ガラスの天井とは?意味や女性の働きやすい環境をわかりやすく解説

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働き方改革
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ガラスの天井とは?意味や女性の働きやすい環境をわかりやすく解説

目次

近年、「ガラスの天井」という言葉がビジネスシーンでよく使われるようになりました。

「ガラスの天井」とは、十分な能力や実績があるにもかかわらず、性別や人種などを理由にキャリアアップできない状態を指す言葉です。

本記事では、「ガラスの天井」とはどのような意味の言葉なのか、日本における男女格差の現状や、「ガラスの天井」を破る方法などについて解説します。

「ガラスの天井」の意味とは

「ガラスの天井」とは、十分な能力や実績があり、本来であれば、組織内において十分昇進可能なのにも関わらず、性別や人種などを理由にキャリアアップできない状況を指す言葉です。

キャリアアップする道筋が見えているにもかかわらず、その道筋が見えない障壁や天井に阻まれている状態を、「ガラスの天井」という言葉で比喩的に表現しています。

「壊れたハシゴ」とは

女性の昇進が難しいことを表す表現として、「壊れたハシゴ」という言葉が使われる場合があります。

女性が経営層などの要職に就くのが難しい原因として、「ガラスの天井」ではなく、係長などもっと手前の管理職への昇進がそもそも阻まれている実態があるともいわれています。

このように、昇進における第一段階に問題の存在を、「壊れたハシゴ」といいます。

「ガラスの天井」が知られるようになった背景

「ガラスの天井」という言葉は、2016年のアメリカ大統領選挙の女性候補者であったヒラリー・クリントンが、敗北宣言の際に使用したことがきっかけで、世間に広く知られるようになりました。

I know that we still have not shattered that highest glass ceiling. But some day someone will--hopefully sooner than we might think right now.
[注1]

ヒラリー・クリントンは、初の女性大統領として期待を集めていましたが、大統領選に敗退し、初の女性大統領になることの難しさを「ガラスの天井」と表現しました。

日本における男女格差の現状

日本では、男女雇用機会均等法や女性活躍推進法などが施行され、男女格差是正のための取り組みや制度づくりがおこなわれています。

しかし、まだまだ男女格差が大きい状況があるのが、日本の現状です。

日本における女性役職者の割合やジェンダーギャップ指数について紹介します。

女性役職者の割合

男女共同参画局が公表している2021年の日本における女性役職者の割合は、以下のとおりです。

役職名 2021年の割合
係長級 20.7%
課長級 12.4%
部長級 7.7%

結果から見ても分かる通り、女性の役職者の割合は、男性と比較して少ないのが現状です。[注2]

ジェンダー・ギャップ指数

世界経済フォーラム(WEF)が公表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」において、日本の指数は0.650で、順位は146か国中116位となっています。

ジェンダー・ギャップ指数とは、経済活動や政治への参画度、教育水準、出生率や健康寿命などから算出される男女格差を示す指標で、スコアが高いほど、男女格差が低いことをあらわしています。[注3]

1位のアイスランドの0.908と比べると、日本の0.650は、非常に低い状況と言えるでしょう。[注4]

順位 国名
1 アイスランド 0.908
2 フィンランド 0.860
3 ノルウェー 0.845
4 ニュージーランド 0.841
5 スウェーデン 0.822
116 日本 0.650

また、日本は、主要7か国(G7)のなかでジェンダー・ギャップ指数が最下位の結果となっています。

日本の格差是正には、まだまだ課題がある状況といえるでしょう。

>【社労士監修】女性活躍推進法とは?に関する記事はこちら

日本でガラスの天井が生まれる原因

「ガラスの天井」が生まれる背景には、「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」といったジェンダーのステレオタイプが関係していると考えられます。

また、文化的背景やメディアによる「女性らしさ」や「男性らしさ」についてのアンコンシャスバイアス(無意識の偏ったものの見方)の影響もあるでしょう。

とくに日本においては、「家父長制」という男性に対する支配的特権を認める文化背景の存在もあり、この文化も「ガラスの天井」を生む原因のひとつと考えられています。

>【臨床心理士監修】アンコンシャスバイアスとは?に関する記事はこちら

ガラスの天井を破るメリット

「ガラスの天井」を破ることには、以下のようなメリットがあると考えられます。

  • 女性やマイノリティが働きやすくなる
  • 優秀な人材を集めやすくなる
  • 働きやすい職場環境であることをアピールできる
  • 女性やマイノリティ以外の従業員の意欲向上につながる

また、近年では、投資先企業を選ぶ際に、社会や環境に配慮した持続的な成長が期待できる企業が選ばれやすくなっています。

企業にとって「ガラスの天井」を破ることは、投資先に選ばれやすくなり、資金調達しやすくなるメリットもあるといえるでしょう。

>「ESG」とは?に関する記事はこちら

女性が働きやすい職場環境とは

「ガラスの天井」を破り、性別や人種などを理由にキャリアアップできない状況を打破するためには、さまざまな人にとって働きやすい環境を整備することが重要なポイントです。

本記事では、「女性にとって働きやすい職場環境」のポイントを3つ紹介します。

  • 管理職に女性を登用している
  • 産休や育休がとりやすく整備されている
  • 多様な働き方を導入している

女性の働きやすさ向上を目指している企業は、ぜひ参考にしてみてください。

管理職に女性を登用している

管理職に女性がいると、組織の働き方や制度づくりにおいて、女性ならではの観点が持たれるようになるため、女性が働きやすい環境をつくりやすくなります。

たとえば、出産や育児経験のある女性であれば、自分の体験や周囲から見聞きした情報をもとに、男性では気づきにくい点に配慮した職場づくりが可能になるでしょう。

また、管理職に女性がいると、ロールモデルとして、キャリアパスを描く女性従業員も出てきて、女性従業員のキャリアの幅を広げる効果も期待できます。

>女性管理職の推進方法に関する記事はこちら

産休や育休がとりやすく整備されている

産休や育休がとりやすく整備されていると、安心して仕事と子育てを両立できるようになります。

管理職も積極的に産休や育休を取得していると、一般社員も休暇をとりやすくなります。

制度があるだけではなく、取得や活用しやすい状況が整備されている環境も重要です。

企業は、制度の目的や内容を社内周知し、男女関係なく、休暇を取得しやすい環境整備を目指しましょう。

>【社労士監修】産休とは?に関する記事はこちら

>【社労士監修】男性育休の考え方とは?に関する記事はこちら

多様な働き方を導入している

子育てをしながら働くことには、さまざまな制約があります。

たとえば、保育園への送り迎え、子どもの急な病気やケガの対応など、労働時間が制限され、業務との両立が難しくなるさまざまな要素があります。

リモートワークや時短勤務、フレックスタイムなど、多様な働き方を導入すると、子育てと仕事を両立しやすくなり、社員のキャリアパスを広げることができるでしょう。

>多様な働き方の種類とメリットに関する記事はこちら

ガラスの天井を破る方法

ここまで、「ガラスの天井」を破るメリットや働きやすい職場環境の例を解説してきました。

ここからは、「ガラスの天井」を破るための具体的な方法を紹介します。

  • 多様な働き方の推進
  • 風通しの良い職場づくり
  • 組織風土や意識の改革
  • キャリアアップの体制整備
  • 家事や育児、介護への男性の積極的な参加

自社が取り組みやすいものから取り組み、ガラスの天井の打破を目指しましょう。

多様な働き方の推進

働く場所や時間など、多様な働き方の推進により、働き方の選択肢が広がり、子育てや介護中の社員の働きやすさ向上を目指せるでしょう。

たとえば、リモートワークやフレックスタイムを導入すると、出社の時間をなくせたり、働く時間を選択できたりなど、労働者の働きやすさや定着率向上が期待できます。

風通しの良い職場づくり

「ガラスの天井」は、日本が抱える課題のひとつですが、その状況は、企業や組織、また部署やチームによっても異なるものです。

たとえば、同じ企業のなかにも、育休を取りやすい部署や取りにくい部署があるでしょう。

そのため、「ガラスの天井」を排除するためには、自分たちの組織のなかで、なにが「ガラスの天井」の要因となっているのか、どのような問題があるのかを知る取り組みが重要です。

要因や問題の特定し、解消を目指すためには、経営層や担当部署だけでなく、さまざまな立場の社員が、それぞれの観点から、問題を提起し、解決策を考える必要があります。

そのため、まずは、立場や役職にかかわらず、意見交換ができる環境の整備を目指しましょう。

さまざまな観点から問題を捉え、解決策を検討することが、「ガラスの天井」打破の第一歩となります。

組織風土や意識の改革

女性やマイノリティの人に対する見方は、組織風土に大きな影響を受けます。

組織風土は、その会社の経営者や管理職の考え方によって形づくられるものです。

そのため、組織全体で「ガラスの天井」の打破を目指す場合は、まず経営層や管理職などが、「ガラスの天井」の存在を認識し、意識改革をすることが大切です。

経営層や管理職が、「ガラスの天井」を問題として捉え、積極的に意見や考えを発信していくことで、組織全体に課題を認識させることができるでしょう。

キャリアアップの体制整備

ガラスの天井を破るには、キャリアアップの体制を整備する必要もあります。

ここまで紹介してきたものも含まれますが、キャリアアップ体制の整備の例としては、以下のような例があげられます。

  • リモートワークなどの多様な働き方の推進
  • 産休や育休などの休暇制度の整備
  • 女性の管理職や役員の実績の開示
  • キャリアパスに対する相談窓口の設置

家事や育児、介護への男性の積極的な参加

女性が、家事や育児・介護などのライフイベントを経験しながら、キャリアを諦めず続けていくためには、男性による家事や育児・介護などへの積極的な参加が必要です。

家事や育児、介護は、女性が担うのが一般的と考えるジェンダーのステレオタイプは、前述した通り、今もなお根強いものです。

しかし、女性がキャリアを続けるためには、「女性・男性はこうあるべき」という考え方にとらわれず、平等にキャリアの選択肢をもつ必要があります。

また、ジェンダーを理由として、仕事や役割を担わせることは、ジェンダーハラスメントにもつながります。

社内にジェンダーのステレオタイプがある場合は、経営層や管理職の層から積極的に排除する必要があります。

企業は、ハラスメント研修を実施したり、ガイドラインを制定したりなど、ジェンダーのステレオタイプ排除を目指しましょう。

>ジェンダーハラスメントとは?に関する記事はこちら

ガラスの天井の撤廃に取り組んでいる事例

最後に、「ガラスの天井」撤廃に取り組んでいる企業事例を紹介します。

企業事例を参考に、「ガラスの天井」の撤廃を目指しましょう。

クオータ制の導入

「ガラスの天井」の撤廃の取り組みのひとつとして、「クオータ制」の導入があげられます。

クオータ制とは、マイノリティに対して、一定の比率で人数の割り当てをおこなうポジティブ・アクションの手法です。

たとえば、企業内で「女性の管理職割合を3割にする」「男性を1人管理職に登用したら、女性も1人管理職に登用する」などが、クオータ制と呼ばれます。

このクオータ制を導入し、女性管理職比率50%を目指している企業があります。

この企業では、男性を1人昇格させるときは、同時に女性を1人昇格させるというクオータ制を実施し、女性の活躍躍進を目指しています。

また、クオータ制にくわえて、短時間勤務やフレックスタイム、リモートワークなどの多様な働き方や、有給や育休を取得しやすい体制整備を実施し、有給取得率83%、男性育休取得率100%を実現しています。

クオータ制の導入や多様な働き方の導入は、男女格差の是正に効果が期待できるでしょう。[注5]

経営者の意識改革

「ガラスの天井」撤廃を目指すためには、「ガラスの天井」の存在を認識し、問題視し、撤廃を目指す必要があります。

企業全体で「ガラスの天井」に向き合い、撤廃を実現するためには、経営者層や管理職の働き方が必要不可欠です。

経営者の意識改革で、ガラスの天井撤廃を目指す企業があります。

この企業は、女性が働きやすい職場環境を実現するために、社長が旗振り役となり、イクボス宣言を開始しました。

「イクボス」とは、育児の「いく(育)」と上司の英語表現「ボス」からなる造語で、従業員のワークライフバランスや産休や育児などを含めたキャリア実現を重視し、支援する上司を指す言葉です。

この企業では、「仕事を効率的に終わらせ早く帰る部下を評価します」などのイクボス宣言書の掲示にくわえ、半日有給休暇制度や短期間の育児休業制度を導入し、男女問わずに、休みやすく、働きやすい職場づくりをおこなっています。

結果として、育休後の女性の復職率100%や時間外労働の削減に成功し、くるみん認定やプラチナくるみん認定も受けています。

経営者層や管理職が積極的に「ガラスの天井」撤廃を目指すことで、男女問わずに、働きやすい環境づくりが実現できるでしょう。[注6]

多様な働き方の推進に「Chatwork」

「ガラスの天井」とは、十分な能力や実績があり、本来であれば組織内において十分昇進可能な人が、性別や人種などを理由にキャリアアップできない状況をいいます。

日本においては、とくに、企業における女性管理職の割合の低さが課題となっています。

「ガラスの天井」を撤廃するためには、多様な働き方の推進や企業風土の改革など、さまざまな方法があります。

まずは、自社の「ガラスの天井」の要因を正しく知り、自社にあった方法で撤廃を目指しましょう。

ビジネスチャット「Chatwork」は、多様な働き方の実現に効果的なビジネスツールです。

たとえば、リモートワークやテレワークなどの異なる場所で働いている場合や、時短勤務やフレックスタイムなどの異なる時間に働いている場合、電話が繋がらなかったり、メールの返信が遅かったり、コミュニケーションにストレスがたまりやすいです。

「Chatwork」は、このようなコミュニケーションのストレスが生じづらく、円滑なやりとりの実現をサポートすることができます。

たとえば、電話のように相手と時間を合わせる必要がなく、ビジネスメールで必要な定型的なやりとりを省略できるため、本題に集中したスピーディなコミュニケーションを実現できます。

また、「確認したこと」をリアクション機能を活用してワンタップで伝えられたり、「確認依頼」や「タスクの依頼」をタスク管理機能を活用して簡単に伝えられたりします。

「Chatwork」は、無料で使用できます。

社内外問わずに使うことができるので、まずはチームや部署などの単位で使いはじめ、ぜひコミュニケーションの変化や業務の効率化を実感してみてください。

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[注1]出典:Hillary Clinton公式Facebook
https://www.facebook.com/hillaryclinton/posts/1324421317614394
[注2]出典:男女共同参画局「民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合の推移
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-17.html
[注3]出典:福生市役所「男女共同参画情報誌 あなたとわたし」
https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/027/56.pdf
[注4]出典:男女共同参画局「共同参画2022年8月号 」
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2022/202208/202208_07.html
[注5]出典:厚生労働省「女性の活躍推進や両立支援に積極的に取り組む企業の事例 三州製菓株式会社」
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/practice/detail?id=117
[注6]出典:厚生労働省「女性の活躍推進や両立支援に積極的に取り組む企業の事例  株式会社青森ダイハツモータース」
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/practice/detail?id=165

※本記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

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