【社労士監修】育児介護休業法とは?改正のポイントや目的を解説
目次
育児介護休業法は、労働者が育児や介護をしながら仕事が継続できるよう、さまざまな制度が定められた法律です。
この法律は、育児や介護を理由とした休業を認め、労働者の仕事と生活の両立を支援する役割を果たしています。
本記事では、育児介護休業法の改正のポイントやその目的を詳しく解説します。
育児介護休業法を適切に理解し、労働者が仕事を継続できる環境を整えましょう。
育児介護休業法とは
育児介護休業法は、労働者が子どもの育児や家族の介護のために、一定期間の休業を取得できるように制定された法律です。
育児・介護を理由に労働者が離職することなく、仕事と生活を両立しながら働けるよう支援する目的で創設されました。
また、育児介護休業法には、復職後の労働条件の保護や、職場での差別や不利益な扱いを防止するための措置も含まれており、労働者が子どもの養育や家族の介護に専念できる環境を保護しています。
育児介護休業法で定められている代表制度
育児休業介護法の代表的な制度として、以下の3つがあげられます。
- 育児休業制度
- 介護休業制度
- 子の看護休暇制度
それぞれどのような制度なのか、詳しくみていきましょう。
育児休業制度
育児休業制度とは、原則1歳未満の子どもの養育を目的とした休業制度です。
男女問わずに取得ができ、労働者の申し出があった場合には、企業は拒否することはできません。
なお、一定に条件を満たす労働者については、子どもが2歳になるまで取得ができ、夫婦交代で取得することも可能です。
また、育児休業から復帰した労働者の希望があれば、子どもが3歳に達するまでは、短時間勤務(1日原則6時間)を適用するよう企業に義務付けています。[※1]
介護休業制度
介護休業制度は、労働者が要介護状態の家族を介護するために一定期間の休業を取得できる制度です。
労働者が家族の介護に専念するために必要な時間を確保し、仕事と介護の両立を支援することを目的としています。
介護休業は、要介護状態の家族が介護を必要とする場合に取得ができる制度で、労働者から申し出があった場合には、必ず取得させなければなりません。[※2]
>【社労士監修】介護休業と介護休暇の違いに関する記事はこちら
子の看護休暇制度
子の看護休暇とは、子どもが病気やケガをした際に、有給休暇とは別に取得できる休暇制度のことで、育児・介護休業法で設置が義務付けられている制度です。
休暇は、小学校就学前までの子どもが1人につき5日、2人以上で10日分の取得が認められています。
病気やケガ以外にも、予防接種や健康診断など病院の付き添いでも取得することが可能です。[※3]
育児介護休業法の改正の流れ
育児介護休業法は、共働きの増加や働き方の多様化などの環境変化にあわせて、頻繁に改正がおこなわれています。
ここからは、以下の4回の改正内容を、時系列で詳しく解説します。
2017年1月の改正
2017年1月の主な改正内容は以下のとおりです。
- 介護休業の分割取得が、通算93日まで3回の上限に変更
- 子の看護休暇と介護休暇が半日単位で取得可能に
- 介護のための所定労働時間短縮措置が、3年で2回以上利用が可能に
- 有期契約労働者の取得要件が緩和
- マタハラ・パタハラなどの防止措置の新設
2017年1月の改正では、有期契約労働者が、育児休業・介護休業を取得しやすくなるように改正がおこなわれ、マタニティハラスメント(マタハラ)・パタニティハラスメント(パタハラ)などのハラスメント防止措置が新設されました。[※4]
>【社労士監修】マタニティハラスメントとは?に関する記事はこちら
2017年10月の改正
平成29年10月1日の主な改正内容は以下のとおりです。
- 最長2歳まで育児休業の再延長が可能に
- 個別の育児休業に関する制度説明が努力義務化
- 育児を目的とした休暇制度の創設を努力義務化
2017年10月の改正以前は、子どもが1歳に達するまで保育所に入れないなどの理由があれば、1歳6か月に達するまで育児休業を延長できました。
この期間が、2017年10月の改正によって、子どもが1歳6月のその時点においても保育所に入れないなどの理由がある場合に、再度申請をすれば、育児休業を最長2歳まで再延長が可能になりました。
また、育児制度の説明や育児を目的とした休暇制度の創設が努力義務とされました。[※5]
2021年1月の改正
2021年1月1日からは、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得することができるようになりました。
この改正により、所定労働時間が4時間以下の労働者も子の看護休暇や介護休暇を取得できるようになりました。[※6]
2021年6月の改正
2021年6月の主な改正内容は以下のとおりです。
施行時期 | 改正内容 |
---|---|
2022年4月1日 | 雇用環境整備、個別の周知と意向確認の義務付け |
2022年4月1日 | 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 |
2022年10月1日 | 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設 |
2022年10月1日 | 育児休業の分割取得 |
2023年4月1日 | 育児休業取得率の公表の義務付け |
2021年6月の改正は、主に男性の育児休業取得促進のための改正となっており、2022年4月から順次施行が開始されています。[※7]
22年以降の育児介護休業法の段階的な改正
育児介護休業法は、2022年以降、大幅な改正がおこなわれています。
ここでは、2022年の改正内容について、順を追って解説します。
2022年4月以降の改正
2022年4月からは、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が義務付けられました。
企業は、以下の内容について、面談や書面交付、FAX、電子メール等のいずれかの方法で、意向確認をおこなわなければいけません。
- 育児休業・産後パパ育休に関する制度
- 育児休業・産後パパ育休の申し出先
- 育児休業給付に関すること
- 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
また、有期雇用労働者の、育児・介護休業取得要件が緩和され、「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が撤廃されました。
これにより、有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件は、以下のように変更されます。
育児休業 | 子どもが1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないこと |
---|---|
介護休業 | 介護休業開始予定日から93日経過日から、6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでないこと |
なお、育児休業については、申出があった時点で、労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。
そのため、企業側が更新しない旨の明示をしていなければ、「労働契約の更新がないことが確実」とは判断できません。
2022年10月以降の改正
2022年10月以降の改正内容は以下のとおりです。
- 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
- 育児休業の分割取得
パパ休暇廃止の代替制度として、産後パパ育休が創設されました。
産後パパ育休では、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得が可能で、労使協定の締結があれば、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能となります。
また、育児休業も分割して2回まで取得可能となり、より柔軟に取得ができるようになりました。
2023年4月以降の改正
2023年4月以降の改正では、「育児休業の取得状況の公表」が、企業に義務付けられました。
常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、育児休業等の取得の状況を、年1回公表することが義務付けられるようになりました。
具体的には、「育児休業等の取得割合」または、「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」いずれかをインターネットなど適切な方法で、だれでも閲覧できるよう公表する必要があります。
育児介護休業法の改正に向けた取り組み
育児介護休業法の改正に伴い、企業は以下の事項に取り組む必要があります。
- 就業規則等の整備
- 労使協定への申請
- 制度の社内周知・啓発
- 就業環境の整備
- ハラスメント対策
企業が取り組むべき内容について、それぞれ詳しく解説します。
就業規則等の整備
育児介護休業法の改正に伴い、就業規則や社内規定の整備が必要になります。
たとえば、育児休業の取得要件として「雇用された期間が1年以上」といった規定を設けていた場合は、この要件を削除しなければなりません。
また、2022年10月に創設された「産後パパ育休」の要件や申請方法、対象者などを整備するとともに、廃止されたパパ休暇の要件を削除する必要もあります。
このように、改正内容にあわせて就業規則などを整備するとともに、従業員に周知する必要がでてきます。
労使協定への申請
育児介護休業法では、労使協定の締結により、一定の制限や緩和が認められています。
たとえば、育児・介護休業の対象者の制限拡大や産後パパ育休の就労などには、労使協定が必要になります。
自社の状況を鑑みて、必要に応じて労使協定を締結し、労働環境を整えていきましょう。
制度の社内周知・啓発
育児介護休業法の改正に伴い、就業規則を変更した場合は、社内周知が必要になります。
掲示板や社内ポータルサイト、社内報など、従業員が閲覧できる場所に開示するとともに、制度活用に向けて啓発を実施しましょう。
また、育児休業は、女性だけではなく男性も取得しやすいよう、制度の目的を周知することが大切です。
就業環境の整備
育児休業や介護休業の取得を促進するには、就業環境の整備が必要です。
企業側は、休業や休暇がとりづらい環境になっていないか確認するとともに、休業を取得しやすい職場環境を整えるようにしましょう。
たとえば、管理職など、組織を管理する立場の従業員を中心に、研修などを通じて育児休業を推進する方法も効果的です。
一方で、休業をしていない従業員に業務負担が偏らないよう、業務量や担当の見直しをすることも、育児介護制度を運用する上では重要なポイントとなります。
ハラスメント対策
「マタニティハラスメント(マタハラ)」や「パタニティハラスメント(パタハラ)」など、妊娠・出産・育児に関する職場の嫌がらせに対する防止措置が企業に義務付けられています。
たとえば、ハラスメント研修を通じて、性別による固定概念の意識改革をおこなったり、相談窓口を設置したりなど、ハラスメント対策を実施しましょう。
ハラスメントに対して企業が適切に措置を実施し、快適な職場環境を構築することで、育児・介護休業の取得を促進できるでしょう。[※8]
制度の周知・啓発に「Chatwork」
育児介護休業法は、育児や介護をする労働者が仕事と生活の両立をし、仕事が継続できるよう支援する目的で創設された法律です。
育児休業制度や介護休業制度、子の看護休暇制度などが、育児介護休業法の代表的な制度として定められています。
年々、段階的に改正がされており、就業規則の整備や制度の社内周知・啓発、就業環境の整備、ハラスメント対策など、改正に伴い、企業は多くの取り組みを実施する必要があります。
このような取り組みを円滑にスピーディにおこなう方法として、ビジネスチャットの活用がおすすめです。
ビジネスチャット「Chatwork」は、オンライン上で簡単にコミュニケーションがとれるチャットツールで、複数人や全社員などの単位などでグループチャットを作成することで、簡単に情報共有をおこなうことができます。
「Chatwork」は、情報共有のツールとしてだけでなく、たとえば、育児・介護の相談やハラスメントの相談、制度の周知など、用途にあわせて柔軟に活用することが可能です。
また、「Chatwork」は、高いセキュリティ水準を満たしているため、機密性が高い会話やプライバシー保護が必要な内容なども、安心しておこなうことができます。
また、文章だけではなくファイルの共有ができるため、書類のやり取りもスムーズに行えるでしょう。
円滑な情報共有やコミュニケーションの活性化だけじゃなく、制度の周知・啓発や、相談窓口としても活用できる「Chatwork」の導入を、ぜひご検討ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:育児休業制度とは|厚生労働省「育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト」
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/system/
[※2]出典:介護休業について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/closed/index.html
[※3]出典:子の看護休暇制度|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_08.pdf
[※4]出典:育児・介護休業法が改正されます 平成29年1月1日施行|厚生労働省 山形労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/var/rev0/0113/1434/201671594911.pdf
[※5]出典:福井版H29.10施行改正育児・介護休業法改正リーフレット|厚生労働省 福井労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/fukui-roudoukyoku/var/rev0/0114/0083/2017613133436.pdf
[※6]出典:⼦の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf
[※7]出典:育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf
[※8]出典:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html?_fsi=s1GdBGVf
※本記事は、2023年6月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。