マイクロアグレッションとは?意味や具体例、対処法を解説

目次
職場や日常生活では、悪意がなくても何気ない一言が相手を傷つけてしまうことがあります。
無意識の偏見や差別を含む言動は「マイクロアグレッション」と呼ばれています。
本記事では、マイクロアグレッションの意味や具体例、対処法についてわかりやすく解説します。
マイクロアグレッションとは
マイクロアグレッションとは、無意識のうちに差別や偏見を含んだ言動で相手を傷つけてしまうことです。
明確な悪意がなくても、「ほめたつもり」や「何気ない一言」が相手にとっては侮辱や否定と受け取られることがあります。
マイクロアグレッションは英語の「micro(マイクロ)」と「aggression(アグレッション)」を組み合わせた言葉で、「小さな攻撃」という意味があります。
マイクロアグレッションが起こる主な原因は、幼少期から刷り込まれた価値観や無意識の偏見、固定概念にあるといわれています。
マイクロアグレッションと差別の違い
差別とは、特定の人種や性別、年齢などを理由に公然と排除・不利益を与える行為を指し、多くの場合、明確な悪意や意図があります。
一方でマイクロアグレッションは、意図せずに相手を傷つける無意識の言動が中心です。
差別には悪意があり、マイクロアグレッションには明確な悪意がないという点が違いといえるでしょう。
マイクロアグレッションの具体例
マイクロアグレッションの理解を深めるために、3つの具体例を紹介します。
- 性別やLGBTQ
- 年齢
- 国や出身地・人種
何気ない発言がマイクロアグレッションに該当しているケースも多いです。
自分の発言がマイクロアグレッションに該当していないか、確認してみてください。
性別やLGBTQ
性別や性的指向に関する無意識の発言や行動が、マイクロアグレッションとして現れることがあります。
たとえば、以下のような発言が性別や性的指向に関するマイクロアグレッションとして挙げられます。
女性なのに理系なんですね | 女性が理系分野にいることに驚くような発言は、女性が理系に向いていないという偏見を含むことがある |
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彼氏はいるの | 相手の性的指向を決めつけることで、LGBTQの人々に不快感を与える可能性があります |
アイスブレイクや何気ない雑談として話した内容が、相手を傷つけていることもあります。
自分の発言を見直してみてください。
年齢
年齢に関するマイクロアグレッションは、若年層と高齢者の双方に対して起こることがあります。
そんなに若いのにリーダーを任されるなんてすごいね | 若い人が責任ある立場に就くのは珍しいという偏見が含まれており、実力より年齢が重視される印象を与える |
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高齢者なのに、IT関連の部門にいるなんてすごい | 高齢者はITやデジタルに疎いという先入観が含まれている |
褒めているつもりの発言が、相手の尊厳を傷つけていたり、侮辱していたりするケースがあります。
国や出身地・人種
国や出身地、人種に関するマイクロアグレッションは、意図せず相手を排除したり、偏見を助長したりする原因となります。
以下のような具体例があります。
(外国人に対して)日本語が上手ですね | 本人が日本で長年生活している場合や、日本生まれ・日本育ちの場合でも、外見だけで「日本語が不得意」と決めつけている可能性がある |
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肌の色がきれいですね | 褒め言葉のようですが、肌の色を特別視していることになり、相手を「普通ではない」と暗に伝えることになる |
3種類のマイクロアグレッション
マイクロアグレッションには、以下の3つの種類があるといわれています。
- マイクロアサルト
- マイクロインサルト
- マイクロインバリデーション
3種類のマイクロアグレッションの意味を確認していきましょう。
マイクロアサルト
マイクロアサルトは、特定の人種、性別、性的指向などに対する侮辱や排除的行動が「意図的」である点が特徴のマイクロアグレッションです。
相手に対して、強い心理的影響を与えることが多く、マイクロアサルトを放置することは大きな問題となりえます。
マイクロインサルト
マイクロインサルトとは、 無意識的におこわれる侮辱的な言動です。
差別的な意味を含んでいることが多いですが、本人には相手を傷つけようとする意図がない点が特徴です。
明確に相手を傷つける意図はなかったものの、無神経さや無礼さが結果として相手を傷つけています。
マイクロインバリデーション
マイクロインバリデーションは、相手の感情や経験を無視・否定する ような言動です。
無意識のうちに、相手の感じていることや価値観を軽視することで、相手の存在や意見を無意味だと感じさせます。
たとえば、「そんなことで悩んでいるなんておかしい」という発言は、本人が悩んでいる場合には相手の悩みを軽視することとなり、差別的な発言になりえるでしょう。
マイクロアグレッションがもたらす悪影響
マイクロアグレッションは、たとえ悪気がなかったとしても、差別的・侮辱的な言動にあたるため、さまざまな悪影響を引き起こすことが想定されます。
ビジネスシーンでマイクロアグレッションが発生すると、どのような悪影響が想定されるのかみていきましょう。
- 信頼関係の崩壊
- 心理的安全性の低下
- メンタル不調
- 人材流出
職場の人間関係や社員のメンタルヘルスに大きく影響することが想定されます。
信頼関係の崩壊
マイクロアグレッションが日常的に繰り返されると、職場や人間関係における信頼が徐々に崩れていくことが想定されます。
ささいな言動でも相手に不快感を与え続けると、互いの理解や尊重が失われ、コミュニケーションが次第に困難になるためです。
信頼関係が壊れることで、仕事の効率やチームワークにも悪影響がおよぼされるでしょう。
心理的安全性の低下
マイクロアグレッションは、職場の心理的安全性を低下させる恐れもあります。
心理的安全性が高い状態とは、個人が、職場で自分の意見や考えを自由に表現でき、失敗を恐れずに行動できる状態のことです。
意図的ではないとしても、差別的な発言を受けると、個人は自分の意見を自由に表現できない、または意見を言うことで批判されるのではないかと感じるようになり、自己表現を控えるようになってしまうでしょう。
メンタル不調
マイクロアグレッションが繰り返されると、受けた人は精神的に負担がかかり、ストレスや不安を引き起こす可能性があります。
職場での嫌がらせや無意識の偏見が積み重なると、うつ症状や焦燥感を引き起こす原因となり得る点に注意が必要です。
人材流出
マイクロアグレッションは、優秀な人材の流出を招き、組織の生産性やチームの結束力にも悪影響をおよぼす恐れがあります。
マイクロアグレッションが職場で頻繁に発生すると、従業員は不快感や疎外感を覚え、働き続ける意欲を失ってしまいます。
また、上司や同僚からの無意識な偏見や差別的な言動が続くと、「この職場では評価されない」と感じ、転職を検討するきっかけにもなるでしょう。
企業ができるマイクロアグレッション対策
マイクロアグレッションを防ぐためには、企業全体での意識改革と具体的な対策が必要不可欠です。
具体的には以下のような対策が例として挙げられます。
- マイクロアグレッションに関する研修の実施
- マネジメント層の理解促進
- 相談窓口の設置・運営
- ワークショップの開催
また、東京都産業労働局の「TOKYOノーハラ企業支援ナビ」でも、マイクロアグレッションについての防止対策が紹介されています。
マイクロアグレッションがもたらす悪影響を防ぐためにも、マイクロアグレッション対策に取り組みましょう。[注1]
マイクロアグレッションに関する研修の実施
マイクロアグレッションの発生を防ぐためには、従業員がマイクロアグレッションを正しく理解し、無意識の偏見に気づくことが重要です。
研修を実施し、日常の何気ない言動が他者にどのような影響を与えるのかを学び、職場での適切なコミュニケーションを促進する機会をつくりましょう。
ロールプレイやケーススタディを活用することで、実際の場面を想定しながら対策を身につけることできます。
定期的な研修をおこない、企業文化としての定着を目指しましょう。
マネジメント層の理解促進
マイクロアグレッションの発生を防止するためには、研修や意識向上のためのプログラムを導入し、管理職の理解を深めることが重要です。
管理職が無意識の偏見に気づき、適切な対応を学ぶことで、職場全体の意識改革が進みます。
また、部下の発言や行動に対するフィードバックの仕方を見直すことで、だれもが安心して働ける環境づくりを推進することもできるでしょう。
相談窓口の設置・運営
マイクロアグレッションの被害を受けた人が適切な対応を受けられる環境を整えることで、問題の早期発見と改善につながります。
相談窓口は、匿名での相談を可能にしたり、専門のカウンセラーを配置したりすることで、利用しやすいものにすることが重要です。
従業員が声をあげやすい職場環境を整えることで、組織全体の健全な風土が育まれるでしょう。
ワークショップの開催
ワークショップの開催もマイクロアグレッション対策として効果的です。
単なる座学ではなく、ロールプレイやグループディスカッションを取り入れることで、自身の言動を振り返る機会となり、無意識の偏見に気づくきっかけになります。
具体的な対処法を学ぶことで、職場での円滑なコミュニケーションにもつながるでしょう。
社内共有の効率化に「Chatwork」
マイクロアグレッションとは、無意識のうちに相手を傷つけたり、差別や偏見を含んだ言動をしたりしてしまうことです。
社内で発生することで想定される悪影響も大きく、企業側には適切な対応が求められます。
マイクロアグレッション対策のひとつとして、マイクロアグレッションに対する正しい理解を促進することが挙げられますが、理解の促進・周知の効率化として、ビジネスチャットの活用が効果的です。
ビジネスチャット「Chatwork」は、1対1のコミュニケーションはもちろん、グループチャットを作成することで、社内全体など、複数人でも円滑なやりとりが実現できます。
たとえば、社内全員でのグループチャットを作成し、「TO ALL」をつけることで、すばやく全社への情報共有が可能になります。
また、チャットには絵文字を活用してリアクションすることもできるため、従業員に確認したらリアクションを実施させるなど、周知の促進をはかることもできます。
>Chatworkのグループチャットとは?に関する記事はこちら
マイクロアグレッションに関する正しい理解の促進、また、効率的なビジネスコミュニケーションに、ビジネスチャット「Chatwork」をぜひご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注1]出典:東京都産業労働局TOKYOノーハラ企業支援ナビ「多様なハラスメント|職場でのハラスメント防止を学ぶ」
https://www.nohara.metro.tokyo.lg.jp/learn/various/
※本記事は、2025年1月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。