【社労士監修】時短勤務とは?短時間勤務制度の仕組みや期間をわかりやすく解説
目次
仕事と家庭の両立を支援する制度として導入されている短時間勤務制度。
この制度により育児や介護などの特定の事情がある労働者は、1日の労働時間を短縮することが可能になりました。
しかし、短時間勤務制度を適用できる期間や対象者は法律で決まっているため、経営者や人事担当者も知っておかなければいけません。
この記事では、短時間勤務制度の仕組みや適用期間などを詳しく解説します。
短時間勤務制度とは
短時間勤務制度とは、育児や介護などの事情がある従業員が所定労働時間よりも短い時間で勤務できる制度です。
育児・介護休業法で導入が義務付けられており、原則1日の労働時間を6時間に短縮することができます。
育児や介護で家庭に時間をあてなければならない従業員にとって、仕事が続けやすくなり、企業も人材の流出を防ぐメリットがあります。
短時間勤務制度が注目を集める理由
なぜ短時間勤務制度がこんなにも注目を集めているのでしょうか。
ここでは、短時間勤務制度が導入された背景や注目を集める理由を解説します。
育児・介護休業法の改正
短時間勤務制度は2010年の育児・介護休業法の改正によって企業に導入が義務付けられました。
その後、育児・介護に対する労働環境の整備が進み、2021年1月1日に施行された改正では、育児・介護休暇が時間単位で取得が可能になりました。[※1]
育児・介護休暇の時間単位取得は、短時間勤務制度と併用することができるため、仕事と家庭の両立が一層しやすくなります。
このように、育児や介護をしながら仕事を続けることができるよう法改正が進められており、短時間勤務制度を利用する労働者が増えていると考えられます。
少子高齢化
日本では少子高齢化が進み、労働人口が年々減少しています。
労働力の減少は日本経済の衰退に直結しており、早急に解決すべき社会問題のひとつです。
そのため、仕事を継続する環境を整え、多様な労働力を活かしていくことが必要になっています。
短時間勤務制度はそうした背景から仕事と家庭の両立を支援し、労働力の確保を目的とした対策の一つとして導入されました。
企業にとっては労働力の確保ができ、労働者も育児・介護をしながら少しでも働いて家計を支えたいという思いもあることから、短時間勤務制度が注目を集めていると考えられます。
短時間勤務制度の適用期間と対象
短時間勤務制度の適用期間と対象者は育児と介護で違いがあります。
ここでは、それぞれの条件を詳しく解説します。
育児による短時間勤務の適用期間・対象
育児を理由とした短時間勤務の適用期間や対象となる労働者は以下のとおりです。[※2]
適用期間 | 義務:子が3歳になるまで 努力義務:小学校に就学するまで |
対象者 | 3歳に満たない子を養育する労働者 |
対象外 |
労使協定の締結により対象外となる労働者
|
このように、対象者は3歳に満たない子を養育している労働者ですが、日々雇用される労働者や1日の所定労働時間が6時間以下の労働者は対象外となります。
また、労使協定を締結すれば一定の条件の労働者も対象外とすることが可能です。
介護による短時間勤務の適用期間・対象
介護を理由とした短時間勤務の適用期間や対象となる労働者は以下のとおりです。[※2]
適用期間 | 対象家族1人につき利用開始の日から3年間で2回 |
対象者 | 要介護状態にある対象家族を介護する労働者 |
対象外 |
労使協定の締結により対象外となる労働者
|
介護を理由とした短時間勤務の適用期間は、対象家族1人につき利用開始の日から3年間で2回が最低基準になります。
よって企業が任意で期間を5年に延ばしたり、回数を増やしたりすることも可能です。
短時間勤務制度の代替措置
業務の性質上、短時間勤務制度を講ずることが困難な業務に従事する従業員に対しては、代替措置を講じなければ行けません。[※2]
代替措置としては以下の制度があります。
- フレックスタイム制
- 時差出勤
- 事業所内保育施設の設置・運営
- 育児休業制度に準ずる措置
それぞれを詳しく解説します。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、あらかじめ決められた総労働時間の範囲内で始業・終業時間を労働者が自由に決められる制度です。
始業・終業時間に制限がないため、その日の状況によって労働時間をコントロールできます。
そのため、育児にあてる時間を労働者自身で調整ができ、仕事との両立がしやすくなります。
時差出勤
時差出勤は所定労働時間をずらして出勤できる制度です。
たとえば、所定労働時間が9時から18時だった場合、時差出勤によって10時から19時など時間差で出勤ができるようになります。
子どもを保育所に預ける時間を確保できるだけではなく、給与が減額せずに仕事と育児の両立が可能です。
事業所内保育施設の設置・運営
一定の要件を満たした企業では、事業所内に保育施設を設置し、運営することも可能です。[※3]
事業所内に保育施設を設置することで、労働者が保育所に行く時間を確保する必要がなくなり、時短勤務をしなくても仕事との両立ができるようになります。
育児休業制度に準ずる措置
法律で義務化されている措置以外にも、それに準じて会社独自の制度を設けることができます。
たとえば、適用期間の延長や在宅勤務の適用など、自社に適した制度を導入すれば短時間勤務制度の代替措置として活用できます。
また、法的措置に準じた制度を導入することで福利厚生が充実し、企業イメージのアップにもつながるでしょう。
短時間勤務制度のメリット・デメリット
短時間勤務制度にはメリットもありますが、デメリットもあります。
ここでは、事業主側と労働者側でそれぞれを解説します。
事業主側のメリット・デメリット
事業主側にとって最大のメリットは、出産・育児や介護を理由に離職する人を減らせることです。
優秀な人材の流出は企業にとって大きな痛手となり、流出後は採用や育成にもコストがかかります。
そのため、短時間勤務により仕事と家庭を両立しやすい環境を整えれば、仕事を継続しやすくなり、人材の流出を防ぐことができます。
一方、デメリットは短時間勤務で働く労働者の配置や業務の見直しをしなければいけない点です。
労働時間が短くなる分、一般の労働者よりもできる業務が限られるため、適切な配置や業務を検討しなければいけません。
また、育児や介護で急に休暇を取らなければならないこともあるため、他の従業員がカバーできる体制も整える必要があります。
労働者側のメリット・デメリット
労働者にとってのメリットは、ワークライフバランスが実現しやすくなることです。
労働時間が短縮されることで育児や介護に費やせる時間が増え、生活に余裕を持つことができます。
また、育児・介護をしながら仕事が継続できるため、生活への不安がなくなり、引き続きキャリア形成ができるようになります。
一方、デメリットは給与や賞与が減額される可能性があることです。
短くなった労働時間分が減額となり、時短前より収入が減ってしまいます。
そのため、本人の希望があればフレックスタイム制や時差勤務の適用も選択肢として提示し、従業員それぞれに合った働き方を選べる環境も必要になります。
短時間勤務制度の導入方法
ここからは、短時間勤務制度の導入方法を5つのステップで解説します。
導入までのステップは以下のとおりです。
- 制度の内容を決める
- 就業規則を改訂する
- 申請・手続きマニュアルを作成する
- 社内周知をおこなう
- 必要に応じて制度見直しをおこなう
順を追って解説します。
ステップ(1):制度の内容を決める
短時間勤務制度を導入するにあたり、短縮する時間や適用できる条件などを決める必要があります。
たとえば法律では、1日の所定労働時間を6時間とすることが求められていますが、それを4時間まで可能としたり、子の対象年齢を小学校3年生修了までと拡大することも可能です。
ただし、一方的に制度の内容を決めるのではなく、導入する目的や目標を決めておくと、従業員からの理解を得やすく、制度自体も運用しやすくなります。
まず、従業員に対してヒアリングやアンケート調査などをおこない、社内で求められている制度内容を把握しましょう。
ステップ(2):就業規則を改訂する
短時間勤務制度を導入する場合は、就業規則を改訂しなければいけません。
労働時間や適用条件、申請方法などを社内で決めた内容を就業規則に反映します。
また就業規則の変更にあたり、従業員代表の意見書を添付して就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。
制度適用日までに改訂内容を固めないといけないため、あらかじめ余裕を持ったスケジュールで制度の導入を検討しましょう。
ステップ(3):申請・手続きマニュアルを作成する
従業員の負担を軽減するためにも、申請や手続きのマニュアルを作成しましょう。
申請書のフォーマットを作成し、どのような承認ルートで手続きが完了するのか明確にします。
初めて申請する人にわかりやすいよう設計を行い、従業員ができるだけ手続きに時間を割かないよう配慮することが大切です。
ステップ(4):社内周知をおこなう
就業規則が変更された際は、従業員に周知を行う必要があります。
社内の掲示板や社内ポータルサイトなど、全従業員が周知できる方法で行いましょう。
また周知は一度きりではなく、社内報などで定期的に取り上げることで制度が周知されていきます。
従業員に制度を知ってもらい、仕事が継続できる環境であることを認識してもらうことが大切です。
ステップ(5):必要に応じて制度見直しをおこなう
運用を始めると、利用者からの要望や改善点が見えてきます。
制度を利用した従業員からヒヤリングをしながら必要に応じて見直しを行いましょう。
短時間勤務制度の注意点
短時間勤務制度では、利用者の評価や業務負担など、様々なことに配慮が必要です。
とくに、以下の3つのポイントには注意が必要です。
- 労働者に不利益を与えない
- 労働者間で不平等を生じさせない
- 労働者の申請負担を減らす
短時間勤務制度の導入にあたっての3つの注意点を、それぞれ詳しくご紹介します。
労働者に不利益を与えない
育児・介護休業法では、短時間勤務を利用している労働者に対して不利益な取り扱いを禁止しています。
たとえば、短時間勤務者に対しての不当な評価や不利益な配置の変更などがこれにあたります。
社内でコンプライアンス研修を行うなど、短時間勤務者に対する理解を得るよう対策をすると良いでしょう。
労働者間で不平等を生じさせない
時短勤務の従業員ができる仕事量が限られているため、その分時短勤務をしていない従業員に負担がかかり、社内で不公平感が生じることがあります。
そのため、部署で抱えている業務を定期的に棚卸して業務の効率化を図るなど、適切な業務分担や人材配置をすることが大切です。
労働者の申請負担を減らす
制度が導入されていても、社内の手続きが複雑な場合は利用者に負担がかかり、制度が浸透しません。
労働者の申請負担を減らせる設計を行い、簡単なマニュアルなどを作成するなど利用しやすい環境を整えることが大切です。
短時間勤務の導入事例
実際に短時間勤務を導入している企業はどのような運用を行っているのでしょうか。
ここでは、短時間勤務の導入事例を2つ紹介します。
和洋菓子会社
ある和洋菓子会社では、2017年から工場で働く従業員を対象に「週休3日制」と「短時間勤務制」を導入しました。
週休3日制は水・土・日曜の3日間を休日として認め、結果的に家庭の都合で働くことを諦めていた女性からの求人応募が増えたそうです。
短時間勤務制は、「子どもを保育園に送ってからでは始業時間(7時30分)に間に合わないので、時間を遅らせてほしい」という要望に答え、8時30分から9時30分の間での出勤を可能にしました。
また、これらの制度は子育て中の女性従業員だけでなく、家族の介護などの事情を抱えている従業員も利用可能で、それぞれの状況に応じて組み合わせることも可能としています。
建設会社
ある建設会社では、短時間勤務の時間を7時間から4時間まで4パターン用意しています。
時短利用者の状況に合わせて労働時間が選べるため、途中で変更も可能です。
また、育児の場合は子が小学校3年生修了まで利用を可能とし、回数に制限なく利用できるようにしました。
あわせて介護の場合も、要介護状態にある対象家族を介護する期間、何度でも利用が可能としているため、従業員は回数を気にせず安心して仕事との両立ができるようになったそうです。
社内の情報共有に「Chatwork」を活用しましょう
短時間勤務制度は仕事と家庭の両立を実現するために所定労働時間よりも短い時間で勤務できる制度です。
少子高齢化が進む日本社会では、家庭の事情を考慮しながら労働力を活かしていくことが必要になっています。
しかし、時短勤務で働く労働者は賃金が減少するデメリットもあります。
在宅勤務やフレックスタイム制など、それぞれの労働者に適した働き方を選択できる環境を整えましょう。
企業側・労働者側双方が、本記事で紹介したメリット・デメリットについて、よく理解することが重要です。
制度への理解を促す手段として、ビジネスチャットの活用がおすすめです。
ビジネスチャット「Chatwork」は情報共有を円滑に進めることができるコミュニケーションツールです。
グループチャットを活用すれば、短時間勤務の制度周知や在宅で働く従業員とのやりとりもチャット形式で簡単に進められるため、スムーズなコミュニケーションができるでしょう。
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[※1]出典:厚生労働省「⼦の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf
[※2]出典:厚生労働省「育児・介護休業法の概要」
https://www.mhlw.go.jp/english/policy/children/work-family/dl/190410-01j.pdf
[※3]出典:厚生労働省「事業所内保育施設 事業所内保育施設の設置・運営を応援します!」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/20a.pdf
※本記事は、2023年2月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。