【社労士監修】男性育休の考え方とは?義務化の推進方法、メリット、法改正を解説

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【社労士監修】男性育休の考え方とは?義務化の推進方法、メリット、法改正を解説

目次

核家族化や労働環境の変化により共働き世代が増加している日本では、仕事と育児の両立支援は急務となっています。

とくに、男性の育児参加は仕事と育児を両立するうえで欠かせません。

そのため、2022年4月から男性が育児休業を取得しやすくなるよう、順次法律が改正されています。

この記事では、男性育休の考え方や法改正による企業の対応を詳しく解説します。

男性の育児休業を推進することで企業にも様々なメリットがあるので、ぜひ参考にしてください。

育児休業とは

育児休業とは、1歳に満たない子供を養育する目的で従業員が取得できる休業です。

法律上、「労働者の権利」として企業に申し出ることで取得ができます。

また、一定の条件を満たせば子が2歳に達するまでの取得ができ、休業中は給付金の支給もあります。

>【社労士監修】育児休業とは?に関する記事はこちら

日本における女性と男性の育休取得率

働き方改革により、男性の育休取得に向けた制度の整備や、政府の継続的な働きかけによって企業全体の意識が少しずつ変わっています。

実際、厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」によると、育児休業取得率は男性13.97%と9年連続で上昇し、男性育休が浸透しはじめています。[※1]

しかし世界的には、まだまだ日本の男性育休取得率は低く、今後も意識改革は継続的に行う必要があると考えられます。[※2]

男性育休の目的と必要性

近年では、国を挙げて男性の育児休業を推進しています。

ではなぜ、男性の育児休業が推進されているのでしょうか。

男性育休の目的と必要性を解説します。

約5割の女性が出産・育児により退職している

国立社会保障・人口問題研究所 「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」によると、出産・育児により退職している女性の割合は約5割に達していることが公表されています。[※3]

その5割のうち、最も多い退職理由は「仕事との両立が難しいため」となっています。

つまり、仕事を継続する意思があるにもかかわらず、育児と両立できる環境が整備されていないため退職するケースが多くみられるということです。

このことから、男性も積極的に育児に関わることで、女性の出産・育児を理由とした退職に歯止めをかけることができると考えられています。

夫の家事・育児時間が長いほど妻が継続して就業する割合が高い

厚生労働省の資料によると、夫の家事・育児時間が、妻の出産後の継続就業に関連性があることがわかっています。[※4]

とくに日本では夫の家事・育児時間が諸外国から比べて低水準であり、改善するべき課題の一つとなっています。

男性の育児参加がしやすい環境整備は社会的な課題であり、女性の継続就業の改善に効果的であると考えられます。

男性が育児休業制度を利用しづらい

厚生労働省の資料によると、男性が育児休業をしたかったにもかかわらず、取得しなかった割合は全体の37.5%という結果がでています。[※4]

その主な理由としては、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」などが挙げられ、現状では男性が育児休業を利用しづらい環境であることがわかります。

そのため、法律など強制力のあるやり方で男性の育児休業を推進する仕組みが求められているのです。

男性育休に関する法改正

2022年4月から育児・介護休業法が順次改正され、男性が育児休業しやすくなるよう整備が進められています。[※5]

改正内容について詳しく解説します。

個別の周知・意向確認の義務化(2022年4月~)

企業には、従業員本人または配偶者の妊娠・出産の申出に対して、育児休業制度に関する以下の周知が義務化されました。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  2. 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

周知方法は、「面談 ・書面交付・FAX・電子メール」のいずれかでおこなわなければいけません。

なお「FAX」と「電子メール」での周知は、従業員が希望した場合のみ可能です。

また、育児休業の取得についての意向確認は個別におこなう必要があり、できる限り早い時期に対応することが求められています。

たとえば、妊娠・出産の申出が出産予定日の1か月半以上前におこなわれた場合は出産予定日の1か月前までに、出産予定日の1か月前までに申出がおこなわれた場合は2週間以内が目安です。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(2022年4月施行)

企業側は育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、以下4つのうち、いずれかの措置を講じなければなりません。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置など)
  3. 自社の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  4. 従業員への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

また1か月以上の休業を希望する労働者には、その期間を休業できるよう配慮すると共に、可能な限り複数の措置をおこなうことが望ましいとされています。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(2022年4月施行)

法改正により、育児休業の要件としていた「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が撤廃されました。

これにより、育児休業の取得要件は「子が1歳6か月になるまでの間に契約が満了することが明らかでない場合」のみとなります。

なお、契約の満了については、育児休業の申出があった時点で労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。

企業側が「更新しない」旨の明示をしていない場合については、原則として「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されません。

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(2022年10月施行)

産後パパ育休(出生時育児休業)は、育児休業とは別に男性のみが取得できる休業です。

原則、2週間前までに企業に申し出ることで、出生後8週間以内に4週間までの休業が取得できます。

なお、産後パパ育休(出生時育児休業)は分割して2回取得することも可能です。

その際は、1回目の申出時に2回分の休業期間をまとめて申し出ることが求められます。

また、労使協定を締結することで休業中に就業させることも可能です。

ただし、就業日や就業時間が所定労働日・所定労働時間の半分、さらに休業開始日・終了日を就業日とする場合は、その日は所定労働時間数未満であることが条件です。

育児休業の分割取得(2022年10月施行)

2022年10月からは、子が1歳になるまでの育児休業を分割して2回の取得が可能になります。

これにより、男性が育児休業を2回取得できるだけではなく、女性も分割して取得できるため、夫婦交代で育児休業を取得できます。

また、1歳以降の延長期間も途中交代が可能になり、柔軟に育児休業が取得できるようになりました。

育児休業取得状況の公表の義務化(2023年4月施行)

2023年4月からは、常時雇用する従業員が1,000人を超える企業は、育児休業の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。

具体的には、以下いずれかの取得割合の公表が必要です。

  • 育児休業等の取得割合
  • 育児休業等と育児目的休暇の取得割合

なお公表の際には、インターネットの利用など、一般の方が閲覧できるように公表する必要があります。

>【社労士監修】育児休暇とは?に関する記事はこちら

企業における男性育休のメリット

男性の育児休業は、企業にとって様々なメリットがあります。

具体的に解説していきます。

従業員の満足度と帰属意識の向上

厚生労働省の調査報告書によると、「会社で育児休業制度が整備されていなかった」「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だった」という理由で育児休業を取得していない男性従業員が多くみられました。[※4]

そのため、企業が積極的に男性の育児休業を推奨することで、従業員の満足度が向上し、企業への帰属意識も向上が期待できます。

さらに、従業員の多様な事情に配慮した制度の導入や取組の実施により、離職率の低下にもつながるでしょう。

>帰属意識に関する記事はこちら

企業イメージの向上

男性の育児休業の取得は、公表・アピールすることで、企業イメージの向上に繋がります。

「男性が育児休業できる企業」として、採用に良い影響をもたらすでしょう。

男性の育児休業推進が人材不足解消の対策の一つとして、有効な手段となる可能性があります。

>人手不足に関する記事はこちら

業務の属人化の軽減

育児休業を機に、業務引継ぎや棚卸しを行うことで、業務を見直すきっかけを作ることができます。

また組織としても、従業員の中で引き継げる人材を検討するなど、業務整理と属人化解消につなげることができるでしょう。

>属人化に関する記事はこちら

企業が男性育休を推進するためのとりくみ

実際に企業が男性育休を推進するために必要なとりくみを解説します。

管理職の意識改革をおこなう

企業全体で育児休業を推進するためには、管理職の意識改革が重要です。

社内周知だけではなく社外セミナーなども利用しながら、部下の育児参加をサポートする意義や、育児休業を取得できる環境作りの重要性を周知させましょう。

経営層からのメッセージを発信する場をつくる

経営層が「男性も育児休業を取ってください」とメッセージを発信することで、企業の方針が明確になります。

経営層も男性が育児休業を取得するメリットや必要性について理解し、積極的に促すことで男性が育児休業を取得しやすい環境を構築することができます。

仕事と育児の両立に向けた制度の導入を検討

従業員が仕事と育児を両立するためには、企業が法律を遵守するだけでは限界があります。

そのため、男性の育児休業を促進させる企業独自の制度を導入することを検討しましょう。

たとえば、法律を上回る休業期間を定めたり、ファミリーサポート休暇などの特別休暇を設けるなど、仕事と育児の両立を促進する制度の創設などです。

こうした育児を促進する独自の休暇は、福利厚生として企業のイメージアップにも繋がるでしょう。

>福利厚生に関する記事はこちら

企業で男性育休を推進しよう

日本において男性育休は、まだまだ寛容に受け入れられる状態ではありません。

しかし共働き世帯が増加する現状では、男性の育児参加は必要不可欠です。

法律が改正され、男性育休に対する意識改革が求められる中、各企業が積極的に推進することで、日本全体に男性育休が浸透していくでしょう。

そのためには、経営層や管理職の理解と意識改革が必要です。

企業の担当者は、男性育休の考え方や制度を理解し、社内で積極的に推進していきましょう。

まずは、本記事で紹介した「男性育休推進のためのとりくみ」を実践する第一歩として、ビジネスチャットの導入が、効果的な手段となりうるのでおすすめです。

ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット形式で気軽なやりとりが可能なため、円滑なコミュニケーションが実現できるツールです。

たとえば、男性育休推進にむけた管理職の意識改革を目的とした情報発信や、仕事と育児の両立を促進する制度を創設した際などに社内周知には、グループチャットを活用する方法があります。

また、経営層からのメッセージを発信する場として、グループチャットを使うのも効果的でしょう。

>グループチャットに関する記事はこちら

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[※1]厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/07.pdf

[※2]独立行政法人労働政策研究・研修機構「父親の育児休業取得率」
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2016/08/germany_01.html?_fsi=2uZ3pVay&_fsi=2uZ3pVay

[※3]国立社会保障・人口問題研究所 「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_reportALL.pdf

[※4]厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf

[※5]厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/kaisei_point/


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:北 光太郎(きた こうたろう)

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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男性育休に関するQ&A

男性育休とは?

男性が取得する「育児休業」を意味する言葉です。

育児休業とは、1歳に満たない子供を養育する目的で、従業員が取得できる休業のことで、法律上、「労働者の権利」として企業に申し出ることで取得ができます。

また、一定の条件を満たせば子が2歳に達するまでの取得ができ、休業中は給付金の支給もあります。

男性育休の目的と必要性とは?

男性育休の目的と必要性として、出産・育児を理由とした女性の退職に歯止めをかけることや男性の育児参加がしやすい環境整備などが挙げられます。

これらの目的・必要性から、現在、国を挙げて男性の育児休業を推進しています。

男性育休のメリットとは?

男性育休を推進するメリットとして、従業員の満足度と帰属意識の向上や企業イメージの向上、業務における属人化の軽減などが挙げられます。

くわえて、従業員の多様な事情に配慮した制度の導入や取組の実施により、離職率の低減も期待できるでしょう。

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