持ち帰り残業とは?違法性やリスク、対策方法をわかりやすく解説

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働き方改革
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持ち帰り残業とは?違法性やリスク、対策方法をわかりやすく解説

目次

自宅などに仕事を持ち帰って残業する「持ち帰り残業」は、残業代の支払いの観点や、社員の心身の健康を害する可能性があるとして問題視されています。

どのようなケースの持ち帰り残業が違法となるのか、また、違法とならないのかについて学ぶとともに、持ち帰り残業にひそむ危険性について理解しておきましょう。

また、持ち帰り残業をさせないための方策を知っておくことも大切です。

持ち帰り残業とは?

持ち帰り残業とは、勤務時間中に終わらなかった仕事を、自宅やカフェなどの外部に持ち帰っておこなう残業のことです。

持ち帰り残業の問題点は、持ち帰り残業のほとんどが労働時間にカウントされておらず、その分の賃金が発生しない「サービス残業」となっている点です。

また、情報漏洩やモチベーション低下の観点から見ても持ち帰り残業が発生することは望ましいものではありません。

個人が所有するスマートフォンやPCなどのデバイスの性能が上がっていることや、どこでもネット環境が使えるようになっていることから、持ち帰り残業を増長させている面もあります。

また、働き方改革の一環で「ノー残業デー」や「20時以降のオフィス消灯」などのさまざまな残業削減の取り組みがおこなわれる一方で、取り組みだけが先行し根本的な残業削減につながっていない場合などは、持ち帰り残業を増加させてしまっていることもあります。

持ち帰り残業が違法となるケース

会社の指示または黙示の指示で持ち帰り残業をさせ、その分の賃金を支払わなかった場合、労働基準法上違法となる可能性があります。

持ち帰り残業が違法になるケースについて具体的に見ていきましょう。

持ち帰り残業をするように指示がある場合

会社または上司の指示で持ち帰り残業をさせた場合、使用者つまり社員は会社の指揮命令下にあったとみなされるため、持ち帰り残業が労働時間とカウントされます。

持ち帰り残業が労働時間とカウントされる場合、労働基準法第37条の規定により、使用者は賃金を支払わなければなりません。

つまり、会社の指示で持ち帰り残業をさせたにもかかわらず、その分の賃金を支払わなかった場合は違法となる可能性があるということです。

黙示の指示がある場合

黙示の指示によって持ち帰り残業をさせ、その分の賃金を支払わなかった場合も違法となる可能性があります。

黙示の指示とは、明示的な持ち帰り残業の指示ではないものの

  • 業務上、持ち帰り残業をせざるを得ない状況であった
  • 客観的に見て時間内に終わらない量の業務を指示する

といったものです。

このような状況が認められれば、黙示の業務命令があったとして持ち帰り残業が労働時間とみなされ、その分の賃金を支払う必要があります。

つまり、明示的な持ち帰り残業の指示でなくても、持ち帰り残業をせざるを得ない状況を作り出してしまった場合は、使用者は会社に指揮命令下にあったとみなされるため、賃金を支払わなければ違法となってしまう可能性があるのです。

  

>【社労士監修】労働基準法違反の罰則に関する記事はこちら

 

持ち帰り残業が違法とならないケース

違法性が強い持ち帰り残業ですが、持ち帰り残業が違法とならないケースはどのようなものがあるのでしょうか。

主に考えられるのは、「社員自らの判断で持ち帰り残業をした場合」と「管理職が持ち帰り残業をした場合」です。

自主的な持ち帰り残業の場合

社員自らの判断で持ち帰り残業をおこなった場合、会社の指揮命令下にあったとはみなされず、持ち帰り残業が労働時間としてカウントされません。

例えば、

  • 期限までは余裕があるけど、キリが悪いから持ち帰って仕事をしよう
  • 自宅のほうがはかどるから持って帰ろう

といった理由で持ち帰り残業をおこなった場合は、自主的な持ち帰り残業と判断されます。

このような自主的な判断でおこなった持ち帰り残業に対して賃金を支払わなくても違法とはなりません。

しかし、自主的な持ち帰り残業自体も推奨されるものではないことは認識しておく必要があり、対策は求められるでしょう。

管理職がおこなう場合

持ち帰り残業が違法とならないケースとして、管理職が持ち帰り残業をおこなった場合というものがあります。

厳密には、労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合は、残業代を支払わなくてよいとされているため、「管理監督者」が持ち帰り残業をおこない、会社がその分の賃金を支払わなくても違法にはなりません。

しかし、違法とならないからといって部下の残業を管理職が引き受けるようなことが常態化すれば、管理職の長時間労働や健康被害など別の問題につながってしまいます。

残業分の賃金の支払いの観点からは違法ではないが、管理職の残業もほかの問題を引き起こす可能性があるというのは心に留めておくべきです。

>【社労士監修】管理職の労働時間・休日に関する記事はこちら

持ち帰り残業の危険性

残業代の支払いの観点だけでなく、持ち帰り残業には、さまざまなリスクがともないます。

持ち帰り残業のリスクの一例として、下記の4点を解説します。

  • セキュリティリスクが高くなる
  • 社員にストレスがたまる
  • モチベーションが下がる
  • 労働問題に発展する可能性がある

持ち帰り残業の危険性について、正しく把握していきましょう。

セキュリティリスクが高くなる

持ち帰り残業は、情報漏洩などのセキュリティトラブルを引き起こすリスクがあり危険です。

持ち帰り残業をするために、「社員が私物のデバイスにデータを移す」「書類を持ち帰る」「セキュリティレベルの低いWi-Fiを利用する」といったことが考えられ、その結果、デバイスなどの紛失・盗難、ネットワークウイルスへの感染などの危険が起こりえます。

情報漏洩やサーバー攻撃などのセキュリティトラブルを起こしてしまえば、業務に支障が出るほか、取引先や顧客からの信頼も失ってしまいます。

情報セキュリティの10大脅威に関する記事はこちら

社員にストレスがたまる

持ち帰り残業は、社員に精神的または身体的にストレスを与えてしまいます。

持ち帰り残業をすることで実質的な労働時間が長くなり、精神的に苦痛を感じたり、睡眠時間が削られることで身体の不調が出てくる可能性があります。

本来休めるはずの時間や場所で休めず、仕事をしなければいけないというストレスは計り知れません。

また、自宅やカフェなどは仕事に適した環境とは限らず、職場でおこなえばすぐに終わるような仕事も、持ち帰り残業になってしまえばより時間がかかり、大きなストレスを与えてしまいます。

  

モチベーションが下がる

持ち帰り残業は、社員のモチベーションを下げてしまいます。

持ち帰り残業が常態化すれば、「定時までに仕事を終わらせよう」という意識が芽生えず、モチベーションが低い状態でダラダラと仕事をしてしまいます。

また、持ち帰り残業に対する賃金が支払われないため、実質の労働時間に対して収入が少なく、モチベーション低下の原因になります。

 

労働問題に発展する可能性がある

持ち帰り残業は、労働問題に発展する可能性があります。

過去には、長時間の持ち帰り残業が原因のひとつとなり社員が自殺したとして労災認定された事件もあります。

持ち帰り残業は、その実質の労働時間が把握しづらく、持ち帰り残業の影響が表面化したときには、すでに社員に健康被害が起きているなどの問題が発生しているケースが多くあります。

社員を守り、健全に会社を運営していくためにも持ち帰り残業はさせるべきではないのです。

持ち帰り残業をさせないためには?

持ち帰り残業をさせないためにはどうしたらいいのでしょうか。

形式的な残業削減の取り組みでは、持ち帰り残業を増長させる結果となってしまい、逆効果です。

業務効率化を図ることで、業務量そのものを減らしていく取り組みをおこないましょう。

また、上司の立場にある人は、日頃からコミュニケーションをしっかり取り、部下の持ち帰り残業に気づくことや、持ち帰り残業をさせない体制を作ることが大切です。

仕事量を把握する

持ち帰り残業をさせない取り組みとして、まずは仕事量を把握することから始めましょう。

持ち帰り残業が発生する原因の1つとして、仕事量を把握できておらず段取りを逆算できていないというものがあります。

毎日おこなっている仕事を見える化することで、効率化できる業務やミスが発生しやすい業務を発見することができます。

>仕事がキャパオーバーのときのサインとは?に関する記事はこちら

業務の効率化を図る

  

仕事量を把握できたら、業務効率化をおこなう余地がないか検討しましょう。

ペーパーレス化やデジタルツールの導入によって時間がかかっていた仕事が時短でおこなえるようになるかもしれません。

業務効率化をおこなうことで、残業削減だけでなく、生産性やモチベーション向上の効果も期待できます。

コミュニケーションをしっかりとる

 

持ち帰り残業をさせない体制を作るためには、日頃からコミュニケーションをしっかり取ることが大切です。

コミュニケーションを活性化することで、自主的な持ち帰り残業に気づけたり、持ち帰り残業によるストレスやモチベーションの低下に気づくことができます。

また、社員同士のコミュニケーションが円滑におこなわれれば、業務効率化やミスの防止になり、結果的に残業削減にもつながるでしょう。

>部下とのコミュニケーションの重要性に関する記事はこちら

持ち帰りについてのルールを決める

持ち帰り残業を防止するためには、持ち帰りについてのルールを明確化することも必要です。

例えば、「私物デバイスの持ち込みを禁止する」「社内データや書類の持ち帰りを禁止する」「どうしても持ち帰り残業をする場合は、上司に労働時間について申告する」といったことが考えられます。

自社の業務内容や量に合わせて持ち帰りについてのルールを定め、社員に周知しましょう。

賃金を支払うことを前提として、どうしても持ち帰り残業をしなければいけない場合は、勤怠管理システムを活用し、自宅での労働時間を把握するという方法もあります。

持ち帰り残業の防止にChatworkを活用しよう

会社の指示や黙示的な指示によって持ち帰り残業がおこなわれ、その分の賃金が支払われなければ違法となる可能性があります。

違法とならなくても、持ち帰り残業には情報漏洩やストレスによる健康被害、モチベーションの低下などのリスクがあり、企業は持ち帰り残業を防止する取り組みをおこなう必要があります。

持ち帰り残業防止の取り組みとしては、業務効率化を図ること、コミュニケーションをしっかりとることなどが考えられます。

業務効率化やコミュニケーションの活性化に役立つツールとして、ビジネスチャットの「Chatwork」が効果的です。

Chatworkでは、ペーパーレス化を推進できるデータ共有機能や、仕事の見える化を実現できるタスク管理機能など業務効率に使える機能が備わっています。

また、絵文字を使ったフランクなコミュニケーションを取ることができ、社内のコミュニケーション活性化に最適です。

持ち帰り残業の防止にChatworkを活用してみてはいかがでしょうか。

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