「モラル」とは?言葉の意味や使い方、マナーとの違いを解説
目次
「モラル」とは、人が生活や社会活動するうえで守るべき基準や規範のことで、「モラルに欠ける」や「モラルに反する」といったように使われます。
モラルは、日常生活に限らず、ビジネスシーンにおいても重要なもののため、社会人として、正しい意味を理解しておくようにしましょう。
今回は、モラルの意味や使い方、マナーとの違い、ビジネスでの考え方を詳しく解説します。
モラルの意味とは
「モラル」とは、人が生活するうえで守るべき社会的な基準や模範のことです。
英語では「moral」と表し、「道徳(上)の」や「良心の」、「倫理的な」などの意味があります。
日常生活におけるモラルは、「タバコをポイ捨てしない」「順番を守る」のように、社会で生活するうえで善悪を判断するための基準と捉えてよいでしょう。
また、コンプライアンス違反が発生した際などに、「モラルに反する行為」と表すように、ビジネスシーンにおいても使われます。
モラルの遵守は、ビジネスを円滑に進め、信頼関係を構築するうえでも重要です。
企業やビジネスパーソンにとって守るべきモラルには、どのようなものがあるのか、詳しく確認していきましょう。
モラルの類義語・対義語
モラルへの理解を深めるために、モラルの類語と対義語を紹介します。
それぞれ意味をおさえておきましょう。
モラルの類語
モラルの類語には、以下があげられます。
- 道徳
- 倫理
- 徳義
- 規範
モラルと同じく、人が生活する際に守るべき考え方や秩序をあらわす言葉です。
モラルの対義語
モラルの対義語としては、「インモラル」があげられます。
インモラルとは、「正・善を排除し、道徳に反すること」で、「背徳」や「不道徳」と言い換えが可能です。
モラルとマナーの違い
モラルと混同したり、同じような意味で使われたりするのが、「マナー」です。
「マナー」は、態度や礼儀、行儀作法を意味する言葉で、社会や人と関わる際にとるべきおこないを指します。
たとえば、テーブルマナーや交通マナーのように、礼儀や行儀作法など、守るべき行動が明確に決まっている場合が多いです。
一方でモラルは、道徳や倫理など、社会で守るべき秩序を指すため、人の考え方や価値観に関わるもので、明確には決まっていません。
同じような意味で使われるケースが多い両者ですが、異なる意味をもっているため、使う際は、ミスコミュニケーションを起こさないように注意しましょう。
モラルの正しい使い方と例文
ビジネスシーンでも重要視される「モラル」は、実際にはどのように使うのが正しいのでしょうか。
例文を交えて、モラルの正しい使い方を解説します。
モラルがある・ない
「モラルがある」や「モラルがない」という使い方は、社会やビジネスなどの場面で、道徳的な価値観にそって、秩序を守って行動しているか否かを表す際に用いる表現です。
「モラルがある」を使った例文は、以下のとおりです。
- 他人を思いやることができる彼の行動には、モラルがあると感じさせられます。
- モラルがあるビジネスリーダーとは、利益追求だけでなく、社会的責任を果たすことも重視する人です。
一方で、「モラルがない」は、以下のように使用できます。
- 他人を利用し、嘘をつく行為は、モラルがないとみなされます。
- モラルがないと、個人の欲望や利益追求が優先され、誠実さや公正さが失われてしまうでしょう。
モラルに欠ける
社会や集団生活など、生活するうえで守るべき秩序や道徳に反している状態を、「モラルに欠ける」と表現できます。
「モラルに欠ける」の例文は、以下の通りです。
- 顧客の利益よりも自社の利益を優先する経営姿勢は、モラルに欠けています。
- モラルに欠ける差別的な発言に、多くの批判の声が集まっています。
モラルを守る
「モラルを守る」とは、道徳観や倫理などにそって、秩序を守っている様子や行動を指します。
「モラルを守る」の例文は、以下の通りです。
- 企業運営において、モラルの遵守が社会的責任であると認識しています。
- モラルを守る行動は、信頼や尊重を築き、良好な人間関係の基盤となります。
モラルに反する
「モラルに反する」とは、守るべき秩序や基準に逆行したおこないを指し、「モラルを守る」とは反対の意味を表します。
「モラルに反する」を使った例文は、以下のとおりです。
- 他人を傷つける言動は、明らかにモラルに反しています。
- 盗みや詐欺は、モラルに反する犯罪行為です。
モラルを使った言葉
「道徳上の」や「倫理的な」という意味をもつ「モラル」は、単体以外でも、さまざまな言葉で使用されています。
最後に、モラルが使われている言葉の一例を確認していきましょう。
モラルハラスメント
「モラルハラスメント」とは、道徳観や倫理に反した嫌がらせ行為のことです。
モラルハラスメントの略語である「モラハラ」を、耳にした経験がある方は多いのではないでしょうか。
たとえば、以下のような言動が、職場内のモラルハラスメントに該当する恐れがあります。
- 相手を無視する
- 暴言を吐く
- 仕事の押し付けなどの業務妨害
- プライベートへの過度な干渉
モラルハラスメントが職場内で発生すると、従業員の離職率・休職率が上がってしまったり、企業のイメージ低下につながってしまったりなど、さまざまなリスクが想定されます。
また、モラルハラスメントによって、法的責任を負う可能性もあります。
モラルハラスメントの定義や具体的な防止策を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>【社労士監修】モラルハラスメントとは?に関する記事はこちら
情報モラル
「情報モラル」とは、情報社会で生きていくうえで求められる、道徳観や倫理に基づいた適切な行動を意味します。
インターネットの発達やSNSの利用者増加などによって、近年情報モラルの必要性が増しています。
情報モラルに反する行為の一例としては、以下があげられます。
- 個人情報や機密情報の漏洩
- 著作権侵害
- 暴言を吐くなどの人権侵害
情報モラルを守るためには、ITリテラシーを身につけておく必要があります。
従業員ひとりの軽はずみな言動が、企業全体のイメージ低下を引き起こす恐れもあります。
ITリテラシーの重要性をしっかりと理解して、企業全体で情報モラルの意識向上に努めましょう。
モラルハザード
「モラルハザード」は、元々保険に関する用語で、事故や病気などの事態に対して、保険によって補償・保障がなされる安心感が障害となってしまい、道徳観や倫理の欠落につながり、かえって危険な事態を招いてしまう状況を指します。
たとえば、自動車保険への加入により、安心感から運転時の危機感がなくなってしまい、事故を起こすリスクが高まってしまう状態などが、モラルハザードに該当します。
せっかくトラブルやリスクを回避するための仕組みを整備したのに、危機管理の意識が薄れてしまっては意味がありません。
企業側は、環境やシステムを整備して終わりではなく、定期的にハラスメント対策や情報セキュリティの重要性を周知・啓発し、従業員の意識が薄れないようにしましょう。
社会人が守るべきモラル
生活するうえで守るべき社会的な基準や模範である「モラル」は、ビジネスパーソンにとっても重要なものです。
ビジネスパーソンが大切にすべきモラルの一例として、以下のようなモラルがあげられます。
- 法令やガイドライン
- 服務規律
- ビジネスマナー
ひとつずつ確認していきましょう。
法令やガイドライン
ビジネスシーンで守るべきモラルとして、法令やガイドラインがあげられます。
以下が、法令やガイドラインの一例としてあげられます。
- 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)
- 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)
たとえば、商品やサービスの契約・申し込みで個人情報を取り扱う場合には個人情報保護法、化粧品や医療用品の製造販売をおこなう場合は薬機法、キャンペーンの実施で景品を検討する場合は景品表示法の遵守は必須です。
法令やガイドラインに反してしまうと、行政指導などの対象になる恐れがあります。
職種や業界などによっても、守るべき法令やガイドラインが変わってくるため、モラルを守るには専門知識の習得が大切です。
服務規律
服務規律とは、企業で働くうえで守らなければいけないルールや行動規範を指します。
たとえば、働く姿勢や施設の利用方法、秘密保持に関するルールが定められています。
服務規律の例としてあげられるのは、以下の内容です。
- 許可なく職務以外で会社の物品を利用しない
- 勤務中に勤務場所から離れない
- 会社で知り得た情報を外部に漏らさない
ビジネスパーソンとして、当たり前の内容に思えるかもしれませんが、トラブルを未然に防ぎ、モラルを守るためにも、いま一度、勤め先の服務規律を確認しておきましょう。
ビジネスマナー
ビジネスマナーは、ビジネスパーソンが知っておくべきルールのひとつといえるでしょう。
ビジネスマナーの基本としてよくあげられるのは、以下の3つです。
- 挨拶
- 言葉づかい
- 身だしなみ
基本的なビジネスマナーを身につけておけば、相手とのコミュニケーションや、信頼関係の構築を円滑におこなえるでしょう。
社会人に必要な、基本的なビジネスマナーを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
企業が守るべきモラル
モラルとは、個人だけに使われる言葉ではありません。
企業モラルの低下は、企業の信頼にも大きく影響を与えるため、注意すべきでしょう。
企業が守るべきモラルの一例として、以下があげられます。
- コンプライアンス
- 情報管理
- 社会貢献
- 環境対策(SDGs)
企業が守るべきモラルについて、それぞれ確認していきましょう。
コンプライアンス
「コンプライアンス」とは、法令を遵守することです。
法律などの法令のほかに、社会規範や企業倫理、就業規則などがコンプライアンスに該当し、「企業コンプライアンス」とも呼ばれています。
企業コンプライアンスの違反に当てはまるのは、以下のような事例です。
- 生産地などの偽装
- 助成金などの不正受給
- データ持ち出しによる機密情報の漏洩
- 画像の無断使用などの著作権侵害
- パワハラなどのハラスメント
コンプライアンス違反に陥らないためには、従業員に対して、コンプライアンスの重要性を周知・啓発しておく必要があります。
コンプライアンス違反の事例を知りたい方は、以下の記事をお役立てください。
>【社労士監修】コンプライアンスの違反事例とは?に関する記事はこちら
情報管理
近年、SaaSなどのクラウド型サービスの利用や、リモートワークの増加により、情報セキュリティ対策の必要性が増しています。
安全な企業経営をおこなうためには、従業員が内部情報を持ち出せないようにアクセス権限を制限したり、セキュリティ対策ツールを導入したりなど、体制の整備が欠かせません。
また、モラルに反した動きがないかを確認するためには、従業員が利用しているSaaSアカウント情報や権限付与状況などの情報管理を徹底して、セキュリティリスクを回避する必要があるでしょう。
企業が取り組むべきセキュリティ対策については、以下の記事を参考にしてください。
社会貢献
企業の社会貢献は、資金援助や人的支援など、社会に対して利益を与えて、豊かな社会を築くための支援につながります。
企業が取り組む社会貢献は、以下の3種類に分別できます。
人的支援 | 地域住民との交流、災害復興支援、緑化運動への参加など |
---|---|
物的支援 | 技術提供、災害時の商品の無償提供など |
資金的援助 | NPOなど社会支援団体への資金提供など |
社会貢献への取り組みは、企業イメージの向上や従業員のモラル向上などのメリットがあります。
企業の社会貢献の事例や取り組み方を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
環境対策(SDGs)
持続可能なよりよい社会を目指すための国際社会の目標「SDGs」が、近年注目を集めています。
SDGsの一環として企業が取り組むべきなのが、環境対策です。
たとえば、再生可能な印刷用紙を使ったり、商品の生産過程で排出される二酸化炭素の排出量を削減したりする取り組みが、企業が取り組むべきSDGsの対策としてあげられるでしょう。
SDGsへの積極的な取り組みにより、企業の信頼度向上や、従業員の環境対策に対する意識の高まりを期待できます。
SDGsの取り組みについて、より詳しく知りたい場合は、以下の記事をお役立てください。
情報共有には「Chatwork」
モラルとは、人が生活するうえで守るべき基準や規範を指す言葉で、日常生活だけでなく、ビジネスシーンでも重要なものです。
ビジネスパーソンとして知っておくべきモラルを理解し、円滑なコミュニケーションを目指しましょう。
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