MBOとは?導入のメリットや目的、方法やポイントを解説
目次
MBOとは、従業員に目標を設定してもらい、達成状況や貢献度をみて人事評価するマネジメント方法をいいます。
MBOを導入すると、組織と個人の目標をリンクさせ、組織と従業員がともに成長していくことが可能です。
本記事では、MBOの目的や種類、OKRとの違い、導入方法などを解説します。
MBOとは
MBOとは、従業員に目標設定してもらい、達成状況や貢献度から人事評価するマネジメント方法を指します。
MBOは「Management By Objectives」の略語で、日本語の場合は「目標による管理」や「目標管理制度」と呼びます。
MBOをおこなううえで重要なポイントは、個人目標を従業員自身に決定してもらい、主体性を重視することです。
目標管理をおこなうときは、単なるタスク管理にならないように注意し、従業員のモチベーションにつながるようにしましょう。
また、MBOを導入して目標設定する際は、組織目標と個人目標はリンクさせる必要があります。
目標の足並みを揃えることで組織と従業員がともに成長でき、目標達成への道筋が見えやすくなります。
MBOが広まった背景
MBOが広まった背景としては、人事評価への成果主義の導入があげられます。
1990年代のバブル崩壊を機に、人件費削減にとりくむ企業が増えたため、人事評価に成果主義が導入されました。
成果主義の導入とあわせて、従業員の成果を評価する新たな指標のMBOが日本で広がりました。
これまでおこなわれていた年功序列の評価制度が崩壊し、人件費をおさえて貢献度の高い人を評価できるMBOが重宝されるようになったといえます。
MBOの提唱者P.F.ドラッカー
そもそもMBOは、P.F.ドラッカーが著書の「現代の経営」で提唱している概念です。
P.F.ドラッカーは、自身の著書「現代の経営」で「Management By Objectives through Self Control」と述べており、従業員の自主性が大切であると提言しています。
MBOを導入する目的
MBOを導入する目的としては、大きくわけて以下の2つがあげられます。
- 従業員のスキルアップや成長をうながす
- 公平で透明性のある評価をおこなう
MBOでは、従業員自身に目標を決めてもらうため、上司から設定された目標よりもモチベーションを保ちやすく、技術の向上につながりやすくなるでしょう。
また、売上や受注数などの具体的な数値も自ら設定するため、評価された内容に対しても納得感が生まれます。
マネジメント層も人事評価がしやすくなるでしょう。
MBOとOKRの違い
MBOと同様に、よく用いられる目標管理方法にOKRがあります。
MBOとOKRには、目標設定するときの目的や人事評価の影響などに違いがあります。
OKRとは、目標と主要な結果をあらわす「Objectives Key Result」の頭文字をとった略語で、目標の設定と管理をおこなうフレームワークをさします。
MBOとOKRの違いを5つ解説しましょう。
目標設定する目的
MBOの目標を設定する目的は、組織目標と個人目標をリンクさせて双方の目標達成を目指すことにあります。設定した目標に対する達成度や貢献度などから、マネジメント層が従業員を評価します。
一方でOKRの目標を設定する目的は、組織目標(Object)と主要な結果(Key Results)を具体的な指標としてセットで取り扱って、向かうべき方向性を明確にすることにあります。
組織全体での課題を解決することを目的とした目標を設定します。
MBOで目標設定をすることで自身の仕事ぶりを従業員が自らマネジメントし、OKRでベクトルをあわせて組織の目標を達成することで、従業員のモチベーションや生産性の向上も期待できるでしょう。
評価・進捗確認の頻度
MBOとOKRの違いのひとつとして、評価や進捗確認の頻度があげられます。
MBOは評価や進捗確認の頻度が少なく、一年ごとのスパンでおこなう企業が多いでしょう。
一方でOKRは、MBOと比べて評価や進捗確認の頻度が多く、四半期(3か月)ごとに評価し、進捗確認は週一回のペースでおこなうこともあります。
目標の基準値設定
MBOとOKRには、目標の基準値設定にも違いがあります。
MBOは、基本的に達成可能な目標を設定するため、達成度を100%またはそれ以上を目指します。
一方でOKRは、高い目標設定をおこなうため、達成度を60%〜70%に設定することが多いです。
人事評価への影響度合い
MBOとOKRの大きな違いとして、人事評価への影響度合いがあげられます。
MBOは、人事評価や報酬に直接影響がありますが、OKRは組織と共有する目標であるため、人事評価には直結しません。
人事評価への影響度合いにかかわらず、目標をしっかりと設定し評価することが大切です。
MBOの目標の設定方法・評価方法は本記事下部で紹介します。
国内企業におけるMBOの現状
バブル崩壊後に日本に導入され始めたMBOですが、2000年代からは成果に目を向けるだけではなく、プロセスも評価項目に追加するなど企業によってカスタマイズしながら、独自の評価制度を作り上げるようになってきました。
企業の人材マネジメントにおいては、年齢や入社年次を基準に等級を定めた年功序列制度をベースにしながら、目標管理には成果やプロセスを取り入れた評価制度も定着しつつあります。
近年では、テレワークやリモートワーク、仕事内容にあわせて採用するジョブ型雇用など働き方も多様化しているため、組織の働く環境にあわせて柔軟に対応していく必要があるでしょう。
MBOの種類
MBOには、下記の3種類があります。
- 課題達成型
- 組織活性型
- 人事評価型
MBOの種類をひとつずつ確認していきましょう。
課題達成型
MBOの課題達成型とは、組織の抱える課題の解決や目標達成を中心として、従業員が目標を設定する方法をいいます。
たとえば、チームや部門ごとに課題や目標が割り振られてから、個人目標が決定していくイメージです。
組織活性型や人事評価型に比べ、従業員のスキル向上よりも、組織の課題解決が優先されます。
組織活性型
組織活性型は、従業員に自ら目標を設定してもらう方法をさします。
組織活性型は、心理学者で経営学者のマクレガーの著書「企業の人間的側面」で取り上げられている「X理論・Y理論」のY理論に基づいた方法です。
X理論は、従業員を働かすために強制や命令によって管理して目標達成させる方法です。
Y理論は、従業員に責任や目標をもってもらい、自主性や能力向上を目指す方法です。
人事評価型
設定した目標が人事評価に直接影響がある場合は、人事評価型に分類されます。
課題達成型や組織活性型と同様に、従業員に目標を設定してもらう点で変わりはありません。
目標と評価をリンクさせることで、モチベーションアップや能力向上につながりやすいメリットがあります。
一方、課題達成型や組織活性型と比べて、組織力の向上や収益アップにつながりにくい点がデメリットといえるでしょう。
MBOを導入するメリット
MBOを導入するメリットを解説します。
従業員のモチベーションを高める
MBOをとりいれると、組織や上司から目標を強制されることがないため、従業員自らが目標をたてられることから、モチベーションを保ちやすいです。
組織の目標を達成するためには、どのようなことをする必要があるのかを自発的に考えられるので、達成感も味わいやすいでしょう。
人材育成がしやすい
MBOは従業員に目標設定してもらうことから、主体性をもった人材が育ちやすい環境が整い、人材育成がしやすくなります。
目標を達成するためには、どのようなスキルを伸ばせばいいのか、効率化すべき作業は何かなど、PDCAを回しながら成長できるようになるでしょう。
客観的な評価制度が整う
目標を設定するときは、定性的な目標も組み入れますが、受注数や問い合わせ件数など定量化した目標も決めるため、客観的に従業員を評価できるようになります。
具体的な数値で判断できることから、マネジメント側が評価しやすいだけではなく、評価される側も納得感があるので、評価に対する不満も生まれにくくなるでしょう。
MBOを導入するデメリット
MBOを導入するデメリットを解説します。
マネジメント層の負担が大きくなる
MBOでは従業員ごとに目標を設定するため、評価をおこなう側は目標管理をそれぞれフィードバックしなければいけません。
そのため従業員数が多い企業の場合は、マネジメント層の負担が大きくなってしまいます。
さらに人事評価が報酬に直接影響があるため、マネジメント層の精神的な負担もかかりやすいでしょう。
人事評価との連動が必要
MBOは、人事評価との連動が必要です。
なかには、人事評価に直結することがモチベーションの低下につながる従業員もいるため、マネジメント層はフォローアップを欠かさずおこなわなければなりません。
人事評価と報酬が連動していることから、マネジメント層は評価を正確かつ公平におこなう能力が求められるでしょう。
MBOを導入する方法・手順
MBOを導入する際は、以下のステップに沿っておこなっていきましょう。
- 組織の目標を決めて全体に周知する
- 従業員に目標を立ててもらう
- 目標内容が適切か上司とすり合わせる
- 上司が進捗を管理する
- 上司が評価・フィードバックをおこなう
それぞれのステップについて、詳しく解説します。
ステップ(1):組織の目標を決めて全体に周知する
個人目標は組織の目標とリンクさせなければならないため、まずは基準となる組織の目標を決めましょう。
決定した組織目標を伝える際には、目標を設定した意図や組織の方針なども一緒に共有します。
ステップ(2): 従業員に目標を立ててもらう
組織目標が決まったら、従業員に目標をたててもらいましょう。
組織の目標を達成するためには、どのような取り組みをしたらよいのか、何ができるのかを考えながら目標を立ててもらいます。
また、定性的な目標だけでなく、定量的な目標数値を設定してもらうことで、客観的に評価ができるようになります。
ステップ(3):目標内容が適切か上司とすり合わせる
設定した目標が適切かどうかを、上司とすり合わせします。
目標を確認するときは、従業員にとって目標内容が高すぎたり低すぎたりしないか、モチベーションを保ったまま目標達成に向けて動けるかどうかなどを見ていきましょう。
従業員とすりあわせする際は、目標内容がノルマやタスクとしてとらわれないよう、伝え方に気をつける必要があります。
なお、従業員が目標設定の仕方に迷うような場合には、SMARTの法則を活用してもらうとよいでしょう。
SMARTの法則とは、以下の5つの点を掘り下げて目標を設定する方法をさします。
- 具体性(Specific)
- 計測可能性(Measurable)
- 達成可能性(Achievable)
- 関連性(Relevant)
- 明確な期限(Time-bound)
ステップ(4):上司が進捗を管理する
目標の進捗を確認することも重要です。
モチベーションが下がらないように、定期的な面談の機会を設け、進捗状況にあわせて助言やサポートなどをしましょう。
進捗状況に応じて、目標内容の変更や目標数値の見直しなどもおこないましょう。
ステップ(5):上司が評価・フィードバックをおこなう
目標に対し、上司が評価・フィードバックをおこないます。
評価内容を伝える際には、納得できるような理由をきちんと説明しましょう。
評価内容によってはモチベーションの低下につながりかねないため、定量的な目標の評価にくわえ、勤務態度や普段の頑張りなど、従業員の定性的な面における評価もきちんと伝えましょう。
フィードバックをおこなうときは、労いの言葉も忘れないようにしてください。
MBOを運用するポイント
MBOを運用するときのポイントを紹介します。
目標達成の基準を明確にする
公平な人事評価をおこなうためには、目標達成の基準を明確にしておくことが重要です。
目標を設定するときは、定性的な目標だけでなく、受注件数などの定量的な目標もセットで立てるよううながしましょう。
プロセスも評価する
評価をするときは数字だけでなく、そのプロセスもきちんと評価するようにしましょう。
数字だけで判断してしまうと、従業員のモチベーション低下につながる恐れがあります。
プロセスをきちんと把握するためにも、定期的な進捗確認や面談が重要といえます。
MBOの運用にChatworkを活用しよう
MBOとは、従業員に目標を設定してもらい、達成状況や貢献度をみて人事評価するマネジメント方法です。
従業員に目標設定をしてもらうときには、ビジネスチャット「Chatwork」を活用するとスムーズにやりとりできます。
「Chatwork」は、メールや電話に比べて、チャット形式で気軽にコミュニケーションができるうえ、ビデオ通話機能も備わっています。
MBOの目標管理する際には、こまめな進捗確認や定期的な面談が大切なため、「Chatwork」の導入もぜひご検討ください。
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