リテンションとは?人事領域における意味やメリット、施策例を解説

目次
リテンションとは、人事領域において「人材の維持」や「他社への流出を防ぐ施策」を指す言葉です。
人手不足が深刻化する現代において、企業の安定した経営や発展を目指すにあたり、リテンションへの取り組みが重要視されているため、リテンションの意味や施策例を理解し、実施することが求められています。
この記事では、人事領域におけるリテンションの意味と実施するメリット、種類や具体例について詳しく解説します。
紹介するリテンション施策を参考に、自社に合った施策を考案しましょう。
リテンションとは
リテンションとは、英語で「保持」「維持」を意味する言葉で、ビジネスシーンでは人事領域やマーケティング領域で使われます。
人事領域でのリテンションは、「人材の維持」や「他社への流出を防ぐ施策」を指し、マーケティング領域では「既存顧客との関係維持のための施策」を意味します。
人事領域においてリテンションを実施する目的は、人材の定着率を高め、離職による採用コストの発生を抑えたり、優秀な人材の継続的な確保をはかったりすることです。
リテンションが注目を集める背景
人事領域においてリテンションが注目を集めている背景には、慢性的な人手不足と働き方に対する価値観の変化が挙げられます。
日本は少子高齢化の深刻化によって多くの企業が働き手不足に陥っており、現在の生産性を維持・発展させていくためには自社に在籍する人材を流出させないことが重要です。
一方で、働き方改革の推進や感染症の蔓延によって労働者の働き方に対する価値観が変化している状況は、より自分らしく働ける場所を求める人材の流動化を招いているため、人材が働きやすい環境や福利厚生を整備しないと、人材の流出が進むおそれがあります。
限りある労働力を確保しつつ、自社の安定した経営や将来の発展を目指すにあたって、リテンション施策の重要性が高まっています。
リテンション施策を実施するメリット
リテンション施策を実施すると、企業にとってさまざまなメリットがあります。
リテンション施策を実施するメリットを解説します。
採用コストの抑制や削減につながる
リテンション施策を実施し、従業員の定着率が高くなると、採用コストの抑制や削減につながることがメリットです。
離職する従業員が多いと、新たな人材を採用する広告宣伝費や人件費、採用した従業員の育成・研修費などのコストがかかり、企業の経営に大きな負担が生じます。
一方で、離職者が少なければ、採用や教育などにかかる余分な費用が生じないため、コストを削減できたり、ほかのコアなリソースに充てたりすることが可能です。
社内に知識やノウハウが蓄積される
従業員の勤続年数が長くなると、自社での業務に必要な知識やノウハウが蓄積されたり、顧客や取引先との良好なネットワークが築かれたりします。
知識・ノウハウの蓄積やネットワークの構築は一朝一夕で実現できるものではないため、リテンション施策に取り組み、従業員を自社に定着させると、よりプラスの状況につながるでしょう。
特に、専門的なポ
Ωジションの人材や技術職の人材がもつ知識・ノウハウは貴重であり、退職時に代わりの人材を早期に探すことも難しいため、企業にとって大きな損失となります。従業員のモチベーションが向上する
リテンション施策によって人材の定着率が高まると、従業員のモチベーションが向上する効果があります。
長く一緒に働くほど従業員同士の相互理解が深まり、信頼関係の構築にもつながるため、協力体制が自然と敷かれたり、働きやすさを感じられたりします。
また、人材が自社に定着すれば離職者が減少し、離職による業務負担増加や、せっかく育成したのに辞められてしまったという落胆もなくなり、モチベーションへのネガティブな影響も防げるでしょう。
企業の持続的な成長が実現できる
自社に定着した人材に対しては、仕事の得手不得手や志向などの理解度が高まるため、適材適所への人材配置が可能です。
高いスキルや豊富なノウハウをもつ人材を、もっとも活躍できる場所に配置できれば、企業の持続的な成長を実現できる点も大きなメリットといえるでしょう。
また、人材の定着率が高い企業として社会的に認知されると、求職者から選ばれやすくなるため、継続的に優秀な人材を確保し続けられることにつながり、競争社会で優位に立てると考えられます。
リテンション施策の種類
リテンション施策は、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の大きくふたつにわけられます。
各施策の例と特徴を紹介します。
金銭的報酬
金銭的報酬の例として、インセンティブや適正な評価制度の導入、適正な給与の支給、充実した福利厚生などが挙げられます。
金銭が発生したり、金銭的補助をおこなったりするのが金銭的報酬で、人材をつなぎとめるのに効果的ではありますが、金銭に関わるリテンションであることから対応の限界があります。
非金銭的報酬
非金銭的報酬には、ワークライフバランスの実現や働きやすい職場環境の整備、キャリア形成支援などがあります。
従業員の生活の充実や、職場での働きやすさを重視した施策で、企業独自の取り組みを反映しやすいため、金銭的報酬とあわせて魅力的な施策を実施すれば、従業員の定着率を高められるでしょう。
各リテンション施策の具体的内容は後述します。
リテンション施策の具体例
「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2種類が挙げられるリテンション施策について、具体例を紹介します。
各取り組みを確認し、自社の活動に活かしていきましょう。
人事評価制度の見直し・適正化
人事評価制度は、従業員の給与や昇進に関わる制度であるため、適正におこなわれているか見直し、必要に応じて修正することが大切です。
たとえば、直属の上司ひとりしか評価者がいない場合は、部下や同僚なども評価者とする360度評価を取り入れると、より客観的で納得感の得られる制度となります。
評価者の偏見や思い込みに左右されることなく、一人ひとりの従業員が公平・公正に評価される制度を確立しましょう。
給与体系の見直し・適正化
現在の給与体系の見直しや適正化も、リテンション施策のひとつとして挙げられます。
従業員は、自身の働きに応じた給与をもらえないと不満を抱き、より高く自身を評価してくれる企業へ転職してしまうおそれがあります。
そのため、従業員の自社への貢献度や働きぶりを給与に反映するような体系づくりが重要です。
インセンティブやボーナスの支給
従業員の実績に応じたインセンティブやボーナスの支給は、従業員のモチベーションを高め、働きがいを感じてもらうのに有効です。
従業員が功績をあげたり高い評価を得たりするほど、支払われるインセンティブやボーナスを多くすることで、従業員の仕事に対する意欲向上につながるでしょう。
意欲的な従業員が増えれば、社内の雰囲気がポジティブになったり、生産性が高まったりする効果もあります。
福利厚生の充実
時短勤務制度や育児休業制度などの法律によって義務づけられている福利厚生とは別に、企業独自の福利厚生を整備し、充実させることがリテンション向上に役立ちます。
たとえば、がん検診の費用を企業負担とする・出産時にお祝い金を出す・住宅手当を支給するなどの施策が挙げられます。
福利厚生が充実すると、従業員の金銭的負担や不安感などが軽減され、企業に対する満足度や愛着心が向上する可能性があります。
社内コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションが活性化している職場は、お互いに気兼ねなく意見を言えたりアイデアを出し合えたりできる風通しの良い状態にあり、従業員一人ひとりが能力を発揮しやすいです。
自分らしく働ける環境はモチベーション向上やストレス軽減につながり、従業員の自社への定着率を高めるでしょう。
また、コミュニケーションが活発な職場は不正などのネガティブな出来事が生じにくくなり、企業の社会的信用を失墜させるリスクも軽減できます。
ワークライフバランスの実現
育児・介護・持病など、従業員には各々事情があり、状況によっては自社で働くことが困難になるかもしれません。
従業員が各自の事情によって離職するという事態を防ぐために、ワークライフバランスを実現できるような制度を導入しましょう。
たとえば、フレックスタイム制度やリモートワーク制度、時間単位での有休取得などのように柔軟な働き方ができる制度を取り入れると、従業員はワークライフバランスを維持でき、自社で長期に活躍してくれる可能性が高まります。
>ワークライフバランス実現に企業ができる取り組みとはに関する記事はこちら
スキルアップ・キャリア形成の支援
自社でのスキルアップやキャリアアップを見込めないと感じると、離職を選ぶ従業員もいるかもしれません。
そのため、従業員の向上心や上昇志向を無駄にしないよう、スキルアップ・キャリア形成の支援をおこなうことが望ましいです。
たとえば、スキルアップにつながる研修の実施や、キャリアに関する相談窓口の設置、社内公募制度による部署異動などが挙げられます。
自社にいてもスキルアップやキャリアアップができると感じた従業員は離職をせず、さらなる活躍をしてくれるでしょう。
働きやすい職場環境の整備
従業員を自社につなぎとめるには、働きやすい職場環境の整備が求められます。
職場環境が清潔で整理されており仕事がしやすい、休憩室や更衣室などの設備が充実していてしっかり休める、就業規則やルールに透明性があり制度を利用しやすいという状況は、精力的に仕事へ取り組むために必要な要素です。
また、従業員からの相談を受けやすい体制をつくることや、制度導入に関して従業員へアンケートをとったり意見を聞いたりする場を設けることも、従業員を大切にしている印象を与えるため、人材の流出リスクを抑えられます。
リテンション施策を実施した企業事例
リテンション施策を実施し、離職率を減少させた企業事例を紹介します。
働き方の選択肢を増やして離職率を28%から4%にした企業
ソフトウェア開発をおこなう企業は、離職率が28%と高く、人材の定着に課題を抱えていました。
そのため、短時間勤務やリモートワーク、週3日の勤務など、働き方の選択肢を増やし、従業員の事情によって選べる制度を導入しました。
また、従業員の副業を早期から認めたり、部活動に手当を支給したりして従業員の働きやすさを向上させ、飲食費の補助を受けられるバーを社内に設けることでコミュニケーションの活性化をはかりました。
その結果、離職率は4%に減少し、売上も上昇させていくことができました。
長時間労働を是正して11.8%の離職率を7.5%に減少させた企業
不動産業を営む企業は、業界特有の長時間労働に課題を感じていました。
「人財」の重要性はわかっていたものの、長時間労働が多く、定着率の低さも目立っており、職場環境の改善の必要に迫られていたため、ワークライフバランスを推進する社長直轄の組織を起ち上げました。
労務管理に関する研修の実施や、役員と担当者が管理職に直接説明して意識改革をおこなうなど、経営陣が本気で業務改善をはかろうとしていることを伝え、従業員一人ひとりが職場環境をよくする方法を主体的に考える状況をつくりました。
その結果、営業活動の時間の上限が定まったり、テレワークや一時間単位の有休取得制度が導入されたり、男性の育休取得者が出たりして、離職率も4年間で11.8%から7.5%にまで減少させることができました。
柔軟な働き方の実現に「Chatwork」
リテンション施策を実施すると、優秀な人材の定着率を高めることができ、従業員のモチベーション向上や採用コストの削減などのメリットを得られます。
リテンション施策によって社内コミュニケーションが活性化されると、従業員同士の信頼関係が構築されたり、心理的安全性が高まって働きやすさが向上したりする効果があるため、コミュニケーションをさらに促進させるツールの導入をおすすめします。
ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット形式で気軽にメッセージを送れるコミュニケーションツールです。
雑談ルームや相談ルームなどのグループチャットを作成すると、従業員同士がコミュニケーションをとる機会が増え、良好な人間関係や悩みごとの解消などをはかれるでしょう。
また、「Chatwork」を活用すればテレワークにも対応できるため、柔軟な働き方につながる制度を導入しやすくなります。
従業員の自社への定着率を高められるように、ビジネスチャット「Chatwork」を活用して、働きやすい職場環境を構築しましょう。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注1]出典:前橋はたらきはぐくむPROJECT「"足す"人事制度で、離職率が28%から4%前後に」
https://issueplusdesign.jp/hatahagu/wisdom/c039/index.html
[注2]出典:サイボウズ株式会社「コミュニケーション方法」
https://cybozu.co.jp/recruit/workplace/communication/
[注3]出典:株式会社レオパレス21「レオパレス21の働き方改革」
https://www.leopalace21.co.jp/news/2017/pdf/0601.pdf
※本記事は、2025年1月時点の情報をもとに作成しています。