イニシエーションとは?ビジネスでの意味や定義、重要性を解説

目次
イニシエーションとは「通過儀礼」を意味する言葉で、ビジネスシーンや医療、宗教などの幅広い分野で使われています。
イニシエーションを疎かにすると、企業に悪影響が及ぶ恐れがあるため、企業は重要性を理解して、取り組む必要があります。
ビジネスにおけるイニシエーションの意味や具体例、重要視される背景などを解説します。
イニシエーションの意味・定義とは
イニシエーションとは、「通過儀礼」を意味する言葉で、人がある段階から次の段階に向かう際や、ほかの段階にいたる際に通過しなくてはならない「儀礼」や「儀式」を指します。
もともとは宗教の信徒になる際の儀礼を指す言葉でしたが、現在ではビジネスや医療など、さまざまなシーンで使われています。
分野別のイニシエーションの意味や、ビジネスシーンで使われるイニシエーションの意味について、詳しく確認していきましょう。
分野別のイニシエーションの意味
現代社会において、イニシエーションという言葉は宗教だけでなく、ビジネスシーンや医療業界でも使われています。
分野別のイニシエーションの意味は、下記の表のとおりです。
分野 | 意味 | 具体例 |
---|---|---|
宗教 | 信徒になるための儀礼や儀式 | キリスト教における洗礼 |
ビジネス | 新しい組織・環境に適応するための儀式 | 入社式 |
医療 | 発がんの初期ステップ、治療の開始 | 薬の投与開始 |
社会学 | 成人として認められ大人社会の一員になること | 成人式 |
心理学 | 心理的な痛みを乗り越えて成熟に向かうこと | 失恋 |
ビジネス用語としてのイニシエーションの意味
ビジネスシーンで使われるイニシエーションとして一般的なのは、「グループイニシエーション」と「タスクイニシエーション」です。
2種類のイニシエーションの意味を詳しく解説します。
グループイニシエーション
「グループイニシエーション」とは、新卒入社者や中途入社者などの新入社員が、新たな組織や環境の一員になるために、協調性や忠誠心を示して認められる過程を指します。
たとえば、新入社員研修やオリエンテーションなどがグループイニシエーションの例として挙げられます。
グループイニシエーションをおこなうことで、新入社員が職場に適応しやすくなり、早期離職に陥る状況を回避できたり、仕事に対するモチベーションを高めたりできます。
タスクイニシエーション
「タスクイニシエーション」とは、新卒入社者や中途入社者などの新入社員が新たに加入した組織において、業務を遂行し、組織に貢献していくことによって、既存社員から認められる過程を指します。
タスクイニシエーションを成功させるためには、適材適所への配置や適切な教育係の任命、先輩や上司からのサポートが求められます。
また、タスクイニシエーションの成功には、グループイニシエーションの実施も欠かせません。
信頼関係を構築しておくことで、新入社員が孤立せずに、相談や質問をしやすい環境で業務を遂行することができます。
新入社員が心理的安全性を保って働くことができるように、グループイニシエーションで信頼関係の構築を目指しましょう。
イニシエーションが注目されている理由
イニシエーションが注目されている理由として、終身雇用制度が崩壊しつつあることが挙げられます。
近年、働き方や働き方に対する価値観が多様化したことによって、キャリアアップやキャリアチェンジ、柔軟な働き方などを求める人が多くなっています。
また、働き方に対する価値観が変化したことで、転職に対するハードルが低くなっており、ひとつの企業に勤め続けるという終身雇用の価値観が薄れつつあります。
終身雇用制度にこだわらない価値観を持った人が増加すると、企業は入社時研修やオリエンテーションアドのイニシエーションの機会を従来より多く持つこととなります。
しかし、このイニシエーションがうまくいかないと、新入社員は職場にうまくなじむことができず、本来の能力を発揮できなくなってしまう恐れもあります。
人材の流動性が高まっている状況であるからこそ、企業側にとっても、ビジネスパーソン一人ひとりにとっても、イニシエーションの重要性が高まっているのです。
ビジネスでのイニシエーションの具体例
ビジネスにおけるイニシエーションの具体例を紹介します。
イニシエーションは、新しい組織・環境に適応するための儀式を指すため、新入社員だけでなく、部署異動や出向の対象となる既存社員にも機会があります。
就職・転職
新しい企業や組織の一員になるには、就職や転職をする必要があります。
求職者にとって大きなイニシエーションとなる就職や転職を成功させるには、企業側が新たな人材を受け入れる体制を整えたり、孤独や不安を感じさせないように適度なサポートをしたりする必要があります。
歓迎会や研修の機会を設け、社内のさまざまな人と関係性をもてるようにすると、信頼関係の構築ができ、ポジティブに業務に取り組めるようになるでしょう。
部署異動・配置転換
部署異動や配置転換は、所属する企業は変わらなくても、一緒に働く人やオフィス、業務内容などが変わるため、イニシエーションの機会といえます。
イニシエーションを乗り越えるためには、既存社員が協力し、業務を教える、引き継ぐなどで、異動してきた人材が活躍できるようにサポートする必要があります。
また、異動する従業員本人も、業務が円滑に進むように、自主的にキャッチアップをしたり、積極的に周囲とコミュニケーションをとったりなどの姿勢が求められます。
出向
グループ企業内での出向などは、出向者にとって働く環境や人間関係が大幅に変わるため、大きなイニシエーションといえます。
仕事の進め方や社風なども大きく異なるケースがあるため、出向先は、出向者がスムーズに業務をおこなえるように、業務や企業に関するミーティングをするなどの取り組みが求められます。
出向する本人も、いち早く環境に適応し、業務を円滑に進められるような姿勢が必要です。
ビジネスでのイニシエーションの重要性・目的
ビジネスシーンにおいてイニシエーションを重要視すべき理由は3つあります。
- リアリティショックを防止するため
- 異動や配置転換をスムーズに実施するため
- 信頼関係の構築をスムーズに進めるため
効果的なイニシエーションを実施するために、イニシエーションの重要性を確認していきましょう。
リアリティショックを防止するため
ビジネスでイニシエーションが重要とされる理由のひとつに、リアリティショックの防止が挙げられます。
リアリティショックとは、理想と現実のギャップによって、心理的ダメージを負うことです。
たとえば、入社や配置転換の際に、理想と現実が異なった場合、リアリティショックが発生し、早期離職のリスクが高まったり、従業員エンゲージメントが低下したりする恐れがあります。
このようなリアリティショックを防ぐためには、スムーズに職場に馴染み、業務のスタートダッシュをサポートするイニシエーションが欠かせません。
入社時の研修やオリエンテーションなどのグループイニシエーションを工夫し、リアリティショックの緩和を目指しましょう。
異動や配置転換をスムーズに実施するため
イニシエーションは、異動や配置転換による新たな業務や人間関係を、スムーズに実施したり作ったりするためにも重要です。
新たな環境に早期に馴染むことができれば、円滑なコミュニケーションが実現できるようになり、生産性を落とさずに、スムーズに業務に取り組むことができるでしょう。
信頼関係の構築をスムーズに進めるため
ビジネスにおけるイニシエーションには、信頼関係の構築をスムーズにするという効果も期待されます。
新しい環境や人間関係のなかでは、相互理解が深まってなく、業務進行やコミュニケーションがぎこちなくなりがちです。
そのため、一緒に働く人の人となりや組織の雰囲気、また、業務内容の理解を促進するために、イニシエーションが実施されます。
イニシエーションを実施することで、お互いへの理解が深まり、コミュニケーションの活性化や協力体制の構築が期待できるでしょう。
リアリティショックがもたらす弊害
リアリティショックとは、前述したとおり、理想と現実のギャップによって、心理的ダメージを負うことです。
たとえば、入社した会社が期待通りではなかったり、昇進したのに求めていた業務ができなかったりなどのケースがビジネスシーンにおけるリアリティショックの例として挙げられます。
リアリティショックが起こると、従業員から企業に対する愛着がなくなったり、モチベーションが下がったりして、意欲的な業務や協調性が見られなくなる恐れがあります。
また、リアリティショックは心理的な衰弱状態も引き起こすため、適切に対処しないと、うつ病などの精神的な病気を発症したり、早期離職となったりするケースも想定されます。
企業が持続的に成長するためには、企業に属する従業員が働きがいを持って、生き生きと働ける環境の整備が必要不可欠です。
イニシエーションを成功させるためにできることを確認していきましょう。
イニシエーションを整備する方法
最後にイニシエーションを成功させるために企業ができる取り組みを3つ紹介します。
- フォローアップ制度の導入・運用
- 風通しの良い職場作り
- 社内コミュニケーションの活性化
今回紹介する3つの取り組みは、イニシエーションの対象となる従業員以外にも効果的な取り組みです。
企業に属する従業員全員が働きがいを持って働けるように、職場環境の整備に取り組みましょう。
フォローアップ制度の導入・運用
新入社員や異動や配置転換をしたばかりの従業員は、新たな環境や業務に不安を感じているため、新入社員向け研修や1on1の実施、メンター制度の導入など、フォローアップ制度を整えることが効果的です。
フォローアップを実施することで、業務に必要な知識やスキルの基盤を作れたり、理解を深められたりします。
また、メンター制度を導入し、サポートする相手や相談相手を明確にしておくと、不安や心配ごとが相談しやすくなり、人材のストレス軽減にもつながります。
風通しの良い職場づくり
転職や人事異動などで新たな職場に身を置いたとき、すべてが予想したとおりということはほとんどなく、だれしもが少なからずリアリティショックを受けるでしょう。
リアリティショックを放置してしまうと、上述したようなマイナスな影響が生じる恐れがありますが、気兼ねなく意見を言えたり、従業員同士がサポートしあえたりする職場であれば、リアリティショックを克服できると考えられます。
そのため、悩みを相談できる機会が定期的にある、相手に話しかけやすい雰囲気が漂っているなど、風通しの良い職場環境を作ることが大切です。
風通しの良い職場作りを目指す方向けに、無料でダウンロードできる資料をご用意しています。
ぜひ資料を参考に、風通しの良い職場を目指してみてください。
>風通しの良い職場環境をデザインする方法
に関する資料はこちら
社内コミュニケーションの活性化
イニシエーションを成功させるには、新たに一員となった人材に対する周囲のサポートが欠かせません。
とくに、社会人経験のない新入社員などは、自ら指示を仰げない場合もあるため、社内コミュニケーションを活性化させて、居心地の悪さや不安を感じさせないようにしましょう。
また、テレワークやリモートワークなどの環境下でも、認識相違を起こしたりコミュニケーション不足による疎外感などを抱かせたりしないように、コミュニケーションがとりやすい環境を整備することが重要です。
>リモートでのコミュニケーションで工夫したいポイントに関する記事はこちら
コミュニケーションの活性化に「Chatwork」
ビジネスにおけるイニシエーションとは、困難を乗り越えて新たな環境の一員になることを指します。
イニシエーションを成功させるには、新たに一員となった人材と密なコミュニケーションをとり、不安やリアリティショックを軽減させることが重要です。
企業の担当者は、従業員同士が気軽にコミュニケーションをとることができる、風通しの良い職場作りを目指しましょう。
職場の人と気軽にスムーズなコミュニケーションを実現する方法として、ビジネス専用のコミュニケーションツール「Chatwork」の活用が効果的です。
「Chatwork」は、チャット形式でメッセージのやりとりができるため、メールや電話よりも気軽にコミュニケーションを実施することができます。
また、ビデオ通話機能を活用すれば、リモートワークで普段顔を合わせられない人とも対面で話ができ、相談に乗ることも可能です。
従業員がイニシエーションを乗り越えて、組織に馴染めるように、「Chatwork」をぜひご活用ください。
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