プロセスマップとは?メリット・作り方からビジネス活用事例まで徹底解説

目次
プロセスマップは、プロセスマネジメントに役立つ図表の一種です。
基本の作り方とメリットを把握した上で作成・活用すれば、マネジメントの円滑化や業務の効率化に貢献します。
本記事では、プロセスマップの概要やメリット、基本的な作り方から活用のヒントまでを解説します。
プロセスマップの種類やビジネスに有効な理由なども解説しているので、理解を深めたい人はぜひ参考にしてください。
プロセスマップとは?基本を理解する
プロセスマップとは、事業におけるタスクや業務の流れを意味する「業務プロセス」を視覚的に表現した図表です。
業務プロセスの管理・改善や、新規プロジェクトの計画、業務の抜本的な見直しなどをおこなう際に作成されます。
以下では、プロセスマップの定義と作成する目的を解説します。
プロセスマップの定義:業務の流れを「見える化」する地図
プロセスマップは、業務の流れを「見える化」する地図のような役割を果たします。
適切な方法で作成すれば、効率的なルートや正しい道筋を明確に示すことができます。
閲覧するだけで実施すべきタスクと取り組む順番がわかるため、迷いなく業務を進めるために効果的です。
プロセスマップは、地図のように表記のルールが決まっています。
とくに、後述の「フローチャート形式」で作成する際にはJIS規格で定められた明確なルールが存在するため、見る人によって解釈が変わるというトラブル防止につながります。
なお、プロセスマップと混同されやすい「業務フロー図」は、特定の業務のみを視覚的に表現した図表であり、プロセスマップの一部分という位置付けになります。
プロセスマップを作成する目的とは?
プロセスマップを作成する主な目的は、業務プロセスの可視化と課題の発見です。
シンプルなToDoツールやかんばん方式のツールなどでは、業務プロセスの大きな流れまでは把握できません。
仮にプロセスを把握しないまま業務を進めると、非効率な業務が増え、生産性が低下します。
プロセスマップを作成して全体の流れを可視化すれば、生産性の維持や最適化がしやすくなります。
また、プロセスマップは課題の発見にも役立ちます。
プロセスそのものを視覚化するため、効率が悪い箇所や無駄な業務、重複業務をすばやく発見できます。
発見した課題を深く分析することで、効果的な改善方法を見つけられる点もポイントです。
プロセスマップの種類
プロセスマップには、さまざまな種類があります。
プロセスを視覚化できる点は同じですが、それぞれに向く業種や得意分野、特徴などが異なります。
適切な種類を選び、プロセスマネジメントを快適化するためにも、各種の特徴と強みを押さえておきましょう。
フローチャート
プロセスマップのなかで、最もスタンダードな種類がフローチャートです。
フローチャートは業務や処理の流れを表現するための図表で、業務プロセスだけでなく、業務フローやアルゴリズムの視覚化にも使われます。
また、以下のように記載ルールが明確に定められていることも特徴です。
- 開始と終了は楕円形のシンボルの中に記載する
- タスクは長方形の中に記載する
- 判断による分岐が発生する場合はひし形のシンボルを使う
- 流れは矢印で表記する
各要素の細分化の度合いについては注意する必要がありますが、プロセスマップ作成の初心者でも比較的簡単に作成しやすい方式といえます。
ハイレベルプロセスマップ
ハイレベルプロセスマップは、一般的なプロセスマップよりも大きな視点で流れを表現する方法です。
ビジネスプロセス全体をシンプルな骨組みで表現するマップで、後述するSIPOCのProcess部分の記載にも活用されます。
大枠のみを記載する形式であり、詳細な流れやタスクなどは記載しません。
そのため、経営層にプロセスを説明するとき、全体の流れを把握する際など、詳細情報が不要な場面で活用されます。
表記の仕方については、業務内容が書かれた五角形を並べる方法、シンボルと矢印を使う方法など、さまざまな種類があります。
バリューストリームマップ
バリューストリームマップは、プロセスの無理と無駄を省く考え方である「リーンマネジメント」でよく活用される方法です。
サプライヤーや顧客、工程、作業などの情報が記載されたボックスと、所要時間と付加価値時間を表現する横線、矢印を使ってプロセスを表現します。
主に表現するのは、原材料の調達から製品が顧客の手に渡るまでの一連のプロセスです。
バリューストリームマップは生産を手掛ける業種向けの手法であり、製造業におけるサプライチェーン全体のプロセスを可視化する際などに活用されます。
スイムレーンマップ
タスクの担当者と業務の流れを明確に記したいときに便利なのが、スイムレーンマップ(スイムレーン図)です。
フローチャートのようなシンボルと担当者名が記載された行または列を使って、タスクの依存関係とプロセスを表現します。
タスクと担当者の関係が明示されており、「次は誰が何をするのか」がわかりやすい形式であることが特徴です。
また、問題点の洗い出しや改善点の発見がしやすい点、業務ごとの責任の所在を明確に表現できる点などから汎用性が高く、ソフトウェア開発や製造、ECなど幅広い分野で活用されています。
SIPOC
SIPOCは、プロジェクトやビジネスの全体の流れを把握する際に用いられるフレームワーク、および全体像を見える化する図表です。
俯瞰的な視点でプロセスを見える化するスタイルで、誰が何を作成・提供し、どのチームや人物などに渡すかを明確に表現できます。
構造はシンプルで、Supplier(供給者)・Input(インプット)・Process(プロセス)・Output(アウトプット)・Customer(顧客)の5項目を並べた形式です。
生産ラインのコントロールや生産効率が求められる製造業において有用なプロセスマップです。
なぜプロセスマップがビジネスに有効なのか?主なメリット
続いて、プロセスマップがビジネスに有効な理由やメリットを解説します。
業務の流れ・進捗を明確に把握できる
プロセスマップは、業務の流れをシンボルと表によって表現します。
業務の大まかな流れと進捗が視覚化されるため、自分のやるべき仕事はもちろん、ほかのメンバーが何をおこなっているかもすばやく把握できます。
また、プロセスマップの情報をもとに、業務プロセスの改善や効率化ができる点もメリットです。
プロセスマップは、業務同士の依存関係や流れを明確化できるため、各プロセスの非効率な部分や問題点も発見しやすくなっています。
発見した問題を踏まえて、社内のルールを調節したり、業務内容の見直しやDX化などの対策を講じたりすれば、業務効率や生産性の向上が期待できるでしょう。
チーム内で正確に情報共有できる
チーム内での正確な情報共有が可能となることも、プロセスマップがビジネスに役立つ理由のひとつです。
タスクを進める順番や依存関係などは、統一された表記で明確化しないと各人の認識に齟齬が生じかねません。
場合によっては、認識の不統一によって業務効率が低下するおそれもあります。
プロセスマップを活用すれば、業務の最適な流れを確実に共有でき、何をどの順番でやるべきかも明確化できるため、勘違いによる手戻りやタスクの抜け漏れも防止しやすくなります。
プロセスに関する情報を統一された表記で的確に伝達できる点が、プロセスマップのメリットです。
業務の属人化を防げる
プロセスマップは、属人化の防止にも有効です。
業務プロセスは、メンバー同士で共有できる状態にしておかないと、特定の人しか業務を担当できないという状態を招きかねません。
担当者の長期欠席や退職などが発生すると、業務全体に混乱が生じるケースもあります。
その点、プロセスマップを作成して共有しておけば、誰もが業務プロセスをスムーズに理解でき、正しい手順で進められるようになるため、属人化を防止できます。
また、プロセスマップによって業務プロセスを可視化すれば、マニュアルや手順書を作成する際にも役立ちます。
実践!プロセスマップの作り方と作成のコツ
有用なプロセスマップを作るためには、作り方と作成のコツを知っておくことが重要です。
各ポイントをおさえた上で作成を進めれば、業務プロセスの可視化や課題発見に役立つマップを作成できます。
以下では、プロセスマップの実践的な作り方を紹介します。
プロセスを決める
プロセスマップの作り方の第1ステップは、マッピングするプロセスの決定です。
先にプロセスを決めておけば、開始地点と終了地点をスムーズに決めることができ、後の作業も進めやすくなるので、ぜひ最初におこないましょう。
なお、プロセスマップを作成する業務プロセスは、効率や成果がなかなか上がらないもの、顧客満足度や利益に直結するものから優先して選ぶことがおすすめです。
関連する仕事をリストアップする
プロセスを決めたら、次はそのプロセスに関連する仕事をすべてリストアップします。
このとき、抜け漏れや重複があると、改善点が発見できなかったり、流れを正確に把握できなかったりする可能性があるため、慎重に進めましょう。
リストアップを進める際のコツは、プロセスへの知見が深い人やその分野の専門家、利害関係者にどのような仕事が必要かをヒアリングすることです。
ヒアリングで得た知見を活用し、リストアップに役立てれば、抜け漏れや重複の発生を防止しやすくなります。
一連の流れを書き出す
リストアップをした仕事は、進める順序や流れを整理し、任意のデジタルツールや紙などにまとめます。
初めからツールを使ってマップを作成してもよいですが、下書きとして一度流れをまとめたほうがミスなく作成を進められます。
書き出しの基本的な手順は以下のとおりです。
- 開始地点と終了地点を決める
- リストアップした仕事を進行順に並べる
- 各流れをチェックし、抜け漏れや問題がないかを確認する
また、作業の際は、関連メンバーに確認しながら作業を進めるのがコツです。
こまめに確認すれば、より精度の高い並べ替えが可能となるので、可能な限り実施しましょう。
フローチャートを作成する
流れの整理が終わったらフローチャートを使って、プロセスマップを作成していきます。
マップの作成はMicrosoft VisioやStrap、Miroなどのチャート作成ツール、またはExcelを使っておこなうのが定番です。
作り方としては開始と終了は楕円形、特定のプロセスや業務は長方形、選択や分岐などはひし形のシンボル内に入力します。
それぞれの記号を入力し、適切な順番になるよう矢印でつなげば、フローチャートの作成作業は完了です。
なお、用途や目的が明確に決まっている場合は、バリューストリームマップやスイムレーンマップなどに置き換えて作成するとよいでしょう。
チームで共有し最終確認をする
フローチャートを作成したら、チームメンバーに共有し、確認を促しましょう。
プロセスマップは人の手で作成する図表であり、抜け漏れや重複、ミスが発生する場合があるため、チームメンバーにも確認してもらうことで確実性を高めます。
メンバーからのフィードバックをもとに修正と調整をおこない、再度チェックをおこなえば確認作業は完了です。
改善すべき点や課題を分析する
プロセスマップを作成したら、改善すべき点や課題を分析していきます。
分析の流れとしては、まずプロセスの流れを確認しながら冗長な箇所や不要な作業、ボトルネックなどを探し出します。
次に、何を改善すべきか、どんな対策を講じるかを具体的に検討します。
課題は判明しているものの、解決策を導き出せないという場合は、知見が深い人や業務の担当者に相談するとよいでしょう。
解決策がまとまったら、その内容をプロセスマップに反映させ、再度共有すれば作成作業は終了です。
プロセスマップ作成・活用におけるヒント
最後に、プロセスマップの作成と活用におけるヒントを紹介します。
ヒントを意識してマップを作成・活用すれば、よりスムーズなプロセスマネジメントにつながるため、ぜひおさえておきましょう。
プロセスマップの計画
円滑なマップの作成と効率的な分析・活用のために、事前の計画が重要です。
無計画のまま作成をはじめると、効果を得られなかったり、作成の手間が無駄になったりする可能性もあるためです。
とくに事前に決めておきたい点として「マップを使って何を達成したいか」「どんな効果を得たいか」「どの範囲をマップ化するか」の3点が挙げられます。
これらを決めておけば、作成や分析をスムーズに進められるでしょう。
プロセスマップの下書き作成
プロセスマップの下書きをおこなう際にもポイントがあります。
とくに、一連の流れを書き出すステップを実施する際には、ゴールからスタートに向かって書き進めることがポイントです。
ゴールからさかのぼることで、スタートからゴールまでの道筋をスムーズに組み立てられ流ためです。
また、仕事同士、プロセス同士を無理なくつなげる意識を持てば、抜け漏れの防止にもつながります。
さらに、「サブプロセスとなる小さな仕事はシンプルにまとめる」「プロセスの詳細も記載する」などの工夫をすれば、適切な下書きを作成できるでしょう。
プロセスマップの見直し
プロセスマップの見直しを適切に実施すれば、マップをより理想的な状態で完成させることができます。
とくに見直したいポイントは「プロセスの流れに問題はないか」「不必要・無駄な業務がないか」「不足はないか」の3点です。
各ポイントを意識しながら、プロセスに関連するメンバーとともにマップを見直していけば、完成度が高まります。
プロセスマップの完成後も定期的に内容の見直しや修正・更新をおこなえば、いっそう円滑なプロセスマネジメントが可能となるでしょう。
プロセスマップで業務を見える化し、ビジネス成長を加速させよう
プロセスマップは、業務の流れを可視化する便利なツールです。
適切な方法で作成されたマップを活用すれば、業務効率の改善と属人化の解消を実現でき、さらにビジネスの成長も加速させられます。
また、プロセスマップの共有や、作成時のコミュニケーションにはビジネスチャットツール「Chatwork」の活用もおすすめです。
Chatworkならチャットならではのスピード感で、円滑に情報のやり取りができます。
ファイルの送受信にも対応しているので、作成したプロセスマップの共有も簡単です。
シンプルな操作性も備えた便利なツールなので、プロセスマップの作成や共有を円滑に進めたいなら、ぜひ導入をご検討ください。
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