人的資本の情報開示とは?19項目の内容をわかりやすく解説

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働き方改革
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人的資本の情報開示とは?19項目の内容をわかりやすく解説

目次

人的資本とは、人のもつ能力や技術などを、モノやカネと同じ資本とみなす経済学用語です。

投資することで、企業の持続的成長につながるとして、近年世界的な注目を集めているもので、開示の要請が世界的な潮流となっています。

日本でも、はやければ2023年から義務化されようとしている人的資本の情報開示ですが、内容や定められた背景を知っている人は少ないのではないでしょうか。

人的資本の情報開示が求められている背景や、開示が望ましいとされている19項目についてみていきましょう。

人的資本とは

「人的資本」とは、人のもつ能力や技術、保有資格などを、「モノ」や「カネ」と同じ資本とみなす考え方のことです。

人的資本という無形資産に投資することで、企業の持続的な成長を目指せるとして、近年、世界的に注目を集めています。

世界的に開示の要請が進んでいる人的資本ですが、日本においても、はやければ2023年から、大手企業4,000社に対し、人的資本の情報開示が義務化されるといわれています。

人的資源との違い

人的資本と混合しやすい言葉として「人的資源」があげられますが、人的資源とは、人を資源としてとらえ、効率よく消費するという考え方のことです。

そのため「人的資源」にかかる費用は、投資ではなくコストと考えられ、使えば使うほど減っていくという考え方でした。

一方で、「人的資本」にかかる費用は、コストではなく投資で、人がもつ能力や技術が伸びれば伸びるほど、価値が生まれるという考え方です。

従来のビジネスシーンにおいては、「人的資源」の考え方が一般的でしたが、近年は、人材を資本としてとらえ、人材の成長が企業の成長になるという人的資本の考え方が広がっています。

人的資本の情報開示が求められる背景

企業の持続的な成長に効果的な「人的資本」ですが、なぜ直近開示が求められるようになったのでしょうか。

人的資本の情報開示が求められるようになった背景について確認していきましょう。

人的資本の価値・関心が高まっている

IT技術やデジタル化が進む近年、ロボットが人の代わりに接客をおこなったり、物をつくったりすることが増えています。

このような時代の変化から、ロボットやAIに任せられる仕事は、ロボットやAIに任せ、人は、人にしかできない創造力を働かせた仕事などでイノベーションを起こし、企業のさらなる成長を目指すという考え方が拡大しています。

そのため、人の能力や技術に投資する「人的資本」の価値や関心が高まっているのです。

ESG投資への関心が高まっている

ESG投資とは、投資家が、投資先として、環境問題や社会問題、不祥事防止などの企業統治に配慮している企業を選ぶ投資のことです。

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をとった言葉で、この3つの観点に着目して事業をおこなうと、企業成長が長期的にできるという考え方です。

社会問題には、労働環境の整備や女性活躍推進など、人に関わる項目が含まれているため、人的資本の情報開示が求められています。

>ESGの意味や定義とは?に関する記事はこちら

ISO30414の公開

ISO30414とは、人的資本に関する国際的なガイドラインのことで、2018年12月に国際標準化機構(ISO)によって発表されたものです。

自社の労働力の持続可能性のサポートや透明性を高めることを目的として発表されたISO30414は、コンプライアンスやダイバーシティ、採用・異動・離職など、以下の11の項目が定められています。

項目 概要
①コンプライアンスと倫理 懲戒処分数、コンプライアンス研修実績など
②コスト 採用・離職コスト、人件費など
③ダイバーシティ 年齢や性別などの割合など
④リーダーシップ 管理職への信頼度など
⑤組織文化 従業員満足度や定着率など
⑥健康・安全 労働災害発生件数など
⑦生産性 従業員一人あたりの生産性など
⑧採用・異動・離職 採用プロセスについてや離職率など
⑨スキルと能力 人材育成についてや従業員の質など
⑩後継者計画 後継者の育成程度など
⑪労働力 従業員数や従業員の欠勤率など

欧米の流れの影響

欧米では、日本よりも早くから環境問題に対して高い関心があったため、ESG投資が早期に注目されたり、人的資本の情報開示が進められたりしていました。

欧州では、2014年から非財務情報開示指令で「社員と従業員」を含む情報開示が義務づけられ、2021年には人権・人的資本を含めた、企業サステナビリティ報告指令が公表され、2024年から適用が開始される予定です。

また米国においても、2020年にレギュレーションS-K(非財務情報)の開示項目が変更され、米国の上場企業に対して人的資本の開示が義務化されました。

このような欧米の人的資本の情報開示の影響をうけ、情報開示に対する重要性を感じはじめたため、日本においても情報開示が求められるようになりました。

日本国内の人的資本の情報開示における動向

日本においても、欧州と同じように、人的資本の情報開示に向けた動きがみられるようになっています。

日本国内の人的資本の情報開示における動向について解説します。

「人材版伊藤レポート」の公開

人材版伊藤レポートとは、経済産業省が2020年9月に公表したレポートで、「人的資本経営の実現に向けた検討会」で議論された内容が記されているものです。[※1]

「人材版伊藤レポート」には、人的資本経営に向けたアイデアがまとめられているため、人的資本経営を進める際に、参考とすることが求められています。[※2]

内閣官房の「非財務情報可視化研究会」スタート

2022年2月には、人的資本などの、非財務情報についての価値の評価方法について検討し、企業経営の指針をまとめるために、「非財務情報可視化研究会」が開始されました。[※3]

「非財務情報可視化研究会」の活動により、企業経営の指針がまとめられ、企業での実施や情報開示が求められる可能性があります。

経済産業省の「非財務情報の開示指針研究会」スタート

ESG情報などの非財務情報の開示の重要度が、世界的に高まっていることをうけ、開示指標を議論するために、2021年6月に「非財務情報の開示指針研究会」がスタートしました。[※4]

ここでは、非財務指標開示の具体的な開示方法や指標について議論が進められており、「人的資本」と「気候変動」のふたつが、2大テーマとして掲げられています。

人的資本開示ルールの公表

2022年8月に、内閣官房は、上場企業向けの人的資本開示のガイドラインとして「人的資本可視化指針」を公表しました。[※5]

「人的資本可視化指針」においては、開示事項として7分野19項目が記載されています。

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。

人的資本開示の7分野19項目とは

内閣官房が公表した「人的資本可視化指針」では、人的資本における望ましい開示項目として、下記の7分野19項目が掲げられています。

分野 項目
人材育成 リーダーシップ/育成/スキル・経験
多様性 ダイバーシティ/非差別/育児休業
健康・安全 精神的健康/身体的健康/安全
労働慣行 労働慣行/児童労働・強制労働/賃金の公正性/福利厚生/組合との関係
エンゲージメント 従業員満足度
流動性 採用/維持/サクセッション
コンプライアンス 法令遵守

情報開示が必須となる項目は、このうちの一部の項目で、「投資目的の視点」と「数値化できるかの視点」というふたつの視点で整理して、開示することが求められています。

開示が望ましいとされている7分野19項目について、それぞれみていきましょう。

分野(1):人材育成

人材育成分野としては、「リーダーシップ」「育成」「スキル・経験」の項目があげられています。

この分野には、後継者の育成やスキルアップへのとりくみなどにくわえて、優秀な人材を自社で維持するためのシステムなど、人材育成に関わる情報も含まれています。

分野(2):多様性

多様性分野には、「ダイバーシティ」「非差別」「育児休業」の項目があげられています。

性別・人種・国籍などが違う、多様性のある人材をうけいれる体制が整備されているかや、育児休業の取得率、男女間の給与差などの情報開示が求められています。

この項目は、開示が必須とされている項目で、多様な働き方が推進されている昨今、注目を集めている分野といえるでしょう。

>ダイバーシティとは?に関する記事はこちら

分野(3):健康・安全

健康・安全分野には、「精神的健康」「身体的健康」「安全」の項目があげられています。

労働災害の発生率や従業員の欠勤率など、リスクマネジメントの観点から、従業員が安全に仕事できたり、心身の健康が保たれていたりするかの情報の開示が求められています。

>企業がすべきリスクマネジメントに関する記事はこちら

分野(4):労働慣行

労働慣行分野には、「労働慣行」「児童労働・強制労働」「賃金の公正性」「福利厚生」「組合との関係」の項目があげられています。

賃金が適正か、不正な労働がなされていないかや、福利厚生の種類・内容などの情報開示が必要で、企業の社会的信用に関する重要な項目といえるでしょう。

分野(5):エンゲージメント

エンゲージメント分野では、「従業員満足度」の項目があげられており、自社の従業員が、自社の労働環境や業務内容に満足しているか、やりがいをもてているかなどの度合いの開示が求められています。

企業への帰属意識や共感度などにくわえて、ストレスや不満などの度合いの開示も求められており、サーベイやストレスチェックなどを用いて、数値化できる項目です。

>エンゲージメントとは?に関する記事はこちら

分野(6):流動性

流動性分野には、「採用」「維持」「サクセッション」の項目があげられています。

人材の定着や維持に関する取り組みや、離職率、採用コストなどの情報の開示が求められています。

>離職防止にとりくむ重要性に関する記事はこちら

分野(7):コンプライアンス

法令遵守を意味するコンプライアンス分野では、「法律を守って企業活動をおこなっているか」「倫理的な行動をとっているか」などの情報開示が求められます。

社会的な規範や倫理に基づいて、企業活動をおこなえているかを示す項目です。

>コンプライアンスの重要性に関する記事はこちら

人的資本を開示する際のポイント・注意点

人的資本を開示する際は、いくつかのポイントと注意点をおさえたうえで、正しく開示することが大切です。

人的資本開示をする際のポイントと注意点についてみていきましょう。

自社が開示すべき情報は精査・可視化する

自社が開示する情報は、あらかじめ精査し、可視化しておくようにしましょう。

情報の整理ができていると、ステークホルダーのニーズに該当する情報を開示しやすいだけでなく、自社の強みを見つけられる可能性もあります。

情報を開示する際は、無闇におこなうのではなく、どのような情報が求められているかを、精査したうえでおこなうことが、自社のアピールをするうえでも重要です。

情報は定量で示せるようにする

情報開示をおこなう際は、できるだけ数値化をおこない、定量で示せるようにしましょう。

情報は、定量化して示すことで、現状と目標の差が明確になったり、情報により具体性をもたせたりできるようになります。

開示内容は企業優位性を意識する

開示する情報は、企業のリスクマネジメントや働き方改革など、ステークホルダーが比較検討しやすい保守の部分だけでなく、企業独自の戦略など、企業の成長につながる部分も見せ、企業優位性を出すことが大切です。

情報開示において企業の優位性が出せれば、他社との差別化につながるでしょう。

開示内容にストーリーをもたせる

開示する情報には、ストーリー性をもたせることが効果的です。

情報開示をおこなう際は、ただ結果を示すだけでなく、とりくみ内容や目標と現状の差などを示しながら結果を示すことで、企業のとりくみを、具体的にステークホルダーに伝えることができます。

人的資本の開示に向けて企業がすべきこと

人的資本の開示は、日本でも順次開始されていきますが、開示に向けて、企業側に求められる準備には、どのようなものがあるでしょうか。

人的資本の開示に向けて、企業がすべきことを、手順別に解説します。

手順(1):情報の計測環境を整備する

人的資本の情報開示をおこなうためには、現在の育児休業取得率や従業員満足度など、さまざまな情報を整理して、正しく把握する必要があります。

そのため、まずは情報を正しく把握できるような計測環境の整備を進めましょう。

計測ツールを導入したり、従業員に対する調査方法を検討したりなど、自社に最適な方法を模索し、情報の活用方法などもあわせて検討することが大切です。

たとえば、蓄積した従業員エンゲージメントの数値を、前年度の情報と比較することができると、本年度におこなった施策の効果を数値的に示せるなどのメリットが期待できます。

手順(2):戦略的なKPI・目的を策定する

収集した人的資本の情報から、戦略的なKPIや目的を策定しましょう。

KPIや目的を明確にすることで、人的資本を高めていくとりくみの方向性が定められ、目標達成に向けて進んでいけるでしょう。

>KPIの設定方法や手順に関する記事はこちら

手順(3):従業員の声に耳を傾ける

KPIと目的を策定できたら、具体的な施策にとりくんでいきましょう。

施策にとりくむ際は、従業員の声に耳を傾け、反応を見たり、意見をとりいれたりすると、より効果的に改善がおこなえるでしょう。

人的資本は、自社の従業員を資本として、投資していく考え方です。

従業員の意見を無視して、エンゲージメントを下げることがないように注意しましょう。

手順(4):施策内容をブラッシュアップする

施策にとりくんでいても、思うように成果があがらないことがあるかもしれません。

成果が出ない、進捗が芳しくないと思った際には、施策内容をブラッシュアップして、より目標が達成できるようなとりくみをおこなっていくことが大切です。

上述の手順(1)の段階で計測環境があらかじめ整備できていると、ブラッシュアップするときにも改善のアクションがとりやすくなるでしょう。

人的資本の情報開示に向けて「Chatwork」を活用しましょう

人的資本の情報開示は、欧米では数年前から進んでいるとりくみであり、日本では2023年3月期以降から大手企業に義務化されるといわれています。

人的資本の情報開示の内容は、多様性や育成など、人材に関する項目が多くあり、自社の改善を図るには、目的の策定や施策のブラッシュアップなどが重要です。

そして、人的資本の情報開示に向けてとりくみをすすめていくには、情報共有の方法やスムーズなコミュニケーションがとれる環境を整えることも大切な要素です。

設定したKPIを周知したり、従業員の声を広く拾い上げていくには、社内の誰もが手軽に情報を発信したり、得たりできるようなコミュニケーション手段が必要となるためです。

コミュニケーションの円滑化には、ビジネスチャット「Chatwork」の活用をおすすめします。

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>Chatworkのグループチャットに関する記事はこちら

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[※1]経済産業省「​​人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

[※2]経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220513001/20220513001.html

[※3]経済産業省「非財務情報可視化研究会の開催について」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/wgkaisai/hizaimu_dai1/siryou1.pdf

[※4]経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/hizaimu_joho/index.html

[※5]内閣官房「人的資本可視化指針」(案)に対するパブリックコメントの結果の公示及び同指針の策定について」
https://www.cas.go.jp/jp/houdou/20220830jintekisihon.html

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