【専門家監修】介護業界の業務改善の方法とは?効率化のアイデアを解説
目次
介護業界における業務改善の方法はさまざまありますが、職員が楽になった、導入して良かったと感じないと、決して成功とはいえません。
業務改善の推進により、職員にとって働きやすい環境が整備できるだけでなく、施設全体の稼働率の向上や介護の質向上も期待できます。
どのような取り組みができるのか、手順を踏まえつつ、詳しくみていきましょう。
介護施設における業務改善の目的
介護施設における業務改善で重要なのは、職員にとって働きやすい環境の整備です。
職員が働きやすい環境の整備により、職員の定着率向上や、離職率の軽減ができるでしょう。
また、業務改善によって、無駄な業務をなくしたり、効率化をはかったりする取り組みで、質の高いサービスの提供にもつながるでしょう。
職員の負担軽減
業務改善で職員の負担を軽減する取り組みは、離職率の高さが問題になりやすい介護業界にとって、喫緊の課題といえるでしょう。
厚生労働省が令和3年上半期に発表した「雇用動向調査結果の概況」によると、医療・福祉業界の離職率は9.8%であり、入職率の8.6%と比較しても、高くなっています。[※1]
このような状況を改善するためにも、業務内容の見直しや、業務の標準化を進める必要があります。
たとえば、介護記録ソフトなどの導入や、介護ロボット・見守りセンサー、インカムなどを積極的に導入すれば、日常業務を効率化できます。
ツールや機器の導入は、設備投資をともなうため、施設によってはハードルが高い場合もありますが、現在、ICT補助金などが充実しているため、一度確認してみるべきでしょう。
ケアの質向上
ケアの質向上をはかるのも、業務改善の目的のひとつです。
昨今、少子高齢化による労働人口の不足で、さまざまな業界が人材不足に悩んでいますが、介護業界においてはとくに、人材不足が喫緊の課題となっています。
また、人材の不足が原因で、なかなか業務改善や人材育成を進められない施設も多くあります。
人材育成が滞ると、人材が育たず、離職率があがる原因にもなってしまい、人材不足が改善しないという負のループに陥ってしまいます。
このような負のループを止めるためにも、業務を効率化し、人材育成に力を入れる必要があります。
人材育成を強化し、職員のスキルアップができれば、介護の質向上を実現できるでしょう。
また、介護の質向上が実現できれば、利用者の満足度を向上でき、施設の利益率向上の見込みがたてば、職員への還元もできます。
このような好循環を生むためにも、各介護施設は、業務改善に積極的に取り組む必要があるでしょう。
介護施設における業務改善のメリット
介護施設で業務改善をおこなうと、具体的にはどのようなメリットを享受できるのでしょうか。
一例ですが、以下のようなメリットが想定されます。
- 経営の安定化
- 採用・教育コストの削減
- コミュニケーション活性化
- 離職率の低減
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
経営の安定化につながる
業務改善の推進により、職員満足度や顧客満足度の向上が期待できます。
前述したとおり、介護業界の仕事は、肉体的・身体的に負担が大きく、また人材不足の影響もあり、職員ひとり当たりの負担が大きいです。
このような状況のなかで、業務改善を実施し、効率化ができると、職員の負担を軽減できるでしょう。
また、職員の負担を軽減できれば、精神的にも余裕ができ、介護の質向上も期待できます。
さらに、提供する介護の質が向上すると、顧客からの満足度も向上し、経営の安定化も実現できます。
>【社労士監修】従業員満足度を向上させるメリットに関する記事はこちら
採用や教育のコスト削減
業務改善の推進は、採用や教育にかかるコストの削減にも効果的です。
労働人口減少の影響で、年々人材獲得の難易度は高まり、優秀な人材を獲得するために、各企業がさまざまな工夫をおこなっています。
しかし、入社してもすぐに離職されてしまうと、採用にかかったコストや、教育にかかったコストが回収できないままになってしまいます。
また、離職の原因を改善できないまま採用活動をおこなってしまうと、せっかく採用できても、また離職してしまうなどの負のループに陥りかねません。
このような負のループから脱出し、職員の定着率を向上させるためには、職員が働きやすいと思える環境の整備が大切です。
たとえば、インカムや見守りセンサーなどの導入で人員配置を最適化したり、介護記録システムの導入で記録業務を最適化したりすると、職員の負担を軽減できるでしょう。
このような業務改善の取り組みで生み出した時間を使って、新入社員の教育をしたり、人材育成のカリキュラムを作成したりすれば、定着率の向上が期待できます。
また、人材育成への注力により、提供する介護の質向上も実現できるでしょう。
職員とのコミュニケーション活性化
介護業界の仕事は、医師や看護師、栄養士などのさまざまな職業の人や、利用者・利用者の家族などとコミュニケーションをとる必要があるため、人間関係の悩みが問題となりやすいです。
介護労働安定センターが令和3年に発表した「介護労働実態調査」によると、前職を辞めた理由として、「職場の人間関係」が18.8%でトップの回答数となっています。[※2]
介護職の人間関係は、一緒に働く同僚だけでなく、連携をとる必要がある医師や看護師など、また、施設を利用する利用者やその家族など、多岐に渡ります。
このような人間関係は、簡単に切れるものではないため、早期に解消しないと、職員の大きなストレスにつながりやすいです。
そのため、業務改善では、コミュニケーションの問題を解決する必要もあるでしょう。
たとえば、コミュニケーションツールを導入して、コミュニケーションのコストを減らしたり、インカムを導入して、円滑なコミュニケーションを実現したりなどが、方法としてあげられます。
コミュニケーションに感じていたストレスや煩わしさを軽減し、活性化できる仕組みづくりができれば、人間関係の構築もしやすくなるでしょう。
また、コミュニケーションがスムーズにとれるようになると、「言った言わない問題」や、情報伝達の抜け漏れ防止にもなり、介護の質向上も期待できます。
離職率の低減
業務改善の推進により、離職率の低減も期待できます。
前述した通り、業務改善は、職員の働きやすさの実現が目的にもなっています。
たとえば、効率化がはかれて、ワークライフバランスの実現ができたり、経営の安定化が成功して、給与や報酬の改善ができたりすると、職員のモチベーションが保てるようになるでしょう。
また、コミュニケーションが活性化し、人間関係のトラブル発生を防止できれば、風通しの良い職場環境の醸成もできます。
取り組みの結果として、職員が長く働き続けたいと思える職場環境を醸成できれば、離職率が低減し、定着率を向上できるでしょう。
介護施設における業務改善の手順
実際に業務改善を実践しようと思っても、なにからはじめればいいのか、悩まれる方は多いでしょう。
本記事では、業務改善のステップの一例として、以下の流れを紹介します。
- 業務改善の体制整備をおこなう
- 現状の課題や問題を可視化する
- 課題解決の実行計画をたてる
- 計画を実行する
- 実行内容の振り返りをおこなう
- 実行内容の改善をおこなう
それぞれのステップについて、詳しく解説します。
ステップ(1):業務改善の体制整備をおこなう
まずは、改善のための体制を整えるところからはじめましょう。
改善の計画策定や実行をスムーズにおこなうためにも、業務改善を推進するチームの立ち上げがおすすめです。
チームを立ち上げる際は、メンバーに偏りがないように、マネジメント層や中堅層、また現場で実際に働いている職員のバランスよい配置が大切です。
施設や事業所によっては、人材不足の影響で、チームの立ち上げが難しい場合もあるかもしれません。
その場合は、積極的に改善に取り組めるメンバーを集めて、現状の課題や問題を可視化するステップからはじめてみましょう。
取り組みをはじめる際に大切なのは、目的や目標を共有しながらの、一丸となった取り組みです。
施設長や業務改善のリーダーから、取り組みの目的を職員に共有するようにしましょう。
ステップ(2):現状の課題や問題を可視化する
次に、現状の業務の課題や問題の可視化をおこないましょう。
業務改善をおこなう際に、いきなりアイデア出しからはじめてしまうと、的外れな内容になってしまったり、根本原因の解決につながらなかったりします。
まずは、以下のような施設内に存在する問題を、職員からヒアリングしてみましょう。
- 口頭連絡が多く、情報伝達に抜け漏れが生じている
- コミュニケーション機会がとれていない
- 記録をつける時間が長く、負担がかかっている
- 一部の職員しか知らない情報がある
問題を抽出する際は、日々の業務を洗い出したうえでおこなうと、抜け漏れを防止できます。
業務改善をはかろうとすると、改善方法の策定に意識が集中しがちですが、問題の原因を捉えられないと、根本的な改善にはつながりません。
さまざまな観点から問題・課題を捉えるようにしましょう。
ステップ(3):課題解決の実行計画をたてる
問題・課題が洗い出せたら、次に課題解決の実行計画を策定しましょう。
解決方法には、以下の3つの方法があげられます。
標準化 | 属人化している業務などを、ルール化する |
---|---|
排除 | 無駄な業務をなくす |
代替 | 標準化・排除ができない業務 |
解決方法を策定する際は、「コミュニケーションツールを導入する」「介護記録システムを導入する」など、具体的な内容の策定が大切です。
解決方法が、「職員全員が意識する」「積極的に動いてみよう」などの、意識的な内容になってしまうと、振り返りもできず、根本的な解決にはつながりません。
実現可能な具体的な方法を策定し、実行にうつすようにしましょう。
ステップ(4):計画を実行する
計画がたてられたら、実行にうつしていきましょう。
実行する際は、規模が小さく、取り組みやすいもので、一定の効果が見込めるものを優先的に実行するようにしましょう。
成功事例ができれば、次の計画にもうつりやすく、ノウハウの蓄積もできます。
また、実行する施策は、ひとつずつにする必要はありません。
関連する施策を並行して実施し、改善に取り組みましょう。
ステップ(5):実行した内容の振り返りをおこなう
計画を実行できたら、必ず内容の振り返りをおこないましょう。
目的に沿った改善になっていたかどうかや、改善が達成できたか、悪影響が生じなかったかなど、さまざまな観点からの振り返りにより、次の計画に活かせます。
以下は、振り返りをおこなう際の観点の例です。
- 課題は解決したか
- どのような効果がみられたか
- 計画通りに進行できたか
- 悪影響は生じなかったか
- 想定効果とズレは生じなかったか
業務改善の取り組みは、一度実行したら終わりではありません。
より良い結果が生み出せるように、振り返りをおこない、さらに質の高い改善方法を模索していきましょう。
ステップ(6):実行した計画の改善をおこなう
振り返りがおこなえたら、その結果をもとに、さらなる業務改善の計画をたてましょう。
新たな計画を策定する際は、当初想定していなかった副次的な変化についても踏まえておくと良いでしょう。
たとえば、以下のような振り返りが、副次的な変化としてあげられます。
施策 | 介護記録ソフトの導入 |
---|---|
期待効果 | 介護記録の効率化(時間短縮) |
結果 | 記録の二度手間が省け、時間短縮に成功した |
副次効果 | 記録を元にしたコミュニケーションの活性化がみられた |
このような副次的な効果を記録しておくと、次の施策を考える際の参考にもなります。
一度実施したら終わりではなく、職員が働きやすい環境をつくるためにはなにができるかを考え、PDCAを回してみましょう。
介護施設における業務改善のアイデア
ここからは、業務改善のアイデアについて、いくつかの例を紹介します。
取り組みをはじめる際は、前述したように、施設内の現状の問題や課題を洗い出したうえで、最適な方法を検討するようにしましょう。
ICTツールの導入
ICTツールの導入は、業務の効率化をはかりやすく、成果の計測もしやすい取り組みのひとつです。
厚生労働省も、介護保険制度改正のなかで、介護職の業務改善・効率化の方法として、ICT化の促進を進めています。
本記事では、ICTツールのなかでも、介護の現場で使いやすい以下の5つの方法を紹介します。
- ケアプランデータ連携システム
- 見守りセンサー
- インカム
- 介護記録ソフト
- AIによるケアプラン作成システム
LIFEの活用がはじまってから、介護現場のICT化は急速に拡大しています。
取り残されないためにも、それぞれのメリットや特徴を理解しておきましょう。
ケアプランデータ連携システム
ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で毎月やりとりされる、ケアプランやサービス利用書などを、オンラインでやりとりできるようにするシステムのことです。
従来、ケアプランやサービス利用書などのやりとりは、基本的に紙ベースでやりとりがされており、それを管理ソフトに手入力するという二度手間が発生していました。
データの手入力は、手間がかかるだけでなく、転記ミスが発生するリスクもあり、事務業務の圧迫も問題視されていました。
ケアプランデータ連携システムは、これらの問題を改善するとして、注目を集めています。
厚生労働省は、ケアプランデータ連携システムには、以下の削減効果が見込めるとしています。
- 記載時間の削減
- データ管理による文書量削減
- 転記誤りの削減
- 介護従業者の負担軽減
厚生労働省によると、さらに、ケアプランデータ連携システムを活用した、日常業務の効率化により、利用者のケアにかける時間を増加ができ、ケアの質向上が期待できるとしています。
職員の負担を軽減し、従業員満足度・顧客満足度の向上を目指すためにも、ケアプランデータ連携システムは効果的でしょう。
見守りセンサー
介護ロボットなどに先行して、介護報酬の加算における算定要件や、人員基準の緩和要件として先行しているのが、見守りセンサーです。
見守りセンサーは、令和3年度の介護報酬改定においても、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームにおける夜勤職員の配置基準の緩和や、夜勤職員配置加算における算定要件の緩和につなげられています。
見守りセンサーの活用により、夜勤職員の人件費が削減でき、さらに、夜勤職員の配置加算が算定しやすくなるメリットもあります。
職員の負担軽減に効果的なだけでなく、経営の安定化にも期待がもてるでしょう。
インカム
介護施設では、職員間の連絡方法のひとつとして、PHSを利用するケースがありましたが、PHSは、1対1の連携しかとれず、また、サポートも終了に向かっています。
PHSに代わる手段として導入する施設が増えているのが、インカムです。
インカムは、複数人でのコミュニケーションが実現できるため、人を探すために施設内を歩き回る必要がなくなり、さらに連携がとりたい相手が複数人の場合でも、一斉に連携がとれます。
また、インカムは、新人教育のツールとしても活用できます。
たとえば、わからないことや困ったことがあった際に、先輩職員にすぐ連絡がとれたり、指示がうけとりやすくなるため、業務の流れが掴みやすくなったりするでしょう。
また、いつでも質問ができる状況ができていると、心理的な負担も軽減でき、新人の離職率低減も見込めます。
介護記録ソフト
令和3年度の介護報酬改定で導入されたLIFEの影響で注目を集めているのが、介護記録ソフトです。
LIFE導入以前は、日々の介護記録をタブレットに入力し、それを電子データにするために、再度入力するという二度手間が発生していました。
たとえば、データが100人分あったとすると、これを3か月ごとに100人分手入力する必要があり、職員にとっては、大きな負担となっていました。
しかし、LIFEの活用がはじまり、介護記録ソフトを利用できるようになると、介護計画書やアセスメントなどの日常業務の蓄積が、一度で完結できるようになります。
また、紙ベースでおこなっていた業務のICT化により、全国の事業所でデータの共有ができるようになり、介護の質向上も可能になりました。
>【専門家監修】科学的介護情報システム(LIFE)とは?に関する記事はこちら
AIによるケアプラン作成システム
AIによるケアプラン作成システムも登場しています。
ケアプランの作成には、時間も手間もかかり、さらに一度作成したら終わるものでもないため、職員にとって大きな負担となっています。
この負担を、AIの活用で軽減できるとして、昨今注目を集めています。
AIによるケアプランは、自治体と契約して、利用者のデータをデータベース化し、このデータを根拠として作成されます。
AIは、データベースのデータをもとに、利用者ごとに想定されるADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)、IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)、認知症などの将来予測をおこない、身体の状況の改善に繋がる複数のプランを提示します。
ケアマネージャーは、AIが作成した複数のプランを確認し、最終的に選択できます。
AIの活用により、ケアマネジャーは、自治体のデータを活用した質の高いケアプランを、ストレスなく作成可能になります。
また、AIが作成するプランのなかには、ケアマネージャーに新たな気づきを与えるものもあるため、業務効率化だけでなく、生産性向上などにも寄与するとされています。
職場環境の整備
職場環境の整備も、業務改善においては重要な取り組みのひとつです。
介護の現場では、紙のやりとりが多いため、整理整頓ができていない事業所も多いのではないでしょうか。
なにがどこにあるかわからない状態だと、必要な資料や書類を探すのに時間がかかってしまいます。
職場環境を整備し、業務改善を目指すためには、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底が効果的です。[※4]
整理 | 要るものと要らないものをはっきり分けて、要らないものを捨てる |
---|---|
整頓 | 三定(定置・定品・定量)手元化(探す手間を省く) |
清掃 | すぐ使えるように常に点検する |
清潔 | 整理・整頓・清掃(3S)を維持する 清潔と不潔を分ける |
しつけ | 決められたことを、いつも正しく 守る習慣をつける |
事業所全体が取り組めるように、業務プロセスに5Sをとりいれ、習慣化を進めてみましょう。
業務の標準化・手順書の作成
業務の標準化も、業務改善の取り組みのひとつです。
たとえば、業務の属人化が進んでしまうと、その人が休んだり、離職したりした場合、業務が滞ってしまう可能性が高いです。
また、特定の人しか対応できない業務ができてしまうと、負担も偏りやすくなり、引き継ぎなども困難になってしまいます。
業務の手順やケアの質を一定に保つためにも、手順書やマニュアルなどを作成し、業務の標準化を目指しましょう。適切な役割分担
職員がそれぞれの業務に向き合えるよう、適切な役割分担も大切です。
たとえば、業務分担がされておらず、さまざまな業務を掛け持ちでおこなっていると、どれも中途半端になってしまったり、職員に負担がかかりすぎてしまったりするでしょう。
まずは、業務の分析をおこない、適切な役割分担とシフト組み替えの実施が、業務を改善するうえでは必要です。
役割分担をおこなう際は、介護職員だけでなく、介護助手や介護ロボット・センサーなどの活用も検討しましょう。
適切な役割分担は、職員の、身体的・精神的負担の軽減にもつながる取り組みのため、 積極的におこなうべきです。
記録や書類の電子化
前述した通り、介護業界は紙ベースのやりとりが多く、電子化の二度手間がかかっているケースを多く見受けます。
転記の手間を削減し、さらに情報共有を活性化するためにも、記録や書類の電子化をおこないましょう。
また、電子化の実施により、情報の一元管理も実現できるようになります。
情報を一元化すれば、利用者情報の共有もしやすくなるため、介護の質向上も期待できるでしょう。
情報共有の効率化
情報共有の効率化は、業務改善だけでなく、職員の心理的負担軽減にも効果を発揮します。
前述した通り、従来のPHSを利用した方法では、一度に複数人で連携をとったり、タイムリーに情報を伝達したりなどの情報共有が、スムーズにできない場面が多くありました。。
この課題の解決に効果的なのが、インカムの活用です。
インカムは、複数人に同時に情報を共有できるため、タイムリーな情報共有ができ、対応の迅速化を実現します。
また、利用者対応をしている時などに、困った点やわからない点があれば、すぐにほかの人と連携がとれるため、職員の心理的負担も軽減できるでしょう。
3M(ムリ・ムダ・ムラ)の排除
ムリ・ムダ・ムラの3Mを排除する取り組みも、業務改善を目指すうえでは重要です。
3Mの各要素の概要と介護現場における事例は、以下の通りです。[※4]
要素 | 概要 | 介護現場における事例 |
---|---|---|
ムリ | 設備や人材の心身への過度の負担 |
|
ムダ | 省力化できる業務 |
|
ムラ | 人・仕事量の負荷のばらつき |
|
事業所内で、3Mに該当する要素がないかを確認してみましょう。
たとえば、ルーティンだからといって継続しているムダな業務がないか、丁寧にやっている人と適当にやっている人がいるなど、対応する人によってムラが発生している業務がないかチェックは、業務改善を目指すうえで必要な要素です。
職員のムリのうえで成り立っている業務は、働きやすい職場環境づくりを阻害します。
いま一度、事業所内の業務に3Mに該当するものがないかの確認が、業務改善の第一歩となるでしょう。
介護施設における業務効率化の注意点
最後に、介護施設で業務効率化をおこなう際の注意点について解説します。
無理なく、働きやすい環境をつくるためにも、しっかりと確認しておきましょう。
職員に負担をかけない
業務改善に取り組む際は、職員に負担を強いることがないように注意しましょう。
たとえば、業務改善のチームをつくるために、一時的に業務の掛け持ちを指示したり、改善が必要な業務を洗い出すために残業をさせたりなどは、本末転倒になってしまいます。
業務改善の目的は、職員が働きやすい環境をつくり、提供する介護の質の向上です。
「業務改善」が目的になってしまわないように注意し、職員・利用者・施設にとって、プラスとなるような取り組みを実践しましょう。
やみくもにツールやシステムを導入しない
ICTの活用は、目的ではなく、あくまでも手段です。
たとえば、研修をオンラインで実施すると、以下のようなメリットがあるため、これだけでも目的に沿った業務改善であるといえます。
- 時間の拘束がなくなり、自由度が増した
- 夜勤後に、眠い目を擦って参加する必要がなくなった
職員が、楽になった・仕事がしやすくなったという実感があってはじめて、ICT化は成功といえます。
反対に、職員の業務が楽にならず、仕事がしやすくもなっていない場合、いくらICT化に取り組んでいても、その取り組みは失敗となります。
やみくもにツールやシステムを導入したからといって、業務改善がはかれるわけではありません。
事業所内にどのような問題や課題があり、それを解決できるのがツールなのかシステムなのかをよく検討し、導入に踏み切るようにしましょう。
介護施設における業務改善の事例
ここからは、ビジネスチャット「Chatwork」を活用して、業務改善をはかった事例を紹介します。
詳細はリンク先に掲載されていますので、ぜひ業務改善の参考にしてみてください。
人材の適正配置に成功した事例
特別養護老人ホームや介護老人保健施設の入所サービス、ケアハウスやサービス付高齢者住宅などの入居サービスの展開など、さまざまな福祉サービスを展開するある企業では、Chatworkの活用により、人材の適正配置に成功しています。
この企業では、内線電話とメモが、職員間の情報共有の中心となっており、非効率かつ、抜け漏れが発生している状態でした。
この課題を解決するために、Chatworkを導入し、基本的な連絡手段や情報共有の手段をChatworkに統一しました。
結果、情報共有の抜け漏れの防止に成功し、内線電話とメモの使用を削減できるようになりました。
また、内線電話の使用がなくなったため、電話の担当者の配置が不在となり、人材の適正配置にも成功しています。
他職種連携の効率化に成功した事例
居宅介護支援事業所を営むある企業では、多職種連携をはかるうえで発生する、間接業務の煩雑さを解決するために、Chatworkを導入しました。
他職種連携の煩雑さは、介護業界が抱える問題のひとつで、連携に時間がかかってしまうことで、本業である介護に時間が割けなくなるなどの問題が発生しています。
この企業では、この間接業務を効率化するためにChatworkを導入し、ケアマネージャーの業務改善に成功しています。
たとえば、グループチャット機能を活用し、情報共有を効率化したり、ファイル管理機能を活用して、ファイルへのアクセスを効率化したりなど、さまざまな取り組みを実践している事例です。
介護業界の業務改善にも「Chatwork」
介護業界の業務改善は、職員の負担軽減や介護の質向上を目指すうえで、欠かせない取り組みのひとつです。
昨今、労働人口の減少で、さまざまな業界が業務効率化に取り組んでおり、介護業界においても同じ動きがみられています。
事業所内で、効率化できる業務がないか、ムリ・ムダ・ムラな業務がないかを確認し、改善に取り組んでみてください。
ビジネスチャット「Chatwork」は、介護現場の業務効率化にも効果的なビジネスツールです。
チャット形式でやりとりができるため、リアルタイムのスピーディな情報共有を可能にしたり、必要に応じて、音声/ビデオ通話機能の利用もできます。
また、スマートフォンで利用できるため、出先から、ほかの職員と連携をとりたい場合も、わざわざ事業所に戻る必要がありません。
介護業界における「Chatwork」の活用事例を参考に、ぜひ業務改善のイメージをもってみてください。
「Chatwork」は、無料で使いはじめることができます。
ぜひ業務改善の第一歩として、「Chatwork」をご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:厚生労働省「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-1/dl/gaikyou.pdf
[※2]出典:介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」
http://www.kaigo-center.or.jp/report/2022r01_chousa_01.html
[※3]出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システムについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001047111.pdf
[※4]出典:厚生労働省「より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_shisetsu_Guide.pdf
※本記事は、2023年6月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:小濱 道博(こはま みちひろ)
小濱介護経営事務所 代表。日本全国で、介護経営のコンプライアンス指導、BCP、LIFE、実施指導対策などのコンサルティングをおこなう。介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで年間250件以上。全国の介護保険課・各協会・社会福祉協議会・介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。「これならわかる〈スッキリ図解〉介護BCP(業務継続計画)」(翔泳社)「おさえておきたい算定要件シリーズ」(第一法規株式会社)など、著書多数。「日経ヘルスケア」「Visionと戦略」など連載多数。