母集団形成とは?方法や種類、実現のポイントを解説

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母集団形成とは?方法や種類、実現のポイントを解説

目次

母集団形成は、もともとは統計学で使用されていた用語ですが、昨今では計画的な採用をおこなうための方法として注目を集めています。

労働人口の減少にともない、採用活動では、母集団形成をしっかりとおこなうことが重要になってきています。

母集団形成の概要やメリット、実施のポイントについて解説します。

母集団形成とは?

「母集団形成」とは、採用活動において、企業の求める人物像にマッチした人材の集団を作ることを指す言葉です。

「母集団」は、もともと統計学でよく用いられていた用語で、採用活動においては、採用候補者の集団のことを指します。

自社の選考に応募してくれた人だけでなく、自社に興味をもっているすべての人を指す言葉のため、まだ応募していないものの、今後応募する可能性がある人も含めて「母集団」と呼ぶということを、認識しておきましょう。

そのため、母集団を形成する際は、単に「自社に興味をもってくれる」人を集めるのではなく、自社が採用したい人物像に合致する人材を、目標の人数集めることが重要になります。

企業説明会、書類選考、面接、内定など、それぞれのフェーズでどのくらいの人数の母集団形成を狙うかを決めることで、計画的で実現性のある採用が可能になるでしょう。

母集団形成が重要視される背景

労働人口の減少にともない、企業が安定して人材を確保することが難しくなったことが影響して、母集団形成に注目が集まっています。

日本の人口は、2048年には9913万人程度、2060年には8674万人程度に減少する予測で、それにともない、労働人口も減少すると考えられています。

安定した人数、かつ自社に合う人材を、企業が確保するためには、母集団形成を意識した、計画的な採用活動が不可欠です。

売り手市場が加速するなかで、優秀な人材を確保するためには、戦略的に採用をおこなっていく必要があります。[※1]

母集団形成のメリット

採用市場の変化によって、母集団形成が重要視されるようになりましたが、母集団形成にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

母集団形成にとりくむメリットについてみていきましょう。

計画的な採用をおこなえる

計画的に採用活動がおこなえるというメリットがあります。

採用する目標人数を決めずに、「いい人がいたら採用しよう」「自社にあう人がいたら採用しよう」などの温度感で採用活動をおこなうと、目標を満たす人数を確保できない可能性や、求める人物像に合致しない人材を採用してしまう可能性があります。

採用目標を達成するためにも、母集団形成をベースに、採用人数や求める人物像を明確にし、戦略的な採用活動を実現しましょう。

採用予算が最適化できる

母集団形成をもとに、採用人数の計画を立てておくことで、採用予算を最適化することが可能になります。

母集団形成ができていないと、「内定を多く出しすぎてしまい、入社者が想定よりも多くなってしまった」などの予算肥大の問題や、「結局だれも採用できなかった」などの不測の事態が起こる恐れもあります。

採用計画が立てられていないと、採用にかかる予算や、その後の人材教育のコストも予測が立てられず、当初割りあてられた予算を、大幅にオーバーしてしまうこともあるでしょう。

母集団形成をしておくことで、採用までのフェーズだけでなく、入社後の人材開発にかかる費用も最適化できます。

定着率を高められる

母集団形成にとりくむことで、入社後の定着率向上も期待できます。

「自社が求める社員像にマッチする人材の母集団」をあらかじめ形成したうえで、採用をおこなうことができると、入社してからのギャップが少なくなるため、定着率が高まるでしょう。

入社後の定着率があがると、新規採用にかかるコストを削減できるため、結果として人件費のコスト削減にもつながるというメリットがあります。

>離職率が高い会社の特徴に関する記事はこちら

母集団形成の手法

採用方法が多様化しているように、母集団形成にもさまざまな手法があります。

それぞれの手法の特徴、メリット・デメリットについてみていきましょう。

就職サイト

「就職サイト」は、もっとも一般的な採用活動方法であり、就活生が最初に登録をおこない、企業探しをするものといわれています。

多くの就活生が、就職サイトに登録をするため、自社の認知度も高まる可能性があり、興味をもってもらえる機会の向上につながる点が、就職サイトのメリットです。

一方で、登録する企業が非常に多いため、ほかの企業との差別化をはかる必要がある点がデメリットといえるでしょう。

多くの就活生に興味をもってもらうためには、有料のオプションをつけて、目に触れる機会を増やしたり、コンテンツの充実で、認知度を高めたりする必要があります。

昨今、大規模就職サイト以外にも、職種特化やエリア特化など、さまざまな就職サイトがあるため、自社の求める人材が、多く登録しているサイトを選び、アピールするのもよいでしょう。

自社サイト

自社サイトに、採用ページを設け、募集要項や、社員の働き方などの実例を記載し、興味をもってもらう方法もあります。

自社の魅力やコンセプトを、自由度の高いデザインやコンテンツを活用して、魅力的に発信できる点や、仲介手数料のようなコストがかからない点がメリットです。

また、自社サイト経由で応募してくる就活生は、自社に高い興味をもって応募してくることが多いと考えられるため、質の高い母集団形成が期待できるでしょう。

しかし、コンテンツづくりに注力しても、実際に、サイトをみてくれる就活生が少なければ、応募者が集まらない点がデメリットです。

このような懸念を払拭するために、ソーシャルリクルーティングなど、多くの人の目に触れる機会が多い手法と並行しておこなうことを検討しましょう。

合同説明会

合同説明会などのイベントで、一度に多くの就活生に、企業説明をすることも、ひとつの母集団形成の方法です。

合同説明会では、実際に就活生と対自して企業説明をおこなえるので、社風や雰囲気をリアルに伝えられることや、同時に多くの就活生にアプローチし、効率的に認知度を向上させられることがメリットといえるでしょう。

一方で、出典している企業数に対して、説明会に来た学生が少なければ母集団形成が難しい点や、規模が大きいイベントの場合は、自社が埋もれてしまう可能性があるなどのデメリットも考えられます。

出店費用やブース展示費用など、コストが大きい可能性もあるため、費用対効果を考えて、参加を検討するようにしましょう。

学内セミナー

学内セミナーとは、大学や高校など、キャンパス内で開かれるセミナーのことで、その学校の学生にむけて、企業説明をおこないます。

採用をしたい学校の学生にむけて、直接アプローチができることや、積極的に就活を行っていない学生とも接点をもてる点がメリットですが、学生が専門的に学んでいる分野をとり扱う企業でない場合、希望者が集まりにくいことがデメリットといえます。

OGOB訪問や、リクルーター制度をとっている企業にとっては、学生と接点をもちやすい機会のため、積極的に活用するとよいでしょう。

SNS

X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSを活用した「ソーシャルリクルーティング」も、企業の認知度向上につながる母集団形成の方法です。

メリットとしては、企業の発信をみて関心をもつ学生が増えることや、自社サイトへの誘導の手段となることがあげられます。

自社サイトよりもカジュアルな内容を発信する企業が多く、実際に働いている社員の雰囲気や社風に共感をもってくれる就活生を獲得しやすいです。

一方で、SNS自体を応募媒体として活用することは難しいため、ほかの媒体と併用するか、ダイレクトチャットなどを活用する必要があります。

この場合、採用担当者の負担が大きくなる危険性があるため、専任者をつけることや、担当者を増員する必要があることを認識しておきましょう。

>ソーシャルリクルーティングとは?に関する記事はこちら

人材紹介

人材紹介会社から、自社にマッチする人材を紹介してもらう方法で、採用が確定した後に、紹介会社へ報酬を払う必要がある採用方法です。

企業が求めているスキルや項目にあてはまる人材を紹介してもらえるため、即戦力となる人材をみつけやすいというメリットがありますが、仲介手数料のコストがかかる点に注意が必要です。

特定のポストに空きがある場合や、求める人物像が明確な場合に活用することが効果的な手法です。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、採用担当者自らが、直接候補者にアプローチする採用方法です。

企業側から直接アプローチをかけられるため、採用したい人材だけに時間やコストをかけられることがメリットですが、候補者から選んでもらうために、採用担当者の手腕が必要になる点に注意が必要です。

また、候補者によっては、まったく自社に興味をもってくれない可能性もあるため、目的や目標を明確にしたうえでおこなわないと、手間だけがかかってしまう危険性もあります。

>ダイレクトリクルーティングとは?に関する記事はこちら

リファラル採用

リファラル採用とは、既存社員に友人や知人を紹介してもらう採用方法です。

既存社員の紹介のため、ミスマッチが少ないことや、入社後の定着率が高いなどのメリットがありますが、不採用の際の対応や、人材の特性やパーソナリティが偏る可能性がある点には注意が必要です。

既存社員からの紹介のため、コストがかからない採用方法なので、制度を整えたうえで、ほかの採用方法と並行しておこなうとよいでしょう。

>リファラル採用とは?に関する記事はこちら

母集団形成の成功ポイント

母集団形成は、新卒採用・中途採用で、それぞれ成功させるためのポイントが異なります。

それぞれのポイントを抑えて、母集団形成を成功させましょう。

新卒採用の母集団形成

新卒採用の母集団形成は、毎年決まった時期に採用活動がおこなわれるため、募集から、選考、内定までのスケジュール感を毎年振り返りながら、改善していくことがポイントです。

また、新卒採用の場合は、経験やスキルが募集要項に記載がない「ポテンシャル採用」となるため、なるべく多くの学生と接点をもち、母集団を形成することが重要です。

就職サイトや合同説明会など、多くの学生と接点をもてる手法を活用して、広く認知を高めるようにしましょう。

ソーシャルリクルーティングや、リクルーター制度など、学生と接点をもつ方法も多様化しているため、競合企業に遅れをとらないように、さまざまな方法を模索することも重要になってきています。

中途採用の母集団形成

中途採用の母集団形成の場合は、ターゲット像を明確にすることが、成功のポイントです。

中途採用は、新卒採用とは異なり、社内にニーズが発生したタイミングで採用活動を開始するため、スケジュールは細かく設定する必要がありません。

しかし、社内のニーズをもとに、採用活動をおこなうため、経験やスキルなどの条件は、明確にする必要があります。

条件が明確になっていないと、候補者の精査に時間がかかったり、ミスマッチが生じたりする可能性もあるため、細かく定義するようにしましょう。

また、「採用人数」は、新卒・中途問わずに明確な目標を立てることが大切です。

必要人数が達成できなければ、業務に支障をきたす危険性もあるため、採用フローそれぞれの段階で、何人の母集団を形成する必要があるのかを計画しておきましょう。

母集団形成の手順

母集団形成の手法や成功のポイントを確認したうえで、実際に母集団形成にとりくむ際の手順についてみていきましょう。

具体的な手順は、下記の6つのステップに沿っておこなうとスムーズです。

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それぞれのステップについて、詳しくみていきましょう。

(1)採用目的の明確化

母集団形成にとりくむ前に、自社の経営計画や目標達成を念頭においたうえで、採用目的の明確化をはかりましょう。

たとえば、「〇〇に関する新規開発事業を、XX年に実現するために、その分野に強い人材を採用する」「〇年後にXX事業の利益を1.5倍にさせるために、〇〇人増員する」などの、具体的な目的にすることが重要です。

目的が明確になっていると、どういった人材を採用する必要があるのかが自ずとわかるようになるはずです。

「〇〇人採用する」「例年通り〇人増員する」など、目的がない状態で採用活動をおこなってしまうと、コスト肥大や目標未達などの恐れもあるため、注意しましょう。

(2)採用人数・人材の設定

採用目的の明確化ができたら、その目標を達成するためには、具体的に「どのような人材が」「何人必要か」を考えましょう。

たとえば、「X年後に、企業利益を1.5倍にさせる」という採用目的を設定した場合を想定してみましょう。

この場合、現状の従業員ひとりあたりの年間や月間の利益の値を算出し、目標を達成するためには、プラスで何人必要なのかを計算すれば、人数の目標を割り出せるでしょう。

また、「自社の業界や事業について詳しい人であれば、労働生産性はさらに高くなることが想定できるため、〇人でも採用する」といったように、採用目的から逆算して、採用人数の想定をつける方法もあります。

自社の経営計画に最適な方法を選択し、採用人数や人材を策定しましょう。

(3)採用スケジュールの策定

採用目的を達成するためには、いつまでに採用活動を終わらせる必要があるのかを考え、スケジュール設定をおこないましょう。

期限を確認したうえで、内定、面接、書類選考、募集期間など、必要なフェーズを逆算して、具体的な日程を決めます。

新卒採用は、スケジュール感がつかみやすいですが、中途採用の場合は、目的が明確になっていないと、スケジュールを立てられないので、しっかりと(1)(2)の手順をおさえるようにしましょう。

(4)採用方法の検討・決定

採用人数や人材の目標にあわせて、どのような媒体・手法を使って採用をおこなうか検討していきましょう。

たとえば、長期的に働いてくれる大量の人数が欲しい場合は、就職サイトや合同説明会を活用して、なるべく大人数の目に触れる方法が効果的でしょう。

また、専門分野に強い人材が欲しい場合は、特化型の就職サイトやリファラル採用を活用して、ピンポイントでアプローチしていく方が効率的な可能性もあります。

人数や人材の目標にあわせて、複数の採用方法を検討することで、計画的な母集団形成が実現できるでしょう。

(5)採用の実施

設定したスケジュールと採用方法をもちいて、採用活動を実施しましょう。

自社の雰囲気や事業内容を発信することで、自社に興味をもってくれる候補者を増やすことにくわえ、入社後の動き方や社風も発信し、入社後のミスマッチを少なくすることにも努めましょう。

実際に候補者が入社した後のことも考えながら、採用活動をおこなえると、早期離職やエンゲージメント低下のリスクを防げるでしょう。

>エンゲージメントの必要性に関する記事はこちら

(6)振り返り

採用活動を終えたら、母集団形成の手順を振り返り、改善できるポイントを探しましょう。

採用活動を重ねるたびに改善をおこなっていくことで、質の高い採用活動がおこなえるようになるでしょう。

また、振り返りをおこなう際には、採用担当部門だけでなく、リクルーターを担った社員や、面談を担当した社員など、さまざまな立場の人から意見をもらうようにしましょう。

さまざまな角度から振り返りがおこなえることで、課題に対する解像度も高まります。

母集団形成の注意点

質の高い母集団形成をおこなうためには、いくつかの注意点を把握しておく必要があります。

母集団形成の注意点について確認していきましょう。

採用目的やターゲットは明確にする

採用活動のターゲット像は、必ず明確にしましょう。

ターゲット像を明確にすることで、効果的に採用活動をおこなえることはもちろん、ターゲット設定の内容を、社内の関係各所に共有しておくことで、納得感の高い採用活動にすることができます。

また、関係者全員が、ターゲット像に対して認識の齟齬がなくなることで、宣伝の方向性や質も一定にすることができるでしょう。

>社内の情報共有を効率化する方法に関する記事はこちら

最適な手法を模索する

母集団形成では、目的やターゲットにあわせて、最適な手法を模索することも大切です。

たとえば、「自社の理念に共感してくれる人」を強化して採用したい場合は、社内の働き方や、企業ビジョンを詳しく掲載できる自社サイトの運用に注力するのが筋がいい方法でしょう。

また、手法は複数組みあわせることで、より効果を発揮する可能性もあります。

「就職サイトだけ」「合同説明会だけ」のように、ひとつの方法に固執せずに、自社が求めるターゲットと多く出会える方法を模索しましょう。

たとえば、上記のように自社のサイト運用に注力した場合は、より自社サイトに訪問してくれる候補者を増やすために、拡散性の高いSNSの活用と並行することが効果的でしょう。

採用ブランディングを統一する

採用ブランディングの方向性を統一し、一貫した考えや価値観のもとで、発信や活動をおこなうように注意することも大切です。

発信内容が統一できていないと、ターゲット像や目的とずれた人の応募が多くなる可能性もあります。

採用担当者が複数いる場合は、ブランディングを共有する場を設けることや、定期的に情報内容の見直しをおこなう場を設けるようにしましょう。

母集団形成の成功事例

ここまで母集団形成の手法やポイント、手順を解説してきました。

では、実際に母集団形成に成功している企業は、どのように母集団形成にとりくんでいるのでしょうか。

母集団形成の成功事例をみていきましょう。

クラウドコンピューティングサービス企業

アメリカに本社をおき、日本でも勢力を拡大している企業は、リファラル採用を活用した母集団形成に成功しています。

この企業は、企業の成長とともに、数百人の採用に成功していて、その多くがリファラル採用によるものです。

とりくみとしては、企業理念にマッチする人材を採用することや、あらかじめ採用にかける予算を予算目標にくみ込むことで、採用担当者以外の事業部も巻き込んだ採用活動をおこなっています。

母集団形成の目標をしっかりと立てることで、企業全体が一丸となって、採用を成功させている事例です。[※2]

ホームメイド企業

家具量販をおこなう日系企業では、SNSを活用した母集団形成を実現しています。

Instagramを活用して、新卒採用専用のアカウントを開設し、社員インタビューや、仕事風景を発信しています。

また、福利厚生や休暇、残業の有無など、候補者が気になるであろう内容の特集や、面接や自己分析の対策など、就活生に寄り添う投稿をして、人気を集めている事例です。[※3]

母集団形成で質の高い採用活動を

採用に母集団形成をとり入れることで、自社にマッチする人材の採用や、質の高い採用活動が実現できます。

「採用目的・ターゲットの明確化」や「採用ブランディングの統一」は、母集団形成の質を高め、採用活動を成功に導くために、必要なポイントになるため、必ずとりくむようにしましょう。

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[※1]出典:内閣府「(1)総人口|選択する未来」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_1.html
[※2]出典:Wantedly「約半数をリファラルで採用するSalesforceの成果を支える「コアバリュー採用」とは|共感採用はなぜ必要か vol.02【Event Report】」
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/eventreport_20210909/
[※3]出典:【公式】ニトリ 新卒採用 (@nitorishinsotsu)
https://www.instagram.com/nitorishinsotsu/
※本記事は、2022年8月時点の情報をもとに作成しています。


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