向上につながります。

女性のキャリア形成に取り組む企業事例を2つ紹介します。

化粧品メーカーの事例

ある化粧品メーカーでは、女性の活躍支援として、女性リーダー育成に力を入れています。

2017年から女性リーダー育成塾を開催し、幹部候補の女性社員がマネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムを実施しています。

また、社員が仕事と育児を両立できるよう、事業所内保育所や保育料の補助を開始し、子どもの看護休暇制度を有給で取得を認めるなど、女性が働きやすい環境を整備しています。

>子の看護休暇に関する記事はこちら

ビールメーカー

あるビールメーカーでは、女性活躍推進を重点テーマとして位置づけ、経営層の女性比率を2030年までに40%以上にする目標を設定しています。

目標達成のために、女性社員を対象としたキャリア研修を実施し、選抜研修などの研修への女性社員の参加率を向上させ、キャリア開発を支援する仕組みを強化しています。

また、性別による差別の撤廃や女性の地位向上に向けて経営層からメッセージ発信をするなど、会社全体で女性の活躍推進を行っています。

多様な働き方の推進に「Chatwork」

マミートラックとは、出産・育児を経験した女性が、キャリアアップの道から外れてしまうことであり、企業が積極的に取り組むべき課題のひとつです。

企業に求められる対策としては、制度整備や意識改革、多様な働き方の採用などが挙げられます。

女性が能力を発揮できる環境を整備することで、企業の競争力が強化され、日本の労働力向上につながるでしょう。

ビジネスチャット「Chatwork」は多様な働き方の採用を支援するチャットツールです。

チャットでのコミュニケーションだけでなく、タスク管理機能やビデオ通話機能など、さまざまな機能が備わっています。

育児中の女性社員でも簡単にコミュニケーションが取ることができ、テレワークの際はビジネスツールとして活用が可能です。

多様な働き方の推進に、ぜひ「Chatwork」の導入をご検討ください。

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[※1]出典:東京産業労働局「東京でのくらし方、働き方について」
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/plan/sangyo/ikennsyuu_iinn.pdf
[※2]出典:厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会 報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001125611.pdf

※本記事は、2024年4月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:北 光太郎

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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