レジリエンスとは?意味や高める方法、ビジネスで必要な理由を解説【臨床心理士監修】
目次
仕事において、つらい状況や困難な状況に直面することがあるでしょう。
困難な状況に対する適応力をあらわす言葉として「レジリエンス」があります。
この記事では、レジリエンスとはなにか、レジリエンスが高い人・低い人の特徴、レジリエンスの高め方などについて紹介します。
レジリエンスを高めて、より健康的に働ける状態を目指しましょう。
レジリエンスとは
レジリエンスとは、「回復力」「弾力性(しなやかさ)」「反発力」という意味を持つ言葉で、ビジネスにおいては「困難や逆境、ストレスの状況に対して適応し、乗り越える力」として、近年注目が集まっています。
心理学においては、悪条件やよくない環境のなかでも、肯定的な適応を示す状態のことを意味します。
ビジネスシーンにおいても、レジリエンスという言葉は使われており、「組織に対して使われるレジリエンス」と「個人に対して使われるレジリエンス」の2つがあります。
それぞれの使われ方におけるレジリエンスの意味は下記の通りです。
組織に対するレジリエンス | 不測の事態における企業の回復力や環境の変化に対する順応性の高さ |
---|---|
個人に対するレジリエンス | 企業に所属する個人の適応能力 |
レジリエンスが高い人・低い人の特徴
困難な状況に対する適応力をあらわす「レジリエンス」が高い人・低い人は、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
レジリエンスを高めるためにも、それぞれの特徴を確認していきましょう。
レジリエンスが高い人の特徴
日ごろ仕事や人間関係において高い能力を示している人は、困難な状況においても高い適応能力を示す、つまりレジリエンスが高いとされています。
また、本人の能力の高さ以外にも、自分を支持してくれる人がいるかどうかといった、環境の要素もレジリエンスに影響します。
レジリエンスが低い人の特徴
普段から適応能力が低い人は、レジリエンスが低いとされています。
社会的なつながりが少ないといった環境の要素をもつ人も、レジリエンスが低い傾向にあります。
ビジネスシーンにおけるレジリエンスの必要性
東日本大震災や新型コロナウイルス感染症の拡大など、企業も個人も想定していなかったような困難に直面するシーンが、近年増加しています。
このような不足事態がもたらす変化に対応しながら、困難を乗り越えていくためには、レジリエンスの能力が必要になってきます。
あらためて、ビジネスシーンにおいてレジリエンスが必要とされる理由や目的を確認していきましょう。
ストレスを軽減させるため
レジリエンスが高ければ、つらい状況のもとでも感じるストレスを減らせるでしょう。
長期間、強いストレスにさらされ続けると、心身の健康に対して悪影響をおよぼす可能性があります。
変化対応力をつけるため
ビジネスシーンにおいては、突然の仕事環境の変化、業務内容の変更などさまざまな変化があります。
予測困難な時代をあらわす言葉として、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の4つの英語の頭文字をとったVUCA(ブーカ)という言葉があるほどです。
時代の流れのなかで生き残るためにも、レジリエンスは重要な要素です。
目標達成力を養うため
企業や個人が目標達成を目指すうえで、困難な状況に直面せざるを得ないこともあります。
高いレジリエンスをもち、困難な状況においても適応することができれば、努力を継続し目標達成する可能性も高まるでしょう。
良好な人間関係を構築するため
働くうえで人間関係の問題は、多くの人の頭を悩ませるものです。
仕事において、人間関係の問題はさけるのが難しく、困難な状況になってもうまくやれる能力、つまりレジリエンスがあれば、苦手な人であったとしても良好な人間関係を築けるようになるでしょう。
企業の持続的な成長のため
環境問題や物価高騰、労働力不足など企業はさまざまな困難に直面します。
その環境下にあって企業が成長し、発展していくためには困難に対する適応力の高さが欠かせません。
対応能力の高い従業員が多く存在する企業であれば、感染症の流行、自然災害といった突然のトラブルに際しても、安定した業務遂行が可能です。
企業が持続的に成長できれば、離職率の低下や個人のパフォーマンス向上にも役立つでしょう。
レジリエンスを高める6つのコンピテンシー
レジリエンスの代表的な6つの要素は、以下の通りです。
- 自分の軸
- しなやかな思考
- 対応力
- 人とのつながり
- セルフコントロール
- ライフスタイル
それぞれの要素について、どのようなものなのかを確認していきましょう。
自分の軸
自分はどのような感情や価値観をもっているのかを認識し、自分の軸をもっているかどうかは、レジリエンスに影響を与えます。
ネガティブな感情であっても自分の感情を否定せずに認識することで、環境にもうまく適応していけるでしょう。
しなやかな思考
想定外の事態に対してうまく適応するには、ものごとのポジティブな側面をとらえたりさまざまな可能性を検討したりといった、思考のしなやかさも重要です。
現代ではとくに、自然災害をはじめとする想定外や、情報化社会による変化スピードの加速から、しなやかな思考による適応力の高さが求められているといえるでしょう。
対応力
困難な状況にうまく適応していくには、考えや思考を変化させるだけではなく、実際になにかしらのものごとへの対応が必要になります。
具体的にアクションをおこして、状況にアプローチする対応力もレジリエンスの重要な要素です。
人とのつながり
信頼できる仲間がいること、自分の味方がいることは、悪条件の環境において大きな力となります。
悩みを打ち明けられる人がいること、相談に乗ってくれる人がいることは、レジリエンスの高さに影響を与えます。
セルフコントロール
個人がもつセルフコントロール力の高さは、困難な状況下においても冷静さを失わずに行動する能力として重要な要素といえるでしょう。
つらい状況になってからでは、セルフコントロール力を高めることは難しいため、日ごろから意識しておくことが重要です。
ライフスタイル
普段どのようなライフスタイルでいるかは、個人のレジリエンスに影響します。
たとえば、時間にゆとりのあるライフスタイルであれば、困難な状況下においても使える時間的資源や心のプレッシャーも低く、高いレジリエンスを発揮できる可能性があります。
レジリエンスを高める方法
ここまでレジリエンスの重要性や要素について確認してきました。
では、レジリエンスの能力を高めたいと思った場合、なにから取り組めばいいのでしょうか。
今回は、レジリエンスを高める方法として、下記の4つの方法を紹介します。
- ABCDE理論を活用する
- 自己効力感を高める
- 職場環境を整える
- レジリエンス研修をおこなう
組織や自分にあった方法を模索し、レジリエンス向上に努めてみてください。
ABCDE理論を活用する
ABCDE理論とは、ものごとの捉え方によって個人の感情や気分、行動は変わるとする考え方のことです。
なにかできごとが起きたときに、過剰に非合理な捉え方をしてないか、自分はできごとに対してどのように反応したのかなどを振り返ってみましょう。
自分の不適応な考え方や、捉え方が見えてくるかもしれません。
自己効力感を高める
そもそも自分に自信がない状態で、レジリエンスを高めることは難しいでしょう。
自己効力感を高めるには、成功体験を積み重ねることが重要です。
うまくいった仕事や、困難や逆境を乗り越えた経験などを振り返ることで成長を実感することができるでしょう。
また、達成可能な目標を設定し、着実にこなして自己効力感を高めることができれば、困難な状況に直面しても「やれる」「大丈夫だ」という気持ちをもちやすくなります。
心理的安全性の高い職場環境を整える
心理的安全性とは、企業のメンバーから非難や否定されることに不安を感じることなく、安心して自分の気持ちを表現できる状態のことです。
失敗しても良いという雰囲気があり、情報共有や意見交換が活発な職場は、心理的安全性が高いとされています。
日ごろから職場のメンバー同士で意見を交わして交流を深めておくなど、心理的安全性を高めておくことで、いざという場面でもレジリエンスを発揮しやすくなります。
職場の雰囲気を急に変化させることは難しいので、地道な努力を重ねて整えておくようにしましょう。
レジリエンス研修をおこなう
企業視点で考えたときに、組織のレジリエンスを高めるためには、レジリエンス研修をおこなうことも効果的です。
社内で同じ考えを共有できるようになるので、レジリエンス研修の実施も検討してみましょう。
レジリエンスを損ねる考え方
出来事をネガティブに解釈してしまい、受け身の姿勢であることはレジリエンスを妨げてしまうことがあります。
レジリエンスを損ねてしまう考え方の理論について解説します。
ABC理論
ABC理論とは、Adversity(出来事)・Belief(認知・解釈)・Consequence(感情)の3つの頭文字をとった言葉です。
出来事によって認知や解釈が生じ、結果として感情や行動が引き起こされるという考え方のことを指します。
1つの事象に対する認知や解釈は人によって異なるため、感情、つまり受け止め方もさまざまであるということです。
A-C理論
A-C理論とは、出来事と感情の間に認知や解釈がなく、直結しているとする考え方です。
前述のABC理論のように、間に認知・解釈があれば感情をコントロールすることもできますが、A−C理論では感情のコントロールができなくなります。
出来事が起こった際にも感情に直結してしまうため、受け身の姿勢になってしまうでしょう。
レジリエンスと類語との違い
レジリエンスには、混同しやすい類語が存在します。
今回は、3つの類語との違いを解説します。
- ストレス耐性
- メンタルヘルス
- ハーディネス
混同して使うことがないように、それぞれの言葉の意味を確認していきましょう。
レジリエンスとストレス耐性の違い
ストレス耐性は、ストレスにどれだけ耐えられるかをあらわす言葉です。
レジリエンスとは、つらい環境のなかにあってもどれだけ適応できるかを示す過程であるという点で違いがあります。
ストレス耐性が高いからといって、かならずしもレジリエンスの高さを保証するわけではありません。
レジリエンスとメンタルヘルスの違い
メンタルヘルスとは、一般的に心の健康やその程度のことをあらわす際に使われる言葉です。
メンタルヘルスはレジリエンスよりも、広い範囲の心の状態をあらわしています。
レジリエンスとハーディネスの違い
ハーディネスとは、ストレスからくる有害な影響への耐性の強さをあらわす性格特性です。
ハーディネスは、ものごとに没頭する傾向、困難なできごとをどれだけチャレンジとみなすか、どれだけ人生をコントロールできると思っているかの3要素から決定されます。
レジリエンスを高めて健康に働きましょう
レジリエンスとは、困難な状況においてもうまく適応していく能力のことです。
流動性が高く、多くの想定外が起こる現代において、個人や企業にとって高いレジリエンスをもつことは重要です。
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記事監修者:山崎 ゆうき(やまざき ゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。