リフレッシュ休暇とは?仕組みや有給との違い、メリットを解説【社労士監修】
目次
リフレッシュ休暇という休暇制度を知っていますか。
リフレッシュ休暇とは、大企業を中心に、導入する企業が増えている休暇制度です。
従業員のモチベーションアップやメンタルヘルスケアに効果的なだけでなく、業務効率化にも効果があるとして、近年注目を集めています。
リフレッシュ休暇の仕組みや取得条件、メリットなどを、企業事例を交えて解説します。
リフレッシュ休暇とは
「リフレッシュ休暇」とは、法定休日や年次有給休暇とは異なり、労働基準法において定められている休暇制度ではありません。
そのため、企業ごとに定義付けのばらつきは見受けられる休暇ですが、厚生労働省では、「職業生涯の節目に勤労者の心身の疲労回復等を目的として付与される休暇」と定義付けられています。[※1]
労働で疲弊した心身を、リフレッシュさせるための特別休暇ということができるでしょう。
リフレッシュ休暇の仕組み
リフレッシュ休暇の仕組みを4つの観点で解説します。
- 取得条件
- 日数
- 給与
- 導入状況
適切に導入できるように、仕組みを確認していきましょう。
リフレッシュ休暇の取得条件
労働基準法において義務付けられている年次有給休暇などは、休暇が発生する条件や、有給消化の際の企業側の義務などが、細かく定められています。
一方で、リフレッシュ休暇は、法律で定められていない休暇制度のため、リフレッシュ休暇の制度を設けるか否かや、どのようなルールで運用するかは、企業側で比較的自由に設定することができます。
そのため、取得条件については、企業によってさまざまですが、一般的には、「勤続×年目に取得できる」といったように、一定期間の勤続年数や出勤率を根拠に、付与を判断する企業が多いです。
また、リフレッシュ休暇を付与する際に、休暇の経験を社内の公報で取り上げることを条件としている企業もあります。
企業として福利厚生を充実させていることをPRするための制度として、リフレッシュ休暇を導入する企業もあることが、このことから伺えるでしょう。
リフレッシュ休暇の日数
リフレッシュ休暇は、付与日数についても、法律において定められていないため、企業側で自由にルールを決めても差し支えありません。
しかし、あまりにも短い日数だと、「心身をリフレッシュさせるための休暇」という目的に沿っていないことにくわえて、社内にフィードバックできるような経験をすることも難しいため、ある程度まとまった日数に設定されていることが一般的です。
厚生労働省が平成30年におこなった「就労条件総合調査結果の概況」においては、リフレッシュ休暇が付与される1回あたりの最高日数平均は5. 5日となっています。[※2]
また、リフレッシュ休暇の日数自体は少なく設定し、年次有給休暇をプラスして、まとまった休暇を消化させるといった企業もあります。
導入を検討する際は、制度の目的に沿って、日数を設定するようにしましょう。
リフレッシュ休暇の給与
リフレッシュ休暇の給与は、有給とするか否かや、有給にする場合、全額または一部の支給とするのかなどといった事項についても、法律では定められていません。
そのため、企業側で自由に取り決めることができます。
しかし、リフレッシュ休暇を無給としてしまうと、制度を利用するモチベーションが下がることも懸念されるため、有給と定めている企業が一般的です。
リフレッシュ休暇の導入状況
厚生労働省が令和3年におこなった「就労条件総合調査結果の概況」によると、リフレッシュ休暇を導入している企業は、全体で13.9%と低い水準です。
また、従業員数1,000名超の企業では42.3%という高い水準である一方で、従業員数30名〜99名の企業においては、9.7%と低い水準に留まっています。
企業規模によって、導入状況に大きな差があることが、リフレッシュ休暇の現状です。
リフレッシュ休暇を導入するメリット
リフレッシュ休暇は、年次有給休暇などの休暇制度とは異なり、法律で義務付けられていない特別休暇制度です。
では、なぜ導入する企業がでてきているのでしょうか。
リフレッシュ休暇を導入した場合に得られるメリットについて、詳しくみていきましょう。
従業員のモチベーション向上
ワークライフバランスという言葉が、広く知られるようになった現代では、働き方への考え方が変化しつつあります。
仕事と同じように、プライベートも充実させたいと考える人が増えているなかで、毎日就業することへの心身の疲弊は、容易に想像できる課題でしょう。
このような課題の解消に、リフレッシュ休暇が効果的とされています。
リフレッシュ休暇を取得することで、英気を養い、疲弊した心身をリセットすることで、日々の仕事にも精力的にとりくむきっかけとすることができるでしょう。
また、リフレッシュ休暇を取得するために、業務に邁進するといったモチベーションアップを狙うことも期待できます。
>ワークライフバランスにとりくむメリットに関する記事はこちら
生産性向上
リフレッシュ休暇の取得は、生産性の向上にも効果的であると考えられています。
休暇を取得する本人が、休むことによって心身をリフレッシュし、新たな気持ちで仕事にとりくめることによる生産性向上はもちろん、二時的な生産性向上も狙うことができます。
たとえば、休暇を取得し、職場を離れる従業員がいる場合、ほかの従業員が、該当業務を引き継いだり、スケジュール調整することで前倒しをおこなったりといった取り組みが発生することが考えられます。
このようなイレギュラーな事態が発生すると、該当業務を効率的に引き継ごうとして、業務フローの見直しや精査がおこなわれることが多いでしょう。
そうすると、このとりくみをきっかけに、不要な業務が発見されたり、業務効率化をはかるとりくみがおこなわれたりなど、二次的な生産性向上がおこなわれることが期待できます。
離職率の改善につながる
定期的にリフレッシュ休暇を取得し、プライベートと仕事の両方が充実できるようになると、自然と会社を退職しようといった流れにはなりにくいものです。
また、リフレッシュ休暇を節目ごとに設定することで、退職が頭をよぎるタイミングで、リフレッシュ休暇の取得が迫っていれば、退職を思いとどまる理由にもなるでしょう。
企業ブランディングに効果的
求人においては、多くの求職者が、その企業の休日日数を確認するでしょう。
ワークライフバランスを重視する人が増えたことで、休日日数が多い企業の人気が高まっており、人材も集まりやすいことが想定されます。
このような価値観をもつ求職者にとって、リフレッシュ休暇を導入している企業は、「従業員が働きやすい職場づくりに積極的にとりくむ企業」というイメージをもたれやすく、また求職者に限らず、世間的な評価も良くなることが期待できるでしょう。
メンタルヘルス対策になる
オーバーワークぎみの従業員を、放置してしまうと、心身の健康を崩し、最悪の場合、企業の管理責任が問われる事態にも発展してしまいます。
リフレッシュ休暇のように、まとまった休暇を定期的に取得させることで、従業員が健康的に働けることにもつながり、心身の健康を崩すリスクを低減させることもできるでしょう。
リフレッシュ休暇の導入を成功させるポイント
多くのメリットが期待できるリフレッシュ休暇ですが、ただ単に制度を導入しただけでは、企業が意図する効果をもたらすことは難しいです。
制度を効果的なものにするためのポイントを3つ紹介します。
- 休みやすい職場環境をつくる
- 制度の内容を明確化する
- 従業員フォローを徹底する
リフレッシュ休暇の導入を検討している企業の方は、ぜひご確認ください。
休みやすい職場環境をつくる
年次有給休暇など、ほかの休暇制度にも共通して言えることですが、職場の雰囲気が、休暇をとりづらい雰囲気の場合、リフレッシュ休暇を設けても、結局だれも利用しない事態につながりかねません。
休暇をとった従業員を非難する、だれかが休暇をとったことで、職場が戦場のようになるといった状況は、休みやすい職場環境とは程遠いと言えるでしょう。
業務フローや業務の割り振りを見直し、従業員が安心して休める職場づくりを進めることが大切です。
制度の内容を明確化する
制度の内容や目的を明確化し、社内に周知・啓発することも、リフレッシュ休暇を成功させるためには重要なことです。
一例ですが、リフレッシュ休暇中に仕事をもち帰って、結局働いているといった状況は、リフレッシュ休暇を取得する意味がありません。
前述した通り、リフレッシュ休暇制度は、企業側が比較的自由にルール設定できる特別休暇のため、会社の思いを反映させやすい休暇制度と言えます。
どのような目的でリフレッシュ休暇制度を設けるのか、どのような活用が望ましいのか、会社の思いがはっきり伝わるような制度づくりをおこない、社内周知をはかりましょう。
従業員フォローを徹底する
一定期間、特定の従業員が職場から離れることになると、ほかの従業員で、抜けた分のフォローをする必要がありますが、注意して割り振りや引き継ぎをおこなわないと、特定の従業員への負担が大きくなる恐れがあります。
休暇を取得しない従業員に対してフォローをおこなわなければ、「リフレッシュ休暇は、業務に悪い影響を与える」といった悪印象が、従業員に芽生えてしまう可能性があるでしょう。
リフレッシュ休暇は、体調不良等の突発的な休暇とは異なり、あらかじめスケジュール調整できる休暇です。
業務を引き継ぐ側の従業員の負担が、過大なものにならないように、チーム単位でフォローできる体制を整えるようにしましょう。
リフレッシュ休暇の企業事例
ここまで、リフレッシュ休暇の仕組みやメリットなどについて確認してきました。
最後に、より理解を深めるためのリフレッシュ休暇の企業事例を紹介します。[※3]
30日間の有給休暇を付与した事例
ブライダル事業を展開するある企業では、リフレッシュ休暇制度を創業当初より導入しており、勤続3年ごとに、30日間の有給を付与して、従業員のリフレッシュを促しています。
そのほかにも、裁判員制度の開始とともに、裁判員休暇制度を導入したり、従業員が発案したドナー休暇制度を導入したりなど、休暇取得に積極的な姿勢を内外に示しています。
この企業では、リフレッシュ休暇は、取得目的を問わず利用することが可能としており、海外旅行や子の看護など、様々な理由で取得されています。
休暇のなかで、海外の式場やレストランでの質の高いサービスをうけたことで、業務内容にもフィードバックされるなどの好事例も確認されており、従業員やその家族だけでなく、社外においても評判を得ています。
人材採用時にも、大きなアピールポイントのひとつとなっているため、成功事例と言えるでしょう。
リフレッシュ休暇の取得を書面で通知している事例
金属の表面処理加工を主な事業とするある企業では、生産性向上の効果を、積極的に従業員に還元するための一環として、休暇取得を積極的に推進しています。
たとえば、年次有給休暇を育児のために使い切ってしまう従業員が多いなかで、自分のために年次有給休暇を消化できるようにと、育児目的の休暇を新設するなどの施策を実施しています。
年間休日も、2015年の112日から2021年には123日に増加し、従業員がプライベートな時間を多く確保できるように配慮をおこなっています。
この企業では、リフレッシュ休暇を約20年前に導入しており、勤続20年で3日以内、30年で5日以内、40年で7日以内の連続休暇を取得することができるとしています。
自身が条件に該当することに気づかない従業員の取得漏れを防ぐために、リフレッシュ休暇に関してのみ、あえて書面で通知する運用を採っており、多くの従業員が気兼ねなくリフレッシュ休暇を消化できている事例です。
円滑なコミュニケーションに「Chatwork」
今後、さらに深刻化が予想される人材不足への対応には、「企業がいかに居心地の良い職場環境が提供できるか」という点が注目されています。
今回解説した「リフレッシュ休暇制度」は、まさに、居心地の良い職場づくりの一環であると言えるでしょう。
リフレッシュ休暇に限らず、新しい社内制度の導入や効率的な運用には、社内におけるスムーズかつ綿密なコミュニケーションが不可欠です。
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[※1]出典:働き方・休み方改善ポータルサイト「代表的な特別な休暇制度の例」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/example.html
[※2]出典:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaiyou01.pdf
[※3]出典:厚生労働省「特別休暇制度導入事例集2021」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category4/20220114_1.pdf
※本記事は、2023年4月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:國領卓巳
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。