マイクロマネジメントとは?部下や組織へ及ぼす悪影響や改善策を解説
目次
「マイクロマネジメント」とは、上司が部下の仕事を過干渉に管理してしまうマネジメント方法のことです。
不適切なマネジメント方法は、部下や組織に悪影響を及ぼす恐れがあるため、改善が必要です。
マイクロマネジメントの原因や、部下や組織に与える悪影響、対処法を解説しますので、改善や予防に役立てましょう。
マイクロマネジメントとは
「マイクロマネジメント」とは、管理職や上司が、部下の仕事を細かくチェック・管理するなど、過度に干渉してしまうマネジメント方法です。
部下の性格や状況によっては、マイクロマネジメントが有効なケースもありますが、悪影響を与える場合のほうが多いマネジメント方法のため、注意が必要です。
マイクロマネジメントに悩む社員が増えている背景には、テレワークの普及や人材不足などの理由があります。
マイクロマネジメントの理解を深め、健全な組織を目指せるようになりましょう。
マクロマネジメントとの違い
マイクロマネジメントと似た言葉として「マクロマネジメント」がありますが、マクロマネジメントは、指示やチェックをおおまかにおこない、管理するマネジメント方法のことです。
部下に対して必要なときに必要なマネジメントをおこなう方法のため、適正化されたマネジメントであり、マイクロマネジメントと正反対のマネジメント方法といえるでしょう。
マイクロマネジメントをしてしまう原因
マイクロマネジメントに陥ってしまう原因を3つ解説します。
- 上司自身が不安を抱えている
- 上司の自己顕示欲が強い
- 部下を管理できていると錯覚している
なぜ部下をマイクロマネジメントしてしまうのか、原因を確認していきましょう。
上司自身が不安を抱えている
上司が部下を管理できているのか不安に思っていたり、部下のミスが原因で自分の評価が下がることを恐れていたりすると、頻繁に状況確認をしたり、メールやチャットをチェックしたりなどのマイクロマネジメントをおこなってしまうケースがあります。
また、上司は部下への管理監督責任があるため、部下のミスによって上司が管理監督責任を問われることを恐れる気持ちが、マイクロマネジメントの原因になっている場合もあるでしょう。
さらに、上司自身が若手社員のころに大きな失敗を経験していると、部下に自身と同じ失敗をさせたくないと心配して過干渉になってしまうケースもあります。
上司の自己顕示欲が強い
上司が、「周りの人間に認められたい」「自分の能力や存在を周囲にアピールしたい」という自己顕示欲が強い場合、以下のようなマイクロマネジメントをおこなうケースがあります。
- 業務などで自分と同じ方法でやるよう強要する
- 考え方や持ち物を同じにするよう強要する
- デスク上の物の配置や収納方法に口出しをする
自己顕示欲が原因でマイクロマネジメントをおこなっている場合、「部下から尊敬されたい」「周囲から評価や信頼されたい」という強い思いが根底にある可能性があります。
このケースの場合、自身のマネジメント方法が、間接的に部下を否定したり信頼関係を損なうきっかけになったりしている事実に気が付いていないケースもあります。
管理できていると錯覚している
マイクロマネジメントをおこなって、部下の行動を把握したり監視したり、自分の思いどおりに行動させることで、部下を適切に管理できていると錯覚している場合もあります。
このケースの場合、マネジメントを誤解して認識していて、適切なマネジメント方法を知らない可能性があるため、マネジメントについて理解を深める必要があるでしょう。
マイクロマネジメントの具体例
マイクロマネジメントの具体例を紹介します。
- 部下の居場所を常に把握しようとする
- 30分に1回など、頻繁に業務の進捗状況の報告をさせる
- 電話の掛け方や話し方に細かく口をだす
- メールやチャットの送り方や内容に細かく口をだす
- 業務はすべて指示どおりにおこなうように指導する
- テレワークの業務時間中は必ずWebカメラをオンにさせて監視する
上司が部下に指示をだしたり、報告を求めたりするのは、業務を円滑に進めるために必要なものです。
しかし、過度な管理は、業務効率の低下や、部下のモチベーション低下、また、主体性を奪って成長を阻害するなどの悪影響もあるため、改善する必要があります。
自分のマネジメント方法や、上司のマネジメント方法が、マイクロマネジメントに該当していないかを、いま一度確認してみましょう。
マイクロマネジメントが増えている理由
昨今マイクロマネジメントが増えている背景には、テレワークの普及や働き方の多様化など、さまざまな理由があります。
企業や部署によって当てはまる状況は異なるため、改善を目指す前に、まずは自社に関する状況把握が大切です。
働き方や人材の多様化
昨今、中途採用の従業員や、介護や育児と両立させながら働く従業員、再雇用で働くシニア従業員など、部下の年代や働き方が多様化しています。
このような変化のなかで、部下全員に同じ方法で情報共有をおこなったり、お互いにコミュニケーションをとったりする機会が減少してきたことで、「全員にしっかりと伝わっているだろうか」と不安になり、部下それぞれに細かく確認するなど、上司が過干渉になってしまうケースがあります。
人材不足による仕事量の増加
人材不足が慢性化している企業や部署の場合、従業員一人ひとりの仕事量が多くなります。
このような状況では、従業員ひとりの業務が滞ると、全体に与える影響が大きいため、多量な業務を円滑に進めるために、指示通りに仕事を進めさせる状況になっているケースがあります。
テレワークの普及
テレワークやリモートワークの働き方が普及したことで、オフィスで上司が部下の仕事の様子を直接見る機会が少なくなった企業もあるでしょう。
そこで上司が、「在宅でもしっかりと仕事をしているだろうか」と不安を抱え、部下に過度に干渉してしまうケースが増加しています。
IT技術の進化
IT技術が進化し、業務効率化や生産性向上を実現するツールが増加したことも、マイクロマネジメントが増加している要因のひとつです。
コミュニケーションツールやタスク管理ツールが普及したことで、上司は部下の働き方や業務内容を簡単、また詳細に把握できるようになりました。
結果として、業務の細かな部分まで上司が介入しやすくなり、マイクロマネジメントが増加しています。
マイクロマネジメントをする上司・管理職の特徴
マイクロマネジメントをしてしまう上司や管理職のなかには、無自覚でマイクロマネジメントをおこなっている人も少なくありません。
以下の特徴に当てはまる場合は、マネジメント方法の改善が必要になるため、自分や上司に当てはまる特徴がないかを確認してみましょう。
部下への言動が横柄
マイクロマネジメントをしてしまう上司の特徴として、高圧的な言動や乱暴な言葉遣いがあります。
部下の恐怖を煽って従わせたり、自分の方が立場が上であることを強調したり、誤った方法で部下と接しているケースです。
自分の力を示すために人前で叱るなどのおこないは、パワハラになり兼ねないため、改善が必要です。
部下の考えや価値観を尊重しない
部下の考えや価値観を尊重しないのも、マイクロマネジメントをしてしまう上司の特徴のひとつです。
部下を尊重できない理由には、自分の考えや価値観、仕事のやり方が正しいと思っていることなどがあげられます。
部下の考えを尊重すると、自分で考えて行動する自主性など、さまざまな成長につながる機会がありますが、尊重しないと成長の機会を奪ってしまう結果になりかねません。
仮に、部下の誤りを指摘する必要がある場合は、否定するのではなく、部下の意見を尊重したうえで、指摘するよう配慮しましょう。
部下の指導で褒める割合が少ない
部下を指導する際に、褒める割合が少ないことも特徴のひとつです。
なかには、部下の成長を思うあまり、無意識のうちに褒めずに指摘ばかりしているケースもあります。
指導による問題の指摘は大切ですが、問題を指摘してばかりで褒めずにいると、部下は自分のことを肯定されていないと感じるかもしれません。
指導の際に部下を褒めるふるまいは、信頼関係にもつながる重要なポイントです。
指導をおこなう際は、部下を褒める割合も意識してみましょう。
些細なミスを追及する
些細なミスを追及する行為も、マイクロマネジメントをする上司の特徴です。
些細なミスにも関わらず、執拗に追及してしまうと、部下のモチベーションは下がってしまうでしょう。
また、上司の追及や叱責を恐れて、ミスの報告を怠るケースも考えられます。
ミスの報告をしなくなると、大きなミスにつながる恐れがあるため、部下のミスを執拗に追及している場合は、改善が必要です。
メールや権限移譲した仕事にも干渉する
自分に関係のないメールや仕事に干渉する行為も、マイクロマネジメントをする上司の特徴のひとつです。
部下に任せた仕事を細かく確認し、自分のやり方を押し付けるなどをしてしまうと、部下のモチベーションを低下させる恐れや、成長機会を奪う恐れがあります。
また、上司が関わりのない部下のメールやチャットを確認したり、メールのCCに自分の名前を入れるよう強要したりする行為もマイクロマネジメントであり、信頼関係を損なう恐れがあるため、改善が必要です。
業務に細かいルールを作る
自分が管理しやすいように、細かいルールをつくるのも特徴のひとつです。
業務を円滑に進めるうえで、ルールの設定は必要ですが、ルールが細かすぎると窮屈に感じてしまい、モチベーションの低下を招く恐れがあります。
ルールを設ける場合は、管理する部署やチームの部下が円滑に業務をおこなえるよう設定しましょう。
マイクロマネジメントが部下にもたらす悪影響
マイクロマネジメントは、新入社員や成績が伸び悩んでいる社員などに対してはメリットになるケースもありますが、基本的には、部下の意欲低下を引き起こすなど、悪影響を及ぼすケースのほうが多いです。
以下は、マイクロマネジメントが及ぼす悪影響・デメリットの一例です。
- モチベーションの低下
- 成長機会の損失
- 心身の健康被害
- 自主性の損失
- 信頼関係の崩壊
マイクロマネジメントが及ぼす悪影響について、それぞれ詳しくみていきましょう。
仕事へのモチベーションを損なう
部下を過度に管理してしまうと、部下は上司に信頼されていないと感じかねません。
また、自分のペースで仕事を進められないため、モチベーションが低下する恐れもあります。
執拗にミスを追及されたり、高圧的な言動をとられたりする状況も、モチベーションの低下につながるため、注意が必要です。
部下が成長する機会を奪ってしまう
部下が自分で考えて判断し、業務を進める過程は、成長する機会になります。
しかし、上司が指示どおりに仕事を進めるように管理すると、自分で考えて業務を進める機会が失われるため、成長の機会を奪ってしまう結果になりかねません。
従業員の成長が損なわれると、将来的な企業の業績などにも、影響を及ぼす恐れがあるでしょう。
心身の健康に悪影響を及ぼす
マイクロマネジメントをうけると、監視されていると感じてしまったり、常に上司の顔色をうかがい、気を張った状態になってしまったりするため、大きなストレスを抱える部下もいるでしょう。
ストレスを抱えた状態が続くと、心身の不調につながりやすく、休職や退職をする従業員がでる可能性もあります。
その結果、人手不足や業績の悪化などを招く危険性もあります。
部下の自主性を損なう
部下を指示どおりに従わせるなどのマイクロマネジメントをおこなうと、部下は自分で考えて行動する機会を奪われてしまうため、自主性が損なわれてしまうでしょう。
自主性を奪ってしまうことは、結果として部下の成長を阻害し、キャリア形成を妨害してしまう結果にもつながります。
また、自主性の高い従業員は、企業に見切りをつけて退職するケースも考えられるでしょう。
上司との信頼関係が構築されない
ビジネスシーンでは、円滑に業務を進めるうえで、信頼関係の構築が重要ですが、過度に干渉することで、上司から信頼されていないと感じて、信頼関係の構築に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、高圧的な言動なども、信頼関係の構築に悪影響を及ぼしかねないため、改善が必要です。
マイクロマネジメントが組織にもたらす悪影響
マイクロマネジメントは、企業の業績悪化や慢性的な人材不足など、従業員だけでなく、組織にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
リスクを回避するためにも、マイクロマネジメントが組織に及ぼす悪影響についておさえましょう。
上司や管理職の役割が機能しない
上司や管理職には、組織運営のために、目標達成の戦略や業務の方針を考える役割があります。
部下の業務に干渉して現場の業務をおこなうと、本来の役割を果たせなくなってしまう場合もあるでしょう。
いまの上司や管理職が機能しないだけでなく、将来の管理職層の育成にも影響を及ぼす恐れがあるため、注意が必要です。
離職率の上昇を招く恐れがある
マイクロマネジメントは、部下のモチベーションの低下につながるだけではなく、従業員がキャリア形成やキャリアアップに希望を見いだせないと感じる原因にもなりえます。
社内でキャリアアップを目指せないと、転職を考えて、退職する従業員が増える可能性もあり、離職率の上昇が懸念されるでしょう。
離職者の増加により、人手不足や企業の成長が鈍化するなどの影響も考えられます。
採用・育成コストがかさむ恐れがある
離職者が増えて、新たな人材を募集する状況になると、採用コストが発生します。
また、育成が必要な場合、育成のための時間や費用も必要になります。
上司によるマイクロマネジメントが改善されない場合、従業員の退職と採用・育成をくり返す負のループに陥る恐れもあります。
生産性やパフォーマンスの低下を招く恐れがある
上述した通り、マイクロマネジメントは、部下の成長を阻害するだけでなく、上司や管理職の役割が果たせない状況になる危険性もあります。
その結果、組織としての生産性やパフォーマンスの低下を招く恐れもあるでしょう。
マイクロマネジメントへの対処法・改善策
マイクロマネジメントに対処する方法、改善する方法を紹介します。
部下との関係性や組織の状態にあわせて、適切な方法を選択してください。
進捗確認や報告の頻度を改める
進捗状況の確認や報告を頻繁におこなっている場合、進捗の確認や報告の頻度を改める改善を検討しましょう。
部下にとって、適切な回数や方法についてヒアリングすることが、改善のポイントです。
進捗報告などのタイミングを決める
進捗状況などの報告は、タイミングを決めておくと、上司として部下に必要以上の報告を求めたくなる状態を改善ができるでしょう。
また、報告タイミングの設定により、部下は一日の業務スケジュールを決めやすくなるメリットもあります。
たとえば、進捗状況の報告は、就業終了前におこない、トラブルが起こったときの報告は即時おこなうなど、報告する内容の種類によってタイミングを決めておくと、スムーズに進められるでしょう。
上司の本来の役割を確認する
マイクロマネジメントをおこなっている上司や管理職は、部下の仕事に介入・干渉するなど、本来の役割とは異なる仕事をおこなっている場合があります。
上司や管理職に求められる本来的な役割の再認識により、改善につながるでしょう。
上司が抱える問題を明らかにする
マイクロマネジメントは、上司自身が不安を抱えているなど、上司自身の問題を解決する手段としてもちいられるケースが多いです。
上司自身が、「なぜマイクロマネジメントをおこなってしまうのか」という問題を明らかにすると、必要な解決策がみえてくるでしょう。
部下に寄り添ったマネジメント方法を見つける
上司や管理職は、本来、組織としての目標を管理する役割がありますが、マイクロマネジメントをおこなってしまう上司は、部下の行動や仕事を管理してしまう場合があります。
どのようにマネジメントすると部下に寄り添いながら目標達成できるのかを考え、手法を見直すなどの試行錯誤により、適切なマネジメント方法がみつかり、改善を期待できるでしょう。
部下の性格や得意・不得意によっても、適切なマネジメント方法は異なるため、上司の「この仕事は当たり前にできるだろう」などの思い込みをなくし、部下それぞれに寄り添う姿勢が大切です。
部下に権限移譲する
上司が部下の仕事に介入してしまうと、上司はプレイングマネージャーの立場になってしまい、組織の生産性などに悪影響を及ぼしかねません。
部下に仕事を任せると、信頼性を示せるほか、部下の自主性も育つため、部下に権限移譲をして成長を促すことで、改善につなげましょう。
会話にオープンクエスチョンを使う
オープンクエスチョンとは、「はい」や「いいえ」を使わずに、自由に回答できるタイプの質問です。
会話にオープンクエスチョンをもちいることで、部下が自分で考える機会を増やしたり、上司が部下を理解するきっかけになったりするでしょう。
>【専門家監修】オープンクエスチョンとは?に関する記事はこちら
適切なチームマネジメントに「Chatwork」
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