キャリアオーナーシップとは?メリットと方法を企業事例とともに紹介
目次
キャリアオーナーシップとは、個人が自身のキャリアを主体的に考えて行動することや、その姿勢そのものを指します。
変化が激しい時代を生き抜くには、生涯をかけて学び続けるという姿勢が求められます。
企業が従業員に対し、キャリアオーナーシップのサポートを実施することで、事業活動の生産性を高められるというメリットがあります。
本記事では、キャリアオーナーシップの意味と取り組み方法について、企業事例を含めて紹介します。
キャリアオーナーシップとは?
キャリアオーナーシップとは、個人が自身のキャリアに対する責任を持ち、キャリアを積極的に設計していく行動や姿勢のことです。
そもそもキャリアには「仕事の経歴」といった意味があり、オーナーシップには「主体性を持って仕事に関わる姿勢」という意味があります。
キャリアオーナーシップという言葉は、キャリアとオーナーシップを組み合わせた造語として日本で生まれました。
個人の取り組みとしてだけでなく、企業が従業員のキャリア形成をサポートできる内容としても期待されています。
キャリアオーナーシップが必要な背景
時代の流れにより、終身雇用や年功序列の制度などが変化しつつあります。
さまざまな変化を受けて、以下のような背景で近年ではキャリアオーナーシップが必要とされるようになりました。
- 終身雇用・年功序列の変化
- 人生100年時代の影響
- ESG投資による影響
- ジョブ型雇用による影響
それぞれの背景を見ていきましょう。
終身雇用・年功序列の変化
企業が従業員を定年まで雇用し続ける終身雇用や、年功序列といった制度は崩壊しつつあります。
予測不能なVUCA時代が訪れ、従来の体制のまま事業活動を続けるのは負担がかかってしまう、という点も理由としてあげられます。
企業においては、競合他社との競争に負けないようなスキルを保有する人材が求められるようになりました。
企業の終身雇用や年功序列の変化から、従来のように企業が従業員を育成するだけではなく、キャリアオーナーシップで個人が主体的に学ぶ姿勢が求められています。
人生100年時代の影響
健康寿命が延びている影響で、将来的に人生を100年以上生きる人が多くなることが予測されています。
人生を充実させるためには、仕事やプライベートの両方を通して生涯学習を続ける姿勢が求められています。
主体的に仕事の能力開発をおこなうことで、幅広い分野で価値を提供できる人材になれるでしょう。
また、生涯学習を続けることで安定的なキャリアの形成につながるため、老後に安心した生活を送ることが可能になります。
ESG投資による影響
ESG投資とは、企業の事業活動において「環境」「社会」「ガバナンス」の3項目に配慮している企業に投資をおこなうことです。
経済産業省に設置された「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」では、企業は多様な働き方を可能とし、従業員の自律的なキャリア形成を後押しするよう議論されています。[※1]
そのため、ESG投資の波及はキャリアオーナーシップを後押しする要因のひとつになっています。
ジョブ型雇用による影響
ジョブ型雇用とは、仕事の職種やスキルを絞って採用の枠を設けることです。
従来の雇用方法では、採用後に適性を判断して配置を決めるメンバーシップ雇用が一般的でした。
メンバーシップ雇用では、勤続年数や役職などによって評価が反映される傾向にありますが、ジョブ型雇用では、成果ごとに評価が決まるという違いがあります。
近年ではジョブ型雇用が増えつつあるため、長期的に活躍するためにも、キャリアオーナーシップの姿勢で働くことが求められています。
キャリアオーナーシップを実施するメリット
キャリアオーナーシップは個人が取り組むものではありますが、企業が従業員をサポートする形で後押しも可能です。
企業がキャリアオーナーシップを実施するメリットとして、以下があげられます。
- 企業の生産性を高められる
- 優秀な人材を確保できる
- ワークエンゲージメントが高まる
それぞれの詳細を解説します。
企業の生産性を高められる
企業がキャリアオーナーシップに関わる仕組みを導入することで、従業員が業務改善の提案や新しいアイデアを出しやすくなります。
社内のなかで意見を伝えられるという文化を醸成できるため、社内の意見交換が活発になるでしょう。
上司から指示をされて行動するのではなく、主体的に行動や思考ができる機会が増え、事業活動における無駄を省けるようになるなど、企業全体の生産性を高める効果が期待できます。
優秀な人材を確保できる
企業がキャリアオーナーシップの取り組みをアピールできれば、採用活動において企業の魅力を伝えやすくなります。
求職者には「自由に挑戦ができそうな企業だ」という印象を与えられるため、成長意欲が高い優秀な人材を確保できる可能性が高まります。
また、既存の従業員にとっては、将来のキャリアをイメージする機会が生まれるため、仕事の方向性を見直すきっかけになるでしょう。
企業が従業員のキャリアに向き合うことで、従業員の不安を解消して離職率を下げる働きも期待できます。
ワークエンゲージメントが高まる
企業がキャリアオーナーシップをサポートできると、従業員の仕事におけるパフォーマンスや学習意欲が向上することがわかっています。
ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して前向きな感情を抱いている状態を指します。
多くの従業員は、将来のキャリア形成について何かしらの不安を抱えているものです。
そのため、ただ給料をもらうために働くのではなく、将来のキャリアを築くためのスキルアップを望んでいる場合も少なくありません。
従業員が仕事のやりがいを高められるような施策を導入することで、主体的に学ぶというモチベーションを高める効果が期待できます。
キャリアオーナーシップのデメリット
企業にとっても恩恵があるキャリアオーナーシップですが、以下のようなマイナス面もあります。
- 企業の目標と合わないことがある
- 管理職の負担やコストが増える
- 離職者が出る可能性もある
キャリアオーナーシップのデメリットを見ていきましょう。
企業の目標と合わないことがある
企業が目標とするキャリアオーナーシップの方向性と、従業員が求めるキャリア形成の内容は、必ずしも一致するとは限りません。
たとえば、企業が従業員のリーダーとしての能力を伸ばしたいと感じていても、従業員は関連分野の技術を深めたいと感じているかもしれません。
認識の齟齬がある状態でキャリアオーナーシップを推進すると、従業員にとっては押しつけになってしまう可能性があります。
従業員の意向に対して柔軟に対応できるような制度を整えたり、面談でのヒアリングをおこなったりするなど、従業員の声を聞いて認識をすり合わせる姿勢が求められます。
管理職の負担やコストが増える
従業員を育成する際は、サポートをおこなう人材に負担がかかります。
通常の業務を続けながらキャリアオーナーシップを実施する必要があるため、担当者はサポートに関わる準備に追われてしまうのです。
継続的にサポートをおこなう必要もあるため、研修の実施や面談など、育成の工数がかかり、本業に集中できなくなる可能性があるでしょう。
また、キャリアオーナーシップの推進によるツールの導入で、別途で費用がかかるなど、企業全体のコストが増える懸念もあります。
どのくらいのリソースや予算がかけられるのかなど、事前にある程度のすり合わせをしておくことが重要です。
離職者が出る可能性もある
優秀な人材の確保にもつながる一方、企業が推進するキャリアオーナーシップの内容と、従業員のビジョンにズレが生じると離職者が出てくる可能性があります。
従業員がキャリアを見つめ直した際に、今の職場では成長できる機会がないと思われてしまった場合、早い段階で別の企業に転職するほうがよいと判断するからです。
従業員のモチベーションを失わせないためにも、従業員のキャリア形成につながる幅広い施策を検討することが求められます。
キャリアオーナーシップを進める方法
企業がキャリアオーナーシップを進める際には、以下のような方法や手段がおすすめです。
- キャリア開発支援の説明・研修をおこなう
- 社内公募制度の導入などを導入する
- リテンションを強化する
- 1on1ミーティングを実施する
- ジョブ型雇用などを導入する
企業がキャリア開発支援などをおこなうことで、従業員の学習意欲を高める働きかけができます。
それぞれの取り組みを詳しく解説します。
キャリア開発支援の説明・研修をおこなう
キャリアオーナーシップを推進するためにも、まずは従業員に「キャリアオーナーシップとは何か」「どのような目的で推進するのか」を説明しましょう。
導入の詳細を説明することで、従業員の理解を得るための働きかけにつながります。
また、従業員の研修だけでなく、管理職の指導を含めて研修をおこない、管理職にはどのようなサポートが必要なのかなど、事前に説明するようにしましょう。
各部署や事業活動の内容に合わせて、自社の組織目標に合うキャリアオーナーシップの内容を実施していきます。
社内公募制度の導入などを導入する
社内公募制度とは、人手が必要な部署から社内で募集をかけて、希望があれば従業員が異動できるようにする仕組みです。
キャリアオーナーシップでは、従業員が希望するスキルやキャリアを身につけられるように、体制を整える必要があります。
社内公募制度を導入することで、従業員が部署異動の希望を出しやすくなるメリットがあるでしょう。
希望の職種や部署に異動できず、従業員が離職してしまうといった状況を予防できます。
ほかにも、社内公募で新規プロジェクトに参加するメンバーを募集するなど、新しいことに挑戦できる機会を設けてみてください。
リテンションを強化する
リテンションとは、人材流出を防ぐための対策のことです。
優秀な人材が競合他社などに流れないためには、経営陣や管理職などが従業員のメンタル面やキャリアのサポートをおこなうことが欠かせません。
キャリアオーナーシップを推進する意味でも、一例として企業が勉強に関わる支援金を出すといったサポートをする方法があげられます。
eラーニングや資格取得などの補助金などを支給することで、従業員がキャリアアップを図るためのサポートが可能になります。
1on1ミーティングを実施する
従業員とキャリア形成の認識をすり合わせるためにも、1on1ミーティングを実施しましょう。
今後どのようなキャリアを望んでいるのか、現状でどのような不満を感じているのかなど、従業員にヒアリングをおこないます。
また、キャリアカウンセリングを実施するなど、従業員が自身のスキルを棚卸できるような機会を設けてみてください。
ジョブ型雇用などを導入する
ジョブ型雇用を導入することで、能力を高めたいという意欲が高い人材を採用できます。
また、成果ごとに評価を決める体制を導入できるため、キャリアオーナーシップを推進しやすくなる効果も期待できます。
ジョブ型雇用のほかにも、副業や兼業の解禁をおこなうことで、従業員が本業以外に能力を高める機会を設けやすくなります。
キャリアオーナーシップの企業事例
実際に推進する際のイメージをふくらませるために、キャリアオーナーシップの企業事例を見ていきましょう。
従業員が主催の勉強会を実施した事例
とある小売業界の企業では、就業時間の前後に勉強会を設ける仕組みを整えて、キャリアオーナーシップを推進しました。
基本的なルール以外は、従業員たちに任せる形で自由に企画ができるため、社内での声をあげやすい工夫につながっています。
社内兼業を認めた事例
とある製薬業界の企業では、社内での兼業を認める形でキャリアオーナーシップを推進しています。
就業時間外や休日などの条件を決めて運用した結果、従業員にとって仕事のモチベーションが向上する効果がありました。
従業員を縛らない方針を取ることで、新しいキャリア形成や挑戦ができた成功事例といえます。
キャリアオーナーシップを進めて従業員を育成しよう
キャリアオーナーシップを推進することで、従業員のワークエンゲージメントが高まる効果が期待できます。
企業にとっても事業活動の生産性を高められるなど、さまざまな恩恵が受けられるでしょう。
社内で推進する際は、キャリア開発支援の研修や1on1ミーディングをおこなうなど、従業員のキャリア形成をサポートする施策を実施してみてください。
また、キャリアオーナーシップを推進するには、まずは従業員にキャリアオーナーシップの概要を周知することが大切です。
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[※1]出典:経済産業省 |「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/20200930_report.html