ジョブ・クラフティングの効果とは?実践方法や成功のポイントをわかりやすく解説
目次
ジョブ・クラフティングとは、従業員自らが、仕事に対する認知や行動を変化させることで、仕事をやりがいのあるものに変容させる人事手法のことです。
ジョブ・クラフティングは、従業員の主体性やモチベーションの向上に効果的であるとして、近年注目を集めています。
ジョブ・クラフティングの概要や効果、メリットや実践方法、成功させるためのポイントを解説します。
ジョブ・クラフティングとは
「ジョブ・クラフティング」とは、従業員が、仕事に対して楽しさややりがいをもって働くことを目的として、仕事に対する認知や行動を変化させる人事手法のことで、アメリカのイェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授と、ミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授によって提唱された概念です。
ジョブ・クラフティングの考え方では、他人に強制されるのではなく、自分自身が、主体的に仕事の内容や価値観を再定義することによって、やりがい喜びをもって働けるようになるとされています。
ジョブデザインとの違い
ジョブデザインとは、ジョブ・クラフティングのように、自分自身で仕事のとりくみ方を工夫するのではなく、組織や管理者などが、従業員にとっての働きがいを追及して、仕事のとりくみ方の工夫を計画するものです。
全社の経営方針としてとりくみが決められるため、導入がなされれば、従業員全員への均一的な効果が期待できるでしょう。
ジョブ・クラフティングが注目される背景
ジョブ・クラフティングが注目される背景には、労働人口の減少にともなう、人材獲得競争の激化と、働き方に対する価値観の変化があげられます。
少子高齢化にともない、労働人口の減少が予想される日本では、優秀な人材を確保することは大きな課題となっています。
また近年では、テレワークやリモートワーク、また副業や兼業など、さまざまな働き方がひろがり、仕事や働き方に対する価値観にも変化がみられています。
このような状況のなかで、従業員の働きがいややる気を高められるジョブ・クラフティングが注目を集めるようになりました。
従業員の主体的な行動が多くなれば、独創性を発揮しやすくなり、豊富なアイデアがでるようになるため、持続的な企業成長も期待できます。
優秀な人材の確保や、従業員の定着率に課題をもつ企業にとって、従業員が主体的に、働きがいを抱くことができるジョブ・クラウティングは、実施すべき施策といえるでしょう。
ジョブ・クラフティングの3つの視点
ジョブ・クラフティングは、働き方を以下の3つの視点から見直すことで、仕事に対する主体性や働きがいを引き出す手法です。
- 作業クラフティング
- 人間関係クラフティング
- 認知クラフティング
ジョブ・クラフティングの3つの視点について、それぞれ詳しくみていきましょう。
作業クラフティング
作業クラフティングとは、やりがいをもって仕事ができるように、仕事の作業内容を見直して工夫を加えることです。
具体的には、タスク量や仕事の範囲を見直して、適切に変更することなどが、作業クラフティングにあたります。
たとえば、クリエイティブな作業に多く時間を割きたいのであれば、定型的な業務をITツールに任せることで、創造性を発揮できるタスクへの時間を増やすことができるでしょう。
人間関係クラフティング
人間関係クラフティングとは、仕事で関わる人とのコミュニケーションを工夫し、仕事に対するやりがいや満足感を高める方法です。
たとえば、周囲の人と積極的に業務について振り返る機会を設けたり、仕事で達成したい目標を話し合い、モチベーションを高める場を作ったりすることが、具体的な方法としてあげられます。
このような、前向きで頻度の高いコミュニケーションが増えれば、心理的安全性が確保され、さらに主体的なコミュニケーションが生まれるようになるでしょう。
認知クラフティング
認知クラフティングとは、仕事に対する向き合い方や捉え方を見つめ直し、仕事に対するやりがいや価値を捉え直す方法です。
たとえば、仕事の目的やおこなう意義、また自分の強みが仕事にどう活きるのかなどをみつめることにより、より前向きな気持ちで仕事に取り組めるようになります。
ジョブ・クラフティングのメリット・効果
ジョブ・クラフティングのメリット・効果についてみていきましょう。
主体的・能動的な従業員が増える
ジョブ・クラフティングを実施することで、仕事に対して主体的・能動的な行動をする従業員を増やすことができます。
主体的な行動が増えれば、従業員同士の交流も増えたり、業務の効率につながる工夫提案が多くだされたりするため、社員のやりがいとともに、生産性もあがるという好循環が生まれることも期待できます。
従業員のモチベーション向上が見込める
従業員がやりがいをもつことにより、仕事に対しての満足度があがり、従業員のモチベーション向上を見込むことができます。
また、仕事に対する満足度が向上すると、企業に貢献したいという気持ちも生まれやすくなるため、どのようにしたら企業成長につながるか、生産的なとりくみができるかを考えて実践する従業員もでてくるでしょう。
アイデアが生まれやすくなる
ジョブ・クラフティングを実施すると、日々の仕事の量や範囲、また向き合い方などについて頻繁に考えるようになるため、仕事に対しての気づきも多くなります。
それによって、新たな業務改善や新規事業など、さまざまな種類のアイデアが生まれやすくなるでしょう。
また、人間関係クラフティングによって、従業員同士が積極的に前向きさをもって関わるようになれば、頻繁なコミュニケーションにもつながるため、そこからアイデアが創出されることも期待できます。
リーダー育成を促すことができる
リーダーには、常にチームや部署の状態をよりよくすることを目指しながら、周囲に積極的に働きかけ、気づいたことを能動的に実施する行動力が求められます。
この、周囲に働きかけ、能動的に行動を起こす姿勢は、個人で仕事について考え、実際に行動を起こしていくジョブ・クラフティングで高められる要素です。
そのため、ジョブ・クラフティングを継続的に実施することは、従業員が自ら考え、行動を起こす機会を増やすことにもつながるため、リーダーの育成にも効果的でしょう。
ジョブ・クラフティングの実践方法
ジョブ・クラフティングの実践方法についてみていきましょう。
ステップ(1):業務内容・タスクの棚卸し
ジョブ・クラフティングを導入する際に、最初に必要なステップは、業務内容やタスクの洗い出しです。
従業員は、おこなっている業務内容を見直し、すべてのタスクを具体的に書き出しましょう。
ここで重要なのは、業務を進めるうえで発生するタスクや作業をすべて抽出することです。
タスクはなるべく細分化しながら、すべての工程を明らかにしましょう。
洗い出しをおこなう際は、各タスクにかかる時間や重要度を記載すると、作業クラフティングがしやすいです。
また、どの工程でだれが関わっているのか、自分がおこなったタスクがだれに影響するのかなども、丁寧に書き出しておきましょう。
ステップ(2):多角的な視点の自己分析
タスクの洗い出しがおこなえたら、次に、多角的な視点での自己分析をおこないましょう。
客観的な視点でみた強みや弱み、得意、好きなことや苦手なこと、嫌いな部分、また今後活かしていきたい部分など、さまざまな視点で自己分析をおこなう必要があります。
また、自分自身のスキルや能力を把握するとともに、仕事へのとりくみ方も細かく分析します。
たとえば、現在の仕事をおこなううえで達成したい目標や、そのために実践していること、やりがいを感じる部分などを把握しておきましょう。
自己分析は、主観的な視点に偏りがちですが、意識的に、さまざまな視点から自分を捉えることがポイントです。
ステップ(3):業務改善の具体的検討
自己分析が完了したら、結果をもとに、業務改善の具体的な検討をおこないます。
自分自身の特性と仕事への向き合い方を照らし合わせながら、実現したい業務改善を考えてみましょう。
たとえば、自分の強みが細かな間違いを見つけるのが得意で、このような特性が活かせる仕事をしてみたいと考えるなら、このような業務工程に割く仕事や時間を増やせないか考え、ほかの部分の作業時間を減らすことを検討しましょう。
自分の得意や関心に沿って、業務やタスクを考えてみると、仕事に対するやりがいを見つけることができます。
また、改めて、自分の業務内容を見直してみることで、いままで気がつかなかった社会的意義や価値に気づくことができ、モチベーションの向上につながることもあるでしょう。
ステップ(4):他者との関わりを見直す
作業について見直したら、人間関係クラフティングの視点から、他者との関わりも見直しましょう。
仕事内容のなかで、他者と前向きな意見交換をできる工程はないか、積極的に関わることで業務改善につながる部分はないかなどを考えてみましょう。
また、ステップ(3)で考えた項目を、従業員同士で共有し、意見を述べあうことも、他者との主体的な関係構築につながります。
ジョブ・クラフティングを成功させるポイント
ジョブ・クラフティングの実践方法を確認したところで、より効果的におこなうポイントについても、確認しておきましょう。
ジョブ・クラフティングを成功させるポイントについて解説します。
従業員の主体性を大切にする
ジョブ・クラフティングは、従業員の主体性を引き出す必要があります。
そのため、ジョブ・クラフティングを実施する際は、組織や上司が強制するのではなく、従業員の主体性を尊重するようにしましょう。
従業員自身にやる気がないのに、強制的にやらされると、業務改善ができたとしても、従業員のやりがいにつながる可能性は低いです。
強制してしまうと、ジョブ・クラフティング自体が、「やらされたこと」になってしまいかねません。
企業側は、メリットや実践方法を提示することで、実施を促すことは大切ですが、あくまでも、従業員が自発的に実施できるとりくみになるよう工夫しましょう。
協調性を意識する
ジョブ・クラフティングを実施する際は、自分本位にならないように注意する必要もあります。
ジョブ・クラフティングは、従業員自らが、自分の働き方や業務内容を、再定義する必要があります。
自分を主語にして考えていると、ときには、周囲の人への気配りや配慮が失われることがあるかもしれません。
このような事態を避けるためにも、ジョブ・クラフティングをおこなう際は、適宜フィードバックをおこない、方向修正をしながら、進めるようにしましょう。
業務の属人化に注意する
従業員一人ひとりが、作業の工夫をおこなうことによって、業務が属人化する危険性もあります。
ジョブ・クラフティングは、従業員一人ひとりが、自分の働き方や業務を工夫して、とりくむようにする方法のため、ときには、手順やプロセスに、属人性が生まれる可能性があります。
このような属人化が進んでしまうと、引き継ぎや情報共有が煩雑化してしまい、業務がブラックボックス化しかねません。
ジョブ・クラフティングをおこなう際は、マニュアルを整備したり、また社員同士で業務工程を確認する時間を定期的に設けたりして、担当者がいなくても、ほかの人が業務を進められるようにすることも大切です。
また、担当者がほかの人に内容を共有することで、さらに効率的な業務改善のアイデアを提案してもらえるかもしれません。
「やりがい搾取」に注意する
ジョブ・クラフティングは、従業員の働きがい向上のためにとりくむものですが、従業員に必要以上の働きを求める「やりがい搾取」にならないように注意する必要もあります。
従業員の主体的な行動により、業務改善が増えるのはよいことですが、「やりがいをもっているなら、多少大変でもやれるだろう」「働きがいがあるなら、報酬はいらないだろう」と考えることは、誤りです。
従業員が、やりがいや働きがいをもって、仕事にとりくむことは、企業にとってもメリットがあることですが、それを逆手にとって、働かせることがないように注意しましょう。
やりがいや働きがいをもって、仕事に取り組んだ結果、成果や結果を出した場合は、報酬や待遇にして、従業員に還元することが、持続的な企業成長を目指すうえでも、重要です。
研修やワークショップの場を提供する
ジョブ・クラフティングを効果的に実施するためには、実施のメリットや目的を、従業員に理解してもらうことも大切です。
たとえば、研修やワークショップで、ジョブ・クラフティングの理解を深めたうえで、実施することができれば、質の高いジョブ・クラフティングが実現できるでしょう。
ジョブ・クラフティングの事例
あるテーマパーク運営企業では、従業員一人ひとりが、来場するお客様に楽しんでもらうために、主体的な行動をしています。
たとえば、清掃担当のキャストは、決められた清掃という業務だけでなく、箒を濡らして地面に絵を描いたり、積極的にお客様と交流をもったりして、お客様に喜んでもらおうと行動しています。
ジョブ・クラフティングを実践することで、業務を見直し、自分の働きがいややりがいを見出しことで、このような、プラスアルファの行動ができるようになるでしょう。
コミュニケーション活性化には「Chatwork」
ジョブ・クラフティングを実施することで、従業員の主体的・能動的な行動が増えるとともに、モチベーション向上も期待することができます。
とくに、人間関係クラフティングを実施すれば、前向きなコミュニケーションの活性化につながり、新たな業務改善のアイデアや、斬新な発想も生まれやすくなるでしょう。
テレワークやリモートワークの働き方が増えてきたなかで、オンラインでのコミュニケーションの活性化をめざすなら、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。
「Chatwork」は、オンライン上で簡単にやりとりができるコミュニケーションツールで、1対1はもちろん、複数人でコミュニケーションをとることもできます。
たとえば、複数人で情報共有が必要なプロジェクトや、さまざまな人の意見が聞きたい場などで、便利に活用することができるでしょう。
また、チャット形式のコミュニケーションだけでなく、音声/ビデオ通話機能も搭載されているため、必要に応じて、適切なコミュニケーション手段を選択することができるのも特徴です。
>Chatworkの通話機能(ビデオ/音声通話機能)に関する記事はこちら
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