サービス残業とは?発生原因や違法性、対策する方法を解説【社労士監修】

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働き方改革
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サービス残業とは?発生原因や違法性、対策する方法を解説【社労士監修】

目次

サービス残業に関する問題を放置しておくことは、働き方改革を進めるうえでも障壁となります。

また、サービス残業が横行している企業は大きなリスクを抱えているともいえるでしょう。

残業削減の実態が、サービス残業では解決とはいえません。

また、サービス残業の強要や違法性などの問題やサービス残業が発生してしまう原因について考えて、根本的な解決を目指す必要があります。

サービス残業とは

本来、従業員を労働させてもよい時間数には、労働基準法で制限されており、1日8時間、1週間で40時間(一部サービス業では44時間)を超える労働、いわゆる残業には、原則として、割増賃金の支払いが義務つけられています。

たとえば、時給1,000円のアルバイトを9時間労働させた場合、残業の1時間に対して、時給1,000円プラス割増賃金250円(1,000円×25%)で合計1,250円の支払いが必要となるわけです。

このように割増賃金の支払い義務がある残業に対して、賃金の不払い、不足があるものが「サービス残業」ということになります。

サービス残業が違法な理由

労働基準法で定められている時間を超えた労働に対しては、通常の賃金に加えて、割増賃金を支払うルールとなっており、これを条文化したものが、労働基準法第37条となります。

つまり、労働者に残業させたにも関わらず、残業代を支払っていないサービス残業の場合、第37条違反ということになり違法ということができます。

単純に義務を果たしていない、労働基準法に違反した行為であるといえるので、サービス残業をすることもさせることもリスクのある違法行為と考えることができるでしょう。

>【社労士監修】残業の定義に関する記事はこちら

サービス残業を強要するとどうなる?

そもそも、労働基準法で制限されている1日8時間、週40時間の労働は、「法定労働時間」といいます。

意外に思われる方も多いかもしれませんが、実は、労働基準法では「法定労働時間」を超える労働、いわゆる残業を原則禁止しています。

しかし、原則禁止となっているのに、なぜ一般的に残業があるのでしょうか。

それは、法定労働時間を超える残業を原則禁止としつつ、いくつかの「例外」を設けて残業が違法性を帯びないようなルールがあるからです。

この代表的な例外が、36協定と呼ばれるものです。

会社と従業員代表の間で締結されるこの「36協定」には、残業に関するルール(残業時間、休日労働、割増賃金など)が記載されています。

まず、この36協定が締結され、管轄の労働基準監督署に提出されていないと、たとえ割増賃金を支払う残業でも法違反となります。

そして、36協定が締結されているうえで、サービス残業させた場合は、労働基準法第37条違反ということになり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という重いペナルティが待っています。

さらに、未払いの残業代の支払いを行政から命じられる可能性もあります。

未払い残業代は「2年」遡って請求できるため、サービス残業の実態や、対象となる労働者の人数によっては、非常に大きな問題となる可能性があるでしょう。

>サービス残業がバレたら生じるリスクに関する記事はこちら

サービス残業が発生する原因

知らないうちに労働基準法に違反してしまわないように、サービス残業を発生させるケースについて知っておく必要があります。

どのような原因でサービス残業が発生してしまうのか見ていきましょう。

経営者がコスト増大を嫌う

経営者にとっては、人件費の増大は課題でもあります。

ひとつの仕事で得られる売上は決まっているのに、人件費がかさむと当然、利益が圧迫されてしまいますので、経営者としては割増賃金なんて支払っていたら、さらに利益がなくなってしまうと考えてしまうのも無理はないことかもしれません。

しかしながら、漫然とサービス残業の実態を放置しておくのも、やはりリスクとなります。

個人が手軽に情報収集できる時代にあっては、サービス残業=違法という認識はスタンダードであり、何かのきっかけで過去の不払い残業代の請求に発展する事例も珍しくはないでしょう。

割増賃金の対象か分かっていない

割増賃金の対象になる労働時間というものは、法律で定められていますが、この部分の理解が曖昧なまま、労務管理をおこなっている中小企業も多く、また労働者自身もよくわかっていないまま、サービス残業が恒常化しているケースも多々あります。

こういった職場においては、あからさまなサービス残業は、あまり多くはないけれど、小さなサービス残業が積もり積もっていることも多いです。

一方で、知らず知らずのうちに法定上、払う必要のない残業代を支払っているといった中小企業も少なからず存在します。

こういった現象は、通常賃金と割増賃金の対象の境界に対する理解不足が引き起こしているといえるでしょう。

>【社労士監修】割増賃金の引き上げに関する記事はこちら

そもそも労働時間を把握していない

会社には、労働者がいつ、どれだけの時間労働したのか、管理・把握する義務があります。

しかし、実際のところ、中小零細企業を中心に労務管理が二の次になっていて、労働者がどれくらい働いたのか把握していないというケースも見受けられます。

当然、残業を何時間していたということも、不明瞭であり、その結果なし崩し的にサービス残業が常態化してしまうことにつながります。

こういった職場は、会社が備付しておくことが法律上義務つけられている帳簿のひとつ「出勤簿」がないことがほとんどです。

みなし管理職をつくっている

みなし管理職とは、いわゆる「名ばかり管理職」と呼ばれるものです。

経営者や、それに近い立場で労働者を管理監督する立場の者(管理監督者)は、労働基準法が割増残業代を支払うべき「労働者」から除外されています。

本来、「管理監督者」は自分の業務のコントロール権は自身にあり、出退勤の時間に関しても裁量を持っていて、いつ出勤しても、退社しても自由なのだから、労働基準法による保護は、通常の労働者と比較してマイルドになっており、その一環で残業代の支払いも必須ではないものとされていました。

ところが、肩書は「店長」なのに、裁量を持たずに、ただ長時間労働を強いられているのにも関わらず、「店長」であることを理由に残業代を支払われない「名ばかり管理職」の問題が横行するようになりました。

こういった経緯を踏まえて、現在では管理監督者の定義については、肩書ではなく、勤務の実態で判断することが行政でも徹底されています。

>みなし管理職に関する記事はこちら

サービス残業をさせられた場合や見つけた場合はどうすべきか

サービス残業をさせられた労働者の立場としては、まず、記録や証拠を確保することが重要です。

後々、サービス残業を巡ってトラブルが起こった場合、労働者側の主張の根拠になるものの有無が大きく影響することになります。

手書きのメモや日記でも構いませんので、できるだけ具体的に「いつ、誰の指示で、何時から何時まで働いたのか」など記録や証拠を残しておくといいでしょう。

また、サービス残業をしている部下や、サービス残業をさせている場面を見かけた場合、労働者が自発的にしている場合と、そうでない場合がありますが、いずれにしても、是正する必要があります。

このような場合は、まずは労働者の直属の上長や人事労務に、状況を確認するべきでしょう。

上長にサービス残業があることを認識していたのか、なぜサービス残業をさせないといけないのか、そもそも残業自体減らす工夫の余地はないか、面談の上、是正の方向性を探り、ベターな是正方法を採るべきでしょう。

>自主的なサービス残業に関する記事はこちら

サービス残業をなくすための対策

「サービス残業なんて、当たり前」といった感覚で残業代の不払いを放置しておくと、会社にとって思わぬトラブルに発展することになります。

将来のトラブルの芽を摘んでおくためにも、サービス残業をなくす手段や対策について考えていく必要があるでしょう。

割増賃金のルールを把握する

割増賃金や時間外労働のルールは、それだけで、分厚い書籍が数多く出版されているほど、奥の深いテーマです。

もちろん、そんな分厚い書籍を読んでいただく必要はありませんが、最寄りの労働基準監督署などで入手できるパンフレットなどで、最低限の法定ルールを把握しておきましょう。

そもそも、ルールが分からなければ、割増賃金の対象なのか否かの判別もつかず、サービス残業の是正もかないません。

とくに、1週間の法定労働時間40時間の制限と、振替休日のルールは見落としている中小企業が非常に多いの注意が必要でしょう。

>【社労士監修】所定労働時間と法定労働時間の違いに関する記事はこちら

勤務時間の正確な把握をする

現状、労働者が1日あるいは1週間で、どれだけの時間働いているか、この記録がタイムカードや出勤簿などで客観的に分からなければ、残業時間の総量ひいては、支払うべき残業代も把握することができません。

最初は、手書きの出勤簿からでも構いませんので、正確な労働時間の把握を心がけましょう。

「出勤簿」と検索すればインターネットでひな形は容易に入手できますし、思い切ってタイムカードを導入してもよいでしょう。

勤怠管理は、アプリを利用して、各労働者のスマートフォンと連動させることで出退勤の記録を付ける手段も気軽に導入が可能となっており、データの集計も、タイムカードより簡易というメリットもあります。

注意すべき点として、いずれの手法を取り入れるにしても、あらかじめ共通のルールをしっかり定めておかないと、個々人がバラバラに記録や打刻をしてしまうと、後の取りまとめに一苦労することになります。

>出退勤管理システムを導入するメリットに関する記事はこちら

みなし残業代の導入

「みなし残業代」とは、あらかじめ一定時間数の残業代を固定手当として、賃金に組み込んでおく方式です。

たとえば、時給換算で1,000円の労働者に対して、30時間分のみなし残業代を賃金に組み込む場合、

時給1,000円×割増25%=1,250円(割増残業代)
割増残業代1,250円×30時間=37,500円

の計算となり、みなし残業代は37,500円です。

みなし残業代を定めた場合は、たとえ残業がなくても残業代を支払う義務が発生しますが、実際の残業が30時間を超える月がない職場にとっては、給与計算が簡素化され、労働者の給与も安定するというメリットがあります。

よって、みなし残業代は、月々の残業時間が平準化されている職場にマッチした方式と言えます。

みなし残業代を取り入れるにあたって、注意すべき点として、

  • あらかじめ、「何時間分の残業代が含まれているのか」労働契約書等で、明示しておくこと
  • 実際の残業が、みなし分を超えた場合、その差額は別途、残業代を支払う義務がある

上記2つが挙げられます。

みなし残業代を導入すれば、何時間でも残業させても大丈夫というわけではありません。

また、後者の差額の計算をするためにも、やはり残業時間の実態を把握する必要は残ります。

>【社労士監修】みなし残業の上限に関する記事はこちら

変形労働時間制の導入

通常、1日8時間、1週間40時間を超える労働には、割増賃金が発生しますが、ある期間を通じて、1週間の平均労働時間が40時間以内に収まっていれば、法定割増賃金の支払いを免れることができ、これを「変形労働時間制」と呼びます。

変形労働時間制には、種類がいくつかありますが、サービス残業問題解決に関しては、「1か月単位の変形労働時間制」と「1年単位の変形労働時間制」のふたつに関して理解頂ければ問題ないでしょう。

いずれも、期間を定めて、1週間の平均労働時間が40時間以内になるよう出勤カレンダーを作成します。

たとえば、1年単位の変形労働時間制の場合、

  • 1日の労働時間8時間
  • 繁忙期は週6日(48時間)
  • 閑散期は週5日勤務(40時間)
  • 1年間の所定時間が2,085時間以内になるように休日を設定(1年365日の場合)
    • ※365日÷7日=52.14週間、52.14週間×40時間=約2,085時間(たとえばGW、お盆休日、正月休みなどを多めに設定)

以上のようにカレンダーを設定した1年単位の変形労働時間制においては、繁忙期の週6日(48時間)については、40時間を超過する8時間については割増賃金の支払いを必要としません。

もちろん、あらかじめ定めた時間以上の労働には割増賃金の支払いの可能性が発生します。

変形労働時間制は、1か月あるいは1年間の中で繁閑が分かれている職場に有効な手段と言えます。

>変形労働時間制に関する記事はこちら

サービス残業が発生しない職場環境にしよう

働き方改革や、メディアで報道される労働問題を経て、サービス残業に対する世間のイメージはより厳しいものとなっています。

確かに、経営者目線で考えると、厳しい経営状況の中で利益を確保することが困難な中、生産性に乏しい従業員も存在する状況で、正規の割増賃金を支払うことに違和感があるといった意見も一理あるかもしれません。

しかし、労働者を雇用して経済活動をおこなう以上、課せられた義務は真っ当する以外に選択肢はありません。

取り上げた解決方法は、忙しい日々を送る経営者にとってはゆっくり検討することも難しいかもしれません。

そういった方々は、ぜひ、専門家や社会保険労務士にお問い合わせるといいでしょう。

また、社会保険労務士をはじめとして士業の方たちへの相談や連携もビジネスチャット「Chatwork」を活用すると円滑に進むので、ぜひご検討ください。

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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)

2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長さん向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営をサポートしています。

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