【休み方改革】とは?メリット・デメリットや、具体的な方法を事例付きで解説

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働き方改革
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【休み方改革】とは?メリット・デメリットや、具体的な方法を事例付きで解説

目次

働きやすさを目的とした「働き方改革」が、さまざまな企業で推進されるようになって久しいですが、近年、休みやすい職場づくりを目的とした「休み方改革」という取り組みが注目されはじめています。

休み方改革とは、働く人がより健康で効率的に働けるよう、効果的な休暇取得を促進する制度や取り組みをいいます。

現代社会において、行政はガイドラインの作成や啓発活動をおこない、企業は働き方を見直し休暇取得を促す制度を導入する対応が求められています。

休み方改革の推進は、企業と従業員の双方によい影響があるため、メリットや成功事例を確認したうえで導入を検討するとよいでしょう。

休み方改革とは

「休み方改革」とは、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進など、従業員が休みやすい職場環境をつくるために、行政と民間企業が一体となっておこなっている取り組みをいいます。

休み方改革では、育児・介護と仕事との両立や、長時間労働の解消など、時代の流れに伴って企業に求められている変化への対応を目指しています。

導入を検討するにあたっては、働き方改革との違いや注意点、具体的な推進方法など、休み方改革に関する理解を深めておきましょう。

休み方改革が推進されている理由

企業が休み方改革を推進する目的は、働く人々の健康や生活の質の向上です。

長時間労働や有給休暇の取得不足が、労働者の健康や企業の生産性に悪影響を及ぼすため、適切な休み方について、行政が介入し、制度として導入するようになりました。

休み方改革が推進されている理由について、詳しく解説します。

長時間労働の影響

日本は、欧州諸国と比較して、労働時間が長い傾向にあります。

厚生労働省の資料によると、日本の1年の平均労働時間は1729時間で、ドイツの1371時間、フランスの1473時間と比較すると、長いことがわかります。

また、長時間労働者の内訳では、日本で週に40~48時間働いている割合は37.3%、49時間以上働いている割合は21.3%で、ドイツやフランスと比較すると、49時間以上働いている割合が、とくに高いことがわかります。

【長時間労働者の割合】(週当たりの労働時間)[注1]

40時間未満 40~48時間 49時間以上
日本 41.5% 37.3% 21.3%
フランス 72.9% 16.7% 10.4%
ドイツ 55.1% 34.8% 10.1%

また、週60時間以上の長時間労働をおこなう労働者の割合は、2019年に374万人、2020年には292万人、2021年において290万人と、年々減少傾向にはありますが、「過労死等の防止のための対策に関する大綱 」で掲げられた目標は達成できていません。[注2]

長時間労働は、過労死のリスクや、精神障害などの病気を引き起こす恐れがあるため、働き方改革や休み方改革によって、削減する対応が求められています。

>長時間労働が引き起こす問題に関する記事はこちら

年次有給休暇の取得率の影響

2021年における日本の年次有給休暇の取得率は60%で、政府が目標としている70%には到達できていません。

日本の有給取得率は、年々改善されてきていますが、有給取得率が80%を超える国が多い世界と比較すると、未だに低い状況です。[注3]

日本 60%
フランス 83%
ドイツ 93%
イギリス 84%
カナダ 93%

休みたいときに有給がとれない職場環境は、ワークライフバランスが実現できず、従業員の心身に負担となる恐れがあるため、休みやすい環境の整備が重要とされています。

>【社労士監修】年次有給休暇の義務化とは?に関する記事はこちら

休み方改革と働き方改革の違い

「働き方改革」とは、少子高齢化にともなう労働人口の減少に対応するために、働きやすさを整え、労働市場の外にいる女性や高齢者の活躍を促す取り組みです。

一方で、「休み方改革」は、有給休暇の取得を促進することで、長時間労働の削減などを目指しているため、働き方改革とは、方向性が異なる取り組みです。

休み方改革は、長時間労働が美徳と考える価値観の変革や、休みづらい職場環境の改善など、日本人の仕事への意識を変化させるための取り組みともいえるでしょう。

>【社労士監修】働き方改革とは?に関する記事はこちら

日本企業で休み方改革が進まない理由

休み方改革は、日本の有給休暇の取得率がよかったり、長時間労働がなかったりすれば、そもそもうまれなかった取り組みといえるでしょう。

休み方改革の実施に至った背景には、以下のような、日本人の仕事に対する価値観や考え方があります。

  • 有給取得がしづらい職場体質
  • 「長時間労働」を美徳と考える文化
  • 有給制度が整備されていない

日本企業で休み方改革が実施されるようになった背景を解説します。

有給取得がしづらい職場体質

日本人は、世界各国と比較して、有給休暇の取得に罪悪感を感じやすいといわれています。

また、有給休暇の取得により、他者へ迷惑がかかると感じたり、のちに多忙になる事態を避けたいと考えたりする傾向があり、自発的な有給休暇取得の妨げになっています。

上司が休暇をとっていない状況も、部下が有給休暇を取得しづらいと感じる要因としてあげられるでしょう。

「長時間労働」を美徳と考える文化

日本では長時間労働を美徳と考える文化が一部でまだ根づいているため、長時間労働に対してマイナスなイメージを持っていないない人もいるでしょう。

内閣府の調査によると、「上司が残業している人をどう評価するかのイメージ」で、「頑張っている人」「責任感が強い人」「仕事ができる人」などのポジティブな評価をされるイメージがあると回答する人が、残業時間が長くなるにつれて増加する結果となりました。[注4]

「上司が残業している人をポジティブに評価する」というイメージを抱く従業員が多いため、長時間労働の大幅な削減までには至っていないと考えられます。

有給制度が整備されていない

企業によっては、有給休暇の制度が整備されていない点も、休み方改革が進まない理由のひとつとしてあげられるでしょう。

たとえば、従業員も企業も有給休暇の日数を把握できていない、計画的に有給休暇を取得できる制度が整っていない、などの理由が考えられます。

有給休暇の取得に対する意識が低いため、取得率が増加しないという可能性もあります。

休暇の重要性とは

労働者の休暇は、健康的な働き方や企業の持続的な成長に欠かせない要素です。

適切な休暇の取得は従業員のリフレッシュを促し、モチベーションや生産性の向上に繋がると同時に、企業にとっても効率的な業務運営を可能にします。

休暇が労働者や企業に与える、よい影響について解説します。

企業へ与える好影響

女性の社会進出や高齢化による介護の増加などで、さまざまな事情を抱えた人々がプライベートと仕事を両立させようとしています。

適切な休暇制度により、従業員がワークライフバランスを維持して働けるようになると、従業員満足度があがったり、限られた業務時間のなかで能力を発揮し、事業の生産性が高まったりする可能性があります。

>ワークライフバランス実現に企業ができる取り組みに関する記事はこちら

従業員へ与える好影響

休みの取得がもたらすよい影響としては、心身をリフレッシュでき心機一転して業務にのぞめるようになるため、従業員の集中力や生産性が増すことが考えられます。

また、ワークライフバランスを保てるため、ストレスを軽減でき、メンタルヘルスの不調などに陥る危険性も低下するでしょう。

従業員は、仕事以外での生きがいやコミュニティを見つけることで、業務に活かせる知識を身につけたり、人生をより充実させられたりする可能性もあります。

休み方改革のメリット

休み方改革の実施は、従業員にとってのメリットはイメージしやすいですが、企業にとってのメリットには、どんなものがあるのでしょうか。

ここからは、企業が得られるメリットについて紹介します。

  • 離職率の低下
  • 長時間労働の改善
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • 生産性の向上

休み方改革により、従業員が働きやすく休みやすい環境となり長く働く人材が増えるため、従業員だけでなく企業にとってもメリットがさまざまあります。

離職率の低下

休み方改革を導入すると、従業員がワークライフバランスを保てるため働きやすさを感じ、離職率が低下する可能性があります。

離職率が低下すると、人材不足に陥っている現代において、新たな人材を採用する手間やコストがかからずにすむでしょう。

長時間労働の改善

休み方改革により、長時間労働を改善できる可能性があります。

適度な休暇や、適切な労働時間の重要性が理解できれば、長時間労働を改善しようという意識が従業員や企業に芽生えて、全社的に長時間労働削減への活動ができると考えられます。

従業員エンゲージメントの向上

有給休暇をためらわずに取得できる環境は、従業員エンゲージメントの向上につながるでしょう。

休みたいときに休める職場環境は、従業員の心身の充実度が高まったり、企業に対しての満足度が向上したりすると考えられます。

>従業員エンゲージメントに関する記事はこちら

生産性の向上

休み方改革によって、仕事と休みというメリハリのついた日々を送れるようになった従業員は、ストレスや疲労から解放されて仕事の生産性が向上する可能性があります。

休暇の取得でリフレッシュできたり、休暇中に新たな価値観を得たりすることで、事業に活かせるアイデアが創出されるケースもあるでしょう。

休み方改革の注意点

休み方改革を導入する際には、従業員の業務の内容や仕事の進め方などを見直す取り組みが重要です。

現在の業務を見直さないまま従業員に自由な有給休暇取得を認めた場合、休んだ従業員の同僚や上司に多大な負荷がかかったり、やっぱり忙しいからと従業員の休暇取得の申し出を受け入れられなかったりする事態になりかねません。

そのため、まずは現在の職場環境を見直し、休み方改革を導入しても問題がないように整備することから始めましょう。

休み方改革の具体的な方法

休み方改革と一口にいっても、具体的にはさまざまな休み方があります。

子どもがいる家庭に合わせた内容や、1日の休暇ではなく15時で早退する制度など、従業員の傾向にあわせた休み方を検討するとよいでしょう。

たとえば、以下のような休み方改革の制度が考えられます。

  • キッズウィーク
  • 仕事休もっ化計画
  • プラスワン休暇
  • プレミアムフライデー

休み方改革の具体的な方法をみて、実際に取り入れられそうな制度があるか、検討してみてください。

キッズウィーク

キッズウィークとは、地域ごとに学校の夏休みなどの長期休業日を分散させて、大人と子どもが一緒にまとまった長期休暇をとれるようにする取り組みです。

厚生労働省は、子供の学校休業日や地域のイベントなどにあわせて、従業員が有給休暇をとれるように事業主に配慮を求めています。

仕事休もっ化計画

仕事休もっ化計画とは、厚生労働省がおこなっている、年次有給休暇の取得促進を目指した周知・広報活動です。

仕事をチームで遂行して休みやすい職場環境をつくったり、夏季休暇と有給休暇をあわせて連続休暇としたりする取り組みを推進しています。

プラスワン休暇

プラスワン休暇とは、土日や夏季休暇、祝日に休みを一日プラスする休暇制度です。

たとえば、土日にプラスワンして三連休にしたり、三日ある夏季休暇とあわせて四連休にしたりなど、計画的な年次有給休暇の取得を推進しています。

プレミアムフライデー

プレミアムフライデーとは、月末の金曜日に仕事を15時に終わらせて、プライベートを充実させようとする取り組みです。

プレミアムフライデーは、働く人のワークライフバランスを向上させるだけでなく、消費の活性化も目的としておこなわれています。

休み方改革の企業事例

休み方改革を導入している企業事例を紹介します。

実際に導入してみて、制度を活用できる従業員がいるか、休む人が増えて業務に遅延が発生しないかなどの不安要素を抱えている企業も多くあるでしょう。

休み方改革を導入したいと考えている企業は、ぜひ参考にしてみてください。

業務効率化によって年間休日日数が10日増えた企業

卸売業、小売業の企業は、残業が多い状況や、年次有給休暇を取得しづらいという課題を感じていました。

企業は、顧客の生産性向上を支援する事業を営んでいる立場として、自社が働き方改革に取り組むことの大切さを感じていたため、課題解決を目指してRPAを導入し、年間で約1500時間もの人間の労働時間の削減に成功しました。

また、業務効率化や有給休暇取得促進をおこないながら生産性を維持できたため、年間所定休日を110日から120日に増やしました。

全社的に、「残業しないことが当たり前」という考え方が浸透し、残業時間の減少という成果も出ています。

>RPAの導入に関する記事はこちら

減少した時間外勤務手当分を社員に還元した企業

情報通信業の企業は、長時間労働が常態化しやすい期間と閑散期の差が大きい事業形態で、社員の長時間労働解消を目指すために働き方改革と休み方改革に取り組みました。

具体的には、繁忙期に土日祝日も出勤した場合、閑散期には平日の労働日を休日に変更する変形労働時間制を導入したり、全社員の残業時間の合計が前年を下回った場合、減少した分の時間外勤務手当分を社員に還元したりしました。

変形労働時間制の導入では、従業員の働き方にメリハリができたため、従業員1人の1か月あたりの残業時間が約4時間減少するという成果がありました。

また、時間外勤務手当の還元は、時間外労働の削減のメリットを社員に感じてもらえたため、社員の満足度が向上し、低い離職率を維持できています。

休み方改革を成功させるポイント

休み方改革を導入すると、従業員のエンゲージメントや生産性が向上するというメリットがありますが、むやみに有給休暇取得を促進すればよいというわけではない点に、注意が必要です。

  • 社内の現状を確認する
  • 目標を明確に立てる
  • 部署ごとに目標を立てる
  • 休みやすい環境をつくる
  • 休み方改革の目的を周知する

また、せっかく導入したのに誰も利用しなかった、という結果にしないためにも休み方改革を成功させるポイントを知っておきましょう。

社内の現状を確認する

まずは、部署ごとの働き方や休み方などについて、社内の現状を確認します。

部署によって労働日と休日が違ったり、繁忙期と閑散期に差があったりする可能性があるため、有効的な休み方を導入できるように現状把握に努めましょう。

目標を明確に立てる

社内の現状を把握できたら、休み方改革の目標を明確に立てます。

目標を明確に立てることによって、目指すべきゴールがわかるため、具体的な取り組み方も検討しやすくなるでしょう。

残業時間を10時間減らすなど、具体的に数値で目標を立てると、進捗の把握もしやすくなります。

部署ごとに目標を立てる

休み方改革によって達成したい目標は、部署ごとに立てましょう。

部署によって、労働日と休日に違いがある可能性があるため、従業員の業務を妨げず、負担のない休み方改革の実施を目指し、部署ごとの目標設定が望ましいです。

目標を立てる際には、モチベーションを維持したまま取り組んでいけるように、実現可能なゴールを設定しましょう。

休みやすい環境をつくる

従業員が休みやすいように、上司が率先して有給休暇を取得したり、有給休暇の取得率が低いと評価に影響が出るという評価制度を設けたりする取り組みも効果的です。

休みやすい環境の構築は、従業員の有給休暇取得に対する罪悪感をなくすことにつながるでしょう。

休み方改革の目的を周知する

休み方改革を導入する際には、目的を全従業員に周知することが大切です。

従業員が、休み方改革の目的や休暇取得の重要性を理解できた場合、積極的に有給休暇を取得するようになったり、上司が部下に休みを促したりして、全社的に休み方を改革していこうという流れになると考えられます。

社内コミュニケーション活性化に「Chatwork」

休み方改革とは、長時間労働を改善したり、従業員のワークライフバランスを向上させたりするために、有給休暇取得を促進する取り組みです。

休み方改革を推し進めるために重要な取り組みのひとつとして、前述した社内周知や社内における労働時間や休暇取得の現状把握が挙げられます。

とくに社内周知においては、スムーズな情報共有がポイントとなるため、社内コミュニケーションを円滑にする、ビジネスチャット「Chatwork」の活用をおすすめします。

ビジネスチャット「Chatwork」は、グループチャットが可能なため、部署ごとに時間外労働の時間や有給休暇取得率などを情報共有して、従業員の意識を高められます。

>Chatworkのグループチャットに関する記事はこちら

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[注1]出典:厚生労働省「我が国における時間外労働等の現状」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000136357.pdf
[注2]出典:厚生労働省「働き方・休み方改革の取組事例集」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category1/0101012.pdf
[注3]出典:Expedia JP Stories「エクスペディア 世界16地域 有給休暇・国際比較 2021発表!」
https://www.expedia.co.jp/stories/vacationdeprivation2021-1/
[注4]出典:内閣府「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」結果速報について 」
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/research/wlb_h2511/follow-up.pdf

※本記事は、2024年9月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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