人手不足の原因とは?不足が進んでいる業界や企業の特徴、解消方法を解説
目次
少子高齢化が進むなかで、労働力人口の減少が経済全体に大きな影響を及ぼしています。
企業の人手不足は、長期的な事業活動を続けるうえで解消すべき課題のひとつです。
慢性的な人手不足が続くと、従業員に業務負荷がかかり離職率が高まるなど、さらなる悪循環に陥ってしまうこともあります。
企業で改善を進めるには、どのような方法を実践するとよいのでしょうか。
企業における人手不足の問題点と解消方法、企業事例を解説します。
日本企業の人手不足の状況
日本企業では、慢性的な人手不足が続いている傾向があります。
社会情勢の影響や需要と供給のバランスがとれないなど、さまざまな要因が重なって悪循環が起きてしまうケースがあるでしょう。
とくに、中小企業や地方圏は人材不足が起こりやすい傾向があり、安定的な人材の獲得と定着化を進める働きかけが重要です。
【業界別】人手不足な業界
日本の人手不足の状況について、業界別にみていきましょう。
令和6年5月の労働経済動向調査(厚生労働省)によると、とくに以下の業界で人手不足感が高まっているようです。[注1]
正社員が不足している業界 |
|
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パートタイム労働者が不足している業界 |
|
「建設業」や「運輸業・郵便業」、「医療・介護」は、需要が増加している一方で、労働環境や条件の厳しさから離職率も高く、依然として人手が足りていない業界です。
「情報通信業」は、デジタルの進展にともない、ITエンジニアなどの専門職の需要が急増していますが、供給が追いついていません。
「学術研究、専門・技術サービス業」は、高度な専門知識や技術を持つ人材の確保が困難なため、人手不足といえます。
また、「宿泊業、飲食サービス業」はコロナ禍の影響で一時的に需要が減少したものの、急激に回復したため人手不足に陥っているようです。
【職業別】人手不足な職業
人手不足の深刻さは、職種によっても異なります。
厚生労働省の統計である一般職業紹介状況(職業安定業務統計)から、職業別の有効求人倍率(求職者に対する求人数の割合)が高いものを挙げます。[注2]
有効求人倍率 | |
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専門的・技術的職業従事者 | 1.84 |
サービス職業従事者 | 2.00 |
保安職業従事者 | 6.37 |
輸送・機械運転従事者 | 2.15 |
建設・採掘従事者 | 5.05 |
有効求人倍率は、数値が高いほど求人に対して求職者が足りていないことを示しています。
上記のような職種は、慢性的に人手不足となっているため、労働条件の改善や見直し、働きやすい環境の整備が急務となっています。
企業における人手不足の原因
社会情勢やトレンド、働き方の価値観の変化など、企業内で人手不足が起こる原因はさまざまあります。
- 少子高齢化・生産年齢人口の変化
- 都市部の人材流出
- 需要と供給のバランスがとれていない
- 採用コストの負担
- スキルのミスマッチ
- 働き方の多様化
企業において人手不足が発生する原因についてみていきましょう。
少子高齢化・生産年齢人口の変化
日本全体の課題として、少子高齢化により生産年齢人口が低下している傾向があります。
生産年齢人口は、今後とも減っていくことが予想されており、2065年には約4,500万人になる見通しです。[注3]
企業は働き手の確保が難しくなり、慢性的な人手不足に陥りやすいという課題が残ります。
都市部の人材流出
都市部圏に比べて、地方圏は人材不足による影響が大きい傾向があります。
総務省の調査によると、全国の地方公共団体に向けたアンケートの結果では「人口流出の要因」について「良質な雇用機会の不足」という回答結果が89.1%の結果でした。[注4]
企業数が多い都市部では、求職者が望む仕事内容や待遇を実現しやすい背景から、人材流出が起きやすくなります。
需要と供給のバランスがとれていない
前述のとおり、人手不足は業界や職種によっても深刻度合いが異なります。
事務職などは人手余りがある一方で、建設業や運輸業、郵便業、医療・介護の業界では慢性的な人手不足が続いています。
過酷な労働条件や低賃金など、業界ならではの問題を解決するために、待遇を高水準に引き上げるなどの対応が必要です。
採用コストの負担
企業が人材を採用するには、広告宣伝費や人件費など、多くのコストがかかってしまいます。
また、採用イベントの開催や面接のための準備や時間など、多くのリソースも必要です。
企業の経営状況によっては、採用コストをかけられない状況が続いてしまい、人材を確保するのが難しくなるでしょう。
スキルのミスマッチ
企業が求めるスキルや経験を持つ人材が労働市場に不足している状況も、人手不足といえます。
技術革新やグローバル化の進展により、特定のスキルや専門知識を持つ人材の需要が高まっています。
とくに、ITやデジタル分野が顕著であり、プログラミングやデータ分析、セキュリティなどの専門スキルを持つ人材が不足しているといわれています。
必要なスキルを持つ従業員が社内にいない場合、外部の専門家に依頼する必要があり、コストが増加します。
働き方の多様化
リモートワークの普及やフリーランスの増加など、従来の正社員としての働き方以外の選択肢が増えたことも、人材不足の一因です。
ワークライフバランスという概念が浸透し、柔軟な働き方を求める傾向が高まっている昨今、人材確保と維持のために職場環境を早急に整えていく必要があります。
人手不足による企業への悪影響
企業で人手不足が起きると、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 事業縮小や倒産のリスクが高まる
- 長時間労働が増えてしまう
- 人材を確保できなくなる
それぞれの問題について、もたらす影響やリスクを解説します。
事業縮小や倒産のリスクが高まる
人手不足は企業の成長を阻害し、最悪の場合は事業縮小や倒産のリスクを高めます。
必要な人材が確保できないと、業務効率の低下や顧客対応の遅れ、サービス提供の品質低下などを招き、この状態が続けば顧客満足度の低下や売り上げの減少に直結するでしょう。
また、新規参入や事業展開の機会を逃すと、企業の競争力も低下します。
最悪の場合、事業を縮小しなければならない状況を招いたり、倒産のリスクを高めてしまったりする可能性もあります。
長時間労働が増えてしまう
人手不足を解消できない場合、現場の従業員で仕事をまわしていく必要が出てくるため、長時間労働が常態化します。
従業員のストレスが増加すると、業務の質の低下やミスの増加、さらには健康問題やメンタルヘルスの問題にもつながりかねません。
ワークライフバランスがくずれると、従業員のモチベーションが低下し、離職率も高まります。
人手不足が深刻化して悪循環が生じる前に、業務効率化や生産性向上の取り組みが必要となってきます。
人材を確保できなくなる
人手不足の状態が続くと、人材を確保できない悪循環が生まれるおそれがあります。
長時間労働によって離職率が高まったり、過労によってサービスの質が落ちてしまったりすると、企業の評判が悪化し、新たな人材の採用が難しくなります。
採用にも多くの時間やコストがかかるため、企業として重要な事業や業務にリソースを集中させることができなくなります。
上記のような悪循環を避けるためには、採用活動の強化や労働条件の改善が不可欠です。
人手不足の課題を抱えやすい企業の特徴
前述のとおり、業界や職種の特性上、人手不足に陥りやすいという状況があるとわかりました。
それ以外にも、以下のような特徴がある企業は、人手不足となりやすいでしょう。
- 労働条件が劣悪
- 不公平な人事評価がおこなわれている
- 業務効率化が推進されていない
それぞれの特徴を解説します。
労働条件が劣悪
労働条件が悪い企業は、長時間労働や低賃金、過酷な労働環境などが原因で従業員の離職率が高く、常に人手不足に陥っているといえるでしょう。
若年層やスキルの高い人材は、よりよい労働条件の企業を求めて、他の企業に転職する傾向にあります。
従業員に対するアンケートやサーベイの実施など、従業員の意見を吸い上げ、改善していく取り組みが必要です。
不公平な人事評価がおこなわれている
不公平な人事評価は、従業員のモチベーションを低下させ、仕事の意欲を削いでしまう原因となります。
努力や成果が正当に評価されない状況では、従業員は不満を抱きやすくなり、離職率が高まります。
とくに、年功序列制度が採用されている職場では、若い人材ほど不利になるため、他社に移りやすいです。
結果として、「若い人が定着しない」「優秀な人から辞めてしまう」という状態を招きます。
業務効率化が推進されていない
ITツールの活用などの業務効率化が推進されていない企業では、従業員の業務負担が大きく、離職率が高いという傾向があります。
既存の業務プロセスやルールにこだわり、無駄な作業や工程を放置し続けると、従業員の労働時間やストレスの増加につながります。
業務効率化を実現すると、同じ人数でも業務をまわすことが可能となり、結果として人手不足感の軽減ができます。
業務効率化のためのツールやサービスが多く生まれている昨今、自分たちの課題やニーズに合わせて、新しいものを柔軟に取り入れていく姿勢も必要です。
企業における人手不足の解消方法
企業の人手不足はどのように対処していけばよいのでしょうか。
- アウトソーシングをおこなう
- 採用・求人掲載の方法を変える
- 待遇・社内制度を見直す
- 人材配置を見直す
- 幅広い人材の雇用・多様な働き方を推進する
- 従業員の成長を支援する
- 業務効率化を推進する
人手不足を解消する方法を見ていきましょう。
アウトソーシングをおこなう
人手不足を補えないときは、業務のアウトソーシングもおすすめです。
アウトソーシングとは、企業が自社の業務の一部を、外部の専門家や業者へ委託することを指します。
たとえば、近年広く展開されてきているBPOサービスを使って、企業のバックオフィス業務を丸ごと委託するというケースもあります。
適切にアウトソーシングを利用すると、企業は本来の業務に集中でき、効率的なリソース配分が可能となります。
とくに、特定の専門知識が必要な業務や、一時的に業務量が増加する場合などに有効な手段といえます。
採用・求人掲載の方法を変える
従来の採用方法や求人掲載の方法を見直し、より多くの求職者にアプローチできるよう工夫してみましょう。
自社が求める人材を獲得するには、インターネットを活用した幅広い情報発信が重要です。
たとえば、SNSで自社の情報発信をすると、若年層の目にも留まりやすくなり、従来の採用方法では探せなかった人材を呼び込めるようになります。
また、パートタイムや時短勤務で働きたい人や、シニアから仕事を探したい人に向けて求人を出すなど、幅広い視点で人材を獲得していくとよいでしょう。
待遇・社内制度を見直す
人手不足を解消するには、給与や賞与、福利厚生などの待遇面を充実させることが重要です。
たとえば、社内アンケートを実施し従業員の意見や不満を吸い上げたり、同業他社の待遇と比較してみたりする取り組みがおすすめです。
また、副業や兼業を認めるなどの社内制度の変更も検討してみてください。
企業の魅力度が高まると、求職者の増加や離職率の低下、人材の定着が期待できます。
人材配置を見直す
人材を適材適所に配置すると、従業員のスキルや能力を最大限に引き出せます。
従業員のスキルや経験、適性を評価し、最適なポジションに配置します。
たとえば、営業経験のある従業員をマーケティング部門に配置すると、営業視点からのマーケティング戦略の立案が期待できます。
また、プロジェクトチームを編成する際には、各メンバーの強みを活かした役割分担をおこない、チーム全体のパフォーマンスを向上できるでしょう。
定期的な人事評価を実施し、必要に応じて配置転換をおこなうと、従業員のモチベーションを維持できます。
幅広い人材の雇用・多様な働き方を推進する
多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、働き方の多様化を推進すると、幅広い人材の活用が実現できます。
高齢者や障がい者、外国人労働者など、多様な人材を積極的に採用します。
また、パートタイムやフレックスタイム制度、リモートワークの導入を推進し、従業員が自分に合った働き方を選択できる環境を整えます。
また、多様性のある人材の雇用や働き方を推進すると、さまざまな視点から物事を捉えられるようになるため、企業の課題を解消する糸口を見つけやすくなります。
従業員の成長を支援する
従業員のスキルアップを支援し自己成長を促すと、従業員のモチベーションを高め、離職率の低下につながります。
社内研修や外部セミナー、オンラインのカリキュラムなどを提供し、従業員のスキルアップを支援します。
また、メンター制度やOJTなどを導入し、経験豊富な社員が若手社員をサポートする体制を整えるのもよいでしょう。
従業員が自分の成長を実感できる環境を提供すると、従業員のエンゲージメントが向上し、企業全体のパフォーマンスが向上します。
業務効率化を推進する
業務効率化を推進すると、限られたリソースで最大の成果をあげられます。
たとえば、業務プロセスを見直し無駄な手順や作業をなくすと、業務にかかっていた時間や手間の削減ができます。
また、ビジネスチャットなどのコミュニケーションツールを導入すると、リアルタイムで迅速な情報共有が可能になります。
電話やメールのやりとりにかかっていた時間を削減でき、迅速な意思決定も可能となるでしょう。
上記のような業務効率化を積み重ねていくと、人材不足という課題そのものを解消できる可能性もあります。
人手不足の改善に成功した企業事例
建設業界の事例では、慢性的な人材不足を解消するために、女性従業員が働きやすい職場環境を整えています。
具体的には、国家資格の取得でキャリアアップをはかれる体制を整えたり、育児休暇や短時間勤務を実施したりするなど、女性従業員が活躍できる場所を整える取り組みで、人手不足の改善に成功しました。
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人手不足を解消するには、労働条件や社内制度の改善や、業務効率化が重要です。
また、採用や求人掲載の方法を変えると、幅広い人材を獲得できるチャンスが生まれます。
企業側は人手不足の対策を実践すると、職場内で悪循環を招いてしまう状態を予防できるでしょう。
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[注1]出典:厚生労働省「労働経済動向調査(令和6年5月)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2405/
[注2]出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年7月分)」参考統計表
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001293345.pdf
[注3]出典:内閣府「人口減少と少子高齢化」
https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/2zen2kai1-2.pdf
[注4]出典:総務省「第2部 ICTが拓く未来社会 第1節 地域の企業とICT (2)人口流出の背景」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc231120.html
※本記事は、2024年9月時点の情報をもとに作成しています。