逆セクハラとは?具体例や企業がすべき対処法、及ぼす悪影響を解説
目次
近年、男性が被害を受ける「逆セクハラ」が問題視されています。
逆セクハラとは、女性から男性に対する性的な言動により、男性側に不快感や嫌悪感を与える行為を指します。
企業においても、逆セクハラを防止するための対策を実施することが求められています。
本記事では、逆セクハラの定義と具体的な事例、そして企業が取り組むべき対策について解説します。
逆セクハラとは
逆セクハラとは、女性から男性に対して行われるセクハラのことです。
具体的には、女性が男性にわいせつな言葉を浴びせたり、性行為や性的な関係を強要したりする行為などが挙げられます。[注1]
男女を問わず、職場での性的な言動は決して許されるものではなく、相手の意に反する行為はハラスメントにあたります。
法的には、男女雇用機会均等法により、職場におけるセクシュアルハラスメントは禁止されています。[注2]
逆セクハラも労働環境を悪化させる恐れがあるため、企業には防止策が講じられなければなりません。
通常のセクハラとの違い
通常のセクハラと逆セクハラの主な違いは、加害者と被害者の性別の違いにあります。
通常のセクハラは、男性から女性に対して行われる行為ですが、逆セクハラは女性から男性に対するものをいいます。
ただし、法的には男女を問わずセクハラは禁止されており、その対処法に違いはありません。
しかし、逆セクハラの認識はまだ低く、男性被害者が発言しにくい傾向にあるのが現状です。
逆セクハラの具体例
企業において、具体的にどのような行為が逆セクハラに該当するのでしょうか。
- 事例(1):職場での逆セクハラ
- 事例(2):公共の場での逆セクハラ
- 事例(3):オンライン上での逆セクハラ
逆セクハラの具体例を、場面ごとに紹介します。
事例(1):職場での逆セクハラ
男性従業員に対し、「男らしく振る舞え」「男なんだから○○するべきだ」など、性別を理由に過度な要求をする、「男性だからこの仕事はあせない」など性別を理由に仕事を与えないということも逆セクハラに該当します。
一般的に男性の方が女性より筋力があるため、力仕事は男性が得意とされがちです。
しかし、そうした性別による判断は逆セクハラに抵触する可能性があります。
企業側は、性別にかかわらず個人の適性や能力を見極めたうえで、公正に仕事を割り振ることが大切です。
単に「男性だからこの仕事はできない」と決めつけるのは不当な扱いとなります。
事例(2):公共の場での逆セクハラ
公共の場においては、ある程度の身だしなみや規範が求められますが、過度に露出度の高い服装をして、男性を刺激する行為や男性に対して性的な嫌がらせを繰り返す行為は逆セクハラに該当します。
また、男性従業員の体形や外見について一方的に求めるのも適切ではありません。個人の容姿を一般化して押しつけるのは、逆セクハラにあたります。
個人の自由やプライバシーを侵害することのないよう、規範の範囲内で節度を持つことが重要です。
事例(3):オンライン上での逆セクハラ
オンライン会議やSNSでの言動も注意が必要です。
オンライン会議では、男性の自宅の様子を過度に覗き見ようとしたり、カメラONを執拗に強要したりする行為は、相手を不快感するため逆セクハラに該当する可能性があります。
自宅の映像や私生活についての質問を強要するなど、プライバシーを侵害するような発言は避けましょう。
また、SNSを通じて行う性的な言動もセクハラに該当します。
SNS上に職場の人間関係を持ち込んで、相手に嫌がらせしたりストレスを与えたりする行為は、女性から男性に対しても許されることではありません。
オンライン上でも相手の意に反する性的な言動は控えましょう。
逆セクハラが発生するシーン
セクシュアルハラスメントとは、性的な言動により相手に不快感を与え、仕事や生活環境を不当に悪化させる行為のことです。
相手の性別にかかわらず、本人の意に反した性的な言動はセクシュアルハラスメントにあたります。
逆セクハラは以下のようなシーンで発生する場合が多いです。
- パターン(1):職場での逆セクハラ
- パターン:(2)学校や公共の場での逆セクハラ
- パターン:(3)オンライン上での逆セクハラ
場所ごとに起こり得る、逆セクハラの定義を解説します。
パターン(1):職場での逆セクハラ
職場におけるセクシュアルハラスメントの定義は、職場において性的な言動により相手側に不快感を与えることです。
これには逆セクハラも含まれます。
ここでいう、「職場」とは「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所」のことです。
そのため、通常の就業場所だけでなく、出張先や現場作業の場所でも職場に含まれます。
たとえば、業務中に女性から男性に対して執拗に食事やデートに誘ったり、性的事情を聞き出そうとしたりすることは逆セクハラにあたります。
パターン:(2)学校や公共の場での逆セクハラ
学校では、女子生徒から男性教師に対する逆セクハラも問題となる可能性があります。
たとえば、生徒が教師を性的な目で見たり、頻繁にボディタッチをしたりするような行為は逆セクハラに該当する可能性があります。
また、公共の場でも逆セクハラに注意が必要です。
相手が男性であることを理由に、「男性だから○○すべき」といった発言をすることは、性別による役割分担を押しつけるものであり、逆セクハラにあたります。
パターン:(3)オンライン上での逆セクハラ
近年、オンライン会議が増えたことで、オンライン空間におけるセクハラにも注意が必要です。
たとえば、オンラインミーティング中に、女性から男性に外見や服装に関することを指摘し、相手を不快にさせれば逆セクハラに該当する可能性があります。
オンラインの場であっても、参加者に不快感を与える性的な発言や要求は避け、性別に関わらず、言動に配慮する必要があります。
逆セクハラへの対処法
逆セクハラを防止するためには、個人と企業の双方が対処法を知っておくことが大切です。
- 個人が取るべき対策と対処法
- 職場での予防策と対応策
- 法的な保護と支援の利用方法
それぞれの観点から対処できる方法を紹介します。
また、ハラスメントに対して法的にどのような支援があるのかも知っておきましょう。
個人が取るべき対策と対処法
個人ができる対処法として、まずは明確な拒否の姿勢で相手の行為が不快であることを伝えましょう。
そのうえで、行為の日時や場所、内容を記録し、メールやメッセージなどの書面での証拠を残すことも有効です。
また、上司や人事部門、相談窓口などに状況を説明し、適切な助言を求めましょう。
相談する際は収集した証拠を提示し、事実関係を明確にすると企業側も対策が取りやすくなります。
職場での予防策と対応策
職場での逆セクハラ予防と対応には、以下のような取り組みが重要です。
- ハラスメント防止の方針と規程を定める
- 相談窓口の設置と適切な周知
- 定期的な研修やセミナーの実施
また、経営者が率先してハラスメント防止に取り組む姿勢を社内外に示し、組織としてハラスメント防止に努めましょう。
性別を問わずハラスメント行為に対処することが、職場におけるハラスメントを予防につながります。
法的な保護と支援の利用方法
男女雇用機会均等法や労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、職場におけるハラスメントを禁止しています。
企業は法律に基づき、適切な処置と対応が義務付けられており、対応が不十分であれば企業側の責任が問われます。[注3]
また、従業員側は企業内で設置されている相談窓口や外部のホットラインを利用して相談が可能です。
従業員は、一人で我慢するのではなく、まずは助けを求めることが大切です。
企業が取り組むべき逆セクハラ対策
逆セクハラを防止するためには、社内で相談できる環境づくりやアンケートによる実態調査が重要です。
- 教育機関でのカリキュラムによる教育
- 職場における研修プログラムによる認知
- 企業での意識改革と啓発活動
- セルフチェック・社内アンケートの実施
逆セクハラ防止のために、企業ができることや必要な措置を詳しく解説します。
教育機関でのカリキュラムによる教育
企業だけでなく教育機関においても、逆セクハラを含め、セクハラ防止のための教育が重要となります。
道徳の授業やホームルームなどを通じたハラスメント教育や、男女平等についての教育を行い、性別に基づく差別や価値観を教育に盛り込むと良いでしょう。
また、インターネット上のマナー教育も行い、オンラインでのハラスメントにも注意を払うことで、オンラインハラスメントの予防にもつながります。
職場における研修プログラムによる認知
企業が職場で実施できる逆セクハラ防止の研修プログラムとして、「セクハラとはなにか」を正しく理解させることが重要です。
従業員向けの研修だけではなく、管理職・人事部門に向けた研修も取り入れると、より効果があります。
また、研修は一度きりでなく、定期的に行うことが大切です。従業員の入れ替わりにも対応できるよう繰り返し実施し、新入社員研修にもセクハラ防止についての内容を盛り込むのも効果的でしょう。
企業での意識改革と啓発活動
企業の逆セクハラ防止対策においては、社内の意識改革と啓発活動が不可欠です。
社内報やイントラネットで逆セクハラ防止に向けた企業の方針や取り組みを発信し、従業員が定期的に目に止まるよう工夫しましょう。
また、SNSなどインターネットを通じてセクハラ問題に発展する可能性があります。
企業は、SNSの利用ルールやインターネット上でのハラスメント行為の防止についても従業員に周知徹底することが求められます。
セルフチェック・社内アンケートの実施
企業が逆セクハラ防止のために、「セルフチェック」や「社内アンケート」が有効です。
セルフチェックは、従業員一人ひとりが、自らの言動を振り返ることで「これはセクハラなのでは?」と気づき、意識改革につながります。
また、社内アンケートを実施することで、組織全体でのセクハラ実態を把握できるようになります。
このように、現場の具体的な実例や課題を収集でき、かつアンケート結果を分析すれば対策の立案に役立てられるのもアンケート集計のメリットです。
なお、アンケート実施の際は、匿名性を確保し、安心して回答できる環境を整えることが大切です。
アンケート結果を真摯に受け止め、実態に即した具体的な再発防止策を立案しましょう。
逆セクハラが及ぼす悪影響
逆セクハラによって、被害者だけでなく、職場や組織、企業にさまざまな問題や影響が及びます。
- 被害者に及ぼす心理的・社会的影響
- 職場や組織に与える影響
- 企業への影響
それぞれの問題点とその影響について解説します。
被害者に及ぼす心理的・社会的影響
女性から男性によるセクハラは、一般的に軽視されがちです。
被害者が相談する機会を得にくく、男性側が我慢を強いられる場面も多いでしょう。
しかし、精神的ストレスが蓄積されればモチベーションが低下し、私生活にまで支障が出る可能性があります。
またハラスメントにより、被害者にとって働きにくい環境となり、結果的にキャリア形成が阻害される可能性もあります。
被害者への影響を防ぐためにも、まずは逆セクハラに該当する具体的な行為例を共有し、相互に注意を促す環境づくりを行いましょう。
職場や組織に与える影響
職場で逆セクハラが横行し、「男性だから」という理由で差別的な扱いが常態化してしまえば、男性従業員は不当な制約を強いられることになります。
しかし、女性から男性に対するセクハラは「セクハラ」と認識しにくいのが実情であるため、加害者自身も自覚がないまま不適切な言動が当たり前と考えられがちです。
そうした状況では、誰も逆セクハラを問題視せず、改善への機会も生まれません。
そのため、組織として正しい知識を従業員に継続的に浸透させ、組織全体でハラスメント防止を図る必要があります。
企業への影響
ハラスメントをめぐる対立が深刻化すれば訴訟のリスクもあります。
企業にはハラスメント問題を防ぐ義務があり、場合によっては使用者責任や安全配慮義務違反によって損害賠償責任が問われる可能性があります。
もし訴訟にまで発展すれば、企業の信頼は低下し、企業経営にも影響が及ぶでしょう。
逆セクハラを含むハラスメント行為は企業にとって大きな影響を及ぼす可能性があるため、対策と適切な対応が求められます。
ハラスメントの調査にも「Chatwork」
逆セクハラとは、女性から男性に対して行われるセクハラのことを指します。
逆セクハラは通常のセクハラよりも軽視される傾向があるため、被害者が相談する機会を得にくいのが実情です。
しかし、逆セクハラもハラスメントの一つであり、被害者を傷つけ、職場環境を著しく悪化させる恐れがあります。企業は男女を問わず、ハラスメント対策を講じる必要があります。
ビジネスチャット「Chatwork」は、気軽に情報共有とコミュニケーションができるチャットツールです。
チャット形式でコミュニケーションができるため、セクハラの被害者がクローズドな環境で相談ができます。
また、複数人に同時にメッセージが送れるため、ハラスメントに対する調査・意識改革にも活用できるでしょう。
ハラスメント対策ツールとして、ぜひ「Chatwork」をご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注1]出典:人事院「セクシュアル・ハラスメント」
https://www.jinji.go.jp/seisaku/kinmu/harassment/10-10.html
[注2]出典:厚生労働省「雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html
[注3]出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。